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対策工法の効果と新技術への活用について

第3章 地下管路の耐震対策

3.5 対策工法の効果と新技術への活用について

東日本大震災後の地下管路設備被害調査では,既往地震における被災パターンと同様 に,液状化地盤や軟弱地盤,人工造成地における橋台背面や,地下水路の上越し部にお ける被害が多く確認された.また,このような箇所でも,現行仕様の耐震性を考慮した 伸縮継手や離脱防止継手を設置している場合は,被害が殆んど見られないことも報告さ れている14)

既設管路の本格復興の検討にあたっては,本研究で提案した管路の修復限界の考え方 に基づき,ライニング補強による耐震対策が採用されている.しかしながら,既存のラ

イニング補強技術では,ケーブルを収容している場合は適用できないといった問題があ る.そこで,山崎らの研究15)により管内のケーブルを損傷させることなく,老朽管内に 新たな内管を形成するライニング技術(PITライニング工法)が開発された.PITライニ ング工法は,図-3.32に示すように既設のケーブルを抱き込みつつ組み立てる塩化ビニル 素材のライニング管を既設管内に押し込み,継手により連結することで新たな管路を形 成する方式である.本研究で示した修復限界の考え方やライニング管の地震時挙動の解 析方法を活用し,継手部に必要な伸縮性能や可とう性能等の耐震要求条件の設定を行っ た.奥津らの研究16)により,地震による地盤変状箇所で外管継手が離脱した後のPITラ イニング管の地盤追従性の検証実験により,実験挙動と解析結果の照査が行われた.

実験の結果,ライニング管継手部の伸縮性および可とう性により,標準対策である離 脱防止継手以上の追従性を有し,外管が離脱してもライニング管は連続性を失わず収容 したケーブルを防護する効果があることが確認できた.

さらに,石田らの研究16)により,不等沈下により路面荷重等が管路に作用し,せん断 が局所的に発生するケースに対するPITライニング管のケーブル防護性能について検討 が行われた.東日本大震災での実被災例を基に管路の自重,防護コンクリート重量,舗 装重量をすべてライニング管が負担するものとして評価した結果,外管継手が離脱し,

ライニング管にせん断力が作用しても,ライニング管は連続性を維持し,断面空間を保 持することで,収容ケーブルを保護できることを確認した.

PITライニング工法の施工結果が,秋山らにより報告17)されている.通常の開削工事に

よる耐震補強は,計画から工事完了まで1年以上の期間を要するが,PITライニング工法 では計画から工事完了まで3カ月間で実施可能であった.その他にも,路上工事の削減や 掘削残土・アスファルト等の廃棄物削減による環境保護への貢献も大きいことが確認さ れている.

図-3.32 PITライニング工法の概要図

表-3.3 管路の修復限界と地下管路対策工法の関係

3.6 まとめ

本章では,第2章で提案した既設管路の修復限界に基づき,地下管路の耐震対策につい て検討を行った.

まず,被災の事例の分析を行い,新潟県中越地震で被災したSA管モデルおよび一般的 なSA管モデルについて,弾性床上の梁理論に基づく地中管路の地震応答解析法により,

SA管の被災状況を確認した.また,被災状況および解析結果から実際にSA管継手部に

作用した外力を再現し,収容されている光ファイバケーブルへの影響について再現実験 により確認を行った.

次に,SA管の耐震対策として,金属管の腐食対策に用いられる自立タイプのライニン グ補強管の有効性について確認を行った.内管であるSA管の地震時挙動の解析にあたっ ては,外管であるSA管が地震波動・路肩崩壊により実被害を受けたケースの挙動を解析 し,得られた外管の変位を内管(ライニング管)への入力と考え,同じ解析法で内管の 挙動を求めることで,被災箇所にライニングを施していた場合にライニング管が損傷す るかを確認した.

また,実際の被害では地震時の振動によるネジ部の破損箇所に地下ケーブルが食い込 むことで損傷を受けるケースがあることから,ネジ部の破損による有効断面の縮小によ るケーブル被害への影響を継手部の繰り返し載荷試験により評価することで,SA 管の ネジ継手が破壊した場合のライニング管の光ファイバケーブル防護効果について確認を 行った.

ライニング補強工法は,管の強度特性には何ら寄与しないため,外管の損傷防止効果 は持たない.しかし,外管との摩擦特性が極めて小さいため,外管が損傷しても内管で あるライニング管に作用する外力が低減されることにより,管内面を円滑に保つ効果で 収容ケーブルを防護することが推定できる.

(1)管軸方向の地盤ひずみに対する対策検討のまとめ

・管軸方向の振動による被害例分析を行った結果,新潟県中越沖地震における実被災箇 所の解析では,防護コンクリート両端部の継手が最大50mm程度の押込み及び引抜け により破損する結果となった.

・一般的な SA 管モデルにおいて,管路中央部に圧縮波動が作用する場合に,両端の旧 仕様伸縮継手部が50mm離脱し,管中央部で継手が30mm程度圧縮破壊する結果が最

大値となった.

・SA 管変位をライニング管への外力として,内管であるライニング管の挙動を解析し た結果,PVCライニング管およびFRPライニング管ともに材料破壊に至らないことが 確認できた.

・被災再現実験の結果,継手部でネジが管内部にめくれるように損傷し,ライニング無 しの場合は収容された光ファイバケーブルの外被を損傷することが確認できた.

・PVCライニングもしくはFRPライニングを施すことで,光ファイバケーブルを防護す る効果が期待できることが確認できた.

(2)管軸直角方向の地盤側方流動に対する対策検討のまとめ

・新潟県中越沖地震における盛土崩壊での実被災箇所の解析では,盛土の崩壊により,

継手が最大4°程度の屈曲を伴い破損する結果となった.

・一般的なSA管モデルに管軸直角方向の側方流動が作用するケースの解析では,SA管 およびライニング管に損傷は生じない結果となった.

・SA 管変位をライニング管への外力として,内管であるライニング管の挙動を解析し た結果,PVCライニング管およびFRPライニング管ともに材料破壊に至らないことが 確認できた.

・被災再現実験の結果,SA 管のネジ継手部は管端同士が衝突し,継手部が著しく損傷 することで,収容された地下ケーブルを全断することが確認できた.

・PVCライニング補強管は,内管がガイドとなりSA管の継手の損傷が著しく軽減され る.また,材料の柔軟性からネジ継手の損傷部でもライニング材に破損や切断は生じ ずに,地下ケーブルを防護する効果が期待できることが確認できた.

・FRP ライニング管は,外管と内管の拘束力特性が樹脂により固着されている場合に,

ネジ部の断面の縮小箇所で内管が切断されるケースが発生した.内管が切断された場 合,内管が無い場合と同様に管端同士が衝突し,著しく継手および収容ケーブルが損 傷することから,耐震対策としては適用不可であることが確認できた.

以上のことから,本研究における SA 管およびライニング管の評価方法を用いること で,レベル2地震のような,稀に作用する外力に対する耐震対策として,PVCライニン グ補強技術が有効であり,光ファイバケーブルに作用する外力を長期信頼性は確保でき ないが短期的にサービスを維持できるレベルである修復限界を確保できることが確認で きた.表-3.3 に管路の修復限界と地下管路の対策工法の関係を整理した.管路区間全体 の修復限界を確保するためには,PVCライニングによる地下損傷部の耐震対策に加えて,

マンホール内のケーブル余長の確保とケーブル固定位置を屈曲角 60 度を超えない範囲 とすることも重要な要素となる.

修復限界を明確に規定することで,ライニング工法の開発や既設設備の耐震対策方法 の選定を行う場合に,個々の現場状況に応じて,耐震管への更改を行うか更生するかの 合理的な判断に活用していきたい.