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逆説的効果の個人差

第 6 章 本論文における実証研究の結果の概要

6.2 逆説的効果の個人差

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を規定する認知的特性であり,社会的環境,なかでも他の個人を複数の次元を 使用して捉えているかどうかという特性である(Bieri, 1955)。認知的複雑性が 高い個人は,集団を多次元的に捉えており,集団のさまざまな次元を利用して その集団や集団成員を判断していると考えられる。つまり,認知的複雑性が低 い個人は,主に優位ステレオタイプ的特性やその反対の特性である反ステレオ タイプ的特性が利用可能なのに対して,認知的複雑性が高い個人は,それらだ けでなく,非優位ステレオタイプ的特性も利用可能であると考えられる。認知 的複雑性が低い個人は,優位ステレオタイプ抑制の際には,優位ステレオタイ プ的特性の反対の特性である反ステレオタイプ的特性を代替思考として使用し やすく,その結果,逆説的効果が生じやすいと考えられる。一方,認知的複雑 性が高い個人は,優位ステレオタイプ抑制の際には,反ステレオタイプ的特性 だけでなく,非優位ステレオタイプ的特性をも代替思考として使用しやすく,

その結果,逆説的効果が生じにくいと考えられる。

以上の議論から,非優位ステレオタイプ的特性の利用可能性の背後にある認 知特性である認知的複雑性が高い個人は逆説的効果が生じにくいが,認知的複 雑性が低い個人は逆説的効果が生じやすいという仮説を検討した。

そこで,第5 章の研究 4 から研究 7では,非優位ステレオタイプ的特性の利 用可能性の個人差の背後にある認知的複雑性と逆説的効果との関係を検討した。

研究 4 では,まず,非優位ステレオタイプ的特性の利用可能性と優位ステレ オタイプ抑制による逆説的効果との関係を検討した。その結果,非優位ステレ オタイプ的特性の利用可能性が高い個人ほど,逆説的効果が生じにくい可能性 が示された。

研究 5 では,非優位ステレオタイプ的特性の利用可能性と,その個人差の背 後にある認知的特性である認知的複雑性との関係を検討した。その結果,非優

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位ステレオタイプ的特性の利用可能性が高い個人ほど,認知的複雑性が高い可 能性が示された。

研究6,研究7では,認知的複雑性と逆説的効果との関係を検討した。

研究 6 では,優位ステレオタイプ的判断を顕在的に測定することによって,

認知的複雑性による逆説的効果の差異を検討した。その結果,認知的複雑性が 高い個人は逆説的効果が生じにくい,認知的複雑性が低い個人は逆説的効果が 生じやすい可能性が示唆された。

研究7では,顕在的な判断の背後にある認知的メカニズムを検討するために,

優位ステレオタイプ的特性に対するアクセス可能性を潜在的に測定することに よって,認知的複雑性による逆説的効果の差異を検討した。その結果,認知的 複雑性が低い個人は,優位ステレオタイプ抑制を行った場合は行わなかった場 合に比べ,優位ステレオタイプ的特性に対するアクセス可能性が高く,一方,

認知的複雑性が高い個人は,優位ステレオタイプ抑制を行った場合と行わなか った場合で,優位ステレオタイプ的特性に対するアクセス可能性に差はみられ なかった。この結果から,Wegner の思考抑制のモデルに基づくと,認知的複雑 性が高い個人は,非優位ステレオタイプ的特性を代替思考として使用しやすい ため,実行過程および監視過程の働きは弱く,その結果,優位ステレオタイプ 的特性に対するアクセス可能性は高まりにくく,逆説的効果が生じにくいが,

認知的複雑性が低い個人は,反ステレオタイプ的特性を代替思考として使用し やすいため,実行過程および監視過程が強く働き,その結果,優位ステレオタ イプ的特性に対するアクセス可能性が高まりやすく,逆説的効果が生じやすい という可能性が示唆された。

第 5 章でのこれらの結果は,優位ステレオタイプ抑制による逆説的効果の個 人差として,非優位ステレオタイプ的特性の利用可能性があることを示唆して

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いる。さらに,非優位ステレオタイプ的特性の利用可能性の個人差の背後にあ る認知的特性である認知的複雑性が高い個人ほど,優位ステレオタイプ抑制の 際に,非優位ステレオタイプ的特性を代替思考として使用しやすく,その結果,

逆説的効果が生じにくいことを示唆している。

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