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0 1 2 3 4 5
T1δ
6 7 8 9
10図6、1鋼板の位相遅れ角
次に,より多くの磁束を誘起する方法を考える.単純に磁気抵抗の定義式を考えれば透磁率を大きく するという結論が出てくる.しかしながら,鋼板に限らず透磁率は材料によって決まる物性値であるの で,鋼板の透磁率を直接大きくすることは不可能である.
ところが,ワーキングコイル電流によって誘起される磁束はその定義上途中で途切れることなくワー キングコイルの周囲を一周する.すなわち,鋼板と鎖交し,鋼板を発熱させる磁束も,鋼板を出て空気 中を通過し,再度鋼板に至ることになる.
したがって,この空気磁路部の透磁率を上げ,この部分の磁気抵抗を下げて磁束を誘起しやすくし,
鋼板と鎖交する磁束を大きくすることによって加熱効率を向上させることができると考えられる.
具体的には,図6.2に示すとおり,ワーキングコイルに対して鋼板の反対側の面を高透磁率のフェラ イトなどの高透磁率材で覆い,裏側の磁気抵抗を小さくする.
具体的に式で書くと,高透磁率磁性材料を用いない場合,鋼板の磁気抵抗を添字S,空気磁路部の磁 気抵抗を添字Aとして以下のようにあらわされる.また,空気の透磁率は一般に真空の透磁率とほぽ等
しいため,真空の透磁率勘(=4π×104)を用いる.
幅+ゆ一 ,計誌〕Φ瑚
次に,高透磁率磁性材料を用いた場合,誘起される磁束をΦ とし,高透磁率磁性材料の透磁率μう(>両)
として,
¢一(晒ゆ・ 、1養・,1よ〕σ鯛
起磁力F,空気磁路部の磁路長1A,空気磁路の断面積SAが等しいとすると,高透磁率材を用いない場 合の磁束Φと,用いた場合のΦ の比は
σ純+駄)〔,計,淘
Φ一
鰍ヅ
μ1鉱+μ1&〕になる。
みである.
..
6.3)
ここで,鋼板の磁気抵抗兜は等しく,異なるのは,空気磁路部の透磁率歯,またはμ の部分の さらに,それらの大小関係を考えれば(6.3)式最右辺は分母が小さくなるため,全体としては 大きく,すなわち,Φ のほうがΦに比べて大きくなる.
以上より,高透磁率磁性材料を使用した場合,鋼板と鎖交する磁束も大きくなり,結果的に発熱量が 大きくなって加熱効率が上がると考えられる.
鋼板とワーキングコイルの配置 磁束は空気部を通過
高透磁率磁気回路なし
空気部の透磁率を上げて磁束を誘起しやすくする
高透磁率磁気回路付
図6.2 加熱効率向上の概念図
この検証を行うには,数値計算による方法と実験による方法があるが,本文では実際に電力を投入す る加熱実験を行って,負荷等価回路定数を測定し,かつ温度分布や温度上昇特性を計測することでフェ ライトゴムを使用する場含の効果を実証することにした.
6濫2水中加熱実験による検証
高透磁率材料として使用したのはフェライトゴムである.このフェライトゴムは,通常電磁機器に使 用される焼結フェライトに比し可僥性を有し,軽量である.また,使用したフェライトゴムは難燃性に 優れている.一般的に,高透磁率フェライトは飽和磁化やキュリー温度(磁石が磁力を完全に失ってし まう温度)等が低いものの抵抗率が高いため,通常の磁芯材に用いられる珪素鋼板に比し内部の発熱損 失が小さい.したがって,本実験で用いるフェライトゴムにっいても,内部での発熱を抑制しながら,
より多くの発熱量を鋼板内部で得ることができると期待される.
一一一
(a)焼結フェライト (b)フェライトゴム 図6.3焼結フェライトとフェライトゴム
フェライトゴムは透磁率の違うFDとSS(ともにフェライトゴムシートの販売メーカー=シーアイ化 成㈱が命名した商品名)の2種類を使用した.性質を表6.2に示す.
表62 フェライトゴム特性表
製品名
FD
SS厚さ mm
0.5 0.5交流(比)透磁率 μ 9.5 25
体積抵抗率 Ω一cm 1×106 1×1012
引っ張り強さ MPa 7.8 5.0
密度Mg/m3
3.5 3.0難燃性 UL94−VO UL94−VO
有効帯域 30MHz〜3.OGHz 30MHz〜3.OGHz
なお,これらの材料の本来の使用目的は通信機器やパソコンCPUなどの高周波クロックパルスを発射 したり,また,それらの影響を受けたりしやすい機器に対して磁気シールドを行うためのものである.
したがって,有効帯域は誘導加熱を行う周波数に対して非常に高くなっている.
難燃性UL94・VOとは?
難燃性UL94−VOとは素材の燃えにくさの認証基準であり,U194とは燃焼試験方法(試験炎を試験片の下端の中央 部分に10秒あてて取り去り,6 以上離し、試験片の燃焼時間を記録する.VLOは燃焼時間10秒以下)である。難燃 性のランクは燃えにくい方から,5V,V40,V」1,林2,HBに分かれている.
実験は,小型のワーキングコイルを使用し,水中で鋼板を加熱して鋼板に設置した熱電対で温度を計 測してその温度分布を測定した.使用したワーキングコイルを図6.4に示す.その仕様は一辺320[mm】
四方,巻数20.5[Tm】,導線間隔6[㎜1,コイノレ部分の導線長154[m】である.コイルは外径6[㎜1,内 径4[mmlの耐熱シリコンチューブの中に直径25[mm】のリッツ線を通し防水加工を施した.
磨』一1
耀湘
図6.4使用したワーキングコイル(左)とリッツ線(右)
図6.5は実験回路である。高調波対策と絶縁対策のための電源トランスを介して,インバータ入力電 圧を調整するボルトスライダが接続されている.入力電力測定のため,三相デジタルパワーメータ
(HIOKI3331POWER HiTESTR:目置電機製)を接続し,その後段に電源である汎用ハードスイッチ ングインバータを接続した.インバータの出力側には共振コンデンサ,負荷としてのワーキングコイル と鋼板,単相パワーメータ(HloKI3332PowER HiTEsTR:日置電機製)を接続して回路を構成した.
汎用ハードスイッチングインバータ主回路部
」 」
能
葱廟伽瓢誰霧霞翻
基準電圧 電圧測定電流測定 子 端子」 」
3相デジタルパワーメータ
離膓。一鑛鋤拠塑
Ro Lo ぐ一
彰繍
図6.5 実験回路図
共振コンデンサは動作周波数と直列共振周波数から導出される,以下の式((64)式)によって算出し たコンデンサの値を用いて構成した.なお,(64)式中のLoは,文献(1)において述べた鋼板面積可変実験 と同一のコイルを使用したのでこのときの実験から得られた値を使用している.
1
Csニ ー・(6・4)(2π倉)2L・
入力側の3相パワーメータは入力電力(Pin[凹),出力側の単相パワーメータは動作周波数(飾[kHzl),
負荷電流(lo[Al:実効値(㎜s)),負荷電圧(Vb[Vl:実効値(rms))の3種のデータを測定し,出力電力(Po[Wl)
はこれまでの実験的経験値からPinに0.92倍した値としている.これは力率の低い誘導加熱負荷では出
力側の単相パワーメータがワーキングコイル両端間にかかる電圧とワーキングコイルを流れる電流との 位相差を正確に算定することができず,電力を正確に算出できないことによる近似的な方法である.こ のようにして測定したfb,Io,Vbと,入力電力から算定したPoから,計算によって負荷抵抗値(Ro[Ω1),
及び負荷インダクタンス(LolμH])を求める.一般に高周波インバータによってワーキングコイルに供給 される電流,電圧はひずみを持っており必ずしも正弦波交流ではない.しかし,基本波以上の高調波電 力,それに起因する歪み波力率などを厳密に扱うことは,測定機器の能力を遙かに超えており,実際上 不可能である。そこで,本項ではパワーメータの指示したIo,及び%の値が正弦波交流であると近似
して扱い,交流理論を適用してRo,Loの計算を行っている.
ここで,負荷抵抗(Ro),負荷インダクタンス(Lo)を求める計算式は以下の通りである.
・ 負荷抵抗(Ro)
単相デジタルパワーメータの指示値のうちIo,入力電力から計算したPoを用いる.なお,出 力電力は第4章にて述べた汎用ハードスイッチングインバータの特性解析結果から,
Po=Ph1×0.92 で算定している.
R・二 2・魚5)[Ω]
・負荷インダクタンス(Lo)
単相デジタルパワーメータの指示値のうち恥,Io,fbと,5.5式で算出したRoを用いて,
㎞二厚、1び
2π。R)●1000
..(6.6)[μHl
となる.
以下に実験装置の概要を示す.図6.6のようにプーノレに400×4001㎜]の鋼板を沈め,加熱を行った.
下からブロック,鋼板,フェライトゴムを張ったワーキングコイルの順に配置した.