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伝達内容 メンセージー メソセージ 伝達内容 〔経路〕
」一一一一一一一一一一一一・一一一一 kコンテクスト〕一一一一一一一一一一一一一一」
出典:池上嘉彦(1984)『記号論への招待』岩波書店,39ページ。
図表3−1で示されている伝達の仕組みは,発信者と受信者,伝達内容とメッセージ,
そしてコードの関係が次のようになっている。まず,発信者がコードを参照しながら伝達 内容を「記号化」してメッセージを作成する。そして,何らかの経路を通ってそのメッセ ージが受信者に届けられる。受信者は受け取ったメッセージを解読するためにコードを参 照しながら伝達内容を再構成し,意味を理解する。
これらの関係を先に述べた言語使用者が言語を用いるさいに築像する段階と,言語表現
の受け手がそれを解釈する段階との違いにあてはめると次のようになる。まず,図表3−1 における発信者がコードにしたがって伝達内容をメッセージに記号化する。この記号化の 段階が言語表現としての築像の段階である。そして,受信者が受け取ったメッセージにた いしてコードをもとに解読することになる。伝達内容を理解する段階が解釈の段階である。
このように伝達内容からコードを媒介としてメッセージ化される段階とメッセージを受信 してコードを参照しながら伝達内容を解読する段階では異なることが明らかになるのであ
る。
しかしながら,伝達における一連の仕組みのなかで,コードだけではメッセージの意味 を完全に把握することができないこともある。つまり,コードを参照するだけでは理解で きないメッセージがあるのである。そのような場合には,理解できないメッセージを理解 するために受信者はコンテクストを参照するのである[池上(1984),47ページ]。っま
り,記号(言語)が用いられた状況などを把握するのである8。状況などから判断して,
記号(言語)に込められているメッセ・・…ジの意味を理解するのである。
図表3−1における伝達の仕組みは,会計言語についても同様に当てはまると考えられ る。メッセージの発信者である会計情報の作成者がコードにしたがってメッセージを作成 する。ここでコードとは会計基準などであると考えられる。そして受信者である会計情報 の利用者は,コードを参照しながらメッセージの意味を解読する。また,コードに照らし 合わせただけでは理解できないメッセージについてはコンテクストを考慮しながら,その 意味を理解しようとするのである。
大下(1990)は,このような関係を「会計上のことばの意味は,その対象から生ずるの ではなく,ことばの使用主体が使用のメカニズムを通じて意味を付与する」[大下(1990),
99ページ]と述べている。意味を付与する側の「ことばの使用主体」とは,財務諸表を中 心とする会計情報の作成者のことである。そして,「使用のメカニズム」とは,複式簿記シ ステムを用いた会計独自の会計言語の用い方だと考えられる。このなかに会計基準に準拠
した会計言語の用い方は含まれないと考えられる。会計基準は「使用のメカニズム」とい うよりも,むしろ「コード」として理解した方がよいと考えられるからである。
「使用のメカニズム」を通じて意味を付与するとは,会計情報が複式簿記システムを通 じて表現されている情報であるのか,あるいは単に企業活動に関する情報を注記などで開 示した情報であるのかによって異なる意味が与えられていると考えることができるのであ
る。通過している使用のメカニズムが異なるからである。つまり,大下(1990)では,メ
ッセージの発信者側に焦点をあて,どのように会計言語を用いているのかということを通 じて,会計言語の意味を理解する必要があるというのである。
しかしながら,大下(1990)では,会計情報の受信者側からみた場合に,使用のメカニ ズムの違いによる会計言語の意味の違いをどのように理解するのかについては取り上げら れていない。そこで次にこの点について考察していくことにする。
複式簿記システムを通じて用いられる会計言語は,財務諸表において報告されるもので ある。これはFASB(1984)のSFAC第5号における認識の範囲と同じであろう。つまり,
貸借対照表,稼得利益および包括的利益結合計算書,キャッシュフロー計算書および株主 持分増減計算書の4つの財務諸表で報告されている情報だといえるのである。認識対象と なっている4つの財務諸表上で報告される情報とそれ以外に開示されている情報とのもっ とも大きな違いは,複式簿記システムを通っているのか否かという点だと考えられる。財 務諸表に載せられている認識情報は複式簿記システムを通った情報であり,それ以外の情 報については,必ずしも複式簿記システムが必要とはされないからである。
情報の提供方法の違いは言語の使い方が異なるということである。そして言語の使用が 異なるということは,語用論的に考えれば言語の意味が異なることを示すのである。これ を会計にあてはめて考えれば,複式簿記システムを通るかどうかということは,情報がど のように提供されているのかということである。つまり,言語の使われ方が異なるという
ことである。言語分析的アプローチによれば,言語の使い方の異なる認識情報と開示情報 は異なる意味内容を有していると考えられるのである。また,永野(1992)においては,
「注記などが会計外の言語体系による認識である」⊂永野(1992),72ページ]と述べて いる。そして,財務諸表上の認識情報とそれ以外の開示情報とは異なる言語体系に依拠し ており,両者を区別することが必要であると主張している。認識情報と開示情報の対象範 囲の差違を明確に示しているのがSEAC第5号における図表3−2である。
認識情報は4っの財務諸表に記載される情報に限定されており,それ以外の情報は開示 情報として扱われている。第7章で明らかにするように,このような認識情報と開示清報 の差違を実証した研究が最近ではアメリカなどで行われている9。そこでは,認識情報と 開示情報の違いが,情報を提供している企業の株価にどのような影響をおよぼしているの かという観点から検証されている。つまり認識情報と開示情報では株価形成にたいする有 用性に差違があるのか否かを明らかにする研究がアメリカを中心として行われているので
ある。それらの研究によれば,株価形成にたいして認識情報と開示情報では差があること
図表3−2会計における認識情報と開示情報の対象範囲
投資、与信およびこれに類似する意思決定にとって有用なすべての情報(諸概念ステートメント第1号par.22,脚注6c:一部引用)
財務報告(諸概念ステートメント第1号pars 5占8)
現行のFASB基準によって直接に影響を受ける領域
定に聞する諸 メントの範囲
・貸借貞;「蠣{表
・稼得利益および 包括的利益結合 計算書
ロー計算書
・株主持分増減誹
財務請表への注記
(tsよび財務諸表に挿入
する方式 二よる開示)
例:
。会計方針
。偶発$象
・棚卸資産の評価方法
・発行済株式数
・代替的測定値
(歴史的原価で繰り越さ
補足情報
例:
・価格変動の開示
(FASBステートメント 第33号く改訂版〉)
・石油・ガス埋蔵量情 報
(FASBステートメント 第69号}
s5−8)
その他の財務報告 の手段
例:
示 ・経営者の討識と分析
トメント ・株主への挨拶
版〉)
蔵量情 トメント
その他の情報
例:
・SEC Form における競争および
受注に関する討議 (SECレギュレーシ ョンS−K}
・アナリストの、報告書
・経済統計
・会社に関するニェー ス詫己事
出典:FASB(1984),Sta tement ofFinaneialAccounimg Concepts No. 5 」Beeog utfon and Measw emθnt」如 伽ヨη磁18狛如1ηα1おo西9肥加θsθ翫伽pz!65θ5, FASB, Dec.(平 松一夫・広瀬義州訳(1994)『FASB財務会計の諸概念(改訳新版)』中央経済社).
が明らかにされている。
本節では,認識情報と開示情報の意味の違いを考察するさいには,後期ウィトゲンシュ タインの言語観によって捉えることが必要であることを確認した。後期ウィトゲンシュタ インの言語観は,会計を築像システムとして捉える考え方と結びつくものであり,言語分 析における語用論的アプロー一一・・チと関係するものである。言語の意味を言語の使用状況によ り考察するという語用論的アプローチによれば,異なる使用のメカニズムを通る認識情報 と開示情報のもつ意味は,異なることが確かめられた。築像システムにより会計を捉えた 場合には,語用論的視点に立脚し,言語の使用状況も含めたうえで言語の意味を考察して いくことが必要である。
4.言語分析と資産負債観・収益費用観