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数値計算結果

ドキュメント内 坂本, 裕一郎 (ページ 66-78)

第2章と同様に図2.15に示す2つのモデルを対象として,表3.1に示した13通りの手法 により最適化計算を10回ずつ行った.解析にあたり,系内のはりに関する諸元は全て2.7節 と同じ値に設定した.また,SAに関する計算パラメーターも2.7節と同様である.そのほ か,本章で新たに導入したGAの遺伝的操作に関するパラメータとして,式(3.4)に示す希 少度に関する閾値をϕˆ=5とした.

3.4.1 統計的検定を用いた評価方法

いま,各手法の性能を比較することを考えると,表3.1に示す13通りの計算結果の中に

は,2.7.1項で示した6種類の評価指標から直ちに優劣を判断することが難しい手法も存在

すると考えられる.また,これらの評価指標の生起確率が正規分布に従うとは考えにくいた

め,数値計算結果を比較する際にはノンパラメトリックな検定手法であるウィルコクソンの 順位和検定(91)–(94)を用いる.その際,RA|RAに対してその他の12手法を比較し,2.7.1項 に示した6種類の評価指標について,それぞれ手法m,世代g,試行計算l毎に片側検定(91) によりp(91)を求める.p値が小さい場合には,片側検定で設けた対立仮説が採択される.

本論文では,各評価指標において「基準手法であるRA|RAよりも優れている」ということ を対立仮説として設定しているため,6種類の各評価指標についてp値が小さい手法であれ ば,その手法はRA|RAよりも優れていると考えることができる.一方,ウィルコクソンの 順位和検定で得られるp値は世代毎に変動するため,12通りの手法に順位をつけようとす る際に困難を伴う.そこで本論文では,世代毎に算出したp値を以下に示すように全世代で 平均することにより,評価指標毎に手法の順位付けを行う.いま,上述の検定により手法m の評価指標αに関して,世代gp値がp1(m, α, g)として得られているとする.RA|RAと の比較によって得られたp1(m, α, g)の値は,広い世代にわたって小さい値をとることが望 ましい.そこで,評価指標毎にp1の値を世代について平均化したp2(m, α)を次のように定 義する.

p2(m, α) = 1 gmax

gXmax

g=1

p1(m, α, g) (3.5)

ここに,gmaxは世代gの最大値を示す.このp2を用いれば,その評価指標に関する各手法 の性能の違いを評価できるものと考えられる.さらに,p2(m, α)を評価指標αについて平 均化したp3(m)を次式のように定義する.

p3(m) = 1 6

X6 α=1

p2(m, α) (3.6)

このp3を用いれば,6種類の評価指標を統合して各手法の性能を順位付けすることが可能 である.

3.4.2 Model 1の計算結果

図2.15に示すような,節点数20のModel 1を対象として,13通りの手法によりそれぞれ 500世代までの試行計算を10回ずつ行った.RA|RAによって得られたチャンピオンデータ を基準として,3.3節で述べた親個体の選択法に関する13通りの手法により得られたチャン ピオンデータを比較することによって,各手法の性能を評価する.ただし,本論文の例題程 度の規模であっても,総当たり計算を実施して真の最適解(パレート最適フロント)を得る ことは計算量的に極めて困難であるため,全ての計算結果から非劣解の集合を選択し,これ を近似的にパレート最適フロントとみなす.また,性能評価に関しては,2.7.1項に示した (a)から(f)の6種類の指標を用いる.

G1 G2 G3 G4 G5

G6 G7 G8 G9 G10

G11 G12 G13 G14 G15

G16

図3.2 パレート最適フロントに含まれる位相(Model 1)

First natural frequency [Hz]

Total weigtht [kg]

200 400 600 800

200 400 600 800

200 400 600 800

200 400 600 800

G1

G6

G11

G16

10 20 30 40 50

G2

G7

G12

10 20 30 40 50

G3

G8

G13

10 20 30 40 50

G4

G9

G14

10 20 30 40 50

G5

G10

G15

10 20 30 40 50

図3.3 位相毎のパレート最適フロント(Model 1)

表3.2 パレート最適フロントに含まれる位相の得られる回数(Model 1, 500世代目)

G1 G2 G3 G4 G5 G6 G7 G8 G9 G10 G11 G12 G13 G14 G15 G16

AL|RA 10 2 1 8 1 7 1 0 5 7 4 1 6 3 0 0

AL|SL 10 8 2 9 3 8 2 0 6 7 1 1 9 8 1 1

AL|SS 10 3 3 8 1 10 1 1 1 9 4 1 4 3 0 0

AS|RA 10 4 2 10 3 10 0 0 5 7 2 1 5 2 0 0

AS|SL 10 6 3 10 0 9 1 0 4 8 4 1 9 4 2 2

AS|SS 9 0 0 7 1 8 0 0 6 7 3 0 7 2 0 0

CS|RA 10 3 3 10 4 9 0 0 4 9 1 0 4 3 0 0

CS|SL 10 7 4 9 2 7 3 0 5 7 1 0 5 3 0 0

CS|SS 10 6 0 8 5 7 1 0 5 7 4 0 9 5 0 0

RA|RA 10 7 2 7 2 9 2 0 5 8 1 0 7 3 0 0

RL|RA 10 5 5 10 2 7 2 0 7 8 1 3 8 4 0 0

RL|SL 10 8 1 9 5 10 2 1 6 9 0 1 6 4 0 0

RL|SS 10 8 5 7 1 8 2 0 6 9 0 0 5 3 0 0

上述の手順で近似的なパレート最適フロントを求めたところ,そのパレート最適フロント は16種類の位相からなっていた.それぞれの代表的な位相形状を図3.2に,目的関数空間 における位相別のパレート最適フロントを図3.3に示す.

表3.2は,試行計算10回のうち,各手法によってパレート最適フロントを構成する位相 が求められた回数を示している.この表から,パレート最適フロントを構成する位相が全て の試行計算で得られるわけではないことがわかる.特に,G8, G15, G16などの位相は求めに くいようである.次に,全ての手法で求められているG9を例にとり,各手法の試行計算毎 に得られたチャンピオンデータを目的関数空間上でプロットした結果を図3.4に示す.試行 計算の違いは色で区別しており,黒色の点はG9の位相を持つパレート最適フロントを示し ている.この結果のように,たとえパレート最適フロントを構成する位相と同じ位相が求め られたとしても,試行計算によっては解がパレート最適フロントに到達していないものが多 く,手法毎の結果にばらつきが生じている.なお,G9以外にも,G1を除く全ての位相がこ れと同様の傾向を示すことを確認している.

全ての手法においてSAの計算手続きは共通であるため,上記のようなばらつきが生じた のはGAにおける親個体の選択法の差に主な原因があると考えられる.そこで以下では,そ れぞれの手法の各世代で得られた試行計算毎のチャンピオンデータに対して,2.7.1節で述 べた6種類の評価指標および3.4.1節で述べた検定方法を適用し,得られる最適解に及ぼす GAによる親個体の選択法の影響について比較検討する.

3.4.2.a 評価指標を用いた検定結果

取り扱った12通りの手法に対して,6種類の評価指標を用いた片側検定を世代毎に行っ た.この検定では,RA|RAを基準として世代毎にp1(m, α, g)値を求めたとき,p1値が十分

First natural frequency [Hz]

Total weight [kg]

20 22 24 26 28

20 22 24 26 28

20 22 24 26 28

20 22 24 26 28

20 22 24 26 28

RA

14 16 18 20 22 24

SL

14 16 18 20 22 24

SS

14 16 18 20 22 24

ALASCSRLRA

Trial 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

図3.4 G9の位相を持つチャンピオンデータ(Model 1)

に小さい値をとる世代がある場合には,比較した手法がその世代においてRA|RAよりも優 れているものと判断できる.なお,各手法によって得られる評価値の推移については付録D を参照されたい.評価指標毎に得られたp1の結果を図3.5に示す.図中の横軸は世代を,縦 軸はp1値をとっている.各図では,線の色の違いが親個体1の選択法の違いを示し,親個体 2の選択法毎に3列に区分けして表示している.また,6つに区分けされた図の各行は,そ れぞれの評価指標に関する検定結果を示している.たとえば,RL|SLに関する検定結果は,

図3.5の中央の列に示す区画内に示す紫色の線に対応している.

チャンピオンデータの個数Nall に関する検定結果では,ASを用いる手法を除いてp1値 が小さくなっている手法が多くあり,中でもRL|RA, CS|RA, AL|SL, RL|SSでは広い世代に わたりp1<0.01となっていた.なお,上記4手法に関して実際にNallがRA|RAよりも大 きい範囲に分布していることを確認している(付録の図D.1を参照).このことから,これ らの4手法はNallに関してRA|RAと比較して優れていることを示している.

ランクの平均値R¯に関する検定結果では,RL|RA, RL|SL, AL|SLの3手法にp1<0.02と なる世代が存在している.RL|RAおよびAL|SLについては,p1 < 0.02となるのは比較的 初期の世代においてのみであるが,他の9種類の手法と比較してp1値が比較的小さい値を 推移している.また,両手法は上述したようにNallに関する検定結果においても優れてい ると判定された手法であることを踏まえると,両手法ではパレート最適フロントに近い解が 数多く求められていると考えられる.

パレート最適解の個数Noptに関する検定結果では,RL|RAおよびAL|SLについては局所 的にp1値が小さくなっているものの,全体的には値が大きく変動している.このことから,

Nopt関してはRA|RAと比較して各手法とも有意な差が無いといえる.

被覆率CRに関する検定結果では,Noptの場合と同様に,いくつかの手法では局所的に p1の値が小さくなるものの,全体的には値が大きく変動している.したがって,被覆率CR に関しても,各手法ともRA|RAとの有意な差は無いといえる.

位相の種類数NGに関する検定結果では,RLを用いた手法やSLを用いた手法のp1値が 比較的小さくなっており,特にRL|SL, AL|SLではp1<0.02となる範囲が他の手法に比べ て広くなっていることから,NGに関してこれらの手法はRA|RAと比較して優れていると いえる.

パレート最適フロントに含まれる位相の種類数NGopt に関する検定結果では,AL|SL, AS|SL, RL|SLにp1<0.02となる世代が存在している.RL|RAについては,p1の最小値が 0.07であるが,全体的にはp1が0.2以下の値で推移している.これら4つの手法は,上述 したようにNGに関する検定結果においても優れていると判定された手法であることを踏ま えると,探索個体に多様な位相を発生させることで,パレート最適フロントに含まれる位相 を持った解を多く生成することが可能になったと考えられる.

Generation p1

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

RA

100 200 300 400 500

SL

100 200 300 400 500

SS

100 200 300 400 500 NallRNoptCRNGNGopt

Parent1 AL AS CS RL

図3.5 ウィルコクソンの順位和検定結果(Model 1)

Method p2,p3

0.2 0.4 0.6 0.8

AL|SL RL|RA RL|SL CS|RA RL|SS AS|SL CS|SS CS|SL AL|SS AL|RA AS|RA AS|SS

Criteria p2

(

Nal l

)

p2

(

R

)

p2

(

Nopt

)

p2

(

C R

)

p2

(

NG

)

p2

(

NG opt

)

p3

図3.6 Model 1の計算結果に対する検定結果のまとめ

以上の結果をもとに,各手法の性能を総合的に評価することを試みる.図3.6は,p3の小 さい手法から順に横軸に並べ,縦軸には手法毎にp2およびp3の値をプロットしたものであ る.NallおよびR¯に関する考察から優れていると判断されたAL|SLRL|RAについては,

6つの評価指標に関するp2のばらつきが少なくなっており,その平均値であるp3の値も小 さくなっていることがわかる.このように,図3.6において,各手法のp2値のばらつきが 少なく,かつp3値が小さい程その手法の性能が優れていると判断できる.

図3.6を選択法毎に見ると,親個体1をRLまたはALによって選択した場合,親個体2の 選択法によって大きな性能の違いが生じていた.また,親個体1をASまたはCSによって選 択した場合,あるいは親個体2をSSによって選択した場合には,対応する親個体の選択法 によらず良い結果が得られていない.RLとCSはいずれも位相の多様性を得ることを期待し た選択法であるが,NGに関するp2の値を見ると,CSを用いた手法ではいずれもp2>0.2 であるのに対し,RLを用いた手法ではp2<0.2を示している.このことから,本論文で新 たに導入した希少度RLは,CSに比べてその効果が十分に得られていると言える.

3.4.3 Model 2の計算結果

上記の性能評価に対するモデルの規模の効果を見るため,Model 2として図2.15に示す ように,同じ設計領域内に設けた節点数32の計算モデルを対象として前節と同様の検討を 行った.計算条件については表2.1と同様であるが,ランクの平均値R¯を求めるために必要 な計算メモリの制約上,世代数については300までとした.

Model 2に対して13通りの手法を用いて得られたチャンピオンデータを統合してパレート

最適フロントを求め,さらにそれらを位相毎に分類した結果,図3.7に示すような33種類の 位相を持ったパレート最適解が得られた.目的関数空間における位相別のパレート最適フロ ントを図3.8に示す.表3.3は,表3.2と同様に,試行計算10回のうち,各手法によってパ

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