◎…生徒たちにも日が暮れるまで残業をさせ、かなり無理をさせてきた。そのため 昨年の4,000枚にくらべ倍以上を印刷することはできたが、製品はけっしてよいも のとはいえない。はたして年賀状印刷という作業は職業指導の題材として適当な ものなのであろうか。私はいろいろな面からこの作業についてよく検討してみな くてはならないと痛感した7)。
個々の生徒の作業内容は作業の進行に伴って変化し、生徒の状態を見ながら臨機応 変に対応している様子がうかがわれる。長期的な作業なので、生徒も次第に馴れて きており、自主的な活動も見られる様になっている。教師自身がこの作業内容につ いて習熟しておらず、生徒と共にがんばろうという姿勢が見受けられる。しかし、
その一方では、製品としての完成度や数量という点で、学校教育の中で取り上げる 教材としての疑問が教師自身にも芽生え始めている。これは、中学校における職業 教育の根幹となる問題であろうと思われる。
この学習における目標についての反省として、以下の記述が見られる。
①理解
印刷活動に支障がない程度の理解はできたようである。しかし、印刷作業が印刷 工を養成することを目標としていないのであるから、ここで得た知識が他の場面で 使えなければならない。多くの活字を扱いながら、ただ字形の弁別だけに終わらせ たのではないだろうか。もっと文字を読ませる指導をしなければならない。指導の 面でくふうすれば十分効果をあげることができたと思う。
②技能
…印刷の失敗によると校正の不正確が最も多い。これは教師がよく落着いてすれ ば解決することであるが、生徒の中に校正係を作り、ゆっくりやらせればかえって 正確にできるのではないかと思う。
③態度
目標に示していることは、3年Kをのぞいた5名は、だいたいできだしたように 思う。T(男)、1(女)の母が「毎日遅く帰って来ましたが、とてもはりきって やっていました。あのようなことは今まで見たことがありません。」と言われた が、2人のこのような意気込みがあったために多くの仕事をやりとげることができ たのだと思う。
1(女)が失敗を指摘されると次の日に欠席したり、他の人の仕事まで手を出して 自分でやってしまうような態度は問題であり、むしろ作業能力は劣るがT(男)M
(女)のほうが職場においてかわいがられ、安定した位置を保つことができるだろ う。今後1のような態度にはよく気をつけて指導してゆかなければならない8)。
生徒の能力と社会的要求との狭間でいかに個々に適した教育を展開するかという ことで苦慮している様子がうかがわれる。それぞれの作業内容に対しての目標と反 省ではなく、 「年賀状の印刷」という作業全体の反省なので、やや漠然としてお
り、何が個々の生徒にとって良かったのかが明確にされていない。しかし、結果と して保護者の理解が得られ、生徒に何らかの成長が見られているという点におい て、適切な教育がある程度施されていたと解釈することが可能である。
(3)倉敷市立玉島東中学校の場合
以下は、1968年の第7回岡山県特殊教育研究大会第2分科会での発表(「能
力差に応じた授業形態」)による資料である。まず「問題の所在」において次の様 に記されている。 「現時点における特殊学級生徒は能力差が激しくIQ 100から測 定不能の生徒まで混在している1この生徒を一人の教師が同一時間に同一場所で能 力差がある生徒個々に満足を与え、個々の能力を伸ばすにはどのような授業をしたらよいかが日々の問題点である。…誰にでも理解でき、誰にでも指導できる合理的 な指導形態はないものか」9)これは多様化する現在の特殊学級が抱える問題と近似
している。玉島東中学校では仮設として以下の2点を取り上げ研究を試みている。
(仮設)
1)等質グループを編成し、能力に応じた内容を指導法に工夫、配慮を加えて学習させれ ば良いのではないだろうか。
2)教材のねらい、内容によっては個別学習を重視し指導法を研究すれば指導の徹底が期 せるのではないだろうか。
教育課程の年間指導計画
立案の根拠 ・養護学校学習指導要領+指導内容全+α
・使いやすく、教師の自由意思でどのようにでも展開できる一覧表にした。
(4月)
行事
始業式 入学式
基底題材 単元 私たちの学級 ・入学式 ・自己紹介
教 科 学 習
国
◎報告
語 こくご
・言葉使い ***p.4
・住所氏名
・話しが正し く聞ける
社 会
・良い参加の仕方
◎話し合いの仕方
◎もめ事の決め方
教 科 学 習 道 徳 日常生活 音 楽 おんがく 美 術 家庭・作業 体 育
・校歌 ***
E春の歌p.6,7
・教室を飾る 摎F達の顔
・日常のあいさつ E食事の作法
・整列
搨?w校体操
・明るく楽しい w級づくり
i共同連帯)
i男女の理解)
i親切)(自主)
・あいさつ E友達の呼び方
・印…生活単元学習でおさえる。 ◎印…教材単元学習でおさえる。
生活単元学習の授業形態 4月
生活経験
新学期
新学期
予想される 学習活動 L新しい友達 とあいさつ をする。
目標 入学進学の喜びを感じ楽しい学級や学校をつくるために きまりを守って集団生活にいっそうなれるようにさせる。
指 導 内 容
低グループ
・人の前で名前をは っきりと言わせる。
中グループ
・自分の名前をはっき りと言わせ書かせる。
高グループ
・自分の氏名、友達の 氏名を言ったり書い たりさせる。
関連教材
学あいさつ 友達の 呼び方
生活経験 予想される 指 導 内 容 関連教材
w習活動 低グループ 中グループ 高グループ
始業式
?w式
2.入学進級の
謔?アびを bし合う。
・出身校ともとの学 奄フ先生の名前を
セわせる。
E人の話しを聞くよ
、にさせる。
E校歌を知らせ聞
「て歌えるよう
@にさせる。
・左に同じ
E自分の心がまえを話 ウせる。
E校歌を知らせ歌詞 読んだり歌った
@りさせる。
・自分の家のことにつ
「て二三紹介させる。
E希望や抱負を簡単 ノ話させる。
E校歌の歌詞を読ませ テ唱して一人で歌え
@るようにさせる。
国言葉
@づかい Z所氏名 w道
セるく楽 オい学級 テくり
@春の歌
ケ校歌
以下省略 教材単元学習の授業形態実践例
氏名 性別
CA
IQ グループ 実 態A
3女 16.0 40 低 10までの加減がやっとできる。買物は ナきない。B 3男 15.0 55 〃 20までの計算ができる。九九は全部お レえている。
C 1男 12.8 60 〃 20までの計算がやっとできる。簡単な ヵィはできる。
D
1男 12.5 76 中 2位数の加減はできる。E 3女 15.1 77 〃 全ての加減ができ、九九も覚えた。
(以下4名省略)
単 元 指 導 内 容 時 間
低グループ(A・B・C) 中グループ(D・E) 高グループ(F・G・H・D かさの
vり方
水、砂、大容器、教具の準備 小容器の準備 四角と円筒の容器を与え物差 ナ計り、CCの計算をする。
i○計算方法の指示)
7分
大容器へe桝で計って入れな ェら数を読む。
i00の単位をつかます)
dG桝で計ってできる セけ正確に読む。
計算(自習) 10分
○印は教師の指導位置:
以下省略
結果 ◇資料、教具、素材の活用と配慮が大切
◇自主学習の習慣づけが大切
◇能力差にあった興味づけが大切
◇グループ別指導時間の配慮が大切
個別学習(ドリル学習)実践例 単元(計算)
課題 ・小1〜6までのドリル帳を準備し、能力に応じて1枚ずつ与える。
・高(FIG)、低(ABC)には教師が考えた課題を与える場合が多い。
・特にABCには日常生活より取材した課題を与える。
ドリル・時間内に問題解決ができないときは宿題とする。
・個人別能力表を基盤にして指導を進める。
・国語その他の個別学習にしても同型を利用している。
・同一時間内で個々に教科を変えて指導している場合もある。
・低IQにも各段階のことを少しはさせる。
分数利率歩合百分率
除 法 F I G 乗法少数九九
H
三位数以上の加減 20以下の加減 D E
A B C
作業学習の授業形態
生産学習A型同質グループの班編成 B型同質+異質の班編成
結果 ◇高IQは非常に伸びた ◇中IQもよく伸びた ◇低IQは進まない
◇自主学習の習慣化が必要 ◇時間配慮は無用であった ◇低申IQ生徒の興味の工夫が必要
低グループが独立した形になり協力態勢がとりにくい。
リーダーにより協力態勢ができ能率的。見まねで技術向上。
製作学習 A型 ねらい(完成品)は同じで内容差をつける。教師の補助が必要。
B型 素材が同じで製作品をかえる。 自主と興味がわいた。
C型 素材も製作品もかえる。 教師の負担が重い。
↓
計れない、読めない、計算できない等の抵抗ができる。これは教材単元でおさえる。
各形態を時期により組み合わせることによって効果があった。
結果と考察
結果1)段階別に要求度を異にした展開表のような細案が必要。
2)教材のねらいや内容によっては能力別編成や個別指導の授業形態を取り入れるのが良い。
3)一斉学習、個別学習をふさわしい場に取り入れる必要がある。
4)指導のために下記のような配慮と工夫がなされて授業を進めなければならない。
・時間的配分 ・自主学習の習慣化 ・能力差に応じた多様な課題の準備 ・資料、教具の充実と充分な活用 ・発問の工夫
考察
能力差に応じた授業形態はこうだという決定的な形態は存在しない。児童生徒の実態に応じてあら ゆる分野でその場に合った授業形態を取り入れ、児童生徒の学習効果を高めることが大切ではなかろ
うか10)。
「今後の研究課題」として「中学校は教科担任制であるから教科学習に主体性を持 たせた授業形態を考えたならば系統性、段階性を踏まえた合理的な学習形態が生ま れるのではなかろうか。」11)とし、形態例として以下の図を示している。
(問題解決学習) (独立教科) (作業教科)
(用具教科) (日常生活指導)
(『第7回岡山県特殊教育研究大会要項』p.511968)