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高齢者専用住宅における震災時の住生活調査

豊8

第2節  高齢者専用住宅における震災時の住生活調査

     の結果及び考察

2.1. 調査対象者の概要

1) 属性

 調査対象者の性別、世帯構成及び年齢構成について、まず回答者の男女比は、

4対6で女性の方が多く、住宅別では、シルバーハウジングでは男女約半々であ るのに対し、インナーシティ住宅では圧倒的に女性が多くなっている。

 また、性別世帯構成については図1.1.に示すように、単身女性が過半数を占め、

次いで夫婦のみの世帯が約3割、単身男性は1割強となっており、単独世帯と夫婦 のみの世帯の比率は6対3で単独世帯がより多くなっている。住宅別では、シル バーハウジングでは単独世帯が約6割、夫婦のみの世帯が約4割であるのに対し、

インナーシティ住宅では各々約7割、2割と単独世帯の割合がより高い。なかで も単身女性が圧倒的に多くなっている。また、残り1割のその他の世帯には親子 やきょうだいでの居住を含む。

       N=157

SH  IH 合計

20S6 40S6 60Si 80S6 100%

■単身男性  国単身女性  口夫婦のみの世帯  園その他

面1.1. 対象者の性別世帯構成

 年齢構成は、両住宅ともほぼ同傾向であり、65歳以上75歳未満の前期高齢者が 約6割を占め、平均年齢は71.2歳である(図1.2.参照).

N=166

SH  IH

合計

 22

26. 5

OS6 1096 2096 30Y6 40S6 50% 6096 70% 80S6 9096 100S6

■65歳未満  園65 》74歳  ロ75歳以上

図1.2. 対象者の年齢構成

2)健康状態

 対象者の健康状態に関して、日頃の体調、持病の有無及びその種類について調

べた。

 その結果、まず日頃の体調については「比較的良い」と答える者が両住宅とも 過半数を占めているが、「体調を崩し易い」と答える者もシルバーハウジングに おいては約4割、インナーシティ住宅においては約3割見られる。さらに寝込むほ

ど健康状態のよくない者も、インナーシティ住宅で約1割見られる。

 また持病については、約6割の者が「持病有り」と答えており、住宅別では、シ ルバーハウジングでは約6割、インナーシティ住宅では約5割とシルバーハウジン

グの方がより多い。

 持病の種類は図1.3.に示すように、その上位3項目には我が国の成人病の代表 格である高血圧や心疾患と高齢者の特徴を示す腰痛があげられている。また、や

はり持病のある人に体調を崩したり、寝込むことのある人が多くみられる。

N=109

SH

IH

合計

20 40 60

轍灘

80 100 120 140 160

■高血圧   困心疾患 回泌尿器系  国腰痛

口循環器系  ■呼吸器系  團消化器三 国関節痛等  ロ神経痛等  ■その他

図1.3。 対象者の持病の種類

3) 生活自立状況および避難能力

 高齢者の生活自立能力として、災害時など緊急の避難行動と最も直接的に影響 すると考えられる外出時の歩行能力や非常時の避難能力、また避難誘導指示の必 要性について調べた。

 まず、日頃の歩行能力については図1.4.に示すように「何も使用せず自力歩行 可能」な人が76.8%を占めているが、残りの4分の1の人は杖などを使用しなけれ ば歩行が困難である。住宅別では、シルバーハウジングに車椅子使用者が4.2%(5 名)見られる。

      N=168

SH

 IH

合計

096 IC 6 2096 3096 409S 5096 6096 7096 8096 90% 1009S

■自力歩行可  ロ杖使用  囹車椅子使用  園その他

図1.4. 対象者の歩行能力

 災害時の避難能力については、夜間の避難は自力では難しいという人も2割強 みられ、避難の際の身体機能における不安な箇所としても足腰の弱化をあげるも のが約6割と多く、次いで視力や聴力の低下をそれぞれ25.5%、23.6%の者があげ ている。このことより、災害時の避難行動には目頃の歩行能力が大きく関係して いると言える。

 また避難誘導の必要性について調べた結果では、避難の際の誘導指示を必要と する者は約6割強と多く、杖・車いすなどを使用している者は勿論のこと補助具な

しに歩ける者でも指示を必要としている。つまり日常生活の家事などは一応自立 できていても、非常時における避難行動に対しては入居者の過半数の者が不安を もっており、避難誘導の指示者を必要としていることがわかる。

2.2. 地震発生時の行動及び安否確認

1) 地震発生時及びその後の行動

 地震発生時およびその後夜が明けるまでの間の行動を複数回答で調べた。その 結果、地震発生時「布団の中で目覚めていた」人が約3割、すでに「起きていた」

人が約2割見られ、その後揺れがおさまるまでは「布団の中でじっとしていた」人が 4割強、「自宅から外へ出る準備をした」人が2割強、「家具の下敷きにならない所へ 移動した」人が2割弱みられ、その他には「仏様に祈っていた」、「タンスなど家具の 下敷きになっていた」などがあげられていた。

 そして揺れがおさまって夜が明けるまでの行動で多かったものには、停電は1 団地のみであったため「ラジオやテレビをつけた」が3割強と最も多く、「自宅でじ っとしていた」、「照明具を探した」が各々2割強、「自宅から外へ出た」及び「その準 備をした」は各々約2割つつであった。しかし、車いす使用者に関しては一人も外 へ出た人は見られず、たとえ外へ出て様子を見たくてもあるいは避難したくても、

エレベータは動かず介助者もいない状況の中一人では無理であったことがうかが

える。

 地区別に地震発生時の行動をみると、夜が明けるまでの行動に大きな差が出て おり、比較的被害の少なかった北区では「自宅でじっとしていた」が46.9%と多い のに対して、他の地域では23.5%となっている。また「自宅から外へ出た」者に関 しては他地区で22.4%であるのに対し、北区ではわずか3.1%のみであった。この ように被害の大きさにより震災時の行動には差が見られた。

 また照明具としては「懐中電灯」を使用した者が約8割と多く、懐中電灯の準備 率が高いことがわかる。

 なお火災対策としては、「ガスの元栓を確認または締めた」が約6割と多いが、

「火災対策を意識していない」人も約2窪みられ、火災訓練等の必要性も感じられる。

 また緊急通報装置の利用については「利用した」人はわずか5.3%のみで、装

置の存在さえ知らなかった人が約1割見られた。その後のヒアリング調査時にも、

「まだ自分には必要ない」という人や「使い方を知らない」、 「正しく理解して いない」人等が多く見られ、緊急通報装置に対する認識は低く緊急通報装置の意 味をなしていない様子がうかがわれた。

 緊急通報装置の使いやすいタイプとしては「壁にとりつけたボタン型」が約4 割と多くあげられているが「コードで延長してあるボタン型」、 「携帯型」等も 約2割強みられ、これらのことをふまえて今後はより高齢者に理解し易く、使いや すい緊急通報装置の開発や、現在ある緊急連絡設備の正しい使用方法の説明が必 要であると言える。

2) 安否確認

 シルバーハウジングはもともと生活援助員(LSA)による安否確認が完備して いることがその特徴とされているが、これが災害時どの程度機能したのか、また インナーシティ住宅では日常そのようなシステムは考えられていないが、震災時 の安否確認はどのように行われたのかについて調べた。

N=162

SH

 IH

合計

20 40 60 80 100 120 140

■誰もいない

■別居の親族

團隣人      □同町宅内の人  SS・LSA又は管理人 ロ近隣地域の人  Nその他

図2.1. 対象者を安否確認した人 P〈0.O1

 その結果図2.1.に示すように約9割の者は無事かどうか確認してもらっている が、残りの約1割の者については誰からも確認されていないという問題点が明ら

かとなった。

 一方誰から安否確認を受けたかについては「同じ住宅内の居住者」からが

32.7%と最も多く、次いで「親族」からが27.8%、「生活援助員(LSA)又は管理人」

からが26.5%の順になっている。住宅別にみると、シルバーハウジングではLSA からの安否確認が36。3%と最も多くなっているが、約3人に1人の確認にとどま っており、震災時にはLASによる安否確認は実質上機能していなかったことが明

らかになった。

 特に今回調査したシルバーハウジングは、福祉施設合築型の高齢者のみの住宅 と一般公営住宅内にある一般住宅混合型とに大別されるが、LSAによる安否確認 は図2.2.に示すように福祉施設合築型では33.0%、一般住宅混合型では44.1%

と、LSAが他の福祉施設と兼務の前者の方が第一次的安否確認はより出来ていな かったことがうかがえる。

       N=113

SH専用

SH・一般混合

20 40 60 80 100 120 140

■誰もいない   園隣人      ロ同一宅内の人  SS・LSA又は管理人

■別居の親族   ロ近隣地域の人  国その他

図2.2. SH専用・混合住宅別安否確認 P<0.05

 また入居者自身の方から安否確認した人は、「親族」が43.2%と最も多く、次い で「同じ住宅内の居住者」が30.2%となっている。このことより緊急時の安否確認

は、距離的にも最も身近である同住宅の居住者間で多く行われていることがわか る。これは入居者の中で健康状態のよい一部の人が、多くの入居者の住戸を訪ね安 否確認をしたものと思われるが「誰からも安否確認されなかった」という者も約

1割見られ、この点は非常に問題であると言える。しかし車いす使用者に関して は「住宅内の人」や「親族」によって全員安否確認されていた。

      N=162

SH  IH

合計

20 40 60 80 100 120 140

■誰もいない  国隣人     □同住宅内の人 園別居の親族   團近隣地域の人  ■その他

SS LSA又は管理人

図2.3. 入居者自身が安否確認した人