定理A.1. 実対称行列(A−λ0B)をLDtL分解したときの行列Dの要素の正あるいは負の
数は,式(A.45)においてそれぞれλ0より大きい固有値の数,あるいは小さい固有値の数と
一致する.ただし,行列Bは正定値行列とする[(98), p.128-131]. 次式のような一般実対称固有値問題について考える.
Ax=λ0Bx (A.45)
式(A.45)のi番目の固有値をλi,対応する B-正規固有ベクトルをxi とする.このとき,
式(A.45)は,次式のように書く事ができる.
AX =BXΛ (A.46)
ここに,XおよびΛは次式で表される.
X = [x1,x2,· · · ,xn], Λ= diag [λ1, λ2,· · ·, λn] (A.47)
式(A.46)の両辺からλ0BXを引き,左から行列tXを掛けると,tXBX =Iを考慮して,
次式のように変形することができる.
tX(A−λ0B)X =Λ−λ0I
次に,行列(A−λ0B)をLDtL分解すると,次式のようになる.
tX LDtL
X =Λ−λ0I (A.48)
式(A.48)の両辺を,2次形式の標準形Qに変換する.
Q=txtX LDtL
Xx=txt(Λ−λ0I)x (A.49)
ここで,式(A.49)の第1式について考える.いま,行列Dの対角要素のうち ,r個は非零 であり,そのうちp個が正,(r−p)個が負であるとして,次のように表す.
D = diag[α21, α22,· · ·, α2p,−α2p+1,· · · ,−α2r,0,· · ·,0] (A.50) また,
C = diag[1/α1,1/α2,· · · ,1/αp,1/αp+1,· · · ,1/αr,1,· · · ,1] (A.51) を導入し,y=C−1tLXxと置いて, 式(A.49)の第1式に代入すると,
Q=txtX LDtL Xx
=tyCDCy
=ty
Ip×p 0 0 0 −I(r−p)×(r−p) 0
0 0 0
y
=y21+y22+· · ·+yp2−y2p+1−y2p+2− · · · −y2r
(A.52)
式(A.50)の結果から,行列Dの正項の数(負項の数)は 標準形の正項(負項)の数と一致す
る.同様に,式(A.49)の第2式について考える.いま,行列Λ−λ0Iの対角要素のうち,s 個は非零であり, そのうちq個が正,(s−q)個が負であるとして,次のように表す.
E = diag[β12, β22,· · · , βq2,−βq+12 ,· · · ,−βs2,0,· · · ,0] (A.53) また,
F = diag[1/β1,1/β2,· · · ,1/βq,1/βq+1,· · · ,1/βs,1,· · · ,1] (A.54)
を導入して,さらにz=F−1xと置いて,式(A.49)の第2式に代入すると,
Q=txt(Λ−λ0I)x
=tzF EF z
=tz
Iq×q 0 0 0 −I(s−q)×(s−q) 0
0 0 0
z
=z12+z22+· · ·+zq2−zq+12 −z2q+2− · · · −zs2
(A.55)
ここで,シルヴェスタの慣性則 [(87), p.155]によれば,どのような方法で標準形に変換し ても,階数,正項の個数あるいは負項の個数は常に不変である.これにより,式(A.52)と
式(A.55)の比較から,r =sおよびp=qとなり,さらに次の関係が成立する.行列Dの
対角要素の正の個数とλi−λ0 >0なる個数,行列Dの対角要素の負の個数とλi−λ0<0 なる個数は各々一致する.
二つの個体i,jの位相を比較する際,本論文では隣接行列(2.5.1節参照)A(Gi),A(Gj) を用いて位相を分類している.本章では,例として図B.1に示す2つの位相が等しいかどう かを判定する手続きについて説明する.まず,2.5.4.a項で述べたように,
(1) 節点数およびはりの本数が等しい (2) 支持点および載荷点の次数が等しい
(3) 支持点および載荷点を除く節点について,同じ次数を持つ節点の個数が等しい という3種類の条件が満足されているか確認する.上記の条件が満足されない場合は,この 段階で両者の位相は異なっていると判断できる.一方,いずれの条件も満足している場合に は,それぞれの個体において,表B.1に示すように同じ次数を持った節点毎に分類する.も し,個体i,jが同じ位相を持つならば,それぞれの個体の隣接行列は一致するはずである.
しかしながら,図B.1に示すように全く同じ位相を有する個体であっても,節点5と節点6 の番号が個体iとjで入れ替わっているような場合には隣接行列の成分が異なるため,次の ような手順により隣接行列を比較する.
個体iの隣接行列を基準として,個体jの節点番号を変更しながら両者の隣接行列を比較 する.その際,各節点は次数毎に分類されているので,節点番号の組合せは同じグループの 中だけで考えればよい.もし,一つでも隣接行列が一致するものが存在すれば,個体iと個 体jの位相は一致していると判断できる.
1 2
4 8
5 9
6 10
7 11
3 5 6
9
10
W
(a)個体i
1 2
4 8
5 9
6
7 11
3 6
5 9
10 W
(b)個体j 図B.1 同位相であるが節点番号の振り方が異なる個体
表B.1 次数による節点番号の分類 支持点 載荷点 次数3 次数4 個体i 1, 2 3 4, 7, 8, 11 5, 6, 9, 10 個体j 1, 2 3 4, 7, 8, 11 5, 6, 9, 10
A(Gi) =
1 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0
0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 0
0 0 1 0 1 0 1 0 1 0 1
1 0 0 1 1 1 0 0 0 0 0
0 0 1 1 1 1 1 0 0 0 0
1 0 0 1 1 1 1 0 0 0 0
0 0 1 0 1 1 1 0 0 0 0
0 1 0 0 0 0 0 1 1 1 0
0 0 1 0 0 0 0 1 1 1 1
0 1 0 0 0 0 0 1 1 1 1
0 0 1 0 0 0 0 0 1 1 1
(B.1)
個体jの隣接行列は
A(Gj) =
1 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0
0 1 0 0 0 0 0 1 1 0 0
0 0 1 0 0 1 1 0 0 1 1
1 0 0 1 1 1 0 0 0 0 0
1 0 0 1 1 1 1 0 0 0 0
0 0 1 1 1 1 1 0 0 0 0
0 0 1 0 1 1 1 0 0 0 0
0 1 0 0 0 0 0 1 1 1 0
0 1 0 0 0 0 0 1 1 1 1
0 0 1 0 0 0 0 1 1 1 1
0 0 1 0 0 0 0 0 1 1 1
(B.2)
となる.ここで,図B.1の場合には置換(87)
σ = 5 6 9 10
6 5 10 9
!
(B.3)
を用いて隣接行列A(Gj)の成分を
A(G˜ j)σ(p),σ(q)=A(Gj)p,q (B.4)
により置き換えた新たな隣接行列A(G˜ j)を生成すると,A(G˜ j)はA(Gi)と等しい隣接行列 となる.ここに,上式の下添え字p, qは隣接行列のp行q列目の要素であることを示して いる.
なお,一般の場合には次数の等しい節点集合に限定して式(B.3)の置換を順列組合せによ り発生させることによって,考え得る全てのA(G˜ j)を生成することができる.