13.5 その他
13.5.2 命題 13.5 の別証明
問 73. f は c の近傍で正則とする。Cε: z =c+εeiθ (θ ∈[0, π])とするとき、
εlim→+0
∫
Cε
f(z)
z−c dz =πif(c).
(ゆえに上半平面にあるものは、γR の内部に存在する)、仮定より実軸上にはない。それらは f(z)eiaz の極または除去可能特異点であり、それら以外の点ではf(z)eiaz は正則である。また γR は単純閉曲線であるから、留数定理を用いて、
∫
γR
f(z)eiaz dz = 2πi ∑
cは γRの内部
Res(f(z)eiaz;c) = 2πi ∑
Imc>0
Res(f(z)eiaz;c).
CR は z =Reiθ (θ∈[0, π]) とパラメーターづけできる。dz =iReiθ dθ で、
∫
γR
f(z)eiaz dz =
∫ π 0
f(Reiθ)eiaReiθ ·iReiθ dθ,
iaReiθ =iaR(cosθ+isinθ) =−aRsinθ+iaRcosθ, Re[
iaReiθ]
=−aRsinθ, eiaReiθ=eRe[iaReiθ] = e−aRsinθ であるから、
∫
γR
f(z)eiaz dz ≤
∫ π 0
f(Reiθ)eiaReiθiReiθdθ ≤ M R ·R
∫ π 0
e−aRsinθ dθ
=M
∫ π
0
e−aRsinθ dθ.
実は
(34) lim
R→∞
∫ π 0
e−aRsinθ dθ = 0 である。これを認めれば、
∫ ∞
−∞
f(x)eiax dx= lim
R→∞
∫ R
−R
f(x)eiax dx=
∫
ΓR
f(z)eiaz dz
=
∫
γR
f(z)eiaz dz −
∫
CR
f(z)eiaz dz
= 2πi ∑
Imc>0
Res(f(z)eiaz;c)−
∫
CR
f(z)eiaz dz
→2πi ∑
Imc>0
Res(f(z)eiaz;c) (R→ ∞) として証明が完了する。(34) については、以下で3通りの証明を与える。
(34) の証明 これは Lebesgue 積分の有界収束定理を知っているならば、
e−aRsinθ≤1,
∫ π 0
1dθ =π <∞, lim
R→∞e−aRsinθ = {
0 (θ ∈(0, π))
1 (θ = 0, π) = 0 (a.e.) から明らかである。
初等的な方法としては、0<∀δ < π/2 に対して
∫ π 0
e−aRsinθdθ = 2
∫ π/2 0
e−aRsinθdθ = 2 (∫ δ
0
e−aRsinθdθ+
∫ π/2 δ
e−aRsinθdθ )
≤2 (
δ+e−aRsinδ
∫ π/2 δ
)
≤2δ+πe−aRsinδ
が成り立つことから、最初に δ を十分小さく取って右辺第1項を小さくしておいてから、Rを 大きくして右辺第2項を小さくする、という方針で証明するのが簡単である。
あるいは、Jordan の不等式34
(35) sinθ≥ 2θ
π (0≤θ ≤ π 2) から導かれる不等式
(36) 0<
∫ π/2
0
e−Rsinθdθ ≤
∫ π/2
0
e−2Rθ/πdθ = [− π
2Re−2Rθ/π ]π/2
0
= π
2R(1−e−R)< π 2R を使う。
14 この後やること , やれなかったこと
残り1コマになってしまったので、全部はやれない。どれにしようかな。
• (やり残し) zα
• Abel の級数変形法
• Cauchy の積分定理、ホモトピー形
34y= sinθとy=2θ
π のグラフを描くと「分かる」。これは微分法の簡単な演習問題である。しかし、この不等 式を利用する方法をとっさに発見するのは難しいので、甘く見ていると、院試などであわてることになる(個人的 にはこういう証明問題を出題することに反対である)。Jordanの不等式という名は、吉田[19] (p. 17)で知った。
付録
この講義の目標は、標準的な関数論の講義の目標と同じだけれど、必修の微積分で極限に関 することは証明抜きで済ませているので、真面目に理解しようとすると、時々思いのほか忙し いところがある。
重要なところは本文中 (授業中) に説明するが、そうでないところは付録にまわすことにし た。付録に書いてあることは、最初に学ぶときはあまり気にしなくても良いと思う。数学とい う学問はそういうことが比較的やりやすい。定義自体は比較的短く書けるので、定理の主張 は、証明を読まなくても (証明に用いる理論を学ばなくても)、短時間で理解可能である35。
A 数学解析から
2年生春学期の「数学解析」は、微積分に現れる極限の性質について解説する講義科目であ り、そこで扱われる内容は今後もしばしば必要となる。
開集合、閉集合の定義と基本的な性質。「閉集合はそれに含まれる数列の極限を必ず含む。」等。
数列の極限の定義と基本的な性質。Bolzano-Weierstrass の定理、「上に有界な単調増加数列 は収束する。」等。
B 連結性
(数学解析でやり残したので。少し補足。)
• 位相空間X が連結(connected) であるとは、X の開集合の組U1, U2 でX =U1∪U2 か つ U1∩U2 =∅ を満たすものはU1 =X, U2 =∅ か、U1 =∅, U2 =X のいずれかに限ら れることをいう。
• 位相空間X の部分集合A が連結であるとは、Aに相対位相を導入したとき、A が連結 な位相空間になることをいう。つまり
(∃V1, V2 :X の開集合) U1 =A∩V1, U2 =A∩V2, A=U1∪U2, U1∩U2 =∅
が成り立っているならば、U1 = ∅ または U2 = ∅ が成り立つとき、A は連結であると いう。
• 位相空間 X が弧連結(弧状連結)であるとは、X 内の任意の二点が X 内の連続曲線で
結べる(∀x, y ∈X, ∃φ: [0,1]→X s.t. φは連続かつ φ(0) =x,φ(1) =y) ことをいう。
• R の部分集合 I が連結であるためには、I が区間であることが必要十分である。
35水ももらさないように定義をするのは、外野から見ると理解しづらいかもしれないけれど、そうしておくと、
すっぱり割り切れて便利なんです。
• (いわゆる中間値の定理の一般化) 連結な位相空間の連続写像による像は連結である。弧 連結な位相空間の連続写像による像は弧連結である。
• 弧連結な空間は連結である。
• 連結かつ局所弧連結な空間は弧連結である。特に Rn の連結な開集合は弧連結である。
本文中で、Rn の弧連結な開集合は連結であることを述べて証明した。この逆を次の形で述 べておくと、関数論の準備としてはほぼ満足出来る状態になる。
命題 B.1 Rn の連結な開集合の任意の二点は 区分的に C1 級の 曲線で結べる。
これは上に掲げた「常識」の中に入っていないが(位相空間論の本にも書かれていないことが 多い)、「連結かつ局所弧連結ならば弧連結」という定理の証明を眺めれば簡単に解決する。こ こではその Rn の開集合バージョンを述べよう。
命題 B.2 Ω を Rn の連結な開集合とするとき、Ω 内の任意の2点 a, b は Ω 内の曲線で 結ぶことができる。
証明
Ω0 :={x∈Ω|a と x は Ω 内の曲線で結べる}, Ω1 :={x∈Ω|a と x は Ω 内の曲線で結べない} とおくと、明らかに
Ω0∪Ω1 = Ω, Ω0∩Ω1 =∅, a∈Ω0.
実は Ω0 は開集合である。実際、任意のx∈Ω0 に対して、x∈ΩかつΩは開集合であるから、
∃ε >0 s.t. B(x;ε)⊂Ω.
B(x;ε) 内の任意の点 y は xと結べるので、a とも結ぶことができる(a と x を結ぶ曲線に x と y を結ぶ曲線をつなげばよい)。ゆえに y∈Ω0. すなわち B(x;ε)⊂Ω0 であるから、Ω0 は 開集合である。
同様にしてΩ1 は開集合である。実際、任意のx∈Ω1 に対して、x∈Ωかつ Ωは開集合で あるから、
∃ε >0 s.t. B(x;ε)⊂Ω.
B(x;ε) 内の任意の点 y は x と結べるので、a とは結ぶことができない (もし y と a が結べ れば、その曲線を y と x を結ぶ曲線につないでa と xを結べることになり矛盾する)。ゆえ に y ∈Ω1. すなわち B(x;ε)⊂Ω1 であるから、Ω1 は開集合である。
Ωが連結であるから、Ω0 = Ω かつ Ω1 =∅. ゆえにa は Ω内の任意の点と結ぶことができ る。
この証明で「Ω 内の曲線」というところを、「Ω内の C1 級の曲線」、「Ω 内の区分的に C1 級の曲線」、「Ω 内の正則なC1 級の曲線」、「Ω内の座標軸に平行な線分からなる折線」など で置き換えても証明はまったくそのまま通用する(開球 B(x;ε)内の任意の点はその中心と良 い性質を持った曲線で結べることにもとづいている)。