第4章 橋梁添架管路の耐震対策
4.6 管路耐震対策の策定
本研究による既設添架設備と対策案の適用領域について橋軸方向の支持間隔と最大変 位の関係を図-4.23 (a)に,橋軸直角方向の支持点間隔と最大変位の関係を図-4.23 (b)にま とめた.
繰り返し変形試験及び実地震波による性能評価試験の結果から橋軸方向の適用につい ては,引張方向,圧縮方向ともに最大変位が20cmを越える領域で伸縮継手が離脱もしく は圧縮破壊することが確認された.温度変化に対応するための伸縮量と施工誤差8cmを 考慮すると,±12cmを超える橋軸方向変位が見込まれる免震橋の場合,対策案を適用す る必要がある.対策案の適用領域は目標値である最大変位 60cm を越える領域まで適用 可能であることが確認できた.以上より橋軸方向の支持間隔と最大変位の関係を図-4.23
(a) 橋軸方向の適用領域
(b) 橋軸直角方向の適用領域
図-4.23 既存添架設備と対策案の適用領域まとめ
(a)に示すように,既存管路のままで対策の必要のない領域がグラフ中の青の範囲,対 策案により修復限界が満足できる領域を黄の範囲と整理した.
橋軸直角方向の適用については,橋台側の継手から第一支持点もしくは桁端開口部ま での距離により,図-4.23 (b)のように整理できる. 既存管路の橋軸直角方向変位の限界領 域は図-4.22 (b)の青色で示した領域であり 4.4(4)項の添架管の変形解析結果より求めた 既存添架設備の弱点部である伸縮継手部の曲げ強さの限界から求められる既存添架管路 設備の適用可能な領域を示す.黄で示された領域が,本研究で提案した対策案の繰り返 し変形試験及び実地震波による性能評価試験の結果から得られた対策案の修復限界が満 足できる領域を示す.図-4.23 (b)に示す光ファイバ限界角度は,地震時にケーブルに作用 する外力に対して通信サービスを確保できる光ファイバケーブル修復限界を示しており,
対策案は光ファイバケーブルの限界状態までケーブルを保護することを可能としている.
なお,継手から開口部までの距離が 20cm 以下の領域については,橋台側継手が桁端開 口部に直接ぶつかるため,継手が破損してしまう領域である.通信管路の橋梁添架設備 が添架されている免震橋梁の調査結果では支持間隔ℓ2は概ね20cm以上確保できること が確認されているため,本対策による適用領域は20cm以上を対象とすることとした.
以上より,免震橋梁に通信設備を添架する際は,図-4.23に基づき対策工法の適用判定 を行い,対策工法の適用が必要な場合は,橋梁に作用する橋軸方向および橋軸直角方向 の最大変位を橋梁設計資料の調査等から求め,必要な可とう管長,伸縮長を確保するこ とが必要となる.
4.7 まとめ
本研究は,免震橋梁に添架した通信管路の挙動を分析し,大きな相対変位が生じても 通信サービスの安全性を確保できる対策について検討を行った.
・通信管路設備が添架された既設免震橋の中で地震時変位の最も大きな新荒川大橋をモ デルとして,地震応答解析によりレベル2地震時に添架管路に作用する水平変位量に ついて解析し,端部橋台では橋軸方向に60cm,橋軸直角方向に40cm程度の変位が添 架管に作用することが確認された.
・免震橋梁に添架された管路の変形と収容ケーブルへの影響について検討し,実験や解 析結果から既存添架設備の適用領域について整理した.
・現行仕様の添架設備では地震時に損傷してしまい通信サービスが確保できなくなる領 域について,可とう管等の市販の管材を利用した合理的な添架管の耐震対策案につい て検討を行い,繰り返し変形試験や実地震波による振動試験を実施して,対策案の性 能評価を行った.
・対策案は,長期信頼性は保てないが,震災後の短期間は通信サービスを維持すること が可能であり,大掛かりな耐震対策がなくとも,合理的に通信の信頼性が確保できる ことが確認できた.
・最後に,既設添架設備及び対策案の適用領域について整理し,通信設備の設計者が,
免震橋梁へ添架する通信設備を検討する際に対策の要否を容易に判断できるように
表-4.6 管路の修復限界と橋梁添架管路耐震対策の関係
とりまとめた.
表-4.6 に管路の修復限界と橋梁添架管路の耐震対策の関係を整理した.地下管路の合 と同様に管路損傷部の対策に加え,マンホール内にケーブル余長を確保することで,収 容ケーブルに異常張力が作用することを防止し,マンホール内のケーブル固定位置を交 角60度未満とすることも重要な対策要素となる.
免震橋梁に添架した設備はまだ少なく,東日本大震災による被害もゴム支承橋梁の主 桁が橋軸直角方向に脱落することで,通信管路が損傷を受けたケースが1件報告されて いるのみであった16).しかし,今後も橋梁の老朽化の改修に合わせて耐震化が進むこと から,免震橋が選定されるケースの増加が想定される.被害を未然に防ぐために,橋梁 の設計条件を早期に把握し,通信管路設備も添架方法の見直しを確実に実施することと していきたい.
橋梁に添架した通信管路設備は3万6千橋存在し,通信専用橋や管橋を含めると全国 に5万橋を超える設備が存在する.河川を横断するルートは県間中継ルート等の重要回 線が集中する設備である.また,これまでの被害事例からも河川横断区間が地震時に弱 点となりやすいことが知られており,光ファイバケーブルの変形を修復限界内に抑え,
通信サービスを継続する合理的な耐震対策をさらに進めていきたい.