(まだ工事中。もう少しすっきり読み易くしたい。)
級数が与えられたとき、それが収束することを証明する必要がしばしば生じる。
入門段階の複素関数論では、次の2つの定理があれば、90% 程度は処理可能である。両者 は良く似ていて、覚えるときには一つの定理にまとめてしまうことも可能ではある。それで並 べて見せることにする。
定理 3.4 (Weierstrass の M-test (M判定法)) (複素数値を取る)関数項級数∑
n
an(z) (z ∈K) に対して、次の2条件を満たす {bn} が存在すれば、∑
n
an(z) は K で一様に絶 対収束する。
(i) (∀n) (∀z ∈K) |an(z)| ≤bn. (ii) ∑
n
bn は収束する。
定理 3.5 (優級数の定理) 複素数の級数 ∑
n
an に対して、次の2条件を満たす {bn}が存 在すれば、∑
n
an は絶対収束する。
(i) (∀n) |an| ≤bn. (ii) ∑
n
bn は収束する。
この項では、定理 3.5 のみ証明する。まず定理に現れる「絶対収束」という言葉を定義し
よう。
定義 3.6 (絶対収束) ∑
n
|an| が収束するとき、∑
n
an は絶対収束すると言う。
次の命題が基本的である。証明は無理に覚えなくても良いが、C が完備であることをどの ように使っているかを読み取ると良い(Cauchy列、完備性が自然に会得できるかも)。
命題 3.7 (絶対収束級数は収束する) 任意の複素級数は、絶対収束するならば収束する。
証明 ∑
n
an が絶対収束するとする。
sn:=
∑n k=1
ak, Sn:=
∑n k=1
|ak|
とおく。仮定から {Sn}は収束列であるから、命題 3.2 によってCauchy 列である。
n, m∈N とする。n > m の場合は 今日の式変形はこれ!
|sn−sm|=
∑n k=1
ak−
∑m k=1
ak =
∑n k=m+1
ak ≤
∑n k=m+1
|ak|=
∑n k=1
|ak| −
∑m k=1
|ak|=Sn−Sm.
同様に n < m の場合は |sn−sm|< Sm−Sn が得られるので、一般に
|sn−sm| ≤ |Sn−Sm|
が成り立つ。ゆえに {sn} は Cauchy 列である。定理3.3 より {sn} は収束列である。すなわ ち ∑
n
an は収束する。
絶対収束はしないが、収束はする級数は、条件収束するという。条件収束する級数には例え ば
∑∞ n=1
(−1)n−1
n = 1− 1 2 +1
3 −1
4 +· · · などがある。
問 34.
∑∞ n=1
1
n =∞ であることを示せ。
問 35.
∑∞ n=1
(−1)n−1
n の部分和の作る数列を{sn}とするとき、{s2n}n∈N と {s2n−1}n∈N が、そ れぞれ上に有界な単調増加数列、下に有界な単調減少数列であることを確かめ、共通の極限に 収束することを示せ。
この2つの問に解答すれば、
∑∞ n=1
(−1)n−1
n が条件収束することが証明できたことになる。
後でAbel の定理という定理を紹介するときに、この級数についてまとめて解説する予定で ある。実は極限は log 2 になることが分かる。
絶対収束は各項の大きささえ十分小さければ収束ということで、大きさの比較の話に持ち込 めて考えやすい。優級数の定理はそれが分かり易い形に現れている。
早速、優級数の定理の証明にとりかかる。優級数の定理は、定理3.7 の一般化のようなもの で、証明も上の定理と良く似ている。
優級数の定理の証明 Sn :=
∑n k=1
|ak|, Tn :=
∑n k=1
bk とおく。仮定から {Tn} は収束列であるか ら、命題 3.2 によって Cauchy 列である。
n, m∈N とする。n > m の場合は
|Sn−Sm|=
∑n k=m+1
|ak| ≤
∑n k=m+1
bk =Tn−Tm. 同様に n < m の場合は |Sn−Sm| ≤Tm−Tn が成り立つので、一般に
|Sn−Sm| ≤ |Tn−Tm|.
これから{Sn}はCauchy列であるから、定理3.3より {Sn}は収束列である。すなわち∑
n
an は絶対収束する。
優級数の定理を用いるには、与えられた∑
n
an に対して、適当な収束する級数 ∑
n
bn を見 つけることが必要になる。
{bn} としては、
bn =M rn (ここで 0≤r <1) や
bn = M
nα (ここでα >1)
などが良く使われる。冪級数の場合は前者 (等比級数) の使用頻度が高い。
次の定理も知っておくと良い(というか、
∑∞ n=1
1
nα の収束を示すのにぴったり7)。
命題 3.8 (部分和が上に有界な正項級数は収束する) {bn}n∈N が以下の2条件を満たすな らば
∑∞ n=1
bn は収束する。
(i) (∀n∈N) bn ≥0.
(ii) (∃M ∈R) (∀n∈N)
∑n k=1
bk ≤M.
(条件(i)が成り立つとき、∑
n
bn は正項級数という。優級数定理を使おうとするとき|an| ≤bn という条件があるので、自動的に (?) 条件(i)が成り立つ。そこで条件 (ii) が要点となる条件 ということになる。)
7結局、授業中に書くことに。例のグラフを描いて、n ≥ 2 ならば 1 nα ≤
∫ n n−1
dx
xα. それから
∑n k=2
1 kα ≤
∑n
k=2
∫ k k−1
dx xα =
∫ n 1
dx xα =
[x1−α 1−α
]n 1
≤ 1
1−α. これ計算合っているのかな??
証明 条件 (i) より、部分和 Tn:=
∑n k=1
bk の作る数列{Tn} は単調増加数列である。条件(ii) は {Tn} が上に有界ということを意味しているので、「上に有界な単調増加数列は収束する」
という定理によって、{Tn}は収束する。すなわち ∑
n
bn は収束する。
例 3.9 (「画像処理とフーリエ変換」から) (唐突に別の講義で出て来たものにジャンプ)内積 空間 X の要素 f と正規直交系{φn}n∈N に対して、∀N ∈N
∑N n=1
|(f, φn)|2 ≤ ∥f∥2
という不等式が証明できる。このとき
∑∞ n=1
|(f, φn)|2 は収束する。bn = |(f, φn)|2, M = ∥f∥2 として命題 3.8 を適用するわけである。そして
∑∞ n=1
|(f, φn)|2 ≤ ∥f∥2
が成り立つ (これは Besselの不等式と呼ばれる有名な不等式である)。