物体に働くトルクT1, T2,· · · の総和がゼロとなる条件,
T:=T1+T2+· · ·= 0 (3.13) を,(トルクの)釣合い条件という7).未知数を含む釣合い条件を,釣合い方程式とい う.物体に働くトルクが釣合い条件を満すとき,トルクが物体の回転運動に及ぼす効果 はゼロになる.
例題3.4 例題3.2p24の着力点Oをどこに移せば,この棒のトルクは釣合うか.釣 合い条件を与えるaとbの比r=a/bを,fA, fB で書き下せ.
例題3.5 同様に,例題3.3p24の着力点Oをどこに移せば,この棒のトルクは釣合 うか.釣合い条件を与えるaとbの関係式を,fA, fB, T′で書き下せ.(前問と異な り,関係式は比r=a/bでは表せない)
7)T ,0をT,Oとすれば3次元用の条件となる.
3.4. トルクの釣合い 29
♣ 3 章の補足
● 例題3.1p23の解答例
点Pから測った着力点Qの位置ベクトルxと,点Qに作用する力f の直交成 分は,(2.2)p13より,それぞれ,
x= 0.5
cos 45◦ sin 45◦
, f= 5
cos 120◦ sin 120◦
これらを(3.6)に代入して,
T =x∧f=
0.5
cos 45◦ sin 45◦
∧
5
cos 120◦ sin 120◦
= 2.5
cos 45◦ sin 45◦
∧
cos 120◦ sin 120◦
∵算法3.2p23の分配則
= 2.5
cos 45◦ cos 120◦ sin 45◦ sin 120◦ = 2.5
√1 2 −12
√1 2
√3 2
= 2.5
√3 + 1 2√
2 ≈2.41//
● 例題3.2p24の解答例 各力の成分は,
fA=
0 fA
, fO=
0
−fO
, fB =
0 fB
である.また,Oから見た着力点の位置ベクトルは,
−→OA =
−a 0
, −−→
OO =
0 0
, −→
OB =
b 0
である.ゆえに,Oに作用するトルクは,力学法則3.1p24より,
T =−→
OA∧fA+−−→
OO∧fO+−→
OB∧fB
= −a 0
0 fA
+
0 0
0 −fO
+
b 0
0 fB
=−a fA+b fB//
● 例題3.3p24の解答例
点Oに直接働くトルクT′ を加算して,
T =−→
OA∧fA+−→
OB∧fB+−−→
OO∧fO+T′=−a fA+b fB+T′//
● 例題3.4p28の解答例
例題3.2の解答例p29を使うと,釣合い条件は,
T =−a fA+b fB = 0 これより,r=a
b = fB
fA
//
● 例題3.5p28の解答例
例題3.3の解答例p29を使うと,釣合い条件は,
T =−a fA+b fB+T′= 0//
これが求める関係式となる.
4
剛体に働く力
これまで1点に作用する力やトルクを学んできたが,現実の物体においては,異な る作用点に,複数の力やトルクが同時に働くことのほうが多い.その効果を比較した り,集約したりする方法を学ぶ.
4.1 剛体とは?
変形を無視した物体を,剛体(rigid body)と呼んだ1).その意味するところを,も うすこし丁寧に確認しておこう.
4.1.1 初等力学における「運動」と剛体
初等力学では,物体に引き起される変化のうち「位置」と「姿勢角」の変化に着目 する.それぞれ,
• 物体の「位置」の時間変化を,並進運動(translation)
• 物体の「姿勢角」の時間変化を,回転運動(rotation) と呼び,2つ合せて,運動(motion)という.
こうした運動を計算するため,初等力学では「位置」と「姿勢角」しか動かせない 架空の物体を考える.それが「剛体」である.定義は次の通り.
• 変形しない物体を,剛体(rigid body)という.
なぜ変形を無視すると「位置」と「姿勢角」しか動かせなくなるのか?—茹でたての うどんを1本,放り投げてみよ.うどんの1点を追跡すれば「位置」は簡単に定まる.
しかし「姿勢角」は,うねうね,ぐにゃぐにゃ,定まらない.そこで,うどんを凍結 して変形を制限し,姿勢角を定める.それが剛体だ.
さらに簡略化を進めて,姿勢角まで無視してしまった架空の物体を,質点(point of
mass)という.質点とは,大きさが0の物体である.ものすごい空想力だが,確かに
大きさが無い物体なら,姿勢角を考えずに済む.
1)p23の説明にも登場させた.
4.1.2 剛体に作用する力やトルクの効果
本書では,このあと,力やトルクの「効果」という表現をよく使う.ここでいう「効 果」とは,必然的に,
• 剛体の「位置」や「姿勢角」を変化させる効果
のことになる.なぜなら,「位置」と「姿勢角」しか動かない剛体に,いかなる力やト ルクを加えようとも,その効果は「位置」と「姿勢角」にしか表れない.
以下で見ていくように,複数の力やトルクが剛体に働くとき,その効果は,1つの 力と1つのトルクで表せる.逆に,力とトルクを,それぞれ1つずつ与えれば,剛体 を自由に動かせる.
▶▶ ただし,力とトルクの方向や大きさは,適切に時間変化させる必要がある.また,変 形を考慮した弾性体では「位置と姿勢角」のほかに「形状」も変化するので,一対の力とト ルクでは,特定の効果しか作れない.