第 5 章 ステレオタイプ抑制による逆説的効果の個人差の検討:
5.4.3 結果
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文字列の提示順序は,参加者ごとに各ブロックで無作為であった。
すべての課題が終わった後,デブリーフィングを行った。研究目的や課題間 の関係性に気づいた参加者はいなかった。
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との間に差があるかどうかを検討するために,ステレオタイプ度得点に関して,
t検定を行った。その結果,優位ステレオタイプ抑制あり条件は,優位ステレオ タイプ抑制なし条件に比べ,有意にステレオタイプ度得点が低かった(t (45) =
6.58, p < .01)。したがって,優位ステレオタイプ抑制の操作は成功していたと考
えられる。
代替思考の内容
探索的ではあるが,認知的複雑性によって代替思考の内容が異なるかどうか を検討するために,文完成課題で作成された文の内容のステレオタイプ度と反 ステレオタイプ度について分析を行った。まず,条件ごとに,ステレオタイプ 度に違いがあるかどうかを検討するために,優位ステレオタイプ抑制の操作チ ェックで算出したステレオタイプ度得点に対して,認知的複雑性(高,低)×
優位ステレオタイプ抑制(優位ステレオタイプ抑制あり,優位ステレオタイプ 抑制なし)の 2 要因の分散分析を行った。その結果,優位ステレオタイプ抑制 の主効果が有意であり(F (1, 43) = 42.10, p < .01),優位ステレオタイプ抑制あり 条件(M = 2.67,SD = 1.11)は,優位ステレオタイプ抑制なし条件(M = 4.65,
SD = 0.95)に比べ,ステレオタイプ度得点が低いことが示された。認知的複雑
性の主効果(F (1, 43) = 0.55, n.s.),認知的複雑性と優位ステレオタイプ抑制の交 互作用効果(F (1, 43) = 0.12, n.s.)は有意ではなかった。
次に,文完成課題で作成された文の内容の反ステレオタイプ度についての分 析を行った。具体的には,心理学を専攻する大学院生 2 名が,文完成課題にお いて参加者が作成した文の内容について,どの程度女性の反ステレオタイプ的 特性に当てはまるかを 7 件法で評定した(1:全く当てはまらない―7:非常に よく当てはまる)。その際に,反ステレオタイプ的特性はステレオタイプの反対
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の内容の特性であることと,ステレオタイプ化の程度が弱い特性である非優位 ステレオタイプ的特性と,反ステレオタイプ的特性を区別して考えるように教 示した。2名の評定者の相関が高かったので(r = .80),2名の評定者の評定値の 平均値を算出し,その値を反ステレオタイプ度得点とした。条件ごとに,反ス テレオタイプ度得点に違いがあるかどうかを検討するために,認知的複雑性(高,
低)×優位ステレオタイプ抑制(優位ステレオタイプ抑制あり,優位ステレオ タイプ抑制なし)の 2 要因の分散分析を反ステレオタイプ度得点に対して行っ た。その結果,優位ステレオタイプ抑制の主効果が有意であり,優位ステレオ タイプ抑制あり条件(M = 5.73、SD = 1.21)は,優位ステレオタイプ抑制なし条 件(M = 2.30,SD = 1.16)に比べ,反ステレオタイプ度得点が高かった(F (1, 43)
= 95.84, p < .01)。なお、認知的複雑性の主効果(F (1, 43) = 0.57, n.s.),認知的複 雑性と優位ステレオタイプ抑制の交互作用効果(F (1, 43) = 0.16, n.s.)について は,有意な結果は得られなかった。以上の分析の結果、認知的複雑性に関わる 主効果も交互作用効果も有意ではなかった。したがって,認知的複雑性が低い 個人が,反ステレオタイプ的特性を代替思考として使用しているかどうかはわ からない。このような結果が得られた理由として,評定の際に,反ステレオタ イプ的特性と非優位ステレオタイプ的特性が区別されていなかった可能性が考 えられる。なぜなら,反ステレオタイプ度得点についての分析の結果は,ステ レオタイプ度得点についての分析の結果と逆,つまり優位ステレオタイプ抑制 を行った場合と行わなかった場合で,得点の高低が逆であったことから,この 分析で用いた反ステレオタイプ度得点は,優位ステレオタイプ的特性以外のす べての特性(反ステレオタイプ的特性と非優位ステレオタイプ的特性の両方)
を反映していた可能性が考えられる。認知的複雑性の高低によって,実際に代 替思考として使用する内容が異なるかどうかの検討は今後の課題であり,代替
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思考の内容を精密に分析できる課題を検討する必要がある。
語彙判断課題における反応時間
語彙判断課題における女性ステレオタイプ関連語 3 語と女性ステレオタイプ 無関連語 3 語に対する反応時間について分析を行った。それぞれの単語は,語 彙判断課題において4回提示されているため,参加者1名につき24試行での反 応時間が分析対象となった。これらの試行での誤答率は1.53%であり,誤答の場 合の反応時間を除いて分析を行った。まず,データの分布を正規分布に近似さ せるために,すべての反応時間を対数変換した。各参加者の反応時間を女性ス テレオタイプ関連語と女性ステレオタイプ無関連語ごとに平均した値を以下で の分析に使用した。
認知的複雑性の違いによる優位ステレオタイプ的特性に対するアクセス可能性 の差異
優位ステレオタイプ抑制による逆説的効果と認知的複雑性との関係を検討す るために,認知的複雑性(高,低)×優位ステレオタイプ抑制(優位ステレオ タイプ抑制あり,優位ステレオタイプ抑制なし)×単語の種類(女性ステレオ タイプ関連語,女性ステレオタイプ無関連語)の 3 要因の分散分析を反応時間 に対して行った。その結果,単語の種類の主効果が有意(F (1, 43) = 125.99, p
< .01),優位ステレオタイプ抑制×単語の種類の2要因の交互作用効果が有意(F
(1, 43) = 15.25, p < .01),認知的複雑性×単語の種類の2要因の交互作用効果が有
意傾向(F (1, 43) = 3.91, p < .10),認知的複雑性×優位ステレオタイプ抑制×単 語の種類の3要因の交互作用効果が有意(F (1, 43) = 4.37, p < .05)であった(Table 5.4.1)。
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単語の種類の主効果は,女性ステレオタイプ無関連語に比べて女性ステレオタ イプ関連語は反応時間が短いことを示していた。優位ステレオタイプ抑制×単 語の種類の 2 要因の交互作用効果が有意であったことから,単純主効果の検定 を行った。その結果,女性ステレオタイプ関連語条件において,優位ステレオ タイプ抑制なし条件に比べて優位ステレオタイプ抑制あり条件は反応時間が短 かった(F (1, 86) = 7.25, p < .01)。さらに,優位ステレオタイプ抑制あり条件と 優位ステレオタイプ抑制なし条件それぞれにおいて,女性ステレオタイプ無関 連語条件に比べて女性ステレオタイプ関連語条件は反応時間が短かった(F (1, 43) = 114.46, p < .01; F (1, 43) = 26.79, p < .01)。認知的複雑性×単語の種類の2要 因の交互作用効果が有意傾向であったことから,単純主効果の検定を行った。
その結果,認知的複雑性の高条件と低条件それぞれにおいて,女性ステレオタ イプ無関連語条件に比べて女性ステレオタイプ関連語条件は反応時間が短かっ た(F (1, 43) = 42.76, p < .01; F (1, 43) = 87.14, p < .01)。
以上の効果は,3要因の交互作用効果によって制限されていた。認知的複雑性
×優位ステレオタイプ抑制×単語の種類の 3 要因の交互作用効果が有意であっ たため,認知的複雑性の高条件,低条件ごとに優位ステレオタイプ抑制×単語 の種類の 2 要因の単純交互作用の検定を行った。その結果,認知的複雑性の低 条件においては,優位ステレオタイプ抑制×単語の種類の交互作用効果が有意 であった(F (1, 43) = 17.97, p < .01; Figure 5.4.1)。単純主効果の検定を行った結
女性ステレオタイプ 関連語
女性ステレオタイプ 無関連語
女性ステレオタイプ 関連語
女性ステレオタイプ 無関連語
女性ステレオタイプ 関連語
女性ステレオタイプ 無関連語
女性ステレオタイプ 関連語
女性ステレオタイプ 無関連語
平均値 6.17 (486) 6.26 (533) 6.22 (514) 6.28 (546) 6.12 (462) 6.28 (547) 6.23 (518) 6.29 (554)
標準偏差 0.08 (43.27) 0.09 (49.66) 0.09 (44.62) 0.10 (60.45) 0.12 (51.84) 0.13 (70.28) 0.09 (44.79) 0.08 (50.04)
注) 括弧内は対数変換前の反応時間を示す。
Table 5.4.1
各単語に対する認知的複雑性各群のステレオタイプ抑制条件ごとの対数変換後の平均反応時間と標準偏差
認知的複雑性高群 認知的複雑性低群
ステレオタイプ抑制あり (n = 12)
ステレオタイプ抑制なし (n = 12)
ステレオタイプ抑制あり (n = 12)
ステレオタイプ抑制なし (n = 11)
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果,女性ステレオタイプ関連語条件において,優位ステレオタイプ抑制なし条 件に比べて優位ステレオタイプ抑制あり条件は反応時間が短かった(F (1, 86) =
7.13, p < .05)。さらに,優位ステレオタイプ抑制あり条件と優位ステレオタイプ
抑制なし条件それぞれにおいて,女性ステレオタイプ無関連語条件に比べて女 性ステレオタイプ関連語条件は反応時間が短かった(F (1, 43) = 92.13, p < .01; F (1, 43) = 12.99, p < .01)。なお,単純交互作用の検定を行った結果,認知的複雑性 の高条件については,有意な効果は得られなかった(F (1, 43) = 1.65, n.s.)。
認知的複雑性得点と反応時間の性差の検討
参加者の性別で,認知的複雑性得点,女性ステレオタイプ関連語に対する反 応時間,女性ステレオタイプ無関連語に対する反応時間それぞれに差がないか を検討したところ,認知的複雑性の得点(t (45) = 1.20, n.s.),女性ステレオタイ プ関連語の反応時間(t (45) = 0.05, n.s.),女性ステレオタイプ無関連語の反応時 間(t (45) = 0.34, n.s.)のすべてにおいて,性別による有意な差は得られなかった。
なお,条件ごとの男女の内訳は,認知的複雑性高群における優位ステレオタイ
6.0 6.1 6.2 6.3 6.4
優位ステレオタイプ抑制あり 優位ステレオタイプ抑制なし 優位ステレオタイプ抑制あり 優位ステレオタイプ抑制なし
認知的複雑性高群 認知的複雑性低群
対 数 変 換 後 の 反 応 時 間
Figure 5.4.1 各単語に対する認知的複雑性各群のステレオタイプ抑制条件ごとの平均反応時間と標準誤差
女性ステレオタイプ関連語 女性ステレオタイプ無関連語