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円環領域における正則関数の Laurent 展開

ドキュメント内 , ( ) 2 (312), 3 (402) Cardano (ページ 116-122)

定理 10.4 (Laurent級数の収束範囲, “収束円環” の存在)

n=0

an(z−c)n+

n=1

an (z−c)n について、次の3つのうちのいずれか一つが成り立つ。

(i) 0≤ ∃R1 <∃R2 ≤ ∞ s.t. 円環領域 A(c;R1, R2) で収束し、その外部では発散する。

R1 < r1 < r2 < R2 を満たす任意の r1, r2 に対して、A(c;r1, r2) で一様に絶対収束 する。

(ii) 0≤ ∃R <∞s.t. 円周 |z−c|=R の空でない部分集合上で収束し、その補集合では 発散する。

(iii) C 上いたるところで発散する。

(i)の場合の R1R2, (ii) の場合の R は一意的に定まる。

証明

n=0

an(z−c)n については、ある R2 [0,)∪ {∞} が存在して、|z−c|< R2 で収束 し、|z−c|> R2 では発散する。

n=1

an

(z−c)n については、ある R1 [0,)∪ {∞} が存在して、|z −c| < R2 で発散し、

|z−c|> R2 では収束する。

R1 < R2 であれば、Laurent 級数は A(c;R1, R2) で収束し、その外部 {z C | |z −c| <

R1 or|z−c|> R2}で発散する。

R1 =R2であれば、Laurent級数は{z C| |z−c| ̸=R2}で発散する。{z C| |z−c|=R2} の部分集合上では収束する可能性があるが、部分集合が空集合ということもありうる。

R1 > R2 であれば、Laurent 級数は C 上のいたるところで発散する。

55. 上の定理の (i)の場合に、R1, R2an を用いて表わせ。

定理 10.5 (円環領域で正則な関数のLaurent展開) c∈Cで、R1, R2 は 0≤R1 < R2

を満たすとする(R1 は 0以上の実数だが、R2R1 より大きい実数であるか、または

に等しい)。f が A(c;R1, R2) で正則ならば、∃{an}n∈Z s.t.

(19) f(z) =

n=0

an(z−c)n+

n=1

an

(z−c)n (R1 <|z−c|< R2).

(19) の右辺の級数は、R1 < r1 < r2 < R2 を満たす任意のr1, r2 に対して、A(c;r1, r2) で 一様に絶対収束する(特に一様収束であり、絶対収束である)。

(係数の一意性)等式 (19) が成り立っているならば、R1 < r < R2 を満たす任意のr に対 して、

(20) an = 1

2πi

|zc|=r

f(z)

(z−c)n+1 dz (nZ).

以下、(19) を書く手間を少なくするため (案外と大事) f(z) =

n=−∞

an(z−c)n あるいは

f(z) =

n∈Z

an(z−c)n と略記する。

証明 (係数の一意性)∀m Z に対して、等式 (19) の両辺を (z−c)m+1 で割った f(z)

(z−c)m+1 =

n=−∞

an(z−c)nm1

は、R1 < r < R2 なる r に対して、円周|z−c|=r 上で一様に収束するので、

1 2πi

|zc|=r

f(z)

(z−c)m+1 dz = 1 2πi

|zc|=r

n=−∞

an(z−c)nm1 dz

=

n=−∞

1 2πian

|zc|=r

(z−c)nm1 dz

=

n=−∞

1

2πian·2πiδnm=am. すなわち (20)が成立する。

(存在) R1 < r1 < r2 < R2 を満たす任意の r1, r2 を取る。z ∈A(c;r1, r2)とする。

C1: |ζ−c|=r1, C2: |ζ−c|=r2

とおくと、Cauchyの積分公式から、

(♯) f(z) = 1

2πi

C2

f(ζ)

ζ−zdζ− 1 2πi

C1

f(ζ) ζ−zdζ.

D:=A(c;r1, r2), M := max

ζD |f(ζ)| とおく。

(♯) の右辺第1項については、円盤内のCauchy の積分公式の証明とまったく同様の議論で 1

2πi

C2

f(ζ) ζ−zdζ =

n=0

an(z−c)n, an:= 1 2πi

C2

f(ζ) (ζ−c)n+1dζ.

(♯)の右辺第2項についても、ほぼ同様であるが、これは一応書く。ζ|ζ−c|=r1 を満た

すとき、

ζ−c z−c

= r1

|z−c| <1 に注意して

1

ζ−z = 1

−c)−(z−c) = 1

z−c· 1 1 ζ−c

z−c

= 1 z−c

n=0

(ζ−c z−c

)n

=

n=1

−c)n1 (z−c)n . f(ζ)−c)n1

(z−c)n

M r1

( r1

|z−c| )n

であり、右辺は |公比|<1 の等比数列であるから、Weierstrass の M-test により、

n=0

f(ζ)(ζ−c)n1 (z−c)n

は円周 C1: |ζ−c|=r1 上、一様収束する。ゆえに項別積分が可能で、

1 2πi

C1

f(ζ)

ζ−cdζ = 1 2πi

C1

n=1

f(ζ)(ζ−c)n1 (z−c)n

=

n=1

1 2πi

C1

f(ζ)(ζ−c)n1 (z−c)n =

n=1

an (z−c)n. ただし

an:= 1 2πi

C1

f(ζ) (ζ−c)n1 = 1 2πi

C1

f(ζ)

−c)n+1dζ.

以上から

f(z) =

n=0

an(z−c)n+

n=1

an

(z−c)n (z ∈A(c;r1, r2)).

係数の一意性で示したことから、r1 < r < r2 を満たす任意のr に対して、

an = 1 2πi

|ζc|=r

f(ζ) (ζ−c)n+1dζ.

(最後のしあげ)r1, r2 が任意であることと、この係数を表す積分の積分路がr によらないこと から、A(c;R1, R2) で収束することが分かる。

定義 10.6 (円環領域における Laurent 展開, 孤立特異点のまわりの Laurent 展開) c∈C, 0≤R1 < R2 ≤ ∞,fA(c;R1, R2) で正則とするとき、

(21) f(z) =

n=0

an(z−c)n+

n=1

an

(z−c)n (R1 <|z−c|< R2)

を満たす {an}n∈Z が一意的に存在するが、(21) をfA(c;R1, R2) における Laurentロ ー ラ ン (級数) 展開(the Laurent (series) expansion) あるいは単にLaurentロ ー ラ ン 級数 (Laurent series)と呼ぶ。特に R1 = 0 の場合、f の孤立特異点 cのまわりの(「cにおける」とも 言う) Laurent 展開とも呼ぶ。

正則関数が冪級数展開 (Taylor展開)出来るという定理と、上の定理は良く似ている。fc を中心とする円盤 D(c;ε) で正則な場合、f は c のまわりで Taylor 展開可能できるが、そ れは実は fc のまわりの(あるいはもっと詳しくA(c; 0, ε) における) Laurent 展開でもあ る。その意味で

Laurent 展開は、 Taylor 展開の一般化である

後でおいおい分かることであるが、実はLaurent展開が出来ることは重要であるが、Laurent 展開の具体形が必要になることはあまりない(後で紹介する留数が分かれば十分であることが

多い)。以下、Laurent展開を具体的に求めるための方法をいくつか紹介するが、“便利な方法”

は存在しない、いう感想を持つかもしれない。それでもあまり困らないわけである。

まずTaylor 展開の場合の f(z) =

n=0

an(z−c)n, an = f(n)(c)

n! (n= 0,1,2, . . .) の拡張であるような便利な公式は存在しない。また、

an= 1 2πi

|ζc|=r

f(ζ)

−c)n+1 (n Z)

という公式は、an の一意性を示すのに役立ったが(重要)、an を具体的に求める目的には役立 たないことが多い(線積分を計算するのはしばしば難しい)。

とにかく何らかの手段で f(z) =

n=−∞

an(z−c)n (R1 <|z−c|< R2)

を満たす{an}が得られれば、これが fA(c;R1, R2)におけるLaurent展開である(一意性 による)、という事実を利用する場合が多い。

10.7 (色々な求め方) (1) 関数 f(z) = 3

(z1)2 は、C\ {1}=A(1; 0,∞)で正則であるが、

それ自身が 1のまわりの Laurent 展開を与える。実際、

a2 := 3, an:= 0 (nZ\ {−2}) で {an} を定義するとき、

f(z) =

n=−∞

an(z1)n (0<|z−1|<∞) が成り立つ。

(2) f(z) = exp1

z は C\ {0} =A(0; 0,∞) で正則であるから、そこで Laurent 展開出来るは ずである。expz の 0のまわりの Taylor 展開

expζ =

n=0

1

n!ζnC) の ζ に 1

z を代入することで得られる f(z) = exp 1

z =

n=0

1 n!

(1 z

)n

= 1 +

n=1

1 n!

1

zn (0<|z|<∞) が A(0; 0,∞) におけるLaurent 展開である。

(3) f(z) = sinz

z2 は、C\ {0}=A(0; 0,∞)で正則であるから、そこで Laurent 展開できるは ずである。sinz の 0 のまわりの Taylor 展開

sinz =

n=0

(1)n

(2n+ 1)!z2n+1 (z C) を z2 で割って得られる

f(z) = sinz z2 =

n=0

(1)n

(2n+ 1)!z2n1 =

n=1

(1)n

(2n+ 1)!z2n1+ 1

z (0<|z|<∞) が fA(0; 0,∞) における Laurent 展開である。

56. 上の例の(2), (3) で、an が何であるか書け。

任意の有理関数f は、部分分数分解することによって、多項式または 1

(z−a)n の形の項の 線型結合で書ける。それらは、例 10.1 で見たように等比級数の和の公式を利用したり、微分 を考えることで Laurent 級数展開が求まる。そうして求めた部分分数分解の各項の Laurent 展開を寄せ集めることで、f の Laurent 展開が得られる。

10.8 ( 1

z−a Laurent 展開) f(z) = 1

z−a の Laurent 展開は以下のように求まる。

(1) fA(a; 0,∞) で正則であるから、f は a のまわりでLaurent 展開出来て、それはf(z) の定義式の右辺そのものである。つまり

f(z) = 1

z−a (0<|z−a|<∞) が fa のまわりの (A(a; 0,) における) Laurent展開である。

(2) =aとすると、f は cの近傍 D(c;|a−c|)で正則であるから、f は cのまわりでTaylor 展開できるが、それが fc のまわりの (円環領域A(c; 0,|a−c|) における) Laurent展 開である。

1

z−a = 1

(z−c)−(a−c) = 1

a−c· 1 1 z−c

a−c

= 1 a−c

n=0

(z−c a−c

)n

(収束 ⇔ |(z−c)/(a−c)|<1)

=

n=0

(z−c)n

(a−c)n+1 (0<|z−c|<|a−c|).

(3) = a とすると、fA(c;|a−c|,∞) で正則であるから、そこで Laurent 展開出来る。

実際

f(z) = 1

z−a = 1

(z−c)−(a−c) = 1

z−c· 1 1 a−c

z−c

= 1

z−c

n=0

(a−c z−c

)n

(収束⇔ |(a−c)/(z−c)|<1)

=

n=1

(a−c)n1

(z−c)n (|a−c|<|z−c|<∞).

次の例は授業ではカットするかもしれない。

10.9 (部分分数分解のLaurent展開を寄せ集めてLaurent展開する)

f(z) = 1

z(z−1)(z2) = 1 2 · 1

z 1 z−1 +1

2 · 1 z−2

とする。f は C\ {0,1,2} で正則である。f を 0 を中心とする円環領域で Laurent 展開して みよう。

(1) fA(0; 0,1) で正則であるから、そこで Laurent 展開出来るはずである。

1 z = 1

z (0<|z|<∞), 1

z−1 = 1

1−z =

n=0

zn (|z|<1), 1

z−2 =1 2 · 1

1 z 2

=1 2

n=0

(z 2

)n

=

n=0

zn

2n+1 (|z|<2).

であるから f(z) = 1

2· 1 z +

n=0

zn1 2 ·

n=0

zn 2n+1 =

n=0

(

1 1 2n+1

)

zn+1 2 · 1

z (0<|z|<1).

(2) fA(0; 1,2) でも正則であるから、そこでもLaurent展開できる。

1

z−1 = 1 z · 1

1 1 z

= 1 z

n=0

(1 z

)n

=

n=1

1

zn (1<|z|<∞).

ゆえに f(z) = 1

2· 1 z

n=1

1 zn 1

2

n=0

zn 2n+1 =

n=0

zn 2n+2 1

2 · 1 z

n=2

1

zn (1<|z|<2).

(3) fA(0; 2,∞) でも正則であるから、そこでもLaurent展開できる。

1

z−2 = 1 z · 1

12 z

= 1 z

n=0

(2 z

)n

=

n=0

2n zn+1 =

n=1

2n1

zn (2<|z|<∞).

ゆえに f(z) = 1

2·1 z−

n=1

1 zn+1

2

n=1

2n1 zn =

(1

21 + 1 2

)1 z+

n=2

2n21 zn =

n=3

2n21

zn (2<|z|<∞).

これがA(0; 2,∞) における f の Laurent 展開である。

ドキュメント内 , ( ) 2 (312), 3 (402) Cardano (ページ 116-122)