第3章までに述べたSA/GAハイブリッド最適化手法(本章では以後,従来法と呼ぶ)で は,得られる最適解の形状の細密化を図るためには図2.1に示すメッシュサイズdmを小さ く設定する必要がある.しかしながら,3.5節で述べたように,dmが小さい場合にはSAの 計算手続きにおいて生成可能な探索個体の数が膨大となるとともにチャンピオンデータが局 所解に滞りがちになり,優れた解を素早く求めることが困難となる.そこで本章では,この 問題の対策として,従来法の計算アルゴリズムにメッシュサイズ変更法を新たに導入するこ とを試みる.なお,SAによる計算手続きの中で節点の移動を行う際,第3章までは移動す る節点の周辺に円形の節点移動範囲を設けていたが,メッシュサイズ変更法では節点の周辺 に正方形の節点移動範囲を設け,その中にある格子点へランダムに節点を移動させることと する.ただし,節点移動範囲の大きさはメッシュサイズの変更に伴い変化するものとする.
また,従来法では節点の周辺に円形の結合範囲を設けていたが,メッシュサイズ変更法では 節点の周辺に正方形の結合範囲を設け,その領域内に複数の節点が存在した場合にはそれ らの節点を結合する.これ以外のSAおよびGAに関する計算手続きについては,基本的に 第3章に述べた従来法と同様である.ただし,GAの遺伝的操作では,前章で有効性が確認 された親個体の選択法,すなわち親個体1を希少度で選択肢し,親個体2をランダムに選択 する手法を用いる.
1st 2nd
... ˆ gth (ˆg+1)th
... 2ˆgth (2ˆg+1)th
... µˆgth (µˆg+1)th
...
gendth Start
End
Mesh size:d0
Mesh size:d1
Mesh size:dµ=d Changing mesh size
Changing mesh size
Changing mesh size
Generation
図4.1 メッシュサイズ変更法の計算手続き
(2) 図4.2aに示すようにメッシュサイズd0の正方格子を設けた設計領域内にN 個の初期 探索個体を置き,さらに,SAの計算手続きにおける辺長r0(>2d0)の正方形の節点移 動範囲を各節点に設ける.そして,2章で述べた従来法と同様の計算手続きを1世代 からˆg世代まで実行する.
(3) ˆg世代目のGAによる計算を実行した後,設計領域内のメッシュサイズをd0からd1= d0/2に変更する.さらに,N個の探索個体に対して,それぞれ節点の移動可能範囲を 定める設計領域を次のように変更する.いま,図4.2bに示すような探索個体が得られ ているものとする.このとき,設計領域内の移動可能な全ての節点(図中,赤色,青 色,緑色で示した節点)に対して,図4.2cに示すようにL/2 [m]×H/2 [m]の大きさ を持った局所設計領域D1をそれぞれの節点が中心に位置するように設ける.ただし,
異なる節点の局所設計領域が重なってもよいが,手順(1)で設定した元の設計領域よ りも外側の領域については節点の移動範囲から除外するものとする.また,節点移動 範囲の辺長についてもr0からr1=r0/2に変更する.
Mesh size:d0
(a)
Mesh size:d0
(b)
Mesh size:d1
(c) 図4.2 メッシュサイズおよび設計領域の変更
(4) 上記(3)によりすべての探索個体のメッシュサイズおよび設計領域を変更した後,gˆ+1 世代から2ˆg世代まで計算を実行する.その際,SAによる計算手続きでは,節点毎に 設けた局所設計領域の範囲内で節点を移動させることによって探索個体の近傍解を生 成する.また,GAの操作によって新たに探索個体が生成された場合,上記(3)と同様 にして節点毎に局所設計領域D1を設ける.
(5) 2ˆg+1世代目以降の計算についても,上記(3),(4)と同様に,gˆ世代毎にメッシュサイ ズおよび設計領域の変更を行いながらSAおよびGAの計算を繰り返し実行する.い ま,mˆg世代まで計算が終了し,m回目のメッシュサイズ変更手続きを行う場合,メッ シュサイズdmは
dm= d0
2m (4.1)
局所設計領域Dmは Dm=
L 2m, H
2m
(4.2) 節点移動範囲の辺長rmは
rm= r0
2m (4.3)
のようになる.
(6) µˆg世代目においてµ回目のメッシュサイズの変更を行った段階で,メッシュサイズが 最小メッシュサイズdとなる.これ以降の計算ではメッシュサイズや設計領域の変更 を行わず,最終世代gendまでSAおよびGAの計算を繰り返し実行する.
このようにメッシュサイズ変更法では,初期段階においてメッシュサイズを大きく設定す ること,および段階的にメッシュサイズを小さくする過程において局所設計領域と節点の移 動範囲の辺長とを同時に縮小することにより,計算の各段階において生成可能な探索個体の
δr
(a)節点結合前 (b)節点結合後 図4.3 メッシュサイズ変更法における節点結合ルール
表4.1 メッシュサイズ変更法を用いた最適化計算のパラメーター
δa σa τa r0 δr N Nˆ T0 η s ϕˆ pcross ˆg
4cm 217N/m2 125N/m2 1.2m 0.6m 100 100 10 0.98 10 5 0.8 50 数をなるべく小さく抑えることが可能である.これにより,最終的なメッシュサイズを小さ く設定した場合でも,局所解に滞りにくくなり,細密な形状をもった最適解を効率良く探索 することが期待できる.
4.1.2 位相と形状の変更ルール
本手法では,従来法と同様に連続的位相変化モデル(58)に類似した考え方に基づいて節点 の結合や分離を行うことで探索個体の位相と形状を同時に変化させる.メッシュサイズ変更 法では,節点の周辺に辺長δrの正方形の結合範囲を設ける.いま,図4.3aに示すような探 索個体において,赤色の節点を移動させた結果,青色の節点を中心とする節点結合範囲内に 移動したとする.このとき,図4.3bに示すように両節点間の中間点に最も近い格子点に両 節点を移動させ,1個の節点に結合する.メッシュサイズ変更法では,結合した節点の位置 を中心として局所設計領域を取り直す.結合した節点は,節点が再び分離するまでは同じ局 所設計領域内で移動するものとする.なお,3つ以上の節点が互いに結合範囲内に存在する 場合も同様に処理する.一方,節点の移動に伴って結合されていた節点が結合範囲外に出た 場合には,節点同士を分離した上でそれぞれの節点毎に局所設計領域を取り直す.