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2.農業者向け融資を巡る最近の動向

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(1 )農業分野の改革の流れをビジネスチャ ンスと捉える地域金融機関

 近年の 農業改革 の流れのなかで、今後 の躍進が期待される気鋭の農業者の出現可能 性を新たな ビジネスチャンス と捉えつ つ、農業者向け融資の拡大へ向けて体制整備 を図るJAグループ以外の民間金融機関の動き が、ここ数年、急速に活発化している。

 とりわけ、地域経済を金融面から支える立 場にある地域金融機関(地方銀行・信用金

図表4 組織形態別、業種別の農業参入法人数

参入法人数 組織形態別 業種別

株式会社 特例有限会社 NPO等 建設業 食品会社 その他 農業生産法人に移行

2009年3月1日現在( 速) 349 191 89 69 125 72 144 8

2008年3月1日現在 281 144 80 57 93 64 121 3

2007年3月1日現在 206 110 54 42 76 46 84

2006年3月1日現在 156 80 41 35 57 41 58

(備考  )農林水産省「特定法人貸付事業(農地リース方式)を活用した企業等の農業参入ついて」をもとに信金中金総合研究 所作成

(備考)農林水産省資料「『農政改革の検討方向』について(09年5月)」をもとに信金中金総合研究所作成

図表3 「平成の農地改革」の概要

〜自給力の基盤たる優良農地の確保〜 〜「所有」から「利用」への転換〜

○違反転用への罰則を強化

○農用地区域からの除外の厳格化

農地転用規制の厳格化 農地を面的に集積

農用地区域内農地の確保

耕作放棄地対策の強化

○公的機関が農地を一括引受け、担い手に再配分

○担い手に貸し付けられた農地には、相続税納税猶予を適用 意欲ある若者・経営体の参入を促進

○農地貸借の規制を緩和

○貸出農地情報等を全国からアクセス可能に

意欲のある者に農地が集まることにより、国内の食料生産の 増大を通じた国民に対する食料の安定供給を確保

農地に対する転用期待を極力排除し、国民に対す る食料の安定供給を確保

農地の権利を有する者の責務の明確化

○農地の適性かつ効率的な利用の責務について、法律上明確に位置付け

庫・信用協同組合など)においては、03年ご ろからの リレーションシップ・バンキング

(リレバン) の流れも追い風となって、地域 における主要な産業のひとつとして、あらた めて農業分野に着目する動きが地方部を中心 に急速に拡がりつつ、現在に至っている。

 例えば、日本政策金融公庫の農林水産事業 本部(旧・農林漁業金融公庫)と「業務協 力」を締結している地域金融機関(09年6月9 日現在)は、銀行で84行(メガバンクを含 む)、信用金庫で84金庫、信用協同組合で6組 合にも及んでおり、農業者向け融資等に関す るノウハウ不足を政府系の専門金融機関と連 携することで克服しようという動きもすでに 定着している(図表5)。

 なお一般に、これまで農業者に対する融資

に関しては、基本的にJAグループ(農協系 統など)が担うものという 既成概念 が存 在していたこともあり、地域金融機関等が取 引先(貸出先)として農業分野へ目を向ける ケースは少なかったのが、 農業改革 以前 の実情であった。

 しかし、こうした 既成概念 は、近年の 農業改革 の広がりとともに、すでに過去 のものとなりつつある。

 現在でも農業者に対する小ロットの融資に 関しては、政策金融機関を除けば、販売面な ども含めて農業者にとって最も身近な存在で あることの多いJAグループが主要な担い手

(あるいは窓口)であることに変わりはない とみられる。しかし、近年の 農業改革 流れのなかで台頭しつつある気鋭の農業者の 図表5  日本政策金融公庫農林水産事業本部と「業務協力に関する覚書」を締結した金融機関

(09年6月9日現在)

都銀・地銀・第二地銀 信用金庫 信用組合

北海道

北洋、 北海道、 札幌 北 門、 北 空 知、 帯 広、 北 見、 北 海、 留 萌、空知、網走、旭川、遠軽、大地みら い、釧路

東北

北都、 秋田、 山形、 青森、 みちのく、 殖 産、 大東、 岩手、 東北、 北日本、 荘内、

東邦、 七十七、山形しあわせ

福 島、 二 本 松、 あ ぶ く ま、 仙 南、 杜 の 都、石巻、米沢、会津

関東

常陽、 埼玉りそな、 足利、 千葉興業、 三 井住友、 栃木、 東京三菱UFJ、 千葉、み ずほ、群馬、関東つくば、武蔵野

銚子、しののめ、利根郡、佐原、飯田、

長野、飯能

茨城県、銚子商 工、七島

東海

スルガ、 大垣共立、 百五、 十六、三重、

清水、愛知、第三

高山、 蒲郡、 西尾、 豊橋、 岐阜、岡崎、

東濃、西濃、知多、大垣、関、豊田、北 伊勢上野、碧海、豊川、磐田、富士宮、

浜松、遠州、しずおか、三島、静清、掛 川、富士、焼津、島田、沼津

北陸・甲信越 第四、 北越、 北陸、 山梨中央、 大光、 長 野、 福井、八十二、北國、富山

新発田、のと共栄、高岡、三条、小浜 塩沢、糸魚川 近畿 びわこ、 みなと、 滋賀、 南都、京都、紀

陽、関西アーバン

姫路、 但馬、播州、京都中央、淡路、き のくに、湖東、但陽

中国 山口、 中国、 山陰合同、 広島、 トマト、

島根、鳥取、西京

水島、 玉島、 西中国、 島根中央、萩、鳥 取、おかやま、米子、日本海、呉 四国 阿 波、 四 国、 高 知、 徳 島、 百 十 四、 愛

媛、香川、 伊予

宇和島、観音寺、愛媛

九州

鹿児島、 熊本ファミリー、 宮崎、 宮崎太 陽、 十八、 親和、 長崎、 肥後、 福岡、 南 日本、大分、筑邦、西日本シティ、豊和

鹿児島相互、高鍋、南郷、鹿児島 鹿児島興業

(備考  )1.原則として各地域ごと、業態ごとに覚書の締結順に掲載

2.日本政策金融公庫のホームページをもとに信金中金総合研究所作成

多くは、これまでの農業の世界ではあまり見 かけることのなかった 大規模化 の概念を 持ち合わせており、もはや「農家」とは呼べ ないような法人組織形態(いわゆる「農業法 人」)をとり、的確な収益管理のもと、加工 や販売などと一体化した 農業ビジネス 展開しているケースも少なくない。

 こうした気鋭の「農業法人」は、販売面や 資金調達面でもJAグループのみに依存しな い独自ルートの開拓に積極的であるケースが 多く、農業者向け融資の拡大を睨む地域金融 機関等にとっても、ビジネスチャンスの拡大 につながりやすい構図があるといえる。

 もともと地域金融機関は、農業そのものに はあまり詳しくないものの、商工業者との幅 広い取引ネットワークを有していることなど から、資金面のみならず、加工や販売などと 一体化した 農業ビジネス そのものを支援 しやすいポジションにある。加えて、近年の 地域金融機関は、基本的に中小企業の を支援することに注力していることなど から、計数管理などが喫緊の経営課題となっ ていることの多い「農業法人」の 経営 支援できるという点で、農業者向け融資の拡 大を進めるうえでプラスに作用する面も少な からずあるものと思われる。

(2 )政策的にも幅広いチャネルでの資金調 達が模索されている農業者向け金融

 ちなみに、前出の「農業改革の検討方向」

においても、「担い手を育てる仕組み」の項 の中で、「農協系統や政策金融機関が主体で

ある農業金融について、農業経営体が必要な 資本、運転資金、設備資金等をより円滑に幅 広いチャネルで調達できるような方策を検討 する。」ということも明記されている。

 例えば、農林水産省では、これまでにも

「農業法人」向け融資の実態調査などを継続 的に実施している。これらの中では、地域金 融機関において農業者向け融資を一段と活発 化させていくための今後の課題として、①融 資の活性化を支援するための情報提供(対金 融機関、対農業法人ほか)、②担保に過度に 依 存 し な い 方 式 で の 融 資 の 活 性 化(ABL

(動産担保)や公的保証の活用ほか)、などが すでに認識されている状況もある(図表6)。

近年の「農商工連携」に対する期待の高まり など、地域の農業者と商工業者が有機的な連 携を模索する動きが拡がっている状況にも鑑 みれば、地域事情いかんではあるが、わが国 農業の危機的状況打開という大局を見据えた とき、農業者向け金融の面において、今後は 地域金融機関が必要に応じてJAグループと の連携も模索していく展開(いわば金融版の

「農商工連携」)も考えられよう。

(3 )農業者サイドからの活用期待が大きい ABL

 地域金融機関が農業者向け融資を進めてい くうえで、しばしば問題点として指摘される ことのひとつに、「農地を担保として扱うこ とが困難」といった点がある。実態として農 地の転用や売買に多くの制約がある現状にお いては、事実上やむを得ないという面もある

といえるが、近年ではこうした「担保不足」

を補って農業者向け融資へ前向きに対応して いく手法のひとつとして、ABL(Asset Based  Lending:動産・債権担保融資)の活用を模 索する動きが、金融機関と農業者の双方に拡 がっている。

 農林水産省のホームページでも、ABLに ついては「借り手の事業活動そのものに着目 し、農畜産物(牛、豚、野菜など)等動産や 売掛金を担保に資金を貸し出す仕組み」と、

農業者にとっての新たな資金調達手法のひと つとして前向きに表記されている。実際に、

農業者にとっては、これまで担保として活用 しようという発想すらなかった動産(農畜産 物)が、担保として評価されるということと なれば、新たな融資枠の設定等の道が開ける

こととなるだけに、ABLに対する期待には 極めて大きなものがある。すでに畜産部門に おいては、牛の固体識別を可能とするトレー サビリティー制度(生産履歴管理)が定着し ていることも追い風となって、ABLの取組 事例が全国的に散見される状況にある。

 なお、農林水産省ホームページでは、すで に多様なジャンルにわたるABLの取組事例

(畜産、米、野菜、花、海産物など)が紹介 さ れ て い る 状 況 に あ る。ABLに つ い て は、

貸し手と借り手の双方にノウハウの蓄積不足 がみられることなどから、実務上クリアすべ き課題もまだまだ少なくないが、民間金融機 関が農業者向け融資を前向きに進めていくう え で、ABLは 今 後 も 重 要 な キ ー ワ ー ド と なっていくであろう。

(備考)㈶農林水産長期金融協会[2008]をもとに信金中金総合研究所作成

図表6 農業法人向け融資にかかる現場の状況と今後の課題等

民間金融機関の 融資の活性化を 支援するための 情報提供

農業法人等に対 する資金調達等 の実態の情報提

農業法人等に対 する資金管理手 法の確立

情報の共有化の方法に ついて

ABL の活用

公的保証の活用 スコアリングモデルの 活用

資金調達方法の改善例 を広く紹介

農業法人の視点から見 た経営のための資金管 理手法の提示

金融界、農業界の接点がない。

農業は行政の関与も大きい 一部の金融機関、農業法人は 利用。活用への期待は大きい 農業公庫モデルが稼動、民間 金融機関の活用は今後の課題

農業信用保証保険制度の銀行・

信用金庫の利用低調

直売等の実施により資金管理 複雑化

農業法人は金融機関の指導も 期待。経営把握は金融機関に もメリット

動産担保、社債発行などによ る資金調達方法実践事例あり 金融機関にとっての農業情報 不足

金 融 団 体、農 業 法 人 組 織、行 政等による情報の共有 評 価、管 理、処 分 手 法 の 整 理 と PR

スコアリングと業界情報を並 行して活用

各 基 金 協 会 の 保 証 制 度 PR、

フォロー

農業法人に対する啓蒙、研修 等指導強化

金融機関への農業情報の提供、

サポート

金融機関との情報共有の場な どでの PR

事例集等による啓蒙 農林公庫モデル活用

農業法人への啓蒙、普及 金融機関への農業情報の提供、

サポート

農業法人への担 保に過度に依存 しない方式での 融資の活性化方 策の提案

〔論 点〕 〔具体的には〕 金融機関、農業法人 〔今後の課題等〕

の現場での状況等

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