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橋梁添架管路の地震時損傷状況の定量化

第4章 橋梁添架管路の耐震対策

4.4 橋梁添架管路の地震時損傷状況の定量化

以上3橋の調査から,免震橋梁に添架された管路には地震時に大変形が生じ,特に継 手部は著しい損傷被害を受けることが確認できた.また,免震橋に添架された既存の管 路設備は,地震時の大変形が想定されていないようであった.

図-4.4新荒川大橋の構造と3次元骨組解析モデル

図-4.5 免震支承の非線形特性

図-4.6 橋脚部の非線形復元力特性 曲げモーメントM

曲率φ

Ⅲ種地盤のタイプⅠ地震動の加速度波形 Ⅲ種地盤のタイプⅡ地震動の加速度波形 図-4.7 標準波形

c)入力地震動

入力地震動はレベル2地震動とし,道路橋示方書に準拠し当該地盤種別(Ⅲ種地盤)

に対して用意されている標準波形(タイプⅠ:プレート境界型の大規模な地震動,タイ プⅡ:兵庫県南部地震のような内陸直下型地震動)を用いた.図-4.7 に今回使用した標 準波形の一覧を示す.

表-4.1 地震時応答解析で得られた最大変位

d)解析結果

地震応答解析は橋軸方向及び直角方向に対して,レベル2タイプⅠ地震動3波形,タ イプⅡ地震動3波形を用いた.表-4.1に地震時応答解析で得られた最大変位を整理した.

表-4.1 の上下部構造相対変位とは,図-4.8 に示すように,最大上部構造変位と最大橋台 変位の相対量を示しており,具体的には上部構造変位波形と橋脚天端変位波形を時刻を 合わせて引き算し,その最大値をとったものである.

添架管の挙動に影響する上下部構造相対変位は,内陸直下型のタイプⅡ 地震動の方が プレート境界型のタイプⅠ地震動より大きくなる傾向にある.

タイプⅡ地震動に着目すると,中間橋脚上(P6 橋脚,P7 橋脚)の相対変位は橋軸方

向で約39cm,直角方向で約36cm 程度発生している.中間橋脚上では,通常は通信ケー

図-4.8 上下部構造相対変位のイメージ

ブルの添架管が上部構造と一体となり下部構造とは接していない.また,隣接する桁端 部どうしの相対変位も小さいことから添架管の安全性に及ぼす影響は小さいと考えられ る.

一方端部橋脚上(P5橋脚,P8橋脚)の相対変位は橋軸方向で約21cm,直角方向で33cm 程度発生している.また,上部構造変位は橋軸方向で約62cm,直角方向で約41cm 程度 発生している.橋梁の端部支点は,隣接橋梁の支点が固定支持条件となることから,上 下部構造の相対変位が添架管に作用すると考えられる.特に端部が橋台となる場合は,

橋台側の変位は上部構造と比較して小さいと考えられるので,上部構造の応答変位(橋 軸方向で60cm程度,直角方向で40cm 程度)がそのまま添架管に作用する.

以上 のことから,橋台端部において橋軸方向60cm,橋軸直角方向40cm程度の変位 が添架管に作用した場合を目標値に,既設管路の修復限界を考慮し,レベル2地震のよ うな,稀に作用する外力に対して長期信頼性は確保できないが短期的にサービスを維持 できるレベルを確保する耐震対策工法を検討することとする.

(2) 既存の橋梁添架管路の管軸方向変位試験

免震橋梁の地震時の大変位が作用した場合の既存の橋梁添架設備の変形性能について 実験的に確認を行った.

添架管本体及び伸縮継手の変形特性や破壊に至る大変位時の挙動を把握するために,

添架管軸方向の圧縮試験を行った.管軸方向圧縮試験の概要を図-4.9,圧縮試験実施状 況を写真-4.14に示す.橋台側,支持金物側とも完全固定とし,支持間隔を標準的な2.0m と最大幅の2.5mについて油圧ジャッキの変位制静的載荷試験により実施した.添架管

図-4.9 管軸方向圧縮試験概要図

写真-4.14 管軸方向圧縮試験実施状況写真 写真-4.15 継手部の損傷状況

の中に光ファイバケーブル(SM100心)を挿入し,添架管破壊後の伝送損失の状態を把

握する12),13)

なお,光ファイバケーブルには250mスパンでの摩擦張力(1.3kN)を負荷した状態で 試験を行い,伝送損失の許容上限値は通信設備の標準設計方法で規定されている光コネ クタの許容伝送損失である1.6dBとした.

圧縮試験の結果は,硬質ビニル管本体部が大きくたわみ,20cm程度の圧縮変位で,写 真-4.15に示すように伸縮継手内部で管端部同士が突き刺さる形で破損し,ケーブル外被 が損傷するケースが確認された.図-4.10 (a)に管軸方向圧縮変位と載荷荷重の関係を示す が,支持点間隔によらず20cm 程度の圧縮変位で継手が破壊する結果となった.また,

図-4.10 (b)に管軸方向圧縮変位と伝送損失量の関係を示すが,圧縮変位では伝送損失を生 じるほどのケーブルの変形等は生じなかった.

引張方向については,伸縮継手の差込み量が規定されていることから,規定差込み量 の20cmで引抜ける結果にばらつきは生じない.

伸縮継手の伸縮量には圧縮・引張供に8cm程度の温度伸縮量と施工誤差を見込んでい

(a)管軸方向圧縮変位と載荷荷重の関係

(b) 管軸方向圧縮変位と伝送損失量

図-4.10 管軸方向圧縮試験の結果

図-4.11 管軸直角方向圧縮試験概要図

写真-4.16 管軸直角方向圧縮試験実施状況写真

るため,地震時の伸縮量が 12cm を超えるような変位が想定される支承の場合は,伸縮 量を向上させる対策を行う必要があることが確認された.

(3) 既存の橋梁添架管路の管軸直角方向変位試験

管軸直角方向の載荷試験は,図-4.11に示すような静的載荷試験により,管軸直角方向 変位が生じた際の添架管本体,伸縮継手の挙動を確認した.支持点間隔に着目し,橋台 側,支持金物側とも完全固定とし,支持間隔を標準的な2.0m と最大幅の2.5m に加え,

橋桁端部の開口部を通過している場合を想定した極端に短い1.0mについて油圧ジャッ

(a) 管軸直角方向圧縮変位と載荷荷重の関係

(b) 管軸直角方向圧縮変位と伝送損失量 図-4.12 管軸直角方向変位試験の結果

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

変位(cm)

載荷荷重(kN)

支持間隔2.5m-1000芯 支持間隔2.5m-100芯 支持間隔2.0m-1000芯 支持間隔2.0m-100芯 支持間隔1.0m-1000芯 支持間隔1.0m-100芯

-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

変位(cm)

伝送損失量(dB)

支持間隔2.5m-1000芯 支持間隔2.5m-100芯 支持間隔2.0m-1000芯 支持間隔2.0m-100芯 支持間隔1.0m-1000芯 支持間隔1.0m-100芯

破損

破損

写真-4.17 管軸直角方向変位試験継手損傷状況(支持間隔2.0m)

キの変位制御により載荷した.圧縮と同様に添架管中の光ファイバケーブルの伝送損失 を把握する.写真-4.16に試験状況写真を示すように直角方向変位試験は,硬質ビニル管 の管体部が大きくたわむことで,橋桁の直角方向の変位にある程度追従することが確認 できた.図-4.12 (a)に管軸直角方向の変位と載荷荷重の関係を整理した.支持間隔が2.0m で1000芯のケースで変位が40cm発生した段階で破損に至っているものの,その他のケ ースは,直角方向の変位に合わせ継手の引き抜きが発生し,継手部に発生する曲げ応力 が緩和されることで概ね60cm 程度の管軸直角方向変位まで管路は追従し,破損には至 らないことが確認された.また,図-4.12 (b)には管軸直角方向変位と伝送損失量の関係を 整理した.支持間隔が2.0mで1000芯の変位が40cmで破損したケースでは,直角方向 の変位に合わせ継手の引き抜きが発生せず,曲げ力により伸縮継手が急激に破損し,管 内に収容された光ケーブルにも急激な曲げ及び引張力が作用することで,光ファイバの 許容値を超える伝送損失が発生した(写真-4.17).対策の検討にあたっては,管体の曲 げ強さ,せん断強さのほかに伸縮継手部の引き抜きを除外した曲げ強さ,せん断強さも 考慮する必要がある.

(4) 既存の橋梁添架管路の変形解析

橋軸方向は地震時の変形が±12cmを超える場合に添架管の伸縮量を向上させる必要が あることが判明したが,橋軸直角方向は前項の実験結果から,伸縮継手部の引き抜きを 除外した管体部および伸縮継手部の性能を評価する必要があることから,実験と解析に よりたわみ性能を確認した.まず,伸縮継手部の引き抜きを除外した曲げ強さの確認試 験を実施した.試験方法は伸縮部の引抜きが生じない条件で3点曲げ試験を実施した.

伸縮継手に生じた曲げ角度と曲げモーメントの関係を図-4.13に示す.引抜きが生じな い場合は,伸縮継手が破損する曲げモーメントにはバラツキがあまり生じない結果とな

図-4.13 伸縮継手に生じた曲げ角度と曲げモーメントの関係

図-4.14 変形解析に用いたはりモデル 表-4.2 硬質塩化ビニル管の物性値

図-4.15 伸縮継手および添架管に作用する曲げモーメントと限界値の関係

ったため,以下の検討では実験値の最小値である曲げモーメント 2.8kN・m および曲げ

角度8°を伸縮継手の破断点として検討を行った.

既存橋梁添架管の管軸直角方向の変形性能を確認するために,はりモデルによる変形 解析を行い,免震橋の最大変位量と既存添架設備に生じる曲げ応力及びせん断応力の関 係を把握することで,既存橋梁添架管の適用領域を設定した.標準的な添架設備に対し て図-4.14に示すように,免震橋の橋軸直角方向の変位が発生した場合の添架管の変形量 を試算した.解析に用いた添架管の諸元は表-4.2 に示すようにJIS で規定されている標 準的な硬質塩化ビニル管の諸元を用いた.この試算は,支持点の支持金具が破損しない ことを前提としており,図-4.14に示すように管路の両端の回転は拘束し,橋台側の水平 方向に強制変位を与えている.本来は,支持金具が破損したり,管路端部で回転変形が 発生したりすることにより,管路本体や伸縮継手に発生する曲げモーメントやせん断力 が緩和されることから,本解析モデルは安全側の結果を与えるものと考えられる.水平 変位を与えた時に添架管本体に発生する最大曲げモーメントおよび伸縮継手に作用する 曲げモーメントを支持間隔ℓ別に整理した図を図-4.15に示す.図中の青色点線は,標準 的な硬質塩化ビニル管の曲げ強さより試算した橋梁添架管の曲げモーメントの限界値

(Mmax=3.4kN・m),赤色点線は伸縮継手の基本性能試験により明らかになった曲げモー

メントに対する限界値(Mu=2.8kN・m)である.既存添架設備の曲げによる損傷は伸縮 継手部が弱点部であり,支持間隔ℓ=2.0mの場合管軸直角方向変位34cm,支持間隔ℓ=1.5m の場合管軸直角方向変位20cm 程度変位する支承でも適用可能となる.なお,添架管本 体および伸縮継手部ともにせん断応力は限界値に対して非常に小さい値であったため省 略している.