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静解析による部材内応力の計算

ドキュメント内 坂本, 裕一郎 (ページ 110-116)

本節では,2次元骨組構造物に対する静解析について述べる.

A.2.1 一様はりの内部計算

まず構造物を一様はりごとに分解し,さらに各一様はりを 図A.2に示すような基本要素に 細分割して,内部自由度の消去計算を行う.

基本要素の両端における局所部材座標軸方向の縦変位x˜L,R,横変位y˜L,R,角変位θ˜L,R, 軸力V˜L,R,せん断力F˜L,Rおよび力のモーメントN˜L,Rの正方向を図A.2のように定義す る.一般化伝達剛性係数法では,基本要素の釣り合い方程式を考慮して左右両端における 状 態量ベクトル間の関係を次のように表す.ただし,以下では複号同順である.

f˜R= ˜Sad˜R+ ˜Scd˜L, f˜L= ˜scd˜R+ ˜sad˜L d˜L,R=tx,y,˜ θ)˜ L,R, f˜L,R=t( ˜V ,F ,˜ N˜)L,R

)

(A.1) 式(A.1)のS˜a,s˜aを自己剛性係数行列,S˜c,s˜cを相互剛性係数行列と呼ぶ.K˜a,c,k˜a,cを基 本要素の剛性行列とするとき,自己および相互剛性係数行列は次式のように表される.

"

S˜a S˜c

˜ sc s˜a

#

=

"

K˜a K˜c k˜c k˜a

#

(A.2) なお,K˜a,c,k˜a,cの具体的な要素表示は基本要素のモデル化に応じて異なるので,付録A.4 に示す.

A.2.2 基本要素の直列結合則

複数の基本要素からなる同一の分系A,Bを直線状に剛に結合して,新たな分系Cを構成 す ることを考える.いま,各分系の物理量を右下添え字「A, B, C」によって区別し,分系 Aと分系Bの両端間における自己および相互剛性係数行列が既知であり,両分系の両端に

i j

Fandamental element V˜R F˜R N˜R

x˜R y˜R θ˜R V˜L

F˜L N˜L

x˜L y˜L θ˜L

図A.2 2の冪状で分割された部分構造(基本要素)

おける状態量ベクトル間の関係が次のように表されているものとする.

f˜AR= ˜Sad˜RA+ ˜Scd˜LA, f˜AL= ˜scd˜RA+ ˜sad˜LA f˜BR= ˜Sad˜RB+ ˜Scd˜LB, f˜BL= ˜scd˜RB+ ˜sad˜LB

)

(A.3) ただし,分系A,Bが同一であることから,上式ではS˜A,Ba,c = ˜Sa,c,s˜a,cA,B = ˜sa,cとしている.

分系A,Bの結合は剛であるので,結合部における状態量ベクトルの関係はd˜RA= ˜dLBおよび f˜AR+ ˜fBL=0で与えられる.また,分系A,Bと分系Cの状態量ベクトル間の関係は,明ら かにd˜LC = ˜dLA,d˜RC = ˜dRBおよびf˜CL= ˜fAL,f˜CR= ˜fBRである.これらの関係を用いて式(A.3) から結合部の状態量を消去することにより,自己および相互剛性係数行列の直列結合則とし て次式を得る.

f˜CR= ˜SCad˜RC+ ˜SCcd˜LC, f˜CL= ˜scCd˜RC+ ˜saCd˜LC S˜Ca =tS˜Ca = ˜Sa+ ˜ScT˜s˜c, S˜Cc =ts˜cC = ˜ScT˜S˜c

˜

saC =ts˜aC = ˜sa+ ˜scT˜S˜c, T˜ =tT˜ =( ˜Sa+ ˜sa)−1



 (A.4)

これは,S˜a,c,s˜a,cからS˜Ca,c,s˜a,cC を求めるための関係式である.式(A.4)の結合則は解析対 象によらず適用可能であり,これを再帰的に利用することにより,基本要素から一様はりが 効率的に再構成できる.その結果,一様はりの内部節点の状態量は全て消去され,自由度が 大幅に低減される.

A.2.3 変位振幅ベクトルの計算

前節で述べた直列結合則により,p番目の一様はり要素両端間における自己および相互剛 性係数行列が, 局所部材座標系で次のように求められているものとする.

f˜pR = ˜Spad˜pR+ ˜Spcd˜pL, f˜pL = ˜spcd˜pR+ ˜spad˜pL (A.5) 全系を再構成する際には,全ての物理量を基準座標系表示に変換する.基準座標系および 局所部材座標系で表されたp番目の一様はり要素両端における状態量ベクトルの間には,次 のような関係が成立する.

dpL,pR=Rpd˜pL,pR, fpL,pR=Rpf˜pL,pR (A.6)

ここに,Rpは座標変換行列であり,基準座標系から見た局所部材座標系の傾き角が反時計 回り方向を正としてαpとすれば,次式のように表される.

Rp=



cosαp sinαp 0

sinαp cosαp 0

0 0 1

 (A.7)

図A.1に示すように,p番目の一様はりの左端および右端が それぞれ結合節点iおよびj に結合しているとき,式(A.5),(A.6)から,p番目の一様はり要素両端間における自己および

相互剛性係数行列は基準座標系で次のように表される.

fjp=Spadj+Spcdi, fip =spcdj +spadi fjp=fpR, fip =fpL, dj =dpR, di =dpL Spa,pc=RpS˜pa,pc tRp, spa,pc=Rps˜pa,pc tRp



 (A.8)

一方,結合節点jにおける力のつり合いは次式のようになる.

X

p

fjp+Kjdj =sj Kj = diag(kx,ky,Kθ)j



 (A.9)

ここに,Σpfjpは結合節点jに結合する一様はりからの力振幅ベクトルの総和である.また,

Kjは結合節点jの基礎支持要素に関する剛性行列であり,せん断と回転に関する基礎支持 ばね定数から構成される.sjは結合節点jおよびその基礎に作用する集中荷重を表す項で ある.

式(A.8)および式(A.9)から,変位振幅ベクトルをj =1,· · ·, nについて整理すると,次 のような変位振幅ベクトルdの計算式が求められる.

Qd=f (A.10)

ここに,

Q=tQ=





S11 S12 · · · S1n

S21 S22 . .. ... ... . .. ... ... Sn1 · · · · Snn





, d=





d1

d2 ... dn





, f =





s1

s2 ... sn





 (A.11)

となる.式(A.11)に対して後述するグラフ理論を適用し,伝達計算によりdを求める.

A.2.3.a 骨組み構造物のグラフ表現

まず,n個の結合節点をもつ骨組構造物を重みつき有向グラフGnで表現する.なお,本

文2.5.4.b項におけるグラフGtと下添え字の意味が異なるので注意されたい.本章では,下

添え字はグラフに含まれる節点の数を表している.また,有向グラフを取り扱うため,グラ フの節点集合は2.3.1章と同様に取り扱うが,辺については向きを区別する.なお,以後簡 単のために節点vi, vjの接続関係を有向辺eijで表す.辺eij は点viから出て点vjに入る辺 であり,辺ejjは自己ループを表す.一般化伝達剛性係数法では,骨組構造物のグラフを,

図A.3に示すように,各点には必ず自己ループが存在し,点vi, vj間が接続している場合に は,辺eij と辺ejiとが対で存在するものとして取り扱う.さらに,辺eij には式(A.11)の 剛性係数行列Sij を重みとして付加する.以下では,式(A.11)の行列QをグラフGnに対 する重み行列と呼び,Q(Gn)で表す.また,辺に対する重みに加えて点vjに式(A.11)のsj

v1

v2

v3

v4 e11

e12

e13

e14

e22 e21

e24

e22

e34 e31

e44 e42

e43 e41

図A.3 4節点モデルの有向グラフG4

を重みとして付加する.式(A.11)のベクトルf をグラフGnに対する重みベクトルと呼び,

f(Gn)で表す.

さらに,グラフGn中の各点の接続関係について,隣接行列A(Gn)を導入して次のよう に表す.

A(Gn) =





A11 A12 · · · A1n A21 A22 . .. ...

... . .. ... ... An1 · · · · Ann





 (A.12)

ここに,隣接行列A(Gn)の要素Aij は,点viから出て点vjへ入る有向辺の本数を表し ており,対応する辺が無い場合はAij =0である.

また,点vjに入ってくる辺の数を次数δ(vj)と呼ぶ.この次数δ(vj)は,式(A.12)から次 式のように求められる.

δ(vj) = Xn

i=1

Aij (A.13)

例えば,図A.3の有向グラフG4の隣接行列A(G4)は,

A(G4) =





1 1 1 1 1 1 0 1 1 0 1 1 1 1 1 1



 (A.14)

であり,各点の次数はそれぞれδ(v1) =4,δ(v2) =3,δ(v3) =3,δ(v4) =4である.

なお,縮約前の初期グラフに次数が2の点が存在する場合や,縮約計算過程で2個以上の 孤立点が現れる場合には,その個体は不適切な構造であると判別することができ,目的関数 の計算を省略できる.

A.2.3.b グラフの縮約計算

次に,グラフの縮約計算を行う.まず,図A.4aに示すようにグラフ中の3点vi, vk, vjが隣 接した直列辺において,中間の点vkを縮約することを考える.このとき,隣接する点vi, vj

vi vk vj eik

ekk

ejk

vi vj

eij

(a)直列縮約則

vi vj

e1

ik

e2jk

epjk

... vi vj

eij

(b)並列縮約則 図A.4 グラフの縮約計算

との間は新たに辺eijによって接続され,その重みは次式のようになる.

Sij =SikVkj, Vkj =−Skk1Skj (A.15)

この縮約則をグラフ内の中間点に点vkをもつ全ての直列辺に対して行うことによって,グ ラフから点vkおよび点vkに接続する辺が全て消去される.そして,点vkに隣接していた 点の間には{δ(vk)1}2本の辺が新たに生じる.

さらに,図A.4bに示すように,点viと点vj 間にp本の同一方向の辺があるとき,これ らを一本の辺に合成することができる.このとき,辺eijの重みは次のようになる.

Sij =X

p

Sijp (A.16)

A.2.3.c 最適縮約計算ルート

式(A.15),(A.16)により,グラフの縮約計算を行うことが基本的な計算手続きである.その

際,次のような条件で縮約計算の順序を適切に選ぶことにより, 必要な計算量や使用メモ リ量を最小化することができる.

(1) 各点の次数のうち,次数の小さい点から先に縮約する.

(2) 最小次数をもつ点が複数存在する場合には,これらの中で隣接点同士の接続数が多い 点から先に消去する.

ただし,本研究における静解析の場合には,計算条件によっては次のように縮約計算ル ー トを変更することにより,更なる計算の効率化を図ることができる.

(1) 荷重が作用する結合節点を縮約すると,それ以降の計算では点の重みベクトル の計算 が必要となるので,荷重の作用する結合節点を縮約順序の後半に設定することにより,

点の重みベクトルの計算が省略できる.

(2) 求めたい応答点が系内の一部の結合節点だけである場合には,応答点を縮約順序の後 半に設定すれば,不要な節点の状態量ベクトルの計算が省略できる.

骨組構造物の位相・形状同時最適化問題では,上記の計算効率化を取り入れている.

A.2.4 状態量ベクトルの計算

いま,グラフGnに対してm−1回の縮約計算を行ったグラフGmn1が得られているとす る. さらに,グラフGmn1から縮約すべき点がvkであったとする.このとき,中間点に点 vkを持つ3点vi, vk, vjからなる直列辺(Aij =Akj 6=0)に対して,先ほどの縮約則により 点vkを消去すると, 点vi, vj間の辺eij の重みは式(A.15),(A.16)から次式のように求めら れる.

Sijm=Sijm1+Sikm1Vkjm, Vkj =(Skkm1)−1Skjm1 (A.17) このとき,明らかにSijm=tSijmである. 一方,点vjの重みsmj は次式により求められる.

smj =smj 1+tVkjmsmk1 (A.18)

vkを含む全ての直列辺に式(A.17) および式(A.18)を適用することにより,隣接行列 A(Gmn1),重み行列Q(Gmn1)および重みベクトルf(Gmn1)から点vk に関わる成分が縮 約でき,その結果グラフGmn が得られる. 最適縮約計算ルートに従ってm=1,2,· · ·, n−1 にかけて縮約計算を順次行った後,各結合節点の変位振幅ベクトルは 縮約計算と逆の順序 で次式により求められる.

dr= (Srrn−1)−1snr−1 dk=

Xn

j=1

j6=k

Vkjmdj + (Skkm)−1smk









(A.19)

さらに,一様はり要素の内部節点の変位振幅ベクトルを求めるには,式(A.19)から各節 点の変位振幅ベクトルを求め,各一様はり要素両端間の状態量ベクトルをそれぞれの局所部 材座標系に変換する.一方,分系Aの左端および分系Bの 右端の変位振幅ベクトルd˜LAお よびd˜RBが既知であれば,両分系の結合点の変位振幅ベクトルは式(A.3)から次式により求 められる.

d˜RA=d˜LB =T˜scd˜RB+S˜cd˜LA) (A.20) 次に,この結果と基本要素に関する式(A.1)から,内部節点の力振幅ベクトルも 求められる.

よって,この力振幅ベクトルを元に応力振幅ベクトルも算出することができる.

ドキュメント内 坂本, 裕一郎 (ページ 110-116)