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7 .信用保証協会対象事業の農林水産 業分野への拡大

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 自立を目指す農業経営者が抱える大きな課 題の一つは、資金調達である。昨今、消費者 と生産現場を直接結び付けるべく、個人や マーケットに直接販路を見出す農業経営者が 増加しており、農業の活性化を図るために は、生産に止まらず集荷・加工・営業・販売 まで行う多角化した農業経営の発展が必要で ある。ただし、農業経営者が直接販路を獲得 し拡大するということは、農協との競合を意 味する。それゆえ、従来どおり農協から資金

を調達することは、実態として難しくなるた め、農業経営者は必要な資金を農協以外の一 般金融機関に求めることとなる。しかし、如 何に優れた農業技術を保有していても、信用 や担保が不足するという中小企業と同様の問 題があり、結果的に、農協以外の金融機関か らの資金調達も難しい状況にあった。

 そこで、06年末、政府の規制改革・民間開 放推進会議(現在の規制改革会議。以下「会 議」という。)は、農林水産業金融の円滑化 に向けて、農水省との協議を開始した。さら に、経済産業省(以下「経産省」という。)

の所管する中小企業信用保険の対象事業を見 直し、一般金融機関の農業参入を促すため、

経産省との協議も並行して始められた。これ は、農水省の所管として、農業のための農業 信用保証保険制度、林業および漁業にもその ための保証保険制度等が別に設けられてお り、中小企業信用保険においては、基本的に 農業、林業、漁業を対象事業ではない(注)8 整理されているためである。会議は、中小企 業信用保険の対象事業を農業、林業、漁業に 拡大し、一般金融機関が農林水産業分野への 融資において「保証協会」の利用を可能にす ることで、農業参入の円滑化を図ろうとした

〈参考〉「規制改革推進のための3か年計画(再改定)平成21年3月31日閣議決定」より

・ 地域農業の枠を越えて、より広域的な活動に取り組もうとする農業者については、認定農業者等 に対する既存の支援措置の仕組みでは、経営の規模や内容に応じたサポートが得られない場合も 出てくると考えられる。したがって、今後は、先進的かつ広域的な農業経営者の実態を把握し、

その結果によって必要な支援策を検討することとなった。

(注)8 .ただし、製造・加工の設備を有し、生産物の加工事業を行っている場合には、当該事業に充てられる資金を例外的に保険 対象としている。

ものである。

 会議と農水省および経産省との協議の結果、

「規制改革推進のための3か年計画」(2007年 6月22日閣議決定)において、「現在、(中小 企業)信用保険の対象となる農業関連事業者 は、①きのこ生産事業やもやし栽培業などの 生産設備を要する事業者、②生産のみなら ず、加工・販売業まで行っている事業者、に 限定しているが、昨今の農業の多様化に伴 い、多角的農業経営者等の信用保険へのニー ズを把握するとともに、農林水産省とも協議 の上、必要に応じ対応を検討するべきであ る」と記され、07年度に検討を進め、08年 度に結論を出すことが決定された。

 その後、「農商工連携(注)9」が農水省と経産 省の優先課題として浮上し、「中小企業信用保 険の対象事業の見直し」は大きく遅れること となったものの、紆余曲折を経て、09年3月31 日に閣議決定された「規制改革推進のための3 か年計画(再改定)」において、再度、中小企 業信用保険の対象事業の明確化が促された。

農業経営の自立や体質強化が求められている なか、信用保証協会の対象業務の農林水産業 への拡大は、農業分野への民間金融機関の参 入や、農業分野への異業種企業の参入の積極

化に繋がるものであり、信用金庫にとっても その動向への注視が必要である。

 農商工連携を図る農商工等連携促進法の制 定後、農林漁業者と中小企業者の連携が進 み、農産物を活用した新たなブランド商品な どが多数開発されるなど、地域経済の活性化 も 促 さ れ た(図 表11)。 た だ し、 企 業 連 携 は、経営の選択肢の一つであり、農業の活性 化に向けては、自ら独力で生産から販売まで を一気通貫で行える能力と意欲のある農業経 営者の出現が求められる。農商工連携への支 援に加えて、一気通貫した農業経営への支援 を充実すべきである。

 また、信用金庫にとっても、政府や地公体 の支援・補助に過度の期待をもって農商工連

(注)9 .農林水産業と商工業等の連携。政府広報では、「 異分野連携 による地域活性化施策として、経済産業省と農林水産省が 連携をとりながら、相乗効果を発揮する「農商工連携」が平成20年度から開始されました。「農商工連携」は、農林水産業 と商工業等が連携し、相互の経営資源を活用して、地域経済の基盤である農林水産業と中小企業を始めとする地方の商工業 を活性化させようとする取り組みです。農水省と経産省では、農商工等連携促進法を制定し、農林漁業者と中小企業者が新 商品や新サービスを生み出そうとする農商工連携の取り組みを総合的に支援しています。」と記されている。

〈参考〉「規制改革推進のための3か年計画(再改定)平成21年3月31日閣議決定」より

・ 中小企業信用保険において、農林漁業者でも利用できる事業範囲を明確にするとともに、農林漁 業者の理解が進むよう、生産活動以外の関連事業の定義及び具体例を示し、農林漁業者及び金融 機関に周知することとなった。

図表11 農商工連携事例

(備考 )「農林水産省HP」および「農商工連携パークHP」

をもとに信金中金総合研究所作成 

農商工連携事例

2008年度 

第1回認定  65件  

2008年度 

第2回認定  49件  

2008年度 

第3回認定  58件

携事業を捉えるのではなく、ビジネスとして 成り立ち得るのか、一般の事業と同様の目線 に立って判断することが大切であろう。

おわりに

 農業改革については、従来より政府の重要 課題として位置づけられていたが、マスコミ などが食料自給率の低下や新たな農業参入事 例を取り上げる機会も増え、農水省の不祥事 が続いたことも相まって、農業に対する国民 の関心も高まったことから、従来にも増して 各方面から改革のスピードアップが求められ ている。「食」や「食料供給」を扱っている 農業分野の効率化は、消費者・国民全てにメ リットをもたらすものである。

 しかしながら、現状は、国民の期待に応え て農業改革が進んでいるとは言い難い状況に ある。その背景には、永年に亘って培われた 農業分野における既得権の問題があるという ことは、否定し難い事実である。このため、

農業改革の成果を見る際には、既得権がどの ように扱われたかを把握する必要がある。そ の際、注意しなければならないのは、制度 上、既得権の問題が解消され、既得権者と新 規参入者のイコールフッティングが図られた としても、制度の運用面において、既得権者 が実態的にコントロールしている場合がある ということである。

 新聞や雑誌、レポートなど様々な媒体で農 業分野が取り上げられるようになり、有識 者・専門家のコメントを目にする機会も増え てきたが、既得権を実質的に保護する運用面 にまで踏み込んで言及しているものは極めて 少ない。農業分野への参入を検討する者、ま た、それを支援する者にとって、最も重要な ことは、制度の運用面における実態把握であ る。決して容易なことではないが、農業分野 への理解を深めるためには、不可欠なことと 認識する必要がある。

〈参考文献〉

規制改革推進のための第3次答申および規制改革推進のための3か年計画(再改定)

『食料・農業・農村白書』(2007年版)

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