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通信管路のライニング補強管の耐震性評価技術

第3章 地下管路の耐震対策

3.2 通信管路のライニング補強管の耐震性評価技術

(1) 通信管路のライニング補強技術の概要

老朽劣化した金属管路の補強は主に管内面へのライニングにより実施することとして おり,金属管内面を樹脂コーティングにより防錆処理を施す薄膜ライニング技術と金属 管内に厚さ3mm程度のPVC管もしくはFRP管を挿入した後,温水等の圧入により金属管 内に自立管路を形成するTMライニング方式が開発されている2).写真-3.1にPVCタイプ およびFRPタイプのTMライニングを示す.TMライニングは,金属管が腐食して強度が なくなった場合でも,土圧や車両による荷重に抵抗できる断面力を有し,半永久的にメ ンテナンスフリー化を図ることを目的に採用されているが,現状は耐震対策としては適 用されていない.

(2) ライニング補強管の耐震性評価手法

これまで,管路の耐震性能評価は,地中構造物の地震解析に一般的に用いられている 弾性床上の梁理論に基づく地中管路の地震応答変位解析法により検討されてきた.また,

通信や電力のようにケーブルを収容することを目的に多条多段敷設する管路の耐震性評 価方法について,高田らにより研究されている5).既設管路の内面をライニングした管 の耐震性評価は,これらの研究結果および下水道の複合管と自立管の耐震設計の考え方

3)などを参考として,図-3.1に示すように外管とライニング管路の継手および管体の強度 を合わせた強度特性による解析や,外管が腐食等により強度を失ったことを前提にライ ニング管のみの強度特性による解析等が行われている.前者は,外管に比べライニング 管の強度が極めて小さいことから,ライニングによる耐震性能が評価されない結果とな り,後者は柔軟性の高い素材のみの解析となるため,極めて高い変形性能を示すが,外 管の挙動が全く評価されない結果となる問題点があった.高田らによる新潟県中越沖地 震における下水道更生管の被害調査結果では,更生管の損傷箇所は既設管の継手損傷箇 所の直下で発生しており,既設管の継手部の変位は主としてその継手直下にある更生部

(a) 外管+ライニング管の強度特性

(b)ライニング管のみの強度特性 図-3.1 これまでのライニング管解析方法

図-3.2 ライニング管解析イメージ

材に伝達されたことが報告されている6).また,岡澤らの研究により7),8),管路建設後50 年近く経過した金属管にライニング補強を施した更生管の継手および管体の強度特性を 調査した結果,ライニングしない場合の強度特性と全く変化がないことから,通信用ラ イニング管の地震時の挙動は外管である金属管の挙動に支配され,内管であるライニン グ管は外管の挙動に追従することが報告されている.そこで本章では,弾性床上の梁理 論に基づく地中管路の地震応答解析法を応用し,外管であるSA管の地震時応答を把握し た後に,外管と内管との拘束力特性を考慮して,外管の挙動を外力として内管の応答を 解析により求め,地盤ひずみと内管のひずみの関係を推定した.図-3.2にライニング管

表-3.1 SA管とライニング管の管体特性

図-3.3 SA管の標準的な部材構成

の解析イメージを示すとおり,地震動による「地盤変位」→「SA管の応答」→「ライニ ング管の応答」→「収容ケーブルへの影響」の順に挙動把握を行う手順とする.

さらに,実際の被害ではネジ部の破損箇所に地下ケーブルが食い込むことで損傷を受 けるケースがあることから,ネジ部の破壊を実験で再現することも行い,ライニング補 強を施したSA管のネジ継手が破壊した場合に光ファイバケーブルに作用する外力につ いて確認を行った9)

(3) 応答変位解析に使用した SA 管及びライニング管の特性値

表-3.1 に弾性床上の梁理論に基づく地中管路の地震応答変位解析法に用いた SA 管の 管体特性とライニング管の管体特性を示す.

ライニング管は,SA 管内にPVC管を挿入した後,蒸気により SA 管内に膨張させる タイプのものと,SA 管内に樹脂を含浸させた筒状のガラス繊維を挿入し,温水を圧入 することで膨張硬化させFRP管を形成するタイプの2種について検討を行なった.

また,SA管の解析に用いた標準的な部材構成を図-3.3に示す.SA管同士の接続はネ

(a) SA管ネジ継手特性曲線

(b) 旧仕様伸縮継手特性曲線

c)ダクトソケット特性曲線

図-3.4 SA管各継手の引抜・押込・回転特性

ジ継手を使用する,両端のマンホールから1着目のSA 管同士の接続には旧仕様伸縮継 手を使用し伸縮性を確保する,マンホールと SA 管の接続はダクトソケットをコンクリ ートにより固定する構成となる.SA 管ネジ継手,旧仕様伸縮継手,固定部に使用され ているダクトソケットの引抜・押込・回転特性は実験による計測値を図-3.4に示す.

地盤とSA管,SA管とライニング管それぞれの相互作用を表すバネ特性を図-3.5と表

-3.2に示す.Kは拘束バネ係数,K’はすべり面でのバネ係数,δは地盤バネのすべり限界変

位量を表している.地盤とSA管のバネ特性は,又木らの研究10),11)により提案された通信

図-3.5 バネ特性モデル

表-3.2 地盤ばね特性

写真-3.2 SA管とライニング管の間の拘束力測定実験

用管路の挙動解析の一般地盤でのSA管の地盤反力特性を使用した.

SA管とライニング管の拘束力特性は,写真-3.2に示す方法で,長さ570mmの更生管供 試体を作成し,SA管とライニング管の引抜試験により計測した.3供試体について計測

図-3.6 SA管とPVCライニング管の摩擦抵抗力測定結果

図-3.7 SA管とFRPライニング管の摩擦抵抗力測定結果

を行い最大の拘束力を示した値を採用した.長スパンのSA管とライニング管の摩擦特性 のため,引張と圧縮は同じ特性値を設定した

PVCタイプのライニングについて,3供試体の試験はバラツキの少ない結果が得られた

ことから,最大の拘束力を示した実験結果(図-3.6)を採用した.相対変位35.6mmの際 に抵抗力4.36kNとなった.SA管とPVCライニング管本体との間の拘束力は極めて低く,

上記の抵抗力は全てSA管継手部におけるPVCライニング管の食い込みに伴うものであ った.したがって数値解析では,SA管継手の長さ(=120mm)範囲でこの抵抗力が作用 すると考えて拘束ばね係数を下記のように求め,これを管全体にわたって作用させるこ とで,PVCライニング管にとって厳しい解析条件となるようにした.また,SA管とPVC ライニング管の摩擦特性は極めて小さいことから,すべりは生じない線形条件で解析を 行うことでPVCライニング管にとってより厳しい解析条件となるようにした.

拘束バネ係数=抵抗力÷作用面積÷相対変位

K=4.36×1000/(35.6×120×80.7×π)=4.03×10-3(N/mm3

写真-3.3 被害箇所 写真-3.4 ネジ継手損傷状況

FRPタイプのライニングについても,写真-3.2に示したものと同じ方法により,SA管と FRPライニング管の拘束力を計測した.FRPライニング管についても3供試体の試験は バラツキの少ない結果が得られたことから,最大の拘束力となった実験結果(図-3.7)

を解析に採用した.相対変位30.1mmの際に抵抗力4.53kN となっている.SA 管と空間 確保タイプとの間の拘束力は,管路全面にわたって作用する.

したがって数値解析では,実験時の供試管長さ(=700mm)範囲で拘束力が均等に作 用すると考えて,拘束ばね係数を下記のように求めた.また,SA管とFRPライニング管 の摩擦特性は極めて小さいことから,すべりは生じない線形条件で解析を行うことで FRPライニング管にとってより厳しい解析条件となるようにした.

k=4.53*1000/(30.1×700×80.7×π)=8.48×10-4(N/mm3) ここで,80.7:FRPライニング管の外径(mm)