力学法則9.4 (運動量・角運動量の保存則—質点系の集合) 外力を受けない質点系をM 個考える.それぞれの全運動量がP1,· · ·,PM,全角運動量がL1,· · ·, LM である とき,それらの合計,
P =
∑M j=1
Pj, L=
∑M j=1
Lj (9.5)
は保存する(時間変化しない).
原理は簡単だ.外力のない質点系をM 個考える.これらの構成要素は,外力のな い質点だから,これらを合体させた質点系もまた,外力のない質点系となる.ゆえに,
M 個の各質点系と,合体後の質点系には,それぞれ保存則が成立する.
合体後の質点系の運動量P は,例えば,
P =p1+p2
| {z }
P1
+p3+p4+p5
| {z }
P2
+p6+p7+p8+p9
| {z }
P3
のような構成になる.角運動量Lも同じである.これを逆に使うと,質点系の分解も 議論できる.すなわち,今度は,保存するP =p1+p2+p3+p4+p5+p6+p7+ p8+p9を先に与えて,
P =p1+p2+p3
| {z }
P1′
+p4+p5
| {z }
P2′
+p6+p7+p8+p9
| {z }
P3′
などと分割する.外力のある質点は1人もいないから,これらは全て外力のない質点 系となり,P1′, P2′, P3′は保存する.角運動量Lもまたしかりである.
9.2.2 剛体への拡張
剛体は質点系の一形態だから,当然,剛体単体としての全運動量P や全角運動量L を持つ.それらを力学法則9.4のPiやLiに代入すれば,保存則を適用できる.
問題はどう書き下すかである.剛体単体の運動量に「全」を付けるのは語弊がある ので,以下「全」を省く.さて,外力と外トルクを受けない剛体の運動方程式は,力 学法則7.1p68にF =O,T = 0を代入した,MX¨ =O,Iθ¨= 0である.これらを,
MX¨ = (MX˙ ).
=O, Iθ¨= (Iθ˙).
= 0 のように変形すると,(☆).
= 0となるような保存量 ☆ として,運動量P =MX˙ と 角運動量L=Iθ˙が得られる.以上,次の算法が得られる.
算法9.1 (剛体の運動量) 重心X,姿勢角θ,質量M,慣性モーメントI の剛体の
運動量P と,角運動量Lは,
P =MX,˙ L=Iθ˙ (9.6)
で与えられる.
9.2. 剛体および剛体系への拡張 91
これらを,力学法則9.4のPi,Liとして代入したのが,剛体に関する運動量の保 存則となる.
例題9.2 (はずみ車の急制動による振り子の振り上げ— Step 1) 下死点(θ= 0)で静止状
態の振り子の先端に,質量m1,慣性モーメントI1のはずみ車を取り付け,角速度ω1
で回転させておく.
いま,クラッチを継いで,振り子棒とはずみ車を一体化させた.一体化直後の振り子 の角速度ω2を求めよ.クラッチの質量と慣性モーメントは無視する.
▶▶(並進運動と回転運動の相似性) 回転運動に関する例題9.2の計算過程は,形式的に,
並進運動に関する例題9.1p88と同じになる.これは,表7.1p69に示した並進運動と回 転運動の相似性の表れである.
その他,平面運動限定だが,算法9.1の帰結として,次の法則が得られる.
力学法則9.5 (※平面運動限定) 外力のない2次元剛体の,重心速度X˙ と角速度θ˙
は保存する.
▶証明 剛体は質点系の一形態だから,外力がないとき算法9.1のP =MX˙ とL= Iθ˙は保存する.M, Iは定数だから,重心速度X˙ と角速度θ˙は保存する.
▶▶(3次元の場合) 不思議なことに,コマや人工衛星のような3次元の回転運動では,
角運動量が保存していても,角速度は一定にならない.ちなみに3次元運動の角速度は,3 次元ベクトルになる1).
9.2.3 剛体系への拡張
剛体が複数になっても一向に困らない.剛体は質点系の一形態であるから,力学法 則9.4のメンバーに,剛体という名の質点系が増えるだけである.ちなみに,N 個の 剛体の集合を,N剛体系(N-rigidbody system)という.
問題9.1 質量m1 = 1,慣性モーメントI1 = 2,重心速度v1 = (1,0)T,角速度 ω1 = 5の剛体と,質量m2 = 2,慣性モーメントI2 = 3,重心速度v2 = (0,2)T, 角速度ω2= 3の剛体が,衝突し,外力を使わずに一体化した.一体化後の慣性モーメ ントをI= 4とするとき,一体化後の重心速度vと,角速度ωを求めよ.
1)http://edu.katzlab.jp/lec/mdyn/3dに,無重力空間を宙返りしまくるペンチの動画を用意しておい たので,ぜひご覧ください.