第 5 章 ステレオタイプ抑制による逆説的効果の個人差の検討:
5.3.2 方法
実験参加者
大学生184名(男性101名,女性82名,不明1名;平均年齢19.41歳,SD = 1.11)
が調査に参加した。回答項目に欠損のあった33 名を分析から除外し,151 名の データが分析に用いられた。
材料
2回に分けて質問紙調査を行った。第一回目の質問票は,調査者が異なる2つ の質問紙がセットになったものであった。第一回目の 1 つ目の質問紙は「文の 生成に関する認知心理学的研究」と称されていた。まず,第二回目の質問紙と 対応させるために,参加者に参加者自身の誕生日と名前のイニシャルを組み合
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わせたIDを記入するように求めた。この質問紙では,ある女性が数学の授業を 受けている様子を 5 分間で記述する課題を行った。その記述の際にステレオタ イプ抑制の操作を行った。このとき,ステレオタイプ抑制あり条件にのみ「一 般的に,女性は数学が苦手というイメージがありますが,そのような女性のイ メージに基づいて書かないように注意してください」というステレオタイプを 抑制させるための教示が記載されていた。ステレオタイプ抑制なし条件には,
そのような教示は記載されていなかった。
第一回目の 2 つ目の質問紙は,「人物の適性判断に関する教育心理学的研究」
と称されていた。2つ目の質問紙では,ある女性に対する印象を評定する課題を 行った。これによって,ステレオタイプ的判断の測定を行った。具体的には,
課題間の影響を最小限に抑えるために,「教員採用試験の書類審査で,審査者が 書面のみでどのような印象を抱くかを調査することを目的としています」とい う教示が記載されていた。ある女性の自己PR文の内容の要約について読み,そ の人物の印象について,「理論的考えができそう」,「図形問題に強そう」,「数字 に強そう」の 3 項目について 7 件法(1:全く当てはまらない―7:非常によく 当てはまる)で回答を求めた。フィラー項目として,他に 9 項目が加えられて いた。さらに,フィラーとして,同様にある男性についても回答を求めた。
第二回目の質問紙は,「人物に対する印象形成研究の予備調査」と称されてい た。まず,第一回目の質問紙と対応させるために,第一回目の質問紙と同様に,
参加者に参加者自身の誕生日と名前のイニシャルを組み合わせたIDを記入する ように求めた。この質問紙では,認知的複雑性を測定する方法として Rep テス ト(role construct repertory test; Kelly, 1955)に回答を求めた。測定の方法は,研 究5と同様であり,林(1976)に基づいたRepテストを使用した。5人の役割人 物(好きな男性,嫌いな男性,好きな女性,嫌いな女性,自分自身)を身の周
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りから挙げさせ,その人物の印象について 20 個の形容詞に 7 件法(1:全く当 てはまらない―7:非常によく当てはまる)で評定を求めた。
なお,ステレオタイプ抑制による逆説的効果に関係があると考えられる他の 個人差として「曖昧さ耐性」と「平等主義的性役割態度」を測定したが,どち らも関連はみられなかった。具体的には,曖昧さ耐性の測定には,心理的健康 と関連する曖昧さ耐性尺度(増田,1998)を使用した。曖昧さ耐性とは,曖昧 な状況に認知的に耐えられるかどうかの個人差であり,曖昧さ耐性が低い人は,
何事も白黒はっきりさせたいという傾向がある(Frenkel-Brunswik, 1954)。しか し,分析の結果,曖昧さ耐性と優位ステレオタイプ的特性の抑制による逆説的 効果には関係はみられなかった。さらに,本研究では,女性の数学能力に対す るステレオタイプを扱うため,平等主義的性役割態度を測定した。平等主義的 性役割態度の測定には平等主義的性役割態度スケール短縮版を使用した(鈴木,
1994)。平等主義的性役割態度とは,男女の性役割態度における平等志向性の個 人差である(鈴木,1991)。しかし,分析の結果,平等主義的性役割態度とステ レオタイプ抑制による逆説的効果には関係はみられなかった。
手続き
調査は,授業時間内を利用し第一回目と第二回目の間を 2 週間空けて行われ た。第一回目の調査では,調査者は,質問票を参加者に配布し,課題間の影響 を最小限に抑えるために以下の内容を教示した。セットになっている 2 つの質 問紙は調査者が異なり,1つ目の質問紙は「文の生成に関する認知心理学的研究」
であり,2つ目の質問紙は「人物の適性判断に関する教育心理学的研究」である ことを強調した。調査は調査者の指示に従って進められた。第二回目の調査で は,調査者は,質問票を参加者に配布し,最後まで各自で進めるように教示し
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た。第二回目の調査後,デブリーフィングを行った。