ハII,,
SP℃FX,,
=β。+β1
+β2
十ε・,,
BVE,,
BVE,,
BVE,,
(14)
(14)式においては,β1については(12)式と同様である。β2については公正価値が 企業価値の形成に有用であるとする先行研究より0ではないと予測することができる。し かしながら,その符号については予測が困難である。公正価値評価差額については,評価 差額の部分が超過利益であると考えられたが,公正価値評価額についてはそのかぎりでは ない。SECFVに含まれる超過利益の部分がプラスであれば,β2の値もプラスだと考えら れるが,公正価値評価額のなかに超過利益が含まれていなければβ2の値はマイナスとな
る可能性を否定できないからである。
4.本研究における検証方法
本節では第2節や第3節で取り上げた検証モデルを用いて,実際に分析するさいの検証 方法について説明することにする。データを調査するにあたっては,まずデータにたいし てモデルが成立しているのかを確かめることにする。モデルの成立についてはF検定を行
うことにより確認する。
F検定とは,モデルの説明力をみるR2の統計的有意性を検定するものである。線形回帰 において算出される回帰平均平方を,その誤差平均平方で割ることによって得られるF値 が限界値よりも小さければ,モデルのR2は統計的有意性を確保しえず,そのモデルは成り 立たない。したがって,F検定においては, F値の大きさを確認することにより, R2の統 計的有意性を検定することになる。
F検定によりモデルが成り立っていることを確認したあとに,制度変更により有価証券
公正価値情報の有用性が向上しているのか,さらには認識情報と開示情報との間で有用性 に差違があるのか否かを調査していくことにする。
有価証券公正価値情報の有用性がどのように変化しているのかを観察するにあたって は,アメリカにおいて多く行われている会計情報の有用性の時系列変化を検証した研究5 で用いられた有用性変化の尺度を参考にしていく。
アメリカにおける会計情報の有用性の時系列変化を扱ったものとして,第5章で扱った
CoUins, Maydew and Weiss(1997), Francis and Schipper(1999), Brown,][ρand】隣ys
(1999),Ely and Waymire(1999)およびLev and Zarowin(1999)の研究をあげるこ とができる。これらの先行研究においては,会計情報の有用性の変化を測る尺度としてモ デルのR2の値あるいは変数の偏回帰係数の大きさ6が用いられている。
制度変更の影響や認識情報と開示情報とで有価証券の公正価値情報の有用性に変化が あったのか否かを確認するためにまずはモデルのR2の値比較することにする。モデルの R2の値とは,モデルの当てはまりの良さを測る基準として用いられるものである。それは,
従属変数の変動のうち,独立変数の回帰方程式により説明(決定)できる変動の割合を示 している。その値は0から1までの値をとり,独立変数が従属変数を完全に説明している ときは1となる。調査対象期間の各年度(あるいは各期間)にたいしてクロスセクション 分析を行い,そのR2の値を時系列でみた場合に,大きくなっているか否かによって有用性 の向上を判断するのである。
しかしながら,モデルのR2の値を有用性変化の尺度として用いることには問題がある。
R2の値は従属変数の変動のうち,モデルに組み込まれた独立変数が説明できる割合を示し ている。そのためR2の値は,分析モデルに含まれていないものにより影響を受けるという 問題があるのである。R2の値は株主持分価値を検証にさいして用いるモデルに含まれる独 立変数によって説明できる割合に過ぎないからである。したがって,検証モデルには含ま れていない事象が株主持分価値に影響をおよぼした場合には,その事象が原因となってモ デルの説明力を低下させる可能性が残るのである。つまり,R2の値を有用性変化の尺度と して用いれば,モデルに組み込まれなかった要因によってもR2の値は変動する可能性があ るのである。
そこで,本研究では先行研究が用いていたR2の値のほかに,有価証券の公正価値に関す る偏回帰係数の値を用いることにする。偏回帰係数は,モデルに含めた変数ごとに算出さ れるものである。これは,他の独立変数の影響を取り除いたときの特定の独立変数が,従
属変数におよぼす関係の強さを表すものである。偏回帰係数であれば,モデルのなかで従 属変数に与える影響の変化を観察することができると考えられる。その意味では,モデル に含まれた変数以外のものによっても影響を受けうるR2の値の問題点を緩和できると考 えられる。さらに,本研究において検証したいのは,モデルの有用性ではない。有価証券 公正価値情報の有用性が制度変更によりどのように変化したのかということである。この
ことからも,本研究では有価証券公正価値晴報の偏回帰係数の値を用いて,それを有用性 変化の尺度とすることにする。
検証にさいしては,制度変更前後ともに同じモデルを用いることにする。このように同 じモデルを用いて比較することにより,制度変更が有価証券の公正価値情報におよぼす影 響を観察することができると考えられる。個別データを対象として補足期間・注記期間・
本体期間を比較した場合にも,連結データを対象として各年度の調査結果を比較した場合 にも,有価証券の公正価値情報の有用性が変化していれば,結果として回帰式における偏 回帰係数も変わると考えられるからである。
5.むすび
本章では,本研究で検証するさいに用いるモデルとその検証方法について取り上げた。
本節では,使用モデルをまとめるとともに,検証方法についても確認することとする。
第2節では,有価証券の公正価値情報の有用性を検証した先行研究と同様のDCFモデ ルをベースとした検証モデルを用いることを明らかにした。DCFモデルをべ一スとして検 証をするさいには,わが国の有価証券の公正価値情報の入手可能性をかんがみ,有価証券 の公正価値評価額をモデルに投入するものと,公正価値評価差額を用いるものの2つのモ デルにより検証する。
つづく第3節では会計情報の有用性の時系列変化を扱った先行研究と同様の割引超過 利益モデルを用いた研究も行うことを明らかにした。アメリカではLynn(2000)の研究
により割引超過利益モデルをべ・・一・・スとして有価証券の公正価値情報の有用性が検証されて いる。本研究でもLynn(2000)の研究にならい割引超過ROEモデルを構築して検証す ることを述べている。
これらの2つのタイプのモデルを用いて検証することにより,有価証券に関する会計制 度の変更の影響について観察した結果がより強固なものになると考えられる。そして第4
節では,検証方法としてモデルのR2の値や有価証券の公正価値情報に関する偏回帰係数を 年度ごとや開示報告方法ごとに用いるにより有用性の変化を観察することを明らかにした。
[注]
1 吉田他(2002)の研究では,5月末日の株価を従属変数として,銀行が保有する有価 証券の公正価値情報の有用性を検証している。吉田他(2002)の研究では,1990年か ら1999年を対象としており,本研究の調査対象と重なる部分が多い研究である。しか しながら,吉田他(2002)の研究と本研究では大きく異なる点が2つある。1つは,吉 田他(2002)の研究では割引超過利益モデルをもとにしたモデルを用いていないという 点である。また,もう1つは,吉田他(2002)の研究ではパネル分析が行われていた点 である。
2 クリーン・サープラス会計とは,「株主持分の簿価のすべての変動額は,利益あるい は配当のいずれかにおいて報告される」関係をみたす会計のことである[Feltham and
Ohlson (1995), P.694]。
3 ColHns et飢(1996)やLynn(1997),井上(1998)などの先行研究では超過利益 の変わりに当期純利益を代替値として用いている。
4 制度変更により会計情報の有用性がどのように変化してきたのかを検証した先行研 究と乖離しない研究を行うこともできるのである。
5 アメリカにおいては投資家などにたいする会計情報の有用性を向上させるために,長 期間にわたって会計基準の改変が行われている。しかしながら,企業を取り巻く経済環 境はめまぐるしく変化しているにもかかわらず,会計基準の設定には時間がかかること から,投資家にとって有用な会計情報が必ずしも提供されていないとの批判が行われる ようになっていた。詳細については第5章を参照のこと。
6 このような研究によれば,アメリカでは有用性は上昇しているとする研究結果がある 一方で,低下しているとするものもあり,それらの検証結果は一貫していない。