♣ 8 章の補足
● 例題8.1p83の解答例
長方形の寸法をa= 0.21m,b= 0.06m と表記する.まず,欠損部を埋めた長方 形の質量はm1 =ab [kg]であり,重心まわりの慣性モーメントは,I1′ =m1(a2+ b2)/12 =ab(a2+b2)/12 [kg·m2]である.重心(中点)からOまでの距離d1= 0.075 に対して,平行軸の定理より,O点まわりの慣性モーメントは,
I1=I1′+d21m1=ab
12(a2+b2) +d21ab≈1.21×10−4
となる.次に,小円の半径r2= 0.01に対して,質量はm2=πr22,O点(重心)ま わりの慣性モーメントは,
I2=m2
2 r22= π
2r24≈1.57×10−8
である.最後に,大円の半径r3= 0.02に対して,質量はm3=πr32,重心まわりの 慣性モーメントはI3′ =m3r23/2となる.大円の重心とO点の距離d3= 0.14に対し て,平行軸の定理より,O点まわりの慣性モーメントは,
I3=I3′+d23m3=π
2r34+d23πr23≈2.49×10−5
となる.以上,この剛体板のO点まわりの慣性モーメントは,I =I1−I2−I3 = 9.61×10−5kg·m2//
● 問題8.1p83の略解
例題7.1の解答例p75で求めた運動方程式は,
m¨x=mgsinα−f (=F) Iθ¨=r f (=T)//
であった.まず,これらからfを消去できる.消去後の式にはxとθが混在するが,
球と斜面は滑らないと仮定したので,両者の間には弧度法の関係式x=r θが成立す る.rは定数だから2階微分の関係はx¨=rθ¨となり,これからθに関する項を消去 できる.最後に,球の慣性モーメントI は,表8.1p82にある.これを代入すると,x 方向の運動方程式は,
¨ x=5g
7 sinα//
(
= mgsinα m+I/r2
)
8.3. 応用問題 85
A8
力学法則8.1
p78の証明図的に証明できる.例えばN = 4において,図7.2p70の内力のペアf14,f41に 着目すると,図7.4p72を重ねて,(質点を省き,内力を見やすく平行移動した)
のように作図できる.トルクの大きさは,符号付き面積により,
S=y1∧f14, S′=y4∧f41 ∵(3.6)p23
として計算できた.図の2つの平行四辺形は,作用・反作用の法則より底辺の長さが等 しく(
|f14|=|f41|),作図より高さhが共通なので,両者の面積の絶対値は等しい.
さらに,作用・反作用の法則よりf14とf41は逆向きなので,面積の符号は逆となり,
結局S=−S′の関係が判明する.ゆえに,この内力のペアが発生するトルクの総和は,
y1∧f14+y4∧f41=S+S′=S−S= 0
のようにゼロとなる.残りのペアについても,同様にゼロとなるので,質点系の内力が 発生するトルクの総和はゼロである.一般のN 質点系についても同様に証明できる.
B8
慣性モーメントの導出5.2節p45の重心のときと同様に,次のような細分化と極限の手順をとればよい.
(1)剛体をn個の小片に分割する.
(2)各小片の位置ベクトルxiと,質量miをとる.
(3)これらを算法8.3p80に代入して,近似的な慣性モーメントInを求める.
そのうえで,極限limn→∞Inを積分として計算するわけである.
表8.1p82から,いくつか抜粋して計算してみる.被積分関数が慣性モーメント用 になるだけで,手順は重心の場合と同じである.
(b) 長方形板の慣性モーメント x方向に幅a,y方向に高さbをとった長方形を,
n個の小片に分割する.小片の位置ベクトルをxi = (xi, yi)T とし,小片のサイズ を∆x, ∆yと書く.長方形板の面密度ρ=質量/面積=M/(ab)より,小片の質量は mi=ρ∆x∆yと書ける.
以上を算法8.3p80に代入すると,近似的な慣性モーメントInは,
In=
∑n i=1
mi|xi|2=
∑n i=1
ρ∆x∆y·(x2i +yi2) (8.20)
となる.その極限n→ ∞をとるのだという気持ちを忘れずに,積分への書き換えp46 を行うと,
I=
∫∫
A
ρ(x2+y2)dxdy (8.21)
という積分公式が得られる.Aは長方形に含まれる座標点の集合,
A={(x, y)| −a/2≤x≤a/2, −b/2≤y≤b/2} (8.22) である.位置ベクトルの原点は重心であり,長方形の重心は中点であることに注意せよ.
さて,Aの全点を通過するような積分経路は,例えば,∫∫
A=∫b/2
−b/2
( ∫a/2
−a/2dx )
dy という2重積分で実現できる.さっそく実行すると,
I=
∫∫
A
ρ(x2+y2)dxdy=
∫ b/2
−b/2
( ∫ a/2
−a/2
ρ(x2+y2)dx )
dy
=ρ
∫ b/2
−b/2
(a3 12+y2a
) dy=ρ
(a3 12b+ b3
12a )
=M ab
(a3 12b+b3
12a )
=M
12(a2+b2) (8.23) となり,表8.1の(b)の公式が得られる.
(a)細い棒の慣性モーメント (b)の長方形において,幅a=l,高さb= 0を代入 すると,(a)の公式が得られる.
(c) 直方体の慣性モーメント 表8.1の直方体の高さcを,0まで圧縮すると,(b) と同じ形状の長方形が得られる.そうみなしたときの面密度を調べてみる.まず,直方 体の3次元の密度はρ=M/(abc)である.この密度が高さcに渡って均等に分布し ているから,高さcを0に圧縮したときの面密度は,cM /(abc) =˙ M/(ab)となり,
「(b)直方体」の面密度に一致する.形状が同じで,面密度も等しいので,(b)と(c) の公式は同じになる.
その他の公式については,5.2節p45での重心の導出を参考にしながら,各自試み られたい.
C8
力学法則8.3
p83の証明離散剛体のときは,(8.17)p80の総和を,部品ごとにグルーピングすることが「分 割」である.例えば,質点数N = 7,分割数m= 3のとき,
I= (m1|x1|2+m5|x5|5)
| {z }
部品I1
+ (m3|x3|2+m4|x4|2+m7|x7|2)
| {z }
部品I2
+ (m6|x6|2)
| {z }
部品I3
のような任意の分割が確かに可能である.連続剛体のときも,質点近似のために分割し た小片を,再度グルーピングするようにして同様に証明できる.
9
運動量の保存則
運動方程式を解かずに,運動の性質を調べる方法が2つある.1つが「運動量の保 存則」,もう1つが「エネルギーの保存則」である.ここでは,外力が0のときに使 える前者について学ぶ.(後者は次章で学ぶ)
9.1 運動量と角運動量
力学でいう「保存」とは「時間変化しない」という意味である.したがって,保存 量の見つけ方としては,時間微分が(☆).
= 0となるような ☆ を探しまくればよい.
9.1.1 運動量の保存
外力を受けない質点の運動m¨x=Oについて,(☆).
= 0となるような ☆ を探し てみる.これは簡単で,両辺をmで割り,
¨ x= ( ˙x).
=O (9.1)
と変形すれば,☆= ˙xが見つかる.すなわち,
• 外力を受けない質点は,その速度を保存する.
となり,これはニュートンの第1法則p60そのものだ.
次に,2質点系を考える.外力はないが,内力はあってよいとする.
m1x¨1=f, m2x¨2=−f (f は内力) (9.2) 内力f,−f があるので,もはや単独では= 0にできない.そこで,7.3.2節p73な どで散々やったように,両辺を総和すると,m1x¨1+m2x¨2=Oとなる.この条件か ら(☆).
= 0となるような ☆ を探すと,
m1x¨1+m2x¨2= (m1x˙1+m2x˙2
| {z }
☆
).
=O
のようなものが見つかる.この量P :=☆=m1x˙1+m2x˙2 を,質点系の全運動量 (total momentum),各pi :=mix˙i を運動量という.N 質点系でも同様に考えて,
次の法則を得る.
力学法則9.1 (運動量の保存則) 外力を受けないN 質点系の全運動量,
P :=
∑N i=1
pi =
∑N i=1
mix˙i (9.3)
は保存する(時間変化しない).
例題9.1 (弾速測定器— Step 1) 質量m1,速度v1の弾丸を,天井から紐で釣って静
止(v2 = 0)させた質量m2の緩衝材の重心めがけて打ち込む.
着弾直後に,弾丸と一体となった緩衝材の速度v2を求めよ.
9.1.2 角運動量の保存
2質点系(9.2)の両辺のトルクをとり,
m1x1∧x¨1=x1∧f, m2x2∧x¨2=−x2∧f
両辺を総和すると,力学法則8.1p78が効いて,m1x1∧x¨1+m2x2∧x¨2 =Oとな る.これから(☆).
= 0となるような ☆ を取り出すと,算法8.2p79より,
m1x1∧x¨1+m2x2∧x¨2= (m| 1x1∧x˙1{z+m2x2∧x˙2}
☆
).
=O
となる.この保存量,
L:=☆=m1x1∧x˙1+m2x2∧x˙2 =x1∧p1+x2∧p2
を,質点系の(重心まわりの)全角運動量(total angular momentum)という.各 li:=xi∧(mix˙i) =xi∧pi を角運動量という.N 質点系でも同様に考えて,次の法 則を得る.