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数値計算結果

ドキュメント内 坂本, 裕一郎 (ページ 38-63)

図2.1に示すモデルを対象として,2L[m]×H[m] =12 m×3 mの設計領域内で具体的 な最適化計算を行った.解析にあたり,系内の一様はりは全て鋼製で,内外径比0.8の中空 丸棒とした.節点a, bは,ばね定数1015N/mのせん断ばね要素によってピン支持し,節点

cにはW =25 kNの静荷重が鉛直方向に作用するものとした.制約条件は,建築基準法に

おける鋼材片持ちはりのたわみの制限値および許容応力を参考にして,静たわみの制限値 δa =4 cm(=2L/300),許容曲げ応力σa=217 N/m2,許容せん断応力τa=125 N/m2とし た(97).その他,最適化計算に関するパラメータを表2.1に示す.制約関数および目的関数 の計算に対しては,骨組構造の各一様はりを適切に分割し,集中系にモデル化した上で一

表2.1 最適化計算のパラメータ

rmax δr N Nˆ T0 η s pcross dm

0.6m 0.3m 100 100 10 0.98 10 0.8 1cm

W Design domain

a c b

d

(a) Model 1

W Design domain

a c b

d

(b) Model 2

図2.15 計算モデル(Model 1, Model 2)

表2.2 比較を行う計算手法一覧

手法 再アニーリング 遺伝的操作

SA1 無し 無し

SA2 SAの終了条件を満たす時 無し

SAGA 無し SAの条件を満たす時

般化伝達剛性係数法(17)を適用している.なお,本論文の数値計算では64bit PC*i)を利用し,

Fortran90により倍精度計算*ii)を行った.本論文ではこれ以降,設計変数空間の次元の大小

が計算結果に与える影響を確認するため,図2.15に示す節点数が20個のModel 1および節

点数32個のModel 2を対象に検討を行う.

本節では,提案手法の有効性を検討するため,表2.2に示す3種類の手法について検討を 行った.SA1は再アニーリングを行わない通常のSAであり,SA2は再アニーリングを適用 した手法である.再アニーリングについては,2.5.5項で述べたSAの終了条件を満たした 場合に温度Tkを初期値の半分T0/2へと戻すことにより実現する.また,SAGAは本章で提

案したSA/GAハイブリッド最適化手法を示している.

*i)CPUIntel(R) Xeon(R) CPU X5355 @ 2.66GHz

*ii)Compiler(IFORT) 10.1 20080602 Copyright (C) 1985-2008 Intel Corporation. All rights reserved.

2.7.1 多目的最適化手法の評価指標

本論文で用いる最適化手法はいずれも確率的なアルゴリズムであり,同じ問題に対して最 適解を探索した場合でも,試行計算毎に異なる解集合が得られる.したがって,各手法毎に 複数回の試行計算を行い,得られた結果を手法毎に比較する.このとき,ばらつきを有する 計算結果同士の比較を行うために6種類の指標を定め,これらの値の大小を比較すること によって手法の性能を評価する.評価指標を定めることにより,各評価指標の観点から手法 を評価することが可能となり,それらをまとめて総合的な性能の評価を行うことも可能とな る.なお,本論文では1世代毎にチャンピオンデータを保存しており,これらの保存された 情報を用いて手法を評価するものとする.以下では,表2.2に示した3つの手法を区別する 添え字をm,試行計算を区別する添え字をlとし,手法mについてl回目試行計算のg世 代目までに得られたチャンピオンデータの集合をχ(m, l, g) ∈χU として表記する.ここに χUは保存された全てのチャンピオンデータを包含した集合を表す.ただし,SA1について は初回のSAの終了条件が満たされた後,20ステップ間隔でチャンピオンデータを保存し,

便宜上これを世代とみなしてチャンピオンデータを保存してある.以下の(a)から(f)に,6 種類の各評価指標を示す.

(a)チャンピオンデータの個数 チャンピオンデータの集合χ(m, l, g)に含まれる要素の総 数をNall(m, l, g)とする.多目的最適化問題では,より多くの解候補を得る事が望ま れるため,Nallの大きい手法の方が優れているものとする.

(b)チャンピオンデータのランクの平均値 いま,ある個体iに対する非劣解がni個存在 したとする.このとき,個体iの優劣を評価するために次式のようなランク(31)と呼ば れる関数Riを導入する.

Ri=1+ni (2.19)

ここで,ある特定の値m0, l0g0が与えられたとき,チャンピオンデータの集合χ(m0, l0, g0) に対して計算されたランクの値は全て1であるが,保存された全ての解集合χUに対 して計算されたランクは,個体i毎に異なる値を持ち得る.従って,χU に対して個々 の個体のランクを計算することにより,チャンピオンデータの集合同士で優劣を比較 することが可能となり得る.いま,χUに対して求められた個々の個体に関するランク の値を集合χ(m, l, g)毎に平均した値をR(m, l, g)¯ とする.パレート最適フロントに属 する個体のランクは1であり,パレート最適フロントに近いほどR(m, g, l)¯ の値が小 さくなるので,これにより解集合χ(m, l, g)のパレート最適フロントへの近さを評価 することができる.

Pareto optimal solutions Champion data

First natural frequencyf [Hz]

TotalweightM[kg]

First natural frequencyf [Hz]

TotalweightM[kg]

(a) (b)

図2.16 被覆率を求めるための領域分割

(c)パレート最適解の個数 チャンピオンデータの集合χ(m, l, g)内でパレート最適フロン トに一致する個体の個数を求め,その値をNopt(m, l, g)とする.Nopt(m, l, g)が大き いほどパレート最適フロント上の解を多く求める事ができていると言える.

(d)被覆率 図 2.16に示すように,目的関数空間のf 軸およびM 軸を小領域に等分割 し,パレート最適解が1つでも存在する小領域の個数をNf およびNMとする.さら に,その小領域のなかでチャンピオンデータが1つでも存在する小領域の個数を集合 χ(m, l, g)毎に求めたものをnf(m, l, g), nM(m, l, g)とし,f 軸およびM軸に関する 被覆率fcr(m, l, g) (1), Mcr(m, l, g) (1)を次式で定義する.

fcr(m, l, g) = nf(m, l, g) Nf

, Mcr(m, l, g) = nM(m, l, g) NM

(2.20) さらに,これらを用いて目的関数空間全体の被覆率CR(m, l, g) (≤1)を次式で定義す る.

CR(m, l, g) = 1

Nf+NM {Nffcr(m, l, g) +NMMcr(m, l, g)} (2.21) CRの値が1に近いほど,チャンピオンデータがパレート最適フロントを隙間無く全 領域に渡り求められていると言える. なお,本論文の数値計算においては,目的関数 空間の分割数はf軸,M 軸ともに100とした.

(e)位相の種類数 チャンピオンデータの集合χ(m, l, g)を位相毎に分類したとき,得られ る位相の種類数をNG(m, l, g)とする.

(f)パレート最適フロントに含まれる位相の種類数 上述のNG(m, l, g)種類の位相のうち,

パレート最適フロントに含まれる位相の数をNGopt(m, l, g)とする.NGとの差が少な いほど,発生した位相の多くがパレート最適フロントに含まれる位相であると言える.

2.7.2 Model 1の計算結果

図2.15に示すModel 1を対象として,表2.2に示す3手法により最適化計算を10試行ず つ行い,得られた全てのチャンピオンデータχUからパレート最適フロントを求めた.その 結果,パレート最適フロントには16種類の位相が含まれていた.それぞれの代表的な位相 形状を図2.17に,目的関数空間における位相別のパレート最適フロントを図2.18に示す.

いま,等しい繰り返し計算回数(SAのステップ数)を要する各時点において手法同士を 比較するため,同一ステップ数におけるチャンピオンデータを比較することを考える.チャ ンピオンデータは世代毎に保存されているため,kステップ目のチャンピオンデータそのも のを比較することができない.そこで,集合χ(m, l, g)毎にそれぞれ対応する総ステップ数 が存在することを利用してkステップ目近傍のチャンピオンデータの集合χ(m, l, g)を用い て集合族χ(k)を構成し,この集合族χ(k)内で手法同士を比較する.このときχ(k)の要素 は,kステップを超える最小の世代が手法mの試行計算l毎に選択される.表2.3に,例と

して10000ステップにおけるチャンピオンデータの集合族χ(10000)を示している.表2.3a

はSA1から得られた10000ステップ近傍のチャンピオンデータを位相毎に分け,試行計算 毎に得られた解の個数を示している.表2.3bおよび表2.3cは,それぞれSA2およびSAGA で得られたチャンピオンデータの集合を表2.3aと同様の方法で示している.なお,G16の位 相はχ(10000)に含まれていなかったため,各表の中では省略している.この表から,SA1 のG1, G15やSA2のG2, G3, G7, G11は10回の試行計算中1回もこれらの位相を求めること ができなかった.一方,SAGAではG7, G15を除き,比較的多くの試行でそれぞれの位相が 発生している事がわかる.また,SAGAはG13, G14の位相のように,2.5.4.b項で述べた解 の保存上限Nˆ=100に到達する試行が多く,その他の位相に分類される解についてもSAの みを用いた2つの手法より多くの解が得られていることがわかる.

図2.19は,10000ステップにおけるチャンピオンデータχ(10000)を目的関数空間上で示

している.ただし,SA2のみで得られたG15, G16については,極端に質量が大きい領域に のみ存在するため図から除外している.図の横軸は1次の固有振動数,縦軸は構造質量を示 しており,凡例に示すように手法毎に色を変更してプロットしている.この図から,10000 ステップにおけるチャンピオンデータは,SAGAが最も優れており,次いでSA1, SA2の順 になっている.

以上の結果から,SAGAはSA1およびSA2と比較して多くの解を発生し,パレート最適 フロントに含まれる位相を求める可能性が大きい事が確認された.また,チャンピオンデー タの優劣を比較すると,SAGAが他の2手法よりも優れていることが確認された.ただしこ こまでの評価は,10000ステップにおけるチャンピオンデータのみを取り扱っているため,

その他のステップにおける性能を考察できていない.そこで,以下では2.7.1項で述べた6 種類の評価指標を用いて各手法の性能を評価する.

G1 G2 G3 G4 G5

G6 G7 G8 G9 G10

G11 G12 G13 G14 G15

G16

図2.17 パレート最適フロントに含まれる位相(Model 1)

First natural frequency [Hz]

Total weight [kg]

100200 300400 500600 700

100200 300400 500600 700

100200 300400 500600 700

100200 300400 500600 700

G1

G6

G11

G16

10 20 30 40 50

G2

G7

G12

10 20 30 40 50

G3

G8

G13

10 20 30 40 50

G4

G9

G14

10 20 30 40 50

G5

G10

G15

10 20 30 40 50

図2.18 位相毎のパレート最適フロント(Model 1)

表2.3 10000ステップにおける解の個数(Model 1)

(a) SA1により得られたチャンピオンデータの個数

Trial G1 G2 G3 G4 G5 G6 G7 G8 G9 G10 G11 G12 G13 G14 G15 Total

1 0 0 0 32 0 13 0 26 49 0 0 0 100 0 0 220

2 0 0 0 48 4 0 0 53 38 0 0 90 0 0 0 233

3 0 0 0 3 1 0 0 20 0 14 0 9 78 0 0 125

4 0 14 0 49 0 6 0 0 0 74 0 41 65 57 0 306

5 0 0 8 42 0 13 0 99 14 0 0 31 59 67 0 333

6 0 20 0 9 1 0 6 0 1 0 25 81 67 8 0 218

7 0 17 0 0 0 0 0 60 65 26 0 0 27 100 0 295

8 0 12 0 7 4 0 0 0 10 0 0 91 0 0 0 124

9 0 0 0 25 0 0 0 39 0 47 0 1 100 0 0 212

10 0 11 2 33 0 11 0 0 52 91 0 0 99 3 0 302

(b) SA2により得られたチャンピオンデータの個数

Trial G1 G2 G3 G4 G5 G6 G7 G8 G9 G10 G11 G12 G13 G14 G15 Total

1 0 0 0 11 0 17 0 13 5 6 0 18 35 26 0 131

2 0 0 0 7 0 15 0 14 11 2 0 25 43 19 0 136

3 0 0 0 15 0 11 0 21 10 0 0 20 19 22 0 118

4 0 0 0 16 0 0 0 18 18 1 0 5 31 16 0 105

5 0 0 0 9 0 21 0 7 3 11 0 18 44 8 0 121

6 0 0 0 18 0 11 0 2 1 5 0 5 26 4 0 72

7 28 0 0 10 0 8 0 3 11 0 0 7 0 2 0 69

8 2 0 0 11 0 1 0 9 9 10 0 20 59 3 0 124

9 0 0 0 13 0 8 0 32 3 8 0 15 21 18 0 118

10 0 0 0 4 0 11 0 11 3 5 0 7 22 15 15 93

(c) SAGAにより得られたチャンピオンデータの個数

Trial G1 G2 G3 G4 G5 G6 G7 G8 G9 G10 G11 G12 G13 G14 G15 Total

1 42 0 0 36 4 17 0 33 0 81 0 82 100 0 0 395

2 36 0 0 50 0 0 0 51 61 29 0 13 96 0 0 336

3 28 14 0 93 2 0 0 98 92 0 2 95 97 0 0 521

4 59 8 4 0 10 0 0 81 86 0 0 34 100 0 0 382

5 52 22 0 62 0 14 0 40 6 0 0 91 100 100 0 487

6 23 6 0 62 0 45 0 49 35 56 0 49 0 0 0 325

7 27 20 0 76 0 0 0 54 25 7 14 90 100 100 0 513

8 29 0 8 35 3 26 0 75 13 0 0 82 100 100 0 471

9 27 31 7 60 0 20 0 0 45 0 1 45 100 100 0 436

10 30 0 0 61 0 39 0 99 0 93 0 24 0 0 0 346

図2.20から図2.25に示す6つの図は,各手法の10回の試行計算で得られた6種類の評価 値の平均値を示している.これらの図を作成する際,実際に保存されているデータは1世代 毎のチャンピオンデータであるため,図2.20の横軸にはステップ数を手法毎に平均し,縦 軸も同様に各世代における評価指標を手法毎に平均化して示している.なお,R¯のプロット

First natural frequency [Hz]

Total weight [kg]

20 30 40 50 60 70 80

0 10 20 30 40 50

SA1 SA2 SAGA

図2.19 10000ステップにおけるチャンピオンデータ(Model 1)

に関しては視認性を向上させるため対数変換した値(log10R)¯ をとっている.また,SAGA の計算結果を示すライン上にプロットされた点は,GAの計算手続きが適用されたステップ 数を示しており,SA2を示すライン上にプロットされた点は再アニーリングが適用されたス テップ数を示している.SAGAの結果を示すライン上にプロットされた丸印がSA2の丸印 のプロット間隔よりも狭いことから,1度の再アニーリングが行われる間に,数回のGAの 遺伝的操作手続きが行われている様子が確認できる.

図2.20に示すチャンピオンデータの個数Nallを見ると,計算開始後すぐにSAGAによっ て得られたNallの値が大きくなっていることがわかる.SA1はSA2よりもNallが大きいも のの,図2.21に示すパレート最適解の個数Noptの値を見ると,SA1によって得られた解は いずれも7500ステップ近くに至るまでパレート最適フロント上に到達していないことがわ かる.また,図2.22に示すランクの平均値を見ると,ここでもSAGAによって得られたチャ ンピオンデータが最も小さいR¯の値を示している.以上のことから,SAGAはパレート最 適フロント近傍の解を数多く求めていることがわかる.

図2.23は被覆率CRを示しており,SAGAが最も大きな値を示している.このことから,

SAGAを用いれば,目的関数空間の広い領域にわたり解を得ることができると言える.

図2.24は,チャンピオンデータに含まれる位相の種類数NGを示しており,SA2が最も 多くの位相をチャンピオンデータに含む傾向にあることがわかる.一方,図2.25に示すパ

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