第 4 章 ステレオタイプ抑制における対象集団に関連する 代替思考の役割の検討
4.3.3 結果
分析対象者
実験目的を指摘した1 名のデータを以下の分析から除外し,47 名のデータを 分析に用いた。除外した後の条件ごとの人数は,単純抑制条件12名,反ステレ オタイプ的特性代替思考条件12名,上位の非優位ステレオタイプ的特性代替思 考条件11名,下位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考条件12名であった。
操作チェック
抑制方略の操作の有効性を確認するために,文完成課題において参加者が作 成した文の内容を分析した。目的を知らない 2 名の評定者が,文の内容につい て評定した。具体的には,まず,上位の非優位ステレオタイプ的特性語3語(「お しゃれな」,「家庭的」,「かわいい」)を提示して,それらの特性が文の内容にど の程度当てはまるかを 7 件法(1:全く当てはまらない―7:非常によく当ては まる)で評定を求めた。同様に,下位の非優位ステレオタイプ的特性語(「繊細」,
「控えめ」,「受け身的」)と,反ステレオタイプ的特性語(「無関心」,「無口」,
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「自立的」)についても,それぞれの特性が文の内容にどの程度当てはまるか評 定を求めた。2名の評定者の相関は,上位の非優位ステレオタイプ的特性語に関 する評定はr = .74,下位の非優位ステレオタイプ的特性語に関する評定はr = .57, 反ステレオタイプ的特性語に関する評定はr = .39であった。2名の評定者の評 定値の平均を算出し,それぞれの値を,上位の非優位ステレオタイプ度得点,
下位の非優位ステレオタイプ度得点,反ステレオタイプ度得点とした。条件ご との平均値と標準偏差をTable 4.3.3に示した。
上位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考条件は,他の条件に比べ,上位 の非優位ステレオタイプ的特性を代替思考として使用していたかどうかを検討 するために,上位の非優位ステレオタイプ度得点に対して一元配置の分散分析 を行った。その結果,有意な結果は得られなかった(F (3, 43) = 1.32, n.s.)。しか し,上位の非優位ステレオタイプ度得点は,4つの条件のうち,上位の非優位ス テレオタイプ的特性代替思考条件で最も高かった。このことから,有意な差は 得られなかったが,上位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考条件は,他の 条件に比べ,上位の非優位ステレオタイプ的特性を代替思考として使用してい た可能性がある。
次に,下位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考条件は,他の条件に比べ,
下位の非優位ステレオタイプ的特性を代替思考として使用していたかどうかを 検討するために,下位の非優位ステレオタイプ度得点に対して同様の分散分析 を行った。その結果,主効果が有意であった(F (3, 43) = 4.27, p < .05 )。多重比 較を行ったところ,下位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考条件は,単純 抑制条件に比べ,下位の非優位ステレオタイプ度得点が有意に高かった(p < .05)。 さらに,優位傾向ではあったが,下位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考 条件は,上位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考条件に比べ,下位の非優
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位ステレオタイプ度得点が高かった(p < .10)。反ステレオタイプ的特性代替思 考条件との間には有意な差は得られなかったが,下位の非優位ステレオタイプ 度得点は,4つの条件のうち,下位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考条件 で最も高かった。このことから,下位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考 条件は,他の条件に比べ,下位の非優位ステレオタイプ的特性を代替思考とし て使用していた可能性がある。
次に,反ステレオタイプ的特性代替思考条件は,他の条件に比べ,反ステレ オタイプ的特性を代替思考として使用していたかどうかを検討するために,反 ステレオタイプ度得点に対して同様の分散分析を行った。その結果,有意な結 果は得られなかった(F (3, 43) = 0.38, n.s.)。しかし,反ステレオタイプ度得点は,
反ステレオタイプ的特性代替思考条件と単純抑制条件で同点であり,この 2 条 件の得点は,上位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考条件と下位の非ステ レオタイプ的特性代替思考条件よりも高かった。このことから,有意な差は得 られなかったが,反ステレオタイプ的特性代替思考条件は,上位の非ステレオ タイプ的特性代替思考条件と下位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考条件 に比べ,反ステレオタイプ的特性を代替思考として使用していた可能性がある。
なお,反ステレオタイプ的特性代替思考条件と単純抑制条件が同点であった理 由として,ステレオタイプを抑制する際には反ステレオタイプが代替思考とし て使用されやすいことが示されているため(Galinsky & Moskowitz, 2007),本研 究においても,単純抑制条件では反ステレオタイプ的特性が代替思考として使
単純抑制条件 反ステレオタイプ的特性 代替思考条件
上位の非優位ステレオタイプ的特性 代替思考条件
下位の非優位ステレオタイプ的特性 代替思考条件 上位の非優位ステレオタイプ度得点 3.79(1.98) 4.25(1.88) 4.91(2.21) 3.33(1.45) 下位の非優位ステレオタイプ度得点 2.58(0.53) 4.00(1.67) 2.95(1.29) 4.54(1.90) 反ステレオタイプ度得点 2.83(1.20) 2.83(1.21) 2.55(1.16) 2.42(0.91) 注) 括弧内は標準偏差。
条件ごとの上位の非優位ステレオタイプ度得点,下位の非優位ステレオタイプ度得点,反ステレオタイプ度得点の平均値と標準偏差 Table 4.3.3
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用されていた可能性がある。
このように,すべての条件では有意な差はえられなかった。しかしながら,
条件ごとの平均値をみると,抑制方略の操作が有効であった可能性が考えられ る。
語彙判断課題における反応時間
語彙判断課題 2 における女性ステレオタイプ関連語 3 語と女性ステレオタイ プ無関連語 3 語に対する反応時間について分析を行った。それぞれの単語は,
語彙判断課題2において4回提示されているため,参加者1名につき24試行で の反応時間が分析対象となった。これらの試行での誤答率は3.46%であり,誤答 の場合の反応時間を除いて分析を行った。まず,データの分布を正規分布に近 似させるために,すべての反応時間を対数変換した。参加者の反応時間を女性 ステレオタイプ関連語と女性ステレオタイプ無関連語ごとに平均した値を以下 の分析で使用した。
抑制方略条件ごとの逆説的効果の差異
抑制方略によって逆説的効果が異なるかどうかを検討するために,抑制方略
(単純抑制,上位の非優位ステレオタイプ的特性代替思考,下位の非優位ステ レオタイプ的特性代替思考,反ステレオタイプ的特性代替思考)×単語の種類
(女性ステレオタイプ関連語,女性ステレオタイプ無関連語)の 2 要因の分散 分析を反応時間に対して行った。その結果,2要因の交互作用効果が有意傾向で あった(F (3, 43) = 2.42, p < .10; Table 4.3.4)。
抑制方略×単語の種類の2要因の交互作用効果が有意傾向であったことから,
単純主効果の検定を行った。その結果,女性ステレオタイプ関連語条件におい
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て抑制方略の主効果が有意であり(F (3, 86) = 2.87, p < .05),多重比較を行った ところ,女性ステレオタイプ関連語条件において,上位の非優位ステレオタイ プ的特性代替思考条件は単純抑制条件に比べ,反応時間が長かった(p < .10)。 さらに,単純抑制条件において単語の種類の主効果が有意であり,単純抑制条 件において,女性ステレオタイプ関連語条件は女性ステレオタイプ無関連語条 件に比べ,反応時間が短かった(F (1, 43) = 4.99, p < .05)。
以上の結果が得られたが,2要因の交互作用効果は有意傾向であった。そのた め,女性ステレオタイプ関連語3語(「うわさ好き」,「おしゃべり」,「依存的」) の内容について検討を行った。予備調査で行ったクラスタ分析では,「うわさ好 き」と「おしゃべりな」の距離が最も近かった。さらに,予備調査での女性ス テレオタイプ当てはまり度得点を確認すると,女性ステレオタイプに関する特 性語である39語のうち,「うわさ好き」は得点が最も高い特性語であり,「おし ゃべりな」は2番目に得点が高い特性語であったが,「依存的」は9番目に得点 が高い特性語であった。これらの予備調査の結果から,「うわさ好き」と「おし ゃべりな」は同じ特性を表す特性語であったが,「依存的」のみ他の2つの特性 語とは異なる内容である可能性が考えられる。
したがって,「うわさ好き」と「おしゃべりな」の平均値を従属変数として同 様の 2 要因の分散分析を行った(Table 4.3.5)。その結果,抑制方略の主効果が 有意傾向(F (3, 43) = 2.25, p < .10),単語の種類の主効果が有意(F (1, 43) = 4.60, p < .05),2要因の交互作用効果が有意であった(F (3, 43) = 4.05, p < .05)。
女性ステレオタイプ 関連語
女性ステレオタイプ 無関連語
女性ステレオタイプ 関連語
女性ステレオタイプ 無関連語
女性ステレオタイプ 関連語
女性ステレオタイプ 無関連語
女性ステレオタイプ 関連語
女性ステレオタイプ 無関連語
平均値 6.34 (575) 6.40 (607) 6.36 (585) 6.40 (606) 6.51 (687) 6.48 (656) 6.38 (591) 6.38 (594)
標準偏差 0.19 (107.11) 0.16 (99.85) 0.13 (74.43) 0.13 (78.29) 0.19 (144.00) 0.14 (90.42) 0.12 (73.81) 0.15 (96.56)
注) 括弧内は対数変換前の反応時間を示す。
Table 4.3.4.
各単語に対する抑制方略条件ごとの対数変換後の「うわざずき」,「おしゃべりな」,「いぞんてき」の平均反応時間と標準偏差
単純抑制条件 (n = 12)
反ステレオタイプ的特性 代替思考条件
(n = 12)
上位の非優位ステレオタイプ的特性 代替思考条件
(n = 11)
下位の非優位ステレオタイプ的特性 代替思考条件
(n = 12)