76 4.4.固定荷重に対する座屈性状
4.4.4. 耐力推定
前述のようにシェル中央の格子材に局所的な曲げモーメントが発生するものの,図
4.9
に示すように特定部材の曲げモーメントの発生は少なく,初期降伏後もN-M
関係は ほぼ線形である。このため,自由曲面ラチスシェルの耐力を特定部材の特性から推定す る方法を,まず検討する。耐力の推定にあたり鋼構造設計規準式(4.3)
を用いる。特定部 材の位置は図4.8-(b)
に示す。ラチスシェルの耐力を柱の圧縮強度 14)として換算した圧 縮強度を縦軸にとり,これを図4.10
に示す。横軸の正規化細長比Λ
は,特定部材(m)
の 圧縮軸力から式(4.3)
で計算する。この方法に加え,幾何線形で材料非線形を考慮した解 析から塑性ヒンジが最初に現れる荷重を求め,この時点の荷重から初期降伏荷重倍率λ
y0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
wi0=0m wi0=50m
wi0=100m wi0=150m
N/N
yM/M
p初期降伏部材 特定部材
82
を求め,正規化細長比
Λ
Sを計算する式(4.12)
の方法29)も検討する。2
2 cr cr
1.0
y y
N N
Λ N N
+ =
(4.11)
0 1 y
S lin
Λ λ
= α λ
(4.12)
なお,降伏荷重倍率λ
yは,式(4.9)の降伏条件を最初に満たす荷重とする。また,同図に は,既往の幾何曲面ラチスシェルに対して耐力評価式として用いられてきた修正Dunkerley
式(4.11)
もあわせて示す。なお,同じw
i0に対して初期不整分布形状として利用した図
4.5
の6
個のモードの結果をあわせて示している。本章で対象とした構造物は,ラチスシェルの特定部材に最初の塑性ヒンジは発生しないため,式
(4.12)
で得られる正 規化細長比Λ
Sは式(4.3)
から得られるΛ
e(m)より小さくなる。正規化細長比の計算結果を 表4.6
に示す。なお,式(4.3)および式(4.12)の式中α
0には弾性座屈荷重の各w
i0に対する 下限値を用いて計算した。鋼構造設計規準式と修正
Dunkerley
式による,それぞれの初期不整振幅に対する耐力 の最小値を圧縮強度N
crに換算し,この換算値を鋼構造設計規準式(4.3)および修正Dunkerley
式で推定した耐力estN
crと比較し,これを表4.7
に示す。なお,正規化細長比に
Λ
Sを用いた場合とΛ
e(m)を用いた場合も比較する。図
4.10
および表 4.7より,ΛSによる耐力評価がΛ
e(m)を用いた場合よりも精度が高い 事がわかる。また,修正Dunkerley
式の方が,やや鋼構造設計規準式より精度が高いと いえる。初期不整が小さい場合,図
4.8
に示すように,構造物は塑性ヒンジが入った後に耐力 上昇が発生する。これにより,数値解析の結果は推定値よりもやや高くなるが,概ね全 てのケースで安全側の耐力評価ができる。当該構造物のα
0は,球殻ドームなどと同様 の傾向を示し,初期不整が大きくなると低下するものの,弾性座屈解析から適切なα
0を 求めて適用すれば,この種のラチスシェルに対しても耐力評価が可能である。83
図 4.10 正規化細長比による耐力評価
表 4.6正規化細長比の計算
表 4.7 Ncr/estNcrの比較 0.0
0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4
0.5 0.7 0.9 1.1 1.3 1.5
Ncr/Ny
Λe(m) orΛS
修正
Dunkeley
式鋼構造設計規準式
Λ
Swi0=0mm
wi0=100mm wi0=150mm wi0=50mm
Λ
e(mwi0[mm]
0 50 100 150
λy 2.23
α0 0.86 0.55 0.36 0.25
Λe(m) 式(4.4) 0.79 0.99 1.22 1.46
ΛS 式(4.12) 0.71 0.89 1.10 1.30
wi0[mm]
0 50 100 150
鋼構造設計規準式 Λe(m) 1.36 1.33 1.36 1.42
ΛS 1.27 1.20 1.16 1.13
修正Dunkerley式 Λe(m) 1.34 1.25 1.42 1.17
ΛS 1.26 1.10 1.13 0.998
84
ドキュメント内
座屈と振動を考慮した自由曲面ラチスシェルの 設計法に関する研究
(ページ 88-91)