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メッシュサイズ変更手続きの改良

ドキュメント内 坂本, 裕一郎 (ページ 99-109)

前節までの検討により,メッシュサイズ変更法では,従来法よりも効率的に優秀なチャン ピオンデータが求められることが確認された.本節では,メッシュサイズ変更法の更なる計 算効率の向上を目指して計算手続きの改良を行う.メッシュサイズ変更法では,gˆ世代毎に メッシュサイズが変更される.このため,チャンピオンデータが早い世代で収束した場合で も,ˆg世代の計算が終了するまではメッシュサイズの変更が行われないので,無駄な計算時 間を要していると考えられる.そこで本節では,3.5節で示した収束率を用いてメッシュサ イズを変更する世代を適切に設定する手続きを新たに導入する.

4.3.1 収束率を用いたメッシュサイズ変更世代の設定法

新たに導入するメッシュサイズの変更世代の設定法は,基本的に2.7.4節で述べたSAの 終了判定方法(35)と同様の概念を用いている.いま,2世代目以降の各世代に於いて収束率ε

(68ページ参照)が観測されているとき,直近の連続したg˜世代分の収束率εに対して,帰 無仮説をH0:ε= ˆε,対立仮説をH1 :ε >εˆとし,有意水準0.05の下で角度変換を適用した arcsin(

ε)について片側t検定を行う.ここに,εˆは収束率の閾値である.検定を行った結 果,対立仮説が採択されればメッシュサイズを変更する.すなわち,帰無仮説が真であれる

場合にはε >εˆであるとはいえず,対立仮説が採択された場合にはε >εˆが満たされている

と考えられる.この方法によれば,収束率が閾値εˆを上回ったと推定される時点でメッシュ サイズを変更することができる.なお,本論文では以降の計算においてg˜を10としている.

4.3.2 有効性の検討

Model 1を対象として,収束率を用いたメッシュサイズ変更世代の設定法を導入したメッ

シュサイズ変更法(以下,改良メッシュサイズ変更法と呼ぶ)により最適化計算を行った.

ここでは,500世代までの計算に最も時間を要した初期メッシュサイズ125 mmの場合を 例にとり,収束率の閾値をεˆ= 0.6,0.7,0.8,0.9の4通りに設定した手法(以下,それぞれ Mesh(125,0.6), Mesh(125,0.7), Mesh(125,0.8), Mesh(125,0.9)と呼ぶ)で計算を行った.

まず,各手法の試行計算で得られた計算結果に対して収束率を求めた.図4.16は,各手 法の10回の試行計算毎にメッシュサイズが変更された時の世代数およびステップ数を求め,

その平均値と標準偏差をプロットした結果である.図中の横軸はステップ数,縦軸は世代数 を表し,メッシュサイズが125 mmから62.5 mmに変更された点を○印で,62.5 mmから

31.25 mmに変更された点を△印で,31.25 mmから15.625 mmに変更された点を□印で示し ている.また,凡例に示す通り,線の色の違いが手法の違いを表している.なお,比較のため

4.2.1項で用いたMesh(125)の結果も示している.この結果から,新しく改良メッシュサイズ

変更法を導入したことにより,3回のメッシュサイズの変更がいずれもMesh(125)よりも早 い世代で行われていることがわかる.各手法で最小メッシュサイズに到達したステップ数の 平均値は,Mesh(125)では6381ステップ,Mesh(125,0.9)では3968ステップ,Mesh(125,0.8) では2652ステップ,Mesh(125,0.7)では2094ステップ,Mesh(125,0.6)では1522ステップで あり,閾値εˆの値が小さいほど少ないステップ数で最小メッシュサイズに到達している.

次に,2.7.1項で述べた6種類の評価指標を用いて各手法の計算性能の比較を行った.図4.17

は,評価指標を世代毎に求め,図4.7と同様の表記方法により示した結果である.まず,Nall に関する結果を見ると,改良メッシュサイズ変更法ではMesh(125)と比較して少ないステッ プ数で多くのチャンピオンデータを求めることができている.また,R¯に関する結果を見る と,メッシュサイズの変更が行われる5000ステップまでの範囲では,改良メッシュサイズ

変更法のlog10R¯の値がMesh(125)よりも小さくなっている.ただし,ステップ数が増加す

ると,εˆの値が小さいほどlog10R¯の値が大きくなっている.次に,パレート最適フロント の個数Noptに関する結果を見ると,εˆが小さい手法ほど早く値が増加している.一方,被 覆率CRを見ると,εˆの大きい手法の方が値が大きくなっている.これらのことから,メッ シュサイズの変更を早く行い過ぎると,少数の優秀な解がパレート最適フロント上の一部に 得られるものの,チャンピオンデータ全体としては優れた解が得られにくくなってしまうこ とを示唆している.さらに,NGおよびNGoptの結果から,位相の種類数に関しては各手法 で大きな差違はないことを踏まえると,改良メッシュサイズ変更法の中では,Mesh(125,0.9)

Step number

Generation

0 20 40 60 80 100 120 140 160

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

Mesh(125,0.6) Mesh(125,0.7) Mesh(125,0.8) Mesh(125,0.9) Mesh(125)

図4.16 収束率の閾値と世代数およびステップ数の関係

Total step

Value

100 200 300 400 500 600

4.0 4.5 5.0

5 10 15 20 25 30

0.25 0.30 0.35 0.40 0.45 0.50 0.55

9 10 11

3 4 5 6

0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 NallRNoptCRNGNGopt

Mesh(125,0.6) Mesh(125,0.7) Mesh(125,0.8) Mesh(125,0.9) Mesh(125)

図4.17 各性能評価指標の値の推移(Model 1)

First natural frequency [Hz]

Total weight [kg]

10 40 70 100

10 40 70 100

10 40 70 100

10 40 70 100

10 40 70 100

d0=125 d0=125

d0=125 d1=62.5

d1=62.5 d1=62.5

d2=31.25 d=15.625

d=15.625 d=15.625

0 20 40

800th step1500th step2000th step3000th step10000th step

Both Mesh(125) Mesh(125,0.9)

図4.18 各ステップにおけるパレート最適フロント

がチャンピオンデータ全体として最も良好な結果を得ていると言える.

図4.18は,800ステップ,1500ステップ,2000ステップ,3000ステップ,10000ステッ プの5つの点において,Mesh(125)とMesh(125,0.9)の手法により得られたパレート最適フ ロントの一部を目的関数空間上にプロットした結果である.図の表示方法は図4.12と同様 であり,緑色の点は両手法ともに求められたパレート最適解を,橙色はMesh(125)でのみ求 められたパレート最適解を,青色はMesh(125,0.9)でのみ求められたパレー最適解を示して

いる.なお,図中にはそれぞれのステップにおける各手法のメッシュサイズを示している.

まず,800ステップでは,両手法ともまだ初期メッシュサイズd0のままであり,この時点で は両手法の結果に有意な差が見られない.次に,1500ステップでは,Mesh(125,0.9)のメッ シュサイズがd1に変更されており,パレート最適フロントにはMesh(125,0.9)で得られたパ レート最適解が広く分布している.これは,4.2節で述べたように,Mesh(125,0.9)ではメッ シュサイズが変更されたことによってチャンピオンデータが大きく改善されたことによるも のと考えられる.次に,2000ステップでは,Mesh(125)のメッシュサイズがd1に変更され,

パレート最適解の個数が増加している.ただし,この段階においてもMesh(125,0.9)の方が パレート最適解を広く求めることができている.このような傾向は3000ステップや10000 ステップにおいても確認することができる.

以上の結果から,改良メッシュサイズ変更法では,早い段階でメッシュサイズの変更を行 うことによって,少ないステップ数で優秀なチャンピオンデータが求められることが確認さ れた.ただし,そのためには閾値εˆを適切に設定する必要があるようである.

4.4 まとめ

SA/GAハイブリッド最適化手法の更なる性能向上を目指して,SA/GAハイブリッド最適

化手法にメッシュサイズ変更法を導入することを試みた.その適用例として,2次元骨組構 造物の位相・形状同時多目的最適化問題を対象として計算アルゴリズムの定式化を行うとと もに,具体的な数値計算結果に基づいて6種類の評価指標を用いて本手法の有効性につい て検証した.その結果,メッシュサイズ変更法を導入した本手法によれば,従来法と同程度 の位相の種類数を維持しつつ,従来法よりもランクの高いチャンピオンデータが数多く求め られることが確認された.メッシュサイズ変更法では,初期メッシュサイズを適切に設定す ることにより,計算過程の各段階において生成可能な探索個体の数が少なく抑えられる.こ れにより,計算の初期段階では従来法よりも解が劣化するものの,メッシュサイズが変更さ れる度にチャンピオンデータの個数やランクが大きく改善され,結果として従来法よりも早 い段階で良好なチャンピオンデータを得ることが可能となる.さらに,収束率を用いてメッ シュサイズを変更する世代を適切に決めることによって,計算効率の更なる向上が可能であ ることが確認された.

機械・構造物に対するCAE技術の拡張を目指して,多目的最適化手法のアルゴリズムの 性能向上および最適化計算で用いられる振動解析や静解析などの計算力学手法の高効率化の 観点から,SA/GAハイブリッド最適化手法を新たに提案し,目的関数の計算に用いる計算 力学手法として一般化伝達剛性係数法を利用した.

一般化伝達剛性係数法は,部分構造合成法およびグラフ理論の概念を援用することにより,

従来は伝達計算手続きの適用が困難であった非直列型構造物に対しても入力データを変更 するだけで汎用的に適用可能となっている.さらに,伝達剛性係数法の高い計算能率を保持 したまま振動解析や静荷重解析を実行することが可能であるため,この特長を利用すれば,

従来では取り扱うことが困難であった問題をも取り扱うことが可能となる.そこで本論文で は,一般化伝達剛性係数法の真価を最も発揮し得る問題の一つとして,2次元骨組構造物の 位相・形状同時多目的最適化問題を取り扱った.骨組構造の位相と形状とを変化させる際に は,設計変数である節点の配置に応じて自動的に位相形状が定まるようにした.このとき,

節点間の距離や節点とはりの間の距離に関する閾値を境に急激に構造の形態が変化するた め,設計変数から目的関数への写像は不連続かつ多峰性を有する.したがって,このような 空間においても解の探索が可能な発見的最適化手法を最適化アルゴリズムとして採用した.

その際,解空間の大域的な探索能力に秀でた遺伝的アルゴリズムと,局所探索能力に秀でた 疑似焼き鈍し法とを組合せ,大域的かつ緻密に解を探索することを可能とするべくSA/GA ハイブリッド最適化手法の開発を試みた.また,遺伝的操作手続きの詳細な検討およびメッ シュサイズ変更法の導入を実施し,SA/GAハイブリッド最適化手法の更なる計算効率の向 上を試みた.以下に,得られた結果についてまとめる.

第2章では,2次元骨組構造物の位相・形状同時多目的最適化問題として,構造質量の最 小化と縦・曲げ連成振動モードに関する1次の固有振動数の最大化を目的関数とする2目的 最適設計問題の定式化を行った.その後,SA/GAハイブリッド最適化アルゴリズムの構築 および数値実験による検証を行った.まず,最適化アルゴリズムの概要をまとめると次のよ うになる.

SA/GAハイブリッド最適化手法では,SAによる複数の探索個体を用いた同時探索の

計算手続きの中にGAによる初期探索個体の生成アルゴリズムを導入した.このSA では,N 個の探索個体が独立して最適解の探索を行い,各個体が確率的な方法で節点 を一つずつ移動させることにより近傍解を探索する.また,SAの終了条件を満たし

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