第 5 章 地域住民によるまちづくり活動の事例
第 2 節 調査結果と考察
第1節では、17 の事例おける調査対象地の概要と組織の取り組みについて、インタビュー 調査および文献調査などの結果をもとに検証を行った。第2節では、組織運営および活動 について経緯と現状を把握し、さらに今後も継続させていく要因を見つけ出すことを目的 とし、調査の結果をまとめ表 5-5 を作成した。各項目について、明確に該当する場合のみ「●」
と表記し、該当しない、もしくは不明確、未確認のものは空欄とした。表 5-5 の結果およ び調査結果をもとに各項目について分析し、考察を行った。
1. 活動地域の現状 1. 1 地域の現状
今回調査したすべての活動地域では行政や住民団体によって町並みや景観保存の取り組 みが行われているが、約半数が重要伝統的建造物群保存地区に選定された地域である。
村上をはじめとして勝山や長浜など各地域では伝統的な祭りが残っているが、いずれの 地域も地域住民の祭りへの参加状況は高く、このような地域では祭りによる独自のコミュ ニティが形成されている。祭り以外のコミュニティとして、鯨ヶ丘では地元の高校の卒業 生によるコミュニティなどが挙げれらるが、村上や鯨ヶ丘のように強固なコミュニティが 伝統的にあり、それが新しい様々な活動につながっている事例もみられる。また、近所付 き合いについても全般的に良好であるとの回答が複数件あった。
1. 2 空き家・空き店舗の活用状況
全国各地で少子高齢化や若者流出などによる人口減少等、様々な問題から空き家・空き 店舗が増加し、その対策が課題となっている。空き家・空き店舗を活用することで、既存 の地域コミュニティの活性化や新たなコミュニティが形成されるなどの効果が期待され、
行政や住民組織がその対策に取り組んでいる。本研究の対象地域でも同様の問題を抱えて いる地域が多く、佐原など約 7 割の当該地域で行政や住民組織が空き家・空き店舗を活用 した取り組みを行っている。鯨ヶ丘では空き店舗を地域住民のコミュニティスペースとし て活用しており、地域住民の憩いの場となっている。村上では来訪者のための案内所や休 憩所として空き家が活用されているが、特にイベント時には地域住民と来訪者との交流の 場となっている。また、その取り組みの効果としてマチトソラの活動地域である池田や白 壁の活動地域である八女福島など、今回の調査対象のうち約 4 割の地域で他地域からの移 住者がみられる。空き家・空き店舗の活用により、殆どの地域で他地域からの移住者を少 なからず生み出しており、その中で八女福島のように移住者と地域住民との交流を積極的 に進めている地域もある。八女福島では地域の活動状況に共感し、他の地域から移住してく る人が増えている地域であるが、移住者を地域コミュニティに受け入れていく体制が整えられ ており、実際に移住者が地域の祭りや行事に参加しながら地域コミュニティの一員となり地域 のまちづくり活動にも参加している。
表 5-5 調査結果一覧
分類 調査項目
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 村上町家商人会 鯨ヶ丘倶楽部 浜崎しっちょる会 かつやま町並み保存事業を応援する会 倉敷おひなまつり事項委員会 室津を活かす会 まちづくり役場 近江八幡おやじ連 日田の明日を考える会 うすき竹宵 うすき雛めぐり 筑後吉井おひなさまめぐり 白壁ギャラリー企画室 佐原おかみさん会 卯のほたる マチトソラ 引田町並み保存会
1) 活動地域の現状 景観・町並み 景観・町並み保存の取り組み
(行政 or 他の組織 or 当該組織) ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
重要伝統的建造物群保存地区 ● ● ● ● ● ● ● ●
歴史・文化 伝統的祭りの参加 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 空家・空き店舗対策 空き家・空き店舗活用
(行政 or 他の組織 or 当該組織) ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
移住者(※特筆すべき状況●) ● ● ● ● ● ● ●
2) 組織の形成過程
および組織運営組織の形成
過程 設立の経緯 継続度 ※ 10 年以上● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
組織形成の母体 商店会(組合) ● ● ● ● ● ●
自治・町内会 ● ● ● ● ●
他のコミュニティ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
行政主導の活動が契機となっている ● ● ● ● ● ●
組織運営 メンバー構成 メンバーの年齢層が多世代混合
注 7) ● ● ● ● ● ● ●
リーダーの存在 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
コアメンバーの存在 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
リーダー・コアメンバーの年齢層
※ 60 代以上● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
リーダー・コアメンバーのUターン者 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
リーダー・コアメンバーのIターン者 ● ● ● ● ● ●
運営方法 役割分担 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 定例会 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
活動概要 活動 景観・町並み保存の取り組み ● ● ● ● ● ● ●
空き店舗・空家活用 ● ● ● ● ● ● ● ● ●
イベント等 組織の所在地域と活動地域の関係 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● イベント数 ( 少数・多数 )
※多数● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
イベントへの地域資産
( ハード ) の活用 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● イベントへの地域資産
( 人形など ) の活用 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● イベント活動の強い趣旨、ルール ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 当該地域の住民の参加および協力 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 3) 継続のための
取り組み 負担の軽減 参加者への配慮 参加住民への活動参加への労力
の軽減化 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
参加住民との交流および意見交換 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● モチベーシ
ョンの維持
情報発信と評価 マスコミ・マスメディアの利用 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ホームページ、SNS の活用 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 各機関からの受賞のための
取り組みおよび受賞歴 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
デザイン性 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
影響・効果 同地域内の
住民組織の形成他の組織の派生 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
若者の組織形成 ● ● ● ● ●
4) 発展・展開 連携 ( 参加・協 力 )の状況
住民 当該地域の以外の住民参加
および協力 ● ● ● ● ● ● ● ● ●
組織 同地域内の他の住民組織 ● ● ● ● ● ● ● ● ●
地域内の異なる世代の組織
注 7) ● ● ● ● ● ● ● ●
他の地域の組織 ● ● ● ● ● ●
行政 連携 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
連携内容 _ 補助金 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
1. 3 まとめ
今回調査対象とした地域では現在でも伝統的な祭りが残っており、祭りによる独自のコ ミュニティが形成されている。また、近所付き合いについても全般的に良好だが、各地で の組織へのインタビュー調査ではこれらのコミュニティが組織の形成や活動の継続性に影 響しているとの回答が聞かれた。
空き家・空き店舗の活用については、各地域で行政を中心に取り組みが進められており、
その効果として、コミュニティの活性化や新たなコミュニティが形成された事例が複数件 見られる。また、今回の調査事例の地域では空き家等に他の地域から移住する者もみられ るが、八女福島など複数の地域では日常生活において、移住者が地域の文化や行事に積極 的に参加し、地域住民と積極的に交流していた。八女福島や鯨ヶ丘などのように、地域の 受け入れ体制が整うことで、今後も移住者が増加すると推測される。
一方で、しっちょる会の活動地域である浜崎では、活動の拠点として空き家を活用して いるが、地域内に多くの空き家がみられ、活用方法について模索している状況であった。
2. 組織の形成過程および組織運営
組織を継続するために、組織の在り方、リーダーの有無、規模、維持管理等のノウハウ が必要であると考えられる。本項では、各組織の概要、運営方法や活動概要を比較し、こ れらの組織が 10 年程度維持されてきた要因について分析する。
2. 1 組織の形成過程
今回調査を行った事例について、組織形成の母体となったコミュニティに着目すると、
「商店会」「自治・町内会」などが挙げられるが、「他のコミュニティ」による組織形成につ いては、全体の 8 割強の事例でみられた。例えば当該地域に対し何かしらの問題意識をも つ住民が集まってできたコミュニティであるが様々である。池田や八女福島などでは他地 域からの移住者と地元住民により新たに形成されたコミュニティであった。鯨ヶ丘では自 治会や商店会と他のコミュニティの複合により形成された組織もみられる。その他、特殊 な事例として、近江八幡では定年後の余暇を趣味やまちづくり活動に充てようとしてでき たコミュニティによって組織が形成された事例もみられる。
また、臼杵や長浜など現在は住民主導の組織であるが、行政主導によるまちづくりの取 り組みに参加した地域住民が、これを契機に住民主導の組織を形成した事例もみられた。
2. 2 組織運営
調査対象のすべての組織に活動を牽引するリーダーが存在する。さらに活動の中心的な 担い手であるコアメンバーについても 7 割の組織でみられる。組織が形成され、すでに 10 年程度経過していることもあり、リーダーを含めたコアメンバーの年齢層については、
60 代以上の事例が浜崎や引田を含め 7 割の事例でみられた。また、メンバー全体の年齢 層については、同世代で構成された組織が今回の事例では約半数であった。コアメンバー については、殆どの組織でメンバーの交代が無いまま継続され、高齢化が進んでいる。
次に、活動地域以外の生活経験から地元を客観的に見ることができ、当該地域の魅力の 再発見や課題を把握することができるのではと考え、コアメンバーの地域移動経験者の有 無について調査を行った。進学や就職等による他地域での生活経験をもつ U ターン者は勝 山など 7 割ほどの事例で見られ、他都道府県からの移住者である I ターン者は U ターン者 の事例と比較すると少ないが池田や八女福島、近江八幡など 3 割強の事例で見られる。
組織の運営については、殆どの事例で役割分担が成され、効率化が図られている。その際、
個々人が得意分野を担当することで、メンバーのモチベーションを確保していると考える。
定期的な会議やミーティングについては殆どの事例で実施されており、主に活動内容の確 認や更新が行われている。
2. 3 活動概要
組織が取り組む活動は、組織の所在地域内で行われているものが全体の 7 割となったが、
イベント活動の概要について、年間のイベント数は1〜 2 の少数タイプと多数タイプがほ ぼ半々である。インタビュー調査では、組織設立当初は少数のイベントを行っていたが、
地域住民や来訪者の要望などから年間を通して、様々なイベントに取り組むようになった との回答が複数あった。イベントの多くは歴史的な町並みや景観を活用したものであるが、
鯨ヶ丘や勝山、室津などで行われているような来訪者がまち歩きをしながら各家の居住空 間や店舗内に展示されたひな人形や屏風などを観て回るようなイベントである。その他、
池田では地域の高齢者が自らの経験や知識を活かし講演やワークショップを行うなど、多 様な地域資産を活用した取り組みがみられる。
殆どの事例で当該地域の住民がイベント活動に参加や協力している。また、殆どの活動 は明確な趣旨のもと取り組まれており、企画立ち上げ時から活動趣旨や対象地域などは大 幅な変更をされず、継続されている。
2. 4 まとめ
組織形成の母体となったコミュニティについては、当該地域に対する問題意識の共有に よるコミュニティが多く、活動趣旨の賛同者によって新たに形成されたコミュニティが母 体である事例が多い。商店会や自治・町内会などの既存のコミュニティについては少ない 事例であったが、室津の事例などで確認することができた。
組織運営については、メンバー構成や運営方法に組織ごとの多様性がみられると考えて いたが、実際には共通する項目の方が多くみられる。まず、組織はリーダー、コアメンバー を中心に運営されていることである。役割分担は、メンバー各自の負担軽減や活動の効率 化をもたらすとともに、得意分野における自己表現の機会となり、メンバーのモチベーショ ンにつながっていると考えられる。コアメンバーについては、メンバー交代がないまま、
高齢化が進んでいる。また U ターン者を含む地元出身者で構成されている事例が多い。一 方で他の地域からの I ターン者が参加している事例はまだ少ないが、その多くが 30 代の 若い世代による事例であり、今後のまちづくりの担い手として期待される。
活動については、当該地域の住民の参加度が高く地域を巻き込んだ取り組みが多い。ま