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冪級数の収束円

ドキュメント内 , ( ) 2 (312), 3 (402) Cardano (ページ 43-49)

証明 条件 (i) より、部分和 Tn:=

n k=1

bk の作る数列{Tn} は単調増加数列である。条件(ii) は {Tn} が上に有界ということを意味しているので、「上に有界な単調増加数列は収束する」

という定理によって、{Tn}は収束する。すなわち ∑

n

bn は収束する。

3.9 (「画像処理とフーリエ変換」から) (唐突に別の講義で出て来たものにジャンプ)内積 空間 X の要素 f と正規直交系n}n∈N に対して、∀N N

N n=1

|(f, φn)|2 ≤ ∥f∥2

という不等式が証明できる。このとき

n=1

|(f, φn)|2 は収束する。bn = |(f, φn)|2, M = ∥f∥2 として命題 3.8 を適用するわけである。そして

n=1

|(f, φn)|2 ≤ ∥f∥2

が成り立つ (これは Besselの不等式と呼ばれる有名な不等式である)。

このとき bn:=M z−c

z0−c

n とおくと、

(∀n∈N∪ {0}) |an(z−c)n|=|an(z0−c)n| z−c

z0−c

n≤M z−c

z0−c

n =bn.

数列 {bn}は公比 |(z−c)/(z0−c)|<1の等比級数であるので収束する:

n=0

bn= M

1− |z−c|/|z0 −c|. ゆえに優級数の定理から

n=0

an(z−c)n は絶対収束する。

3.11

n=0

an(z−c)nz =z0 で発散するならば、|z−c|>|z0 −c| を満たす任意の z に対して発散する。

証明 補題から「|z1−c|<|z2−c|のとき、z2 で収束すればz1 で収束する」が分かるが、そ の対偶である。

定理 3.12 (冪級数の収束円の存在) 任意の冪級数

n=0

an(z−c)n に対して、次のいずれか 一つが成立する。

(i) z =c以外の任意のz で冪級数は収束しない。

(ii) 任意の複素数z で冪級数は収束する。

(iii) ある正の数 ρ が存在して、|z−c|< ρならば冪級数は収束し、|z−c|> ρ ならば冪 級数は発散する。

証明 (授業では、図を描いて流すものかもしれない。「きちんとやるには、区間縮小法に持 ち込みますが、それは講義ノートを見て下さい。)

A:=

{

z C

n=0

an(z−c)n は収束する }

とおく。c∈A であることに注意する(z =c を代入すると n 1 に対して an(z−c)n = 0)。 次の3つに場合分けできる。

(i) A={c}. すなわち、c以外のすべての複素数で発散する。

(ii) A=C. すなわち、すべての複素数で収束する。

(iii) (i), (ii)のいずれでもない。

(iii) の場合を考える。

(i)でないので、∃zc∈A\ {c}. r0 :=|zc−c| とおくとき、|z−c|< r0 では収束する。

(ii) でないので、∃zd C\A. R0 :=|zd−c| とおくとき、|z−c|> R0 では発散する。

0< r0 < R0 である。以下、二分法を行なう。

ρ0 := r0+R0

2 とおく。

c+ρ0 ∈Aであれば |z−c|< ρで級数は収束する。このときr1 :=ρ0,R1 :=R0 とおく。

c+ρ0 ̸∈A であれば|z−c|> ρで級数は発散する。このときr1 :=r0,R1 :=ρ0 とおく。

どちらの場合も、級数は |z−c|< r1 で収束し、|z−c|> R1 で発散する。また r0 ≤r1 < R1 ≤R0, R1−r1 = R0−r0

2 が成り立つ。

以下同様にして、数列{rn}, {Rn} が作ると、

• {rn}は単調増加数列であり、{Rn} は単調減少数列である。

任意の n に対して rn< Rn, Rn−rn = R0 −r0 2n .

任意の n に対して、級数は |z−c|< rn で収束し、|z−c|> Rn で発散する。

区間縮小法により、{rn}{Rn} は共通の極限ρ に収束する。

ρ≥r0 >0 であるから ρ >0.

また級数は |z−c|< ρ で収束し、|z−c|> ρ で発散する。

(i) の場合に ρ = 0, (ii) の場合に ρ = とすると、形式的に次のように一つにまとめら

れる。

あるρ (0≤ρ≤ ∞) が一意的に存在し、|z−c|< ρで収束、|z−c|> ρで発散する。

定義 3.13 (収束半径, 収束円) ρ を冪級数の収束半径、{z C| |z−c|< ρ} を冪級数の 収束円と呼ぶ。

3.14 (もっとも簡単な冪級数、等比級数) (c = 0, an = 1 とした)

n=0

zn を考えよう。こ れは公比 z の等比級数であるから、収束・発散が具体的な計算で判る。結論だけ述べると、

|z|<1であれば収束、|z| ≥1であれば発散する。ゆえに収束半径は1で、収束円はD(0; 1) = {z C| |z|<1}.

36. 上の例で述べたこと(複素等比級数の収束条件)を確認せよ。

注意 3.15 (収束円の周上の点では) 収束円の周 {z C| |z−c|=ρ} 上の点 z での収束発散 については何も主張していないことに注意しよう。これについてはケース・バイ・ケースとし か言いようがない。

上の例で見たように、

n=0

zn については、収束半径は 1で、|z|= 1 上のすべての点で発散 する。

後で見るように

n=1

zn

n2 については、収束半径は 1で、|z|= 1 上のすべての点で収束する。

n=1

zn

n については、収束半径は 1で、|z|= 1 上の点のうち z = 1 では発散するが、そ れ以外では収束する。

この講義では、この問題には(このような単純な例を除いて)あまり深入りしないことにする。

{an} が分かっているとき、それから ρ を計算する公式を紹介する。次の定理は、適用範囲 はあまり広くないが(それでも微積の講義で現れる冪級数の多くを処理可能である)、使うのが 簡単なので、身につけるべきものである。

命題 3.16 (係数比判定法, ratio test, ダ・ランベールの判定法) 冪級数

n=0

an(z−c)nに ついて、ある番号から先のすべてのn に対して an̸= 0 であり

nlim→∞

|an|

|an+1| が存在するならば、それは冪級数の収束半径に等しい。

証明 c= 0 の場合に証明すれば良い。lim

n→∞

|an|

|an+1| =ρとおく。|z|< ρならば収束し、|z|> ρ ならば発散することを示す。

|z|< ρとする。|z|< R < ρとなる R を取る。(ρ < ならばR := |z|+ρ

2 とおく。ρ= ならば R:=|z|+ 1 とおく。) lim

n→∞

|an|

|an+1| =ρ であるから、(∃N N) (∀n∈N: n≥N) an

an+1

> R (これは an+1

an

< 1

R と書き直せる).

この条件を満たす N を1つ取る。m 0 とすると aN+mzN+m=

aNaN+1

aN · aN+2

aN+1 · · · · aN+m

aN+m1zNzm

≤aNzN(

|z| R

)m

. 言い換えると ∀n≥N に対して

|anzn| ≤aNzN(

|z| R

)nN

.

そこで

bn :=





|anzn| (0≤n≤N 1) aNzN(

|z| R

)nN

(n ≥N) とおくと、任意の n Nに対して |anzn| ≤bn,

n=0

bn =

N−1

n=0

|anzn|+ aNzN

1− |z|/R (収束).

優級数の定理により

n=0

anzn は収束する。

|z| > ρ とする。|z| > R > ρ となる R を取る。(ρ = のときは考えなくて良いので、

R := |z|+ρ

2 とおけば良い。) lim

n→∞

|an|

|an+1| =ρ であるから、(∃N N) (∀n N: n≥N) an

an+1

< R (これは an+1

an

> 1

R と書き直せる).

上と同様にして (しかし不等号の向きは逆になって)∀n ≥N に対して

|anzn| ≥aNzN(

|z| R

)nN

.

ゆえに anzn は0に収束しないので、

n=0

anzn は発散する。

3.17

n=1

zn

n の収束半径は1 である。実際an = 1

n とおくと、

nlim→∞

|an|

|an+1| = lim

n→∞

n+ 1

n = lim

n→∞

( 1 + 1

n )

= 1.

収束円は {z C| |z|<1}. 同様に

n=1

zn

n2 の収束半径は1 である。

n=0

zn

n! (expz の Taylor 展開) の収束半径は である。実際 an= 1

n! とおくと

nlim→∞

|an|

|an+1| = lim

n→∞

(n+ 1)!

n! = lim

n→∞(n+ 1) =∞. 収束円は C.

同様に

n=0

n!zn の収束半径は0 である。

n=0

(1)n

(2n)!z2n (cosz のTaylor 展開) の収束半径は である。実際ζ =z2 とおくと、

n=0

(1)n (2n)!z2n=

n=0

(1)n (2n)!ζn.

右辺は ζ の冪級数である。まずこの収束半径を調べる。an = (1)n

(2n)! とおくと、

nlim→∞

|an|

|an+1| = lim

n→∞

(2(n+ 1))!

(2n)! = lim

n→∞(2n+ 2)(2n+ 1) =∞.

収束半径が であるから、この ζ の冪級数は任意の ζ に対して収束する。するともとの級 数は任意の z に対して収束することが判る。ゆえに収束半径は . 収束円は C.

時々 |an|

|an+1| なのか |an+1|

|an| なのか、混乱しそうになるが、|an|の増大が早まるほど、収束半 径は小さくなるはず、と考えれば前者が正しいと判るであろう。あるいは

n=0

(z ρ

)n

に対し て(これは等比級数で収束条件が|z|< ρであることは明白)、収束半径がρ という結果が出る かどうか。

与えられた冪級数の係数から収束半径を求める問題には、ある意味で決定版と言える解答が ある。それが次の定理である。

命題 3.18 (Cauchy-Hadamard の公式) 冪級数

n=0

an(z−c)n の収束半径を ρとする。

1

= 0, 1

0 = の約束のもとで、次式が成り立つ。

lim sup

n→∞

n

|an|= 1 ρ .

任意の複素数列 {an} に対して、lim sup√n

|an| は確定するので、任意の冪級数の収束半径 を表す公式になっていることに注意しよう。

これを使いこなすためには、数列の上極限lim sup (付録 C.1.1(p. 168) 参照)を習得する必 要があるが、それにはある程度の時間が必要になるので、この講義ではこれ以上追求しないこ とにする。証明は付録 ?? で与えておく。

3.19 例えば

n=1

zn2 =z+z4+z9+· · · のような級数は冪級数であり(n が平方数である ときに an = 1, そうでなければ an = 0)、収束半径が 1 であることは少し考えれば分かるが、

係数比判定法の適用範囲外である。Cauchy-Hadamard の公式を使えば、収束半径が1である ことはすぐに分かる。

3.20 冪級数

n=0

2nzn,

n=0

3nzn の収束半径はそれぞれ 1 2, 1

3 である。その和として得られ る冪級数

n=0

(2n+ 3n)zn の収束半径は 1

3 である。実際

nlim→∞

2n+ 3n 2n+1+ 3n+1

= 1 3 であることから、d’Alembert の公式により収束半径は 1

3.

筆者は、2つの収束冪級数の和として得られる冪級数の収束半径は、最初の冪級数の収束半 径の最小値とある時期勘違いしていたが、それは正しくない。

37. 冪級数

n=0

anzn,

n=0

bnzn の収束半径がそれぞれ R1, R2 で、0< R1 < R2 <∞を満 たすならば、

n=0

(an+bn)zn の収束半径はR1 であることを示せ。

38. 冪級数

n=0

anzn,

n=0

bnzn の収束半径が両方共 R とする。

(1)

n=0

(an+bn)zn の収束半径はR 以上であることを示せ。

(2)

n=0

(an+bn)zn の収束半径がR より大きい例をあげよ。

ドキュメント内 , ( ) 2 (312), 3 (402) Cardano (ページ 43-49)