6.2. ニュートン力学 59
⃗
x(t) =x1(t)i+x2(t)j+x3(t)k (6.3) と書ける6).これを時間で微分すると,i,j,kは動かないので,成分のみが微分されて,
⃗x(t) = ˙˙ x1(t)i+ ˙x2(t)j+ ˙x3(t)k (6.4) という幾何ベクトル⃗x(t)˙ を得る.この⃗x(t)˙ を,質点Xの速度(velocity)という.
これをもう1回微分して得た幾何ベクトル,
⃗¨x(t) = ¨x1(t)i+ ¨x2(t)j+ ¨x3(t)k (6.5) を,質点Xの加速度(acceleration)という.
ここで,以上の計算結果(6.3)〜(6.5)は,数ベクトルの時間微分p56を使うと,
[⃗x]E= [xi(t)] =x, [⃗x˙
]
E= [ ˙xi(t)] = ˙x, [⃗x¨
]
E= [¨xi(t)] = ¨x (6.6) のように表記できる.特に,速度と加速度について,
「幾何ベクトルの時間微分」の成分=「幾何ベクトルの成分」の時間微分 という驚くべき一致が起きている.この一致を利用して,次の用語を導入する.ただ し,これらは静止座標系に限定!の用語である.注意せよ!!
運動,速度,加速度(静止座標系限定)
静止座標系(O,E)で測った質点Xの空間座標x= [xi]について,
• x(t) := [xi(t)]・・・質点X の運動
• x(t) := [ ˙˙ xi(t)]・・・質点X の速度
• x(t) := [¨¨ xi(t)]・・・質点X の加速度
▶▶(動座標系における時間微分) 静止座標系に限定しないとどうなるか,基底ベクトル
が時間の関数E=⟨
i(t),j(t),k(t)⟩
のときを計算してみよう.位置ベクトル,
⃗x=x1(t)i(t) +x2(t)j(t) +x3(t)k(t) を1回微分すると,ライプニッツ則より,速度ベクトル,
⃗˙ x=
(
˙
x1(t)i(t) +x1(t)˙i(t) )
+ (
˙
x2(t)j(t) +x2(t) ˙j(t) )
+ (
˙
x3(t)k(t) +x3(t) ˙k(t) )
もう1回微分して加速度ベクトル,
⃗¨x= (
¨
x1(t)i(t) + 2 ˙x1(t)˙i(t) +x1(t)¨i(t) )
+ (
¨
x2(t)i(t) +· · · を得る.したがって,一般に,
[⃗x]E= [xi(t)] =x, [⃗x˙
]
E̸= [ ˙xi(t)] = ˙x, [⃗¨x
]
E̸= [¨xi(t)] = ¨x
となる.したがって,時間変化する座標系の上では,質点の速度や加速度を,空間座標の 時間微分x,˙ x¨で表すことはできない.
動く座標系の例として,運動中のヒトやロボットに取り付けたカメラからの映像がある.
そこに映った運動を微分しても,一般には,実空間の速度にはならない.
6)(1.4)p7.
6.2.3 ニュートンの法則
さて,長い準備が完了した.質点の運動x(t)と,質点が受ける力f について,次 の法則が知られている.内容的には,高校で目にしたものと同じである.
力学法則6.1 (ニュートンの法則)
第1法則: 力を受けない質点は,その速度を保つ.(静止していれば静止を保つ) 第2法則: 力f を受けた質量mの質点の運動x=x(t)は,
m¨x=f (6.7)
に従う.これを運動方程式(equation of motion)という.
第3法則: 質点Xiが質点Xjから受ける力をfij,逆に質点Xjが質点Xiから 受ける力をfjiとするとき,
fij=−fji (6.8)
が成立する.これを作用・反作用の法則(action-reaction law)という.
この法則の解釈が,実はややこしい.前提条件(第1法則)と,前提条件ありの法 則(第2法則)と,前提条件なしの法則(第3法則)が同列に並んでいるためだ.そ こで,この法則の使用手順を見ていくことで,各法則の役割を理解しよう.宇宙空間の ある地点で,これから力学計算に着手する宇宙人になったつもりで見るとよい.
ニュートンの法則の使用手順
Step 1: 使用する座標系の選定(第1法則) 座標系(O,E)の選び方を工夫し て,(O,E)で測定した質点の運動x= [xi]が,
• 力を受けなければ,速度を保つ.(静止していれば静止を保つ)
となるようにする.こうして選んだ座標系を,慣性座標系(inertial coordinate system, inertial frame)または慣性系という.
▶▶ 静止座標系は,慣性系の1つである.慣性系は,静止座標系より制限がゆる い.例えば,等速直線運動する座標系は,静止座標系ではないが,慣性系である.他 方,曲線運動(円運動など)する座標系は,慣性系にはなれない.
Step 2: 運動方程式の導出(第2法則) 慣性系(O,E)で測った質点の加速度
¨
x= ¨x(t)に質量mを乗じ,同じ基底E で測った外力の成分f= [fi]と等値し て,運動方程式mx¨=f を導く.
Step 3: 多体問題への拡張(第3法則) 質点が,他の質点や外部構造と接触す る場合,または連動する場合は,Step 2の外力f も未知数になる.こうした未 知数を,作用・反作用の法則fij=−fjiで消去する.