• 検索結果がありません。

光ファイバケーブル限界状態把握試験

光ファイバケーブル被害再現実験では,標準的なマンホール形状での地下ケーブル敷 設線形を再現し被災状況を確認したが,地下に敷設されたケーブルに張力や曲げが作用 するケースは標準マンホールだけではない.様々な形態で使用されている光ファイバケ ーブル自体の限界状態を把握することで,収容物である地下ケーブルの限界状態に応じ た管路設備の性能設計が可能となることから,光ファイバケーブルの基本特性を把握す る実験を行った.

(1) 光ファイバケーブル引張実験

光ファイバケーブルに対して図-2.14に試験概要を示すように,油圧ジャッキを用いて 引張試験を実施し,引張力と光伝送損失の関係を明確にする.荷重条件は静的荷重を油 圧ジャッキにより載荷した.光ファイバ心線の伝送損失を計測しながら引張力を載荷す るため,光ファイバケーブルのテンションメンバを固定金具を用いて固定した.試験を 実施した光ファイバケーブルは表-2.3に示すとおり6種類とし,測定項目は荷重・変位・

光ファイバケーブルの伸びひずみ・OTDRによる光ケーブルの伝送損失測定値・BOTDR による光心線自体のひずみ計測値とした.

写真-2.3 光ファイバケーブル引張試験状況

図-2.15 ケーブル張力と光伝送損失の関係

写真-2.3に光ファイバケーブル引張試験の実施状況を示す.引張試験の結果について,

図-2.15に光ファイバケーブルに作用させたケーブル張力と伝送損失量の関係を示すと おり,心線数によりばらつきはあるものの,通信ケーブルの引張荷重に対して伝送損失 は初期値からほとんど変化せず,一定値を示すことが確認できた.引張力のみ作用する 場合は,ケーブルの破断張力まで伝送損失は発生しないことが判明した.図-2.16にケー ブル張力とケーブルひずみ,心線ひずみの関係について測定結果を示す.ケーブルひず みは,図-2.14で示すテンションメンバの固定点の間隔を実測した値である.心線ひずみ は,BOTDR測定器による光ファイバ心線自体のひずみ値である.細径のSM40心ケーブ ルを除くと,心線自体に生じるひずみはテンションメンバが破断するまで,初期ひずみ からほとんど変化がないことから,光ケーブルのスロット構造が機能しケーブルに働く 外力から,心線を保護していることが確認できた.なお,張力0の場合のファイバ心線ひ ずみは,ケーブル製造時に生じた残留ひずみを示している.測定は各ケーブルとも3本ず つ行った結果,バラツキが少なく再現性が高い結果が得られた.

(a)SM40心ケーブル (b)SM100心ケーブル

(c)SM200心ケーブル (d)SM300心ケーブル

(e)SM400心ケーブル (f)SM1000心ケーブル

図-2.16 光ファイバケーブルの引張ひずみとファイバー心線のひずみ

図-2.17 光ケーブル曲げ試験概要図

表-2.4 光ファイバ曲げ試験測定条件

光ファイバ種別 測定項目

SM40

SM100

SM200

SM300

・SM400

・SM1000

・管路スパン長75m相当の摩擦張力

・管路スパン長150m相当の摩擦張力

・管路スパン長250m相当の摩擦張力

・ケーブル屈曲角

・光ファイバ心線ひずみ

・光伝送損失

(2) 光ファイバケーブル曲げ実験

図-2.17に試験概要図を示すように光ファイバを通線した管路を回転ドラムに固定し,

ドラムを回転させることでケーブルに屈曲角を与え,ケーブル屈曲角と光伝送損失の関 係を計測した.試験を実施した光ファイバケーブル種別は表-2.4に示す6種類とし,測定 項目はケーブル屈曲角と光ケーブルの伝送損失・光心線のひずみとした.各光ファイバ とも3パターンの張力を作用させた状態で伝送障害の発生屈曲角を確認した.張力につい ては図-2.17に示すように光ファイバのテンションメンバにおもりを接続し,常に一定の 張力が作用する条件で行った.また,作用させた張力の選定基準は75mスパン,150mス パン,250mスパン(スパンL(m):マンホールからマンホール間の管路長さ)のケーブル と管内面との摩擦張力とした.管路とケーブルの摩擦係数μはケーブルの敷設設計のた めの標準値である0.5とし,管路の敷設設計基準の最大交角である60度の曲がりがある場 合の張力増加係数Kを1.3とした.各ケーブルの単位重量をW(N)とするとケーブルに作用 する摩擦張力T(N)は次の(1)式で算出した13).

T=L×μ×K×W ・・・(1)

写真-2.4 光ファイバケーブル曲げ試験状況

通常,管路スパン長は最大250mを上限として設計を行うこととしているため250mス パンの摩擦張力は,光ケーブルに作用する最大摩擦張力を想定している.また,全国の 平均的な管路スパン長である150mと摩擦張力が少ないケースとして75mのスパン長で の光ケーブルの伝送損失を計測した.

写真-2.4に光ファイバケーブル曲げ試験の実施状況を示す.また,図-2.18にケーブル 屈曲角と光伝送損失の関係について測定結果を示す.図-2.18のケーブル屈曲角と光伝送 損失の測定値は各スパン長毎に3本の供試体について一定速度で屈曲角度を大きくして いき,完全に光伝送ができなくなるまでケーブルを屈曲させた結果を平均化した数値で あり,バラツキの少ない再現性の高い結果が得られた.いずれのケースも屈曲角が小さ いと伝送損失も小さいが,ある屈曲角を境に伝送損失量が急増しはじめる特徴がある.

光ファイバケーブルの心線数が小さいほど伝損損失が発生する曲げ角度は大きくなる傾 向が見られる.屈曲角に対しては心線数の小さい(細い)ケーブルの方が有利である.

心線数が大きいケーブルほど摩擦張力が大きくなることと,一つのスロット内にテープ 心線が高密度に収容されることから屈曲にともなうスロット断面の変形の影響を強く受 けることが原因と考えられる.また,管路スパン長が短いほど伝送損失が発生する曲げ 角度は大きくなる傾向が見られ,設計ケーブル長さが75mの場合は伝送損失が発生する 角度は概ね100°を超える.

光ファイバによる光信号の伝送は,図-2.2の光ファイバ心線に示すコア部分とクラッ ド部分の屈折率の違いを利用しており,クラッドに比べて光の屈折率が高いコアに光り を送出すると,コアとクラッドとの境界面で全反射を繰り返しながら低損失で光が進む 原理を利用している20).そのため,光ファイバ心線に急激な屈曲や極端な曲げが作用し た場合,反射進行が途絶えてしまう.ケーブル曲げ試験により,伝送損失が発生した箇 所を詳細に見ると,光ファイバケーブルの曲げ試験方向に対して直角方向にあるスロッ ト内のテープ心線に障害が発生していることが判明した.光ファイバケーブルは心線の 収容効率を向上させるため,各スロット内に高密度でテープ心線が収容されており,図 -2.2の赤矢印で示した曲げに弱い方向に曲げられることで,テープ心線の外側の心線に 急激な曲げやひずみが発生し,光信号の全反射を阻害するものと思われる.4心テープを 使用しているSM100心とSM200心,8心テープを使用しているSM400とSM1000心で伝送

屈曲角

(a)SM40心ケーブル (b)SM100心ケーブル

(c)SM200心ケーブル (d)SM300心ケーブル

(e)SM400心ケーブル (f)SM1000心ケーブル

図-2.18 光ファイバケーブルの屈曲角と光伝送損失

損失の発生傾向が分かれることからもテープ心線の収容形態による影響が大きいことが 推測される.

最も条件の厳しいSM1000心ケーブルの管路スパン長250mの場合で屈曲角が約60°を 超えると伝送損失が被災判定値を超える傾向が見られる.最大管路スパン長は250mであ るため,地震時にケーブルに作用する屈曲角が60°を越えないように管路設備を構築する ことで,どのような種類のケーブルが管路設備内に収容されても地震時に光ケーブルの 限界状態は超えない対策を行うことが可能である.また,屈曲角が厳しい条件での管路 設計を行う場合,管路スパンを短くしケーブルに作用する摩擦張力を小さくする方法も 考えられる.

BOTDR測定によるファイバ心線ひずみは光伝送が完全にできなくなる状態まで発生 しなかった.BOTDRの分解能が1m程度の光ファイバ心線長さが必要なため,250mスパ ンでの摩擦程度の張力では,屈曲部の周辺部のみに心線ひずみが生じるため,検知でき なかったことが想定される.張力および曲げにより障害が発生する場合,心線に生じる ひずみは曲げを加えた部分的な箇所であることから,実被災で長区間にわたり故障が発 生している現象は,地中での管路折損離脱部でケーブルが引っ張られ大きな張力が作用 している場合や複数のマンホールで曲げ等が同時に発生していることが推定される.

光ファイバケーブル限界状態把握試験では,管路設備が地震外力により破損した状態 を想定して,収容した地下通信ケーブルに外力を与え,ケーブルの変形と通信サービス への影響を計測して,ケーブルの限界状態を明確にした.その結果,光ケーブルは単純 な引張のみでは伝送障害は発生せず,ケーブルに作用する張力に加えて,屈曲角が作用 することで被災が生じることが確認できた.

最も条件の厳しいSM1000心ケーブルの管路スパン長250mの場合でも屈曲角を60°以 下におさえることで,光伝送損失の発生を規定値以下とすることが可能であることが分 かった.マンホール内のケーブル余長を十分にとり,地震時に光ケーブルが破断するほ どの異常張力の発生を防ぐことで,既設管路の修復限界は屈曲角が60°以下の範囲であ ると考えられる.

今後の管路設備の耐震対策の検討は,従来からの使用限界に加え,本実験で確認でき た修復限界を考慮することにより,合理的な対策設計を行うことが可能である.