総括
7.1.ま と め
7.1.1.各 章 の ま と め
本 研 究 で はUXデ ザイ ンを行 う際 のユー ザ満 足度 の向上 に寄与す る知 見 を得 るた めに, ユ ー ザ がそ の製 品 ・サ ー ビス を"満 足 した"と 評 価 した理 由や き っか けにつ い て調 査 を 行 った.満 足 した理 由や き っか け を"ユ ー ザ満 足 度 の評 価構 造"と 捉 え,"瞬 間 的評価"
と"総 合 的評価"と い う2つ の視 点 か ら,ユ ーザ満 足度 に関す る評 価 の メカ ニズ ム を明 らか に した.
第1章 で は本論 文 の背 景,目 的,そ して本研 究 のア プ ロー チ につ いて述 べ た.時 代 の 変化 と共 に重 要視 され るよ うに なっ たUXに つい て,関 連 す る学 問領 域 で ある認 知 心理 学,感 性 工学,経 済 学(マ ー ケテ ィン グ研 究)な どの各取 り組 み につ い て確 認 した.そ の 上 で,問 題 提起 と してUXを 理 解 す る難 し さにつ い て触 れ,そ の難 しさの背 景 にあ る2 つ の側 面(時 間軸 にお けるUXの 対象範 囲が広 い こ と,得 られ た成 果 が個別 解 にな りや す い こ と)に つ い て述 べ た.こ の2つ の側 面 に対 して,本 研 究 で用 いた3つ の方 法(① 印 象 を与 えた事 象 を収集 す る,② ユ ー ザ満 足度 の評 価構 造 を"瞬 間 的評価"と"総 合 的評 価"の 視 点 か ら捉 え る,③ 満 足 度 を評 価す る対象 をカ テ ゴ リ単位 の視 点 で調 査す る)を 示 した.
第2章 で は これ ま でのUXの 定義やUXに まつ わ る既 存研 究 につ い て述べ た.
第3章 で はユ ーザ満 足 度 の評 価 に影 響 を与 え る要 因 を,発 生 した で き ご と と感 情 の 関 係 か ら検討 した.製 品 ・サ ー ビス を利 用 して満足 した エ ピソー ドにつ い て ア ンケー ト調 査 を行 い,得 られ たテ キ ス トデ ー タを多変 量 解析(コ レスポ ンデ ンス分析,ク ラス ター 分析)やDEMATEL法 を用 い て,5つ の製 品 ・サー ビス カテ ゴ リ(ネ ッ トワー クサー ビ スカ テ ゴ リ,家 電製 品カテ ゴ リ,生 活用 品 カテ ゴ リ,ア クテ ィ ビテ ィカ テ ゴ リ,接 客 カ テ
ゴ リ)毎 の評価 の特 徴 や構 造 と して示 した.
第4章 で は体験 に よ る感 覚 と感 情 の 関係 か ら,ユ ー ザ満 足度 の 向上 に寄与す る評価 項 目を3つ の製 品 ・サー ビスカ テ ゴ リ(ネ ッ トワー クサ ー ビス カテ ゴ リ,家 電製 品カ テ ゴ リ,生 活 用 品カ テ ゴ リ)毎 に検 討 した.ユ ーザ が満 足 した経験 の 中で発 生 した で き ご と を,先 行研 究[1]で 定 義 され た6種 のUX感 覚(① 非 日常 性の感 覚,② 獲 得 の感 覚,③ タ ス ク後 に得 る感 覚,④ 利 便性 の感 覚,⑤ 憧 れ の感 覚,⑥ 五感 か ら得 る感 覚)と10種 の感 情(喜 ぶ,親 しみ を持 つ,驚 く,満 足 す る,愛 ら しい,憧 れ る,期 待 す る,心 地 よ さ,面
白い,感 動す る)に 当て はめ,そ れ らに対 して多変 量解析(コ レス ポ ンデ ンス分析,ク ラ ス タ分 析)を 行 い,散 布 図 を作 成 し,可 視化 した.そ して,作 成 した散布 図 か ら,UXデ ザ イ ン時 に参 照 で きる,ユ ー ザ満 足 度 の 向上 に寄与 す る評価 項 目を検 討 した.
第5章 で はス マー トフォ ンアプ リを対象 と した時 系列 の満 足 度評 価 か らみ た総 合満 足 度 に影 響 を与 え る要 因 につ い て検討 した.ス マ ー トフォ ンア プ リの満 足 したエ ピ ソー ド
と不満 足 で あ ったエ ピソー ドにつ い てそれ ぞれ 時系 列 に記 述 して も らい,各 事象 の満 足 度 を7段 階評価 で評価 して も らった.こ の7段 階評 価 の得 点 を用 いて 階層 的重 回帰 分析 を行 い,Kahnemanの 提 唱す る ピー ク ・エ ン ドの法則(ユ ー ザが あ るエ ピソー ドを評価 す る際 の知覚 特性 の こ と.記 憶 に基づ く評 価 は,ピ ー ク時 と終 了 時 の苦痛 の平均 で ほ と ん ど決 ま る とい う法則.[2‑4Dが,ス マー トフォ ンアプ リの総合 満 足度 に対 す る適 応 の 妥 当性 の可否 を確 認 し,ピ ー ク ・エ ン ドの法 則 以外 に も総合 満 足度 に寄 与す る要 因 を把 握 した.
第6章 で はユ ーザ の総 合満 足 度 に 関す る満 足 ・不満 足 の決 め手 につ い て調 査 した.ス マ ー トフォ ンアプ リを対 象 に,ユ ー ザ が認 知 した"満 足 の決 め手"と"不 満 足 の決 め手
(一番 の不満 点)"を 人 間工 学専 門家2名(筆 者 を含 む)で 類 似 す る内容 毎 に親 和 図法 を 用 い て分類 し,満 足 ・不満 足 の"決 め手 の上位 項 目"と した.そ して,使 用年 数 と"決 め 手 の上位 項 目"の 関係 につ い て,多 変 量 解析(コ レス ポ ンデ ンス分析 とク ラス ター分析) を行 い,散 布 図 を作 成 し,時 間 の経 過 に伴 う評価 内容 の変化 を明 らか に した.
7.1.2.本 研 究 で 得 られ た 知 見 の ま と め
本 章 で は、UXデ ザイ ンに よ るユ ーザ満 足 度 の 向上 に寄与 す る知見 として,第3章 か ら 第6章 の結 果 を受 けて明 らか に なっ たユー ザ満 足度 の評 価構 造 につ い てま とめ る.
(1)第3章 より得 られた評価の特徴 に関す る知見のまとめ
以 下 に,発 生 したで き ご と と感 情 の 関係 か らユー ザ満 足度 の評価 に影 響 を与 え る要 因 と して把握 した評 価 の特徴 と構 造 につ い てカ テ ゴ リ毎 にま とめ る.
(1‑1)5つ の製 品 ・サ ー ビス カテ ゴ リ毎 の評価 の 特徴 や構 造
(1‑1‑1)ネ ッ トワー クサ ー ビス カテ ゴ リに お ける評価 の特 徴 や構 造
② 「便利 」,「楽 」,「簡 単 」 が重要 であ るカテ ゴ リで あ る.
② 一1"便 利 で あ る","楽 に思 う"は 手順 や入 力 した結 果 が確 認 で き る,あ るい は, 自動入 力や 予 測入 力 な どのサ ポー ト機 能 あ る と生起 す る感 情 で ある.
② 一2"簡 単 に思 う"は そ の操 作 自体 が簡 単 に感 じた際 に生 起す る感 情 で あ る.
③ 利 用す る初 期段 階,設 定段 階 のユ ーザ ビ リテ ィを評 価 して い るカテ ゴ リで あ る.
これ は,製 品 ・サ ー ビス を利 用 す る初期 段 階,あ るい は設 定段 階 に,操 作後 の フ ィ ー ドバ ック を確認 しなが ら,い か に簡 単 で便利 に感 じるか を評 価 してい る こ とを意 味す る.
④ 応 用 が利 く と喜 ばれ るカテ ゴ リであ る.
これ は,応 用 が利 く(変 更 が で き る,時 間や 場所 な どの細や か な設 定 がで き る,24 時 間利 用 可能,複 数 選 択 が可能 な ど)と 嬉 しい とい う感 情 が生起 す る評価 の構 造 を指 す.
(1‑1‑2)家 電製 品 カテ ゴ リにお ける評 価 の特徴 や 構造
① ワク ワク感 期 待感 が評価 され るカテ ゴ リで あ る.
これ は,そ の製 品 ・サー ビス を利 用 す る以前(購 入 時点)か ら楽 しみ に してい る
「ワ クワ ク」,「期待 」 が重 要 な評価 の特徴 とな ってい る こ とを意 味す る.
② 様 々 な タ ッチ ポイ ン トがユ ー ザ の感 情 に変化 を与 え るカテ ゴ リで あ る.
これ は,製 品操作 時 だ けで は な く,そ の製 品 を認 知 した 時点 か ら利 用後 まで の様 々 な タ ッチ ポイ ン トが,ユ ー ザ の感 情 に変化 を与 えてい る こ とを意 味す る.
③ 初 期利 用 時 に操 作 が上 手 く進 む こ とに よる安 心感,感 動 が重 要 な カテ ゴ リで あ る.
これ は,初 期 利 用時 に上 手 く画 面が表 示 され た(次 の操作 に進 む こ とが で きた) 際 の安 心感 が評 価 され て い る とい う特徴 を意味 す る.ま た,操 作 が上 手 くい った際
の製 品の フィー ドバ ック(映 像 が映 った,動 き始 め た,等)に 対 して感 動す る とい う特徴 も含 む.
④ 初 期利 用 時 に品質 の 良 さに感 動 す るカ テ ゴ リで あ る.
これ は,実 際 に利 用 した際 に品質 ・性 能 の良 さを感 じるこ とが重 要 で あ る こ とを 意 味 して い る.品 質 とは,デ ザ イ ン性,軽 さや 薄 さ(携 帯性 含 む)と い った形状, 耐久 性や 機能 の こ とを指 す.
⑤ 初 期利 用 時 に購 入 によ る ワク ワク感 を感 じるカテ ゴ リで あ る.
これ は製 品 が もた らす 価値 を あ る程 度 理解 した 上 で購 入 して い る こ とか ら,使 用 前,(使 用 中 も含 めて)期 待 感 が評価 され る ことを意 味す る.
(1‑1‑3)生 活用 品 カテ ゴ リにお ける評 価 の特徴 や 構造
① 自分 に対す る効 用 を確認 す るカテ ゴ リで あ る.
これ は,ユ ー ザ がそ の商 品(製 品 ・サ ー ビス)が どの よ うな商 品 なの か,あ るい はそ の商 品 に よって どの よ うな効 果や メ リ ッ トが あ るの か を確 認 して い るこ とを 意 味す る.
② 五感 に よ る直観 的 な 品質評価 で納得 す るカ テ ゴ リで あ る.
これ は,五 感 で感 じる心地 良 さがユ ー ザ の納 得 につ な が ってい るこ とを意 味す る.
ま た,こ こでの 品質 の 良 さ とは使 用感(着 心地,使 い心地)の 良 さ,耐 久性 を指 す.
③ 品質 の良 さを感 じるタ ッチ ポイ ン トは"使 ってみ た時"と"使 ってい る時"
これ は,品 質 の良 さを感 じるタ ッチ ポ イ ン トの こ とを意 味す る."使 って み た時"
は実 際 に,あ るい は初 めて の使 用 時(使 ってみ る,(モ ノ を)入 れ て み る,背 負 っ てみ る)を 意 味 し,"使 ってい る時"は 継 続利 用(使 っ てい て気づ く)を 意 味す る.
これ は,生 活 用 品カテ ゴ リが衣 類 な ど身 に着 け る製 品で あ り,友 人 に よ る評価(褒 めて も ら う,友 人 の所 有物 との比 較)の 関 わ りが存在 す るこ とを意 味す る.
(1‑1‑4)ア ク テ ィ ビテ ィカテ ゴ リに お ける評価 の 特徴 や構 造
① 自分 に対す る効 用 を確認 す るカテ ゴ リで あ る.
これ は,ユ ー ザ がそ の商 品(製 品 ・サ ー ビス)が どの よ うな商 品 なの か,あ るい はそ の商 品 に よって どの よ うな効 果や メ リ ッ トが あ るの か を確 認 して い るこ とを 意 味す る.
② ワク ワク感 期 待感 が評価 され るカテ ゴ リで あ る.
これ は,そ の製 品 ・サー ビス を利 用 す る以前(購 入 時点)か ら楽 しみ に して い る
「ワ クワ ク」,「期待 」 が重 要 な評価 の特徴 とな ってい るこ とを意 味す る.
③ 「友人 」 との関 わ りが存在 す るカ テ ゴ リで あ る.
これ は,利 用対 象 とな るア クテ ィ ビテ ィの場 に友 人 が存在 す る,あ るい は友人 か ら誘 われ るこ とを意 味す る.
④ 飲食 に関す る評 価 は五感 で感 じ られ る評 価 を行 うカテ ゴ リで あ る.
これ は,食 べ て美 味 しい と感 じるため に満 足 す る評価 の構 造 を意 味す る.
⑤ 飲 食 に関す る評 価 は対 象 に 出会 った瞬 間 が重要 で あ るカテ ゴ リで あ る.
これ は,実 際 にモ ノを見 ての想 像や購 買行為 がユー ザ の満 足 に影 響 を与 える大切 なタ ッチ ポイ ン トで あ るこ とを意 味 す る.
⑥ 飲 食 に関す る評 価 は 自分 が持 つ商 品イ メー ジ に対 して,比 較評 価 を行 うカ テ ゴ リで あ る.
これ は,飲 食 に関 して,ユ ー ザ が あ る一 定 の商 品イ メー ジ を抱 きやす い た めに, 自分 が持 つ イ メー ジ に対 して,い か にそ の期 待 を満 たす か,あ るい は期 待 を超 え る
か とい った判 断 を行 う傾 向 が あ るこ とを意 味す る.
(1‑1‑5)接 客 カ テ ゴ リにお ける評 価 の特 徴や 構造
① これ か ら行 われ る内容 に対 して期待 を抱 くカテ ゴ リで あ る.
これ は,楽 しみ程 で はない が,今 か ら行 われ る内容 へ の期 待 が評 価 に影 響 を与 え てい るカ テ ゴ リであ る.
② 製 品 ・サー ビス提供 側 の対 応 力や 対応 のス ピー ドがユ ー ザの満 足 に影 響 を与 えて い るカ テ ゴ リで あ る.
③ 問い合 わせ に関す る接 客 で は,早 く丁寧 な対 応 に よ り,安 心感 を提供 す る こ とが重 要 な カテ ゴ リで あ る.
これ は,製 品 ・サー ビス に関す る問い合 わせ が,満 足 され るで き ご と と して想 起 されや す い シー ンで あ る こ とを意 味す る.特 に安 心感 を提供 す る こ とは,ユ ー ザ の 満 足感 につ なが りやす く,ユ ーザ の 問い合 わせ に対 して,よ り早 く丁寧 な対 応 を取 る こ とが重 要 で あ る こ とを意 味す る.
(1‑2)5つ の カテ ゴ リに お ける評価 の 共通 事 項
① ユ ー ザ を"安 心"さ せ る こ とはユ ーザ の満 足 に欠 かせ ない感 情 で あ る.
② 過 去 の経験 や 自身 の感 覚(位 置 関係,タ イ ミン グ)と 比 較 して,期 待 感や 満 足感 とい った感 情 が生起 す る.
(1‑3)カ テ ゴ リ間 の比較 に よ りわ か った評 価 の違 い
① 満 足評 価 につ なが る行為 は,カ テ ゴ リに よ り主 体 的 な行 為 なの か受動 的 な行 為 な の かが決 ま る.
これ は,3.4.2.節 の 図3‑2の 散布 図 におい てネ ッ トワー クサー ビスカテ ゴ リと接 客 カテ ゴ リが対称 的な位 置 に布置 され た こ とか ら考 察 した.ネ ッ トワー クサ ー ビス