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第 4 章 ステレオタイプ抑制における対象集団に関連する 代替思考の役割の検討

4.1.4 考察

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ない」といった特性とどの程度反対の内容だと思うかを7件法(1:全く反して いない―7:非常に反している)で評定を求めた。それぞれの特性語について平 均値を算出し,その得点を反ステレオタイプ度得点とした(Table 4.1.3)。3つの 特性語それぞれの反ステレオタイプ度得点に対して,中点(5)からの差の検定 を行った。その結果,「お金持ち」については,有意な差は得られなかったが(t

(10) = 1.62, n.s.),「頭の良い」と「まじめな」については,有意に中点よりも反

ステレオタイプ度得点が高かった(t (10) = 6.33, p < .01; t (10) = 9.64, p < .01)。

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件に比べ,優位ステレオタイプ的判断の得点が低いと予測した。その結果,第 二の仮説と逆の結果が得られた。具体的には,非優位ステレオタイプ的特性活 性化あり条件は活性化なし条件に比べ,優位ステレオタイプ的判断の得点が高 いことが示された。この結果から,第一の仮説と第二の仮説の両方とも支持さ れなかったといえる。

しかし,予備調査で選定された非優位ステレオタイプ的特性語の内容を事後 的に調査したところ,3項目(「お金持ち」,「頭の良い」,「まじめな」)のうち2 項目(「頭の良い」,「まじめな」)は反ステレオタイプ的特性語であったことが 示された。非優位ステレオタイプ的特性活性化あり条件で活性化された内容は,

反ステレオタイプ的特性であったと考えると,本研究で得られた結果は,反ス テレオタイプ的特性が活性化された場合は活性化されなかった場合よりも,優 位ステレオタイプ的判断の得点が高かったというものであるといえる。この結 果から,反ステレオタイプ的特性を代替思考として使用すると,逆説的効果が 低減されにくいことが示唆され,先行研究(Oe & Oka, 2003)と一致する結果で あると考えられる。

さらに,抑制後の疲労度についての分析では,非優位ステレオタイプ的特性 活性化あり条件は,非優位ステレオタイプ的特性活性化なし条件に比べ疲弊度 得点が高いことが示された。この結果は,反ステレオタイプ的特性を代替思考 として使用すると,制御資源が消費されることを示唆している。序論の2.4で述 べたように,反ステレオタイプ的特性は,優位ステレオタイプ的特性との連想 価が高いため,優位ステレオタイプを抑制する際に反ステレオタイプ的特性を 代替思考として使用すると,実行過程および監視過程を強く働かさなければな らず,制御資源が多く消費されたと考えられる。

このように,本研究で得られた結果は,優位ステレオタイプ抑制の際に,反

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ステレオタイプ的特性を代替思考として使用すると逆説的効果が低減されにく い可能性を示唆している。反ステレオタイプ的特性は代替思考として用いられ やすいが(Galinsky & Moskowitz, 2007),Oe & Oka(2003)が示しているように,

反ステレオタイプ的特性を代替思考として使用すると逆説的効果が生じること になる。

本研究では,方法上の問題が3点挙げられる。第一に,「調査B」における人 物像を記述する課題で,参加者が写真の人物を弁護士として判断していたかと いう問題である。写真の人物を提示してその人物に対するステレオタイプを抑 制させるという手続きは,先行研究で多く用いられている標準的な手続きであ る。例えば,Macrae et al.(1994)では,スキンヘッドの人物の写真を提示し,

その写真の人物についてステレオタイプの抑制を行わせていた。さらに,及川

(2005)では,外国人労働者の写真を提示し,その写真の人物についてステレ オタイプの抑制を行わせていた。先行研究で用いられている対象人物は,参加 者が比較的外見で判断することが可能であったと考えられる。一方,本研究で 用いた弁護士は,スキンヘッドの人物や外国人労働者に比べ,外見において判 断をするには適さない集団であったと考えられる。この点については,今後の 検討が必要である。

第二に,実際に抑制が行われていたかどうかについては疑問が残る。本研究 では,参加者が実際に記述した内容に関して,評定者 2 名によってステレオタ イプ度を評定させたが,評定者間の一致率が低かった。この点については,抑 制の操作方法や抑制のチェック方法について今後の検討が必要である。

第三に,非優位ステレオタイプ的特性語の選定方法について述べる。本研究 では,非優位ステレオタイプ的特性語としてサブタイプに関する特性語を予備 調査によって選定した。しかしながら,事後的な調査によって,選定された非

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優位ステレオタイプ的特性語(サブタイプに関する特性語)は反ステレオタイ プ的特性語であることが示された。予備調査において,弁護士の「例外的イメ ージ」の特性語について回答を求めた結果,「感情的」,「カジュアルな」,「だら しない」という弁護士の反ステレオタイプ的特性語が得られた背景として,こ れまでの弁護士像とは異なる特徴を持った弁護士がメディアに多く露出してい ることが考えられる。

本研究の意義として,以下の点が主張できるであろう。この結果は,現実的 な意義として,人々の日常の抑制方略の有効性に疑問を投げかけることになる。

一般的に,人々がある集団の優位ステレオタイプを抑制する際,その集団の反 ステレオタイプ的特性を考えようとする方略が取られることが多いであろう。

本研究の結果は,このような反ステレオタイプ的特性を用いた方略は,有効で ないばかりでなく,優位ステレオタイプ的判断を逆説的に強めるということを 示していたのである。

本研究から,前述したように方法論上の問題が残っているが,反ステレオタ イプ的特性を代替思考として使用すると,逆説的効果が低減されにくいという 可能性が示唆された。この結果は,先行研究(Oe & Oka, 2003)と一致する結果 である。以降の研究 2 と研究 3 では,対象集団に対する当てはまりの程度を直 接選定して非優位ステレオタイプ特性語を選定し,代替思考としての役割につ いて検討する。

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4.2 研究 2 :非優位ステレオタイプ的特性の代替思考としての役割

―優位ステレオタイプ的判断の顕在的測定

による検討―

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