例 3.20 冪級数
∑∞ n=0
2nzn,
∑∞ n=0
3nzn の収束半径はそれぞれ 1 2, 1
3 である。その和として得られ る冪級数
∑∞ n=0
(2n+ 3n)zn の収束半径は 1
3 である。実際
nlim→∞
2n+ 3n 2n+1+ 3n+1
= 1 3 であることから、d’Alembert の公式により収束半径は 1
3.
筆者は、2つの収束冪級数の和として得られる冪級数の収束半径は、最初の冪級数の収束半 径の最小値とある時期勘違いしていたが、それは正しくない。
問 37. 冪級数
∑∞ n=0
anzn,
∑∞ n=0
bnzn の収束半径がそれぞれ R1, R2 で、0< R1 < R2 <∞を満 たすならば、
∑∞ n=0
(an+bn)zn の収束半径はR1 であることを示せ。
問 38. 冪級数
∑∞ n=0
anzn,
∑∞ n=0
bnzn の収束半径が両方共 R とする。
(1)
∑∞ n=0
(an+bn)zn の収束半径はR 以上であることを示せ。
(2)
∑∞ n=0
(an+bn)zn の収束半径がR より大きい例をあげよ。
例 3.22 (連続関数列の極限が連続でない) fn(x) = tan−1(nx) (x∈R, n∈N) とする。
f(x) =
1 (x >0) 0 (x= 0)
−1 (x <0) とおくと、任意の x ∈ R に対して、lim
n→∞fn(x) = f(x). (x = 0 ならば fn(x) = 0 より
nlim→∞fn(x) = 0. x > 0 ならば、n → ∞ のとき nx → ∞ であるから、tan−1(nx)→ 1. x < 0 のときも同様。)
ゆえに{fn}は f に (R上) 各点収束する。fn はすべて連続関数であるが、f は不連続関数 である。
例 3.23 (魔女の帽子 (witch’s hat), 項別積分出来ない例) n ∈N に対して、fn: R→R を
fn(x) :=
n2x (0≤x < n1)
−n2x+ 2n (n1 ≤x < n2)
0 (x <0 またはx≥ n2) で定めるとき、任意の x∈Rに対して
nlim→∞fn(x) = 0.
すなわち数列 {fn} は定数関数 f(x) = 0 に (R 上)各点収束する。これを確かめるには (収束 の定義によると)
(∀ε >0) (∃N ∈N) (∀n ∈N: n ≥N) |fn(x)−f(x)|< ε を示す必要がある。
(a) x≤0 の場合: 任意の n ∈N について fn(x) = 0 であるから、N = 1 とすれば良い。
(b) x >0 の場合: N > 2
x を満たす N ∈N を取れば良い8。 グラフを描けばすぐ分かるように、任意の n∈N に対して
∫
R
fn(x)dx= 1 2· 2
n ·n = 1 であるから、
n→∞lim
∫
R
fn(x)dx= 1.
これは
∫
R
f(x)dx = 0 とは一致しない。すなわち
nlim→∞
∫
R
fn(x)dx̸=
∫
R
nlim→∞fn(x)dx.
8「数学解析」を受講した人向け: うるさく言うと、そういうN が存在することを示すのには、アルキメデス の公理を使うわけです。
一般に
nlim→∞
∫
K
fn(x)dx=
∫
K
nlim→∞fn(x)dx
が成り立っているとき、{fn} は K で項別積分 (term by term integration)出来る、項別積分 可能である、という。上の例は無条件では項別積分が出来ないことを示している。
定義 3.24 (一様収束) K を空でない集合、f: K →C, {fn}は K を定義域とする複素数 値関数列とする。{fn}が f に (K 上) 一様収束するとは、
nlim→∞sup
x∈K
|fn(x)−f(x)|= 0 が成り立つことをいう。
K を定義域とする関数列{an}n≥0 があるとき、関数項級数
∑∞ n=0
an(x)が (K 上)一様収 束するとは、部分和sn(x) :=
∑n k=0
ak(x)の作る関数列 {sn}n∈N が(K 上) 一様収束するこ とをいう。
(
重要
)任意の x0 ∈K に対して、|fn(x0)−f(x0)| ≤sup
x∈K
|fn(x)−f(x)|
であるから、関数列が一様収束するならば (同じ極限関数に) 各点収束するが9、逆は必ずし も成り立たない。上の例の関数列はどちらも各点収束しているが、一様収束はしていない。実 際、例 3.22 では、
sup
x∈R|fn(x)−f(x)|= 1, 例 3.23 では
sup
x∈R|fn(x)−f(x)|=n であるので、どちらも sup
x∈R|fn(x)−f(x)|= 0 とはならない。
命題 3.25 (連続関数列の一様収束極限は連続) K ⊂ C, f: K → C, {fn} は K 上の複素 数値連続関数列とする。{fn} が f に K 上一様収束するならば、f は K 上連続である。
証明 x0 ∈ K とする。任意の正数 ε に対して、{fn} が f に K 上一様収束することから、
(∃N ∈N) (∀n ∈N: n ≥N)
sup
y∈K|fn(y)−f(y)|< ε 3.
fN は K で連続であるから、(∃δ >0) (∀x∈K: |x−x0|< δ) |fN(x)−fN(x0)|< ε3.
9従って、関数列{fn} に対して、各点収束の意味での極限f を求めておけば、{fn}が一様収束するかどう かは、{fn}がf に一様収束するかどうか、という問題になる。複数の種類の収束があるけれど、極限関数f が 複数あるわけでない、ということである。もしかすると、これが各点収束について一番大事な定理なのかもしれ ない。
x∈K,|x−x0|< δ であれば、
|f(x)−f(x0)|=|f(x)−fN(x) +fN(x)−fN(x0) +fN(x0)−f(x0)|
≤ |f(x)−fN(x)|+|fN(x)−fN(x0)|+|fN(x0)−f(x0)|
≤sup
y∈K|f(y)−fN(y)|+|fN(x)−fN(x0)|+ sup
y∈K|fN(y)−f(y)|
≤ ε 3+ ε
3+ ε 3 =ε.
これは f が x0 で連続なことを示している。
問 39. 例 3.22 の関数列 {fn} に対しては、各点収束の意味での極限 f は x0 = 0 で連続で はない。命題 3.25 の証明のどこが成り立たないか、考えよ。
(冪級数に限らない関数列の) 項別積分、項別微分に関する定理もあるが10、詳しくは後述
することにして、まずは冪級数の項別微分定理に向かって邁進する。
次に紹介するWeierstrass のM-test は、便利な定理である11(一様収束を証明する場合の採 用率が九割近くになるのではないかと思われる)。
命題 3.26 (Weierstrass の M-test) K は空でない集合、{an} は K を定義域とする複 素数値関数列とする。実数列 {Mn} で
(i) (∀n∈N) (∀x∈K)|an(x)| ≤Mn. (ii)
∑∞ n=1
Mn は収束する。
を満たすものが存在するならば、
∑∞ n=1
|an(x)| と
∑∞ n=1
an(x) は K 上一様収束する。(前者が K 上一様収束することを、
∑∞ n=1
an(x)は K 上一様絶対収束するという。)
証明 n ∈N, x∈K に対して、
Tn:=
∑n k=1
Mk, Sn(x) :=
∑n k=1
|ak(x)|, sn(x) :=
∑n k=1
ak(x) とおく。
任意のx∈K, 任意のn, m∈N に対して、
(♯) |sn(x)−sm(x)| ≤ |Sn(x)−Sm(x)| ≤ |Tn−Tm|
10関数論では、後述する線積分が重要であるので、項別積分に関する定理はそのときに述べることにする。
11暇話になるけれど、昔小説(タイトルは忘れた)を読んでいて、主人公(学生)が一様収束の勉強をしている というくだりがあった。難しいことを真面目に勉強しているということを言いたかったらしい。でも一様収束と いうのはそんなに難しいことではないと思う(時が経って、自分の方がずれてしまったのかなあ?)。関数のグラ フを描いてみればイメージは明瞭である(と思うのだけど)。実際に証明が出来るかについては、「級数の一様収 束の証明なんて、結局はこれを使うしかないはずだ」くらいに割り切って、一様収束とWeierstrassのM-testを セットで覚えれば良いと思う。
が成り立つ (いつもの式変形だから、もうさぼってもいいよね)。
仮定より、{Tn} は収束列であるから、Cauchy 列である。任意の x ∈K に対して、(♯) よ り、{Sn(x)},{sn(x)} も Cauchy 列であるから、収束列である。
T = lim
n→∞Tn, S(x) = lim
n→∞Sn(x), s(x) = lim
n→∞sn(x) とおく。(♯) で m→ ∞ とすると
|sn(x)−s(x)| ≤ |Sn(x)−S(x)| ≤ |Tn−T|. これが任意の x∈K について成り立つのだから
sup
x∈K
|sn(x)−s(x)| ≤sup
x∈K
|Sn(x)−S(x)| ≤ |Tn−T|.
n → ∞とすると、右辺は 0 に収束するから、{Sn} は S に、{sn}は s に、K 上一様収束す る。
(細かいことだが、上の証明から、一般に ∑
n
|an(x)| が一様収束すれば、∑
n
an(x) も一様 収束することが分かる。すなわち「一様絶対収束するならば一様収束する」。)
次の定理は有名である(定理3.12 とセットにして覚えるべき)。
定理 3.27 (冪級数は収束円盤内の任意の閉円盤で一様絶対収束する)
∑∞ n=0
an(z−c)n の収 束半径を ρ とする。このとき 0< R < ρ を満たす任意の R に対して、
∑∞ n=0
an(z−c)n は 閉円盤K :={z ∈C| |z−c| ≤R} 上一様絶対収束する。
証明 c= 0 として証明すれば十分である。
R <ˆr < ρなる rˆを取ると(ρ <∞ ならばrˆ= R+ρ
2 ,ρ=∞ ならばrˆ=R+ 1)、
∑∞ n=0
anzn は z = ˆr で収束するので、lim
n→∞anrˆn = 0. ゆえに {anrˆn}n∈N は有界な数列であるから、
M := sup
n∈N|anrˆn| とおくと M ∈R. |z| ≤R に対して、
|anzn|=|anrˆn|z ˆ r
n≤M (R
ˆ r
)n
.
Mn :=M (R
ˆ r
)n
とおくと、∀z ∈K に対して、|anzn| ≤Mn, またR <rˆであるから、
∑∞ n=0
Mn は収束する。Weierstrass の M-test により、
∑∞ n=0
anzn は、K上一様収束する。
この定理により、冪級数は収束円の内部で連続であることが分かるが、すぐ後にもっと強く 正則 (微分可能)であることを示すので、それはわざわざ命題として書かないことにする。
余談 3.1 (言葉遣い「広義一様収束」) D(c;ρ)内の任意のコンパクト集合(Cの場合は有界な 閉集合のこと)は、適当な R < ρに対して、{z ∈C| |z−c| ≤R}に含まれるので、冪級数は D(c;ρ)内の任意のコンパクト集合上で一様収束することが分かる。そのことをD(c;ρ)で広義 一様収束するという(英語では、そのものずばりで、“uniformly convergent on every compact set” というのが普通らしい)。