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5 臓器硬さ検出

5.5 高感度硬さ検出センサの製作

図 5.9に高感度硬さ検出センサのプロセスフローを示す。本デバイスの製作工程は大きく 分割すると3つの工程で区分される,1つ目は,SOIウェハ活性層上に拡散層を形成し,加 重検出回路を作成する。2つ目は,SOIウェハ支持基板層をICP-RIE装置を用いることで垂 直異方性エッチングし,シリコンダイヤフラム,接触子,基準面構造をそれぞれ形成する。

最後に,紫外線硬化樹脂による構造を回路上に形成することにより,実装時のチャンバー構 造および,配線取り出し口を確保する。

(a) 荷重検出回路の形成

(b) シリコンダイヤフラムおよびシリコン接触子の形成

(c) 配線取り出し構造の形成

図 5.9 高感度硬さ検出センサの製作プロセスフロー

Silicon

抵抗・配線

Silicon

接触構造

Silicon

SU-8

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5.5.2 センサデバイスの一次試作

前節のプロセスによってセンサデバイスの一次試作を行った。プロセスを進行する際,以 下の問題が発生し,まず,ICP-RIEによるSiエッチングを行った。エッチング自体は問題な く終了したが,ICP-RIE終了後に,回路面の保護膜を硫酸過水によって除去する際,レジス トが変質し除去できない部分が現れ,その部分の電気的なコンタクトを取るのが難しい状 態となってしまった。この問題の対策としては,レジストの除去方法をリムーバーやRIEに 変更することで,改善の可能性があり,二次試作においては,より回路面へのダメージが少 ない,リムーバーでの除去を行うこととした。本来の工程では,この後中間酸化膜の除去を 行うが,BHFによるエッチング中の保護膜剥離の可能性を懸念して,省略した。

続いて,SU-8 による支持基板形成工程を行った。ここでは,スプレーコータを用いて

180µm程度のSU-8膜を形成し,電極取り出し口の形成を行うが,リソグラフィーの合わせ

工程時に,SU-8 膜の膜厚によって,基板表面と,マスク表面に同時に焦点を合わせること ができず,アライメントの成功率が減少した。この問題は,基板裏面のパターンにアライメ ントマークを設けることで,各表面に同時に焦点を合わせられるようになるため,解決が可 能となる。また,露光後の現像工程において,感度向上ため直径を1490µm以上に大きくと ったダイヤフラムを持ったデバイスは,現像時の超音波振動にダイヤフラムが共振し,半分 以上が破損する結果となった。現像時に超音波を使用しないとそもそも現像が完了しなく なるため,次回の設計に反映する必要がある。

さらに,電極取り出しパターンの現像は他のパターンに比べて現像面積が小さいため,現 像の進行が遅く,このパターンが全て現像されるまで現像を続けることを試みると,SU-8 膜自体が剥離してしまう問題が発生した,二次試作以降においては,SU-8 塗布前に O2 ア ッシングや表面のHDMS処理を行い,SU-8とシリコン基板間の密着の改善を行うこととし た。最終的な製作結果としては,歩留まりが1%であり,評価に必要なサンプル数の確保が 難しいため,上記の問題を改善して,二次試作を行った。

図 5.10 SU-8現像時にダイヤフラムが破断したセンサチップの一例

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5.5.3 二次試作

前節の一次試作においては,センサデバイスの歩留まりは1%であり,この向上を目指し て,二次試作を行った。二次試作においては,シリコンエッチング終了後の回路保護膜除去 法の変更。合わせ誤差低減および,SU-8現像時のダイヤフラム破断を防ぐための設計変更。

SU-8塗布時の密着改善プロセスの導入のそれぞれを変更し,試作を行った。

中間酸化膜の除去工程について,界面活性剤を含んだBHFで70minのエッチングを試み たが,図5-3に示すように,酸化膜にはほとんど変化が見られず,エッチングを断念するこ ととした。

シリコンエッチング終了後の回路保護膜除去に関して,リムーバーと硫酸過水を順次行 うことで,除去が可能であることが分かった。また,設計変更により,合わせ精度と SU-8 現像時におけるダイヤフラムの破断は50%から25%程度まで大きく改善された。SU-8構造 の密着は,塗布前のO2アッシング処理により改善し,パターンの現像を終えることができ た。

しかしながら,チップを切り出すためのダイシング工程において,切削水がダイヤフラム を破断させるという問題が発生し,最終的な歩留まりは,2%程度となった。

(a)初期状態 (b)BHF-Uによる70minエッチング後 図 5.11 中間酸化膜除去実験の結果

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5.5.4 三次試作

ここまでの試作では,SU-8の塗布はスプレーコータを用いて行っているが,より一般的な プロセスであるスピンコータによるSU-8構造の形成を行うため,予備実験を行った。必要 なSU-8層の膜厚は,使用する配線の直径100µmの1。5倍である150µmを目標値とする。

このSU-8厚膜を得るために行った工程の詳細を表5-1に示す。学部までで行っていた成膜 条件からの変更点は,赤で示している。

表 5.2 形成に用いた条件

スピンコータを用いた100µm以上の圧膜塗布を行う場合,ソフトベーク(プリベーク)を 行った後にもう一度と塗布を行う方法が一般的である。このとき,一層目の塗布を行う際の 前処理である,硫酸過水洗浄とO2アッシングを行うと,一層目のSU-8をエッチングして しまう。しかしながら,この処理を行わないと,ベーク後硬化しているSU-8表面が疎水性 であるために,二層目に塗布したSU-8を弾いてしまう。今回はその対策として,メーカー が推奨しているHMDS処理(プライマー)を行った。また,ソフトベーク時間については 十分に溶剤を揮発させる時間以上のベークであればいいので,多めに時間を確保した。また,

前回の試作では露光量不足によるパターン下部の痩せが確認されており,これを改善する ため露光量を200mJから500mJへと上方修正して実験を行った。さらに現像工程について は,共振によるダイヤフラム破損を想定し,超音波刺激を使用せずに,長時間かけて行った。

実験の結果,HMDS処理を行うことによって二層目と一層目のSU-8が弾きあわず,比較

SPM 5min

O2アッシング 10min SU-8 3050塗布

500rpm 15sec

2000rpm 30sec

プリベークⅠ 65℃ 5min プリベークⅡ 95℃ 3h SU-8 3050塗布

プライマー塗布

ベーク 95℃ 5min

500rpm 15sec

2000rpm 30sec

プリベークⅠ 65℃ 5min プリベークⅡ 95℃ 6h

露光 500mJ/cm^2

ポストベークⅠ 65℃ 1min ポストベークⅡ 95℃ 5min

現像 30min

リンス 20min

ハードベーク65~200℃ 60min

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的均一な面での塗布が行えた。また,露光量上昇により,パターン下部まで5µm以上の痩 せが発生することなくパターン形成に成功した。現像時間を多くとることで,両パターンの 現像が破断なくほとんど完了した。

上記3点は以前に比べ改善した。また,必要な膜圧を得る条件として,2000rpmでの塗布を 3度繰り返した場合に,約160µmの高さをもった構造を形成できた。

前節までの各実験結果をフィードバックしたプロセスで三次試作を行った結果,最終的 な歩留まりは 60%程度まで向上した。ここで,評価実験に十分必要なサンプル数が確保で きたので,試作実験を終了した。図 5.12は製作を行ったセンサチップ写真である。

図 5.12 完成した硬さ検出デバイスのセンサチップ写真

2300 µ m

2550 µ m

1mm Contact-tip

Reference Plane

Terminal

Diaphragm

Detection Circuit

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