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質点の直線運動

ドキュメント内 2017年版PDF (ページ 69-72)

6.3.2 運動方程式の積分

運動x(t)の具体的な関数形を求めるには,微分方程式(6.9)を解かねばならない.

そのためには,左辺の2階微分x(t)¨ の階数を減らす方法が必要だが,これには微積分 学の基本定理が使える.

▶▶(微積分学の基本定理) 微分操作は積分で元に戻せる.ただし積分定数がつく.

˙

x dt=x+C (C は積分定数) (6.11)

さっそく,運動方程式(6.10)の両辺を,時間tで積分すると,

x)dt=

∫ ( ˙x).

dx =

f

mdtC:=C2−C1

= x˙+C1 = f

mt+C2x(t) =˙ f

mt+C (6.12) もう1回積分して,

( ˙x)dt =

∫ (f mt+C

)

dtD:=D2−D1

= x+D1 = f m

t2

2 +C t+D2,x(t) = f m

t2

2 +C t+D (6.13) という解を得る.このx(t)が,一定の力f を受ける質点の運動である.

6.3.3 積分定数C, Dの消去

(6.13)の運動x(t)は,任意定数C, Dを含むので,まだ運動は確定していない.そ こでまず,(6.13)にt= 0を代入すると,

x(0) = f m

02

2 +C0 +D=D

となり,任意定数Dは,質点の初期位置x(0) =x0 に対応することが分かる.同様 に,(6.12)にt= 0を代入すると,

˙ x(0) = f

m0 +C=C

となり,任意定数Cは,質点の初速度x(0) =˙ v0 に対応することが分かる.

以上,一定の力fを受ける質量mの質点の運動が,初期位置x(0) =x0 と初速度

˙

x(0) =v0 を既知として,次のように求まった.

x(t) = (f

m )t2

2 +v0t+x0 (6.14)

このように,一定力fを受ける質点の運動x(t)は,2次関数,1次関数,定数の3項 からなる.2次関数は加速度(f /m)の加速運動,1次関数は速度v0の等速運動,定 数項x0は初期位置を表す.

6.3. 質点の直線運動 63

6.3.4 積分定数C, Dの消去境界値問題 (6.14)の計算では,微分方程式,

¨ x= f

m (

= x(t) = f m

t2

2 +C t+D )

に,初期条件,

x(0) =x0, x(0) =˙ v0 (6.15) を連立することで,任意定数C, Dを決めた.この種の問題を初期値問題という7). その結果,C, Dが初速度と初期位置に対応し,物理的にも自然な計算となった.

ところが,これを単なる数学の例題として見れば,未知数C, Dの決定を,初期時 刻t= 0で行う必然性はない.未知数C, Dの数だけ,独立な条件式を用意できれば,

未知数は確定する.

そこで,初期時刻t= 0に加えて,終端時刻8)t1>0での条件を考える.これを終 端条件という.ざっくりいって,初期値と終端値を混在させた問題を,2点境界値問 題もしくは単に境界値問題という.

境界条件の例を下表に示す.いまは未知数C, Dが2個なので,境界条件も2個で よい.その取り方は,形式的には,4個から2個選ぶ組み合せの数だけある.

使う条件

境界条件No 初期位置 初速度 終端位置 終端速度 備考 x(0) =x0 x(0) =˙ v0 x(t1) =x1 x(t˙ 1) =v1

(1) ○ ○     初期条件

(2)   ○ ○   例題

(3)     ○ ○

(4) ○   ○  

(5)   ○   ○

(6) ○     ○

例えば,境界条件(2)で,

x(0) = 0,x(5) = 10.(初速度・終端位置)˙

の場合を考えてみよう.意味するところは,t= 0で静止状態x(0) = 0˙ にある質点が,

5秒後に地点x(5) = 10を通過するように未知数C, Dを確定せよ,である.この境 界条件を(6.13),(6.12)に代入すると,

˙ x(0) = f

m0 +C= 0 ∴ C= 0

7)初期時刻t= 0における事前情報で任意定数を確定する問題,という意味.

8)運動を考察する時間軸の終端という意味.

x(5) = f m

52

2 + 0·5 +D= 10 ∴ D= 1025f 2m

となる.得られたC, Dを(6.12),(6.13)に代入すると,質点の速度と位置が,

˙ x(t) = f

mt, x(t) = f m

t2 2 +

(

1025f 2m

)

のように確定する.

ちなみに,この運動を実験で再現するには,初期値問題に等価変換する必要がある.

なぜなら,t <5の時点で,未来の状態x(5)を設定することはできない.そこで,こ の境界値問題と同じ運動を実現する初期条件,

x(0) = f m

02 2 +

(

1025f 2m

)

= 1025f

2m, x(0) =˙ f m0 = 0

を質点に与える.実験が十分に高精度なら,境界条件x(0) = 0˙ ,x(5) = 10を満足す る運動が実現する.

なにやら,タイムマシーンめいた話になってしまったが,この種の問題は,いわゆ る「設計」すなわち「逆算」の問題として,技術者がよく直面する9).この例題は,

ようするに,与えられた質量mと力f の条件下で,時刻t= 0で静止状態x(0) = 0˙ にある質点が,5秒後にx= 10mの地点を通過するような,初期位置x(0) =x0を 逆算せよ,というものである.自動車で脚色した例題を挙げておく.計算自体は,直 前の式と全く同じである.

例題6.3 質量m= 1000kg,推進力f= 5000Nの自動車が,t= 0において静止状 態x(0) = 0˙ にある.この自動車が5秒後(t= 5)にx= 10mの地点を通過するた めには,スタート地点x(0) =x0 をどこに置けばよいか.

ドキュメント内 2017年版PDF (ページ 69-72)