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第 5 章  地域住民によるまちづくり活動の事例

第 3 節  本章のまとめ

 第2部では、住民主導によるまちづくり活動に取り組んでいる 17 事例について活動対 象地域の現状の把握、活動団体の組織化の状況やその運営方法、これまでの活動状況、地 域住民の参加状況等について調査、分析を行った。調査の結果から、地域の特性に関わら ず多くの事例で共通してみられた傾向と個々の事例の特徴を確認することができたが、以 下にまとめる。

1. 継続した取り組みを行っている住民組織の傾向と特徴 1) 活動地域の現状について

 行政や住民組織によって活動地域の町並みや景観保存の取り組みが行われているが、今 回の調査地では約半数が重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、歴史的な建造物 や町並みが残る地域であった。そのこともあってか活動地域には伝統的な祭りが残ってお り、地域住民の祭りへの参加度も高く、このような地域では祭りによる独自のコミュニティ が形成されている。近所付き合いについも全般的に良好であった。各地域には歴史的建造 物などの有形資産と無形資産ともいえる伝統的な祭りやそれによる独自のコミュニティな どがあることがわかった。活動の特徴は地域のコミュニティと関わっていることが多く、

地域ごとのコミュニティのあり方によって様々な活動の組織化をみることができた。

 今回の調査地では、行政や住民組織より活動地域内の空き家・空き店舗の活用が行われ ており、団体の活動拠点や観光客とのコミュニケーションの場となっていたが、他の地域 や東京などの都心部など様々な地域でも取り組まれているため、共通の傾向として捉える ことができる。

2) 活動団体の組織化の状況と組織の運営方法について

 活動団体の組織形成において基盤となるコミュニティや既存の活動が母体となっている が、活動趣旨に賛同した人たちによって形成されている組織である。メンバーは U ターン 者を含む地元出身者で構成されている。

 組織はリーダー、コアメンバーを中心に運営されている。役割分担はメンバー各自の負 担軽減や活動の効率化をもたらすとともに、得意分野における自己表現の機会となり、メ ンバーのモチベーションにつながっている。コアメンバーの年齢層をみると 60 代が多く、

活動当初からメンバーの交代がないまま現在まで継続されており、次の世代へ組織や活動 を継承していくことが課題となっている。

 組織や活動に関する情報発信の方法については、ホームページや Facebook など SNS が 多用されている。

 また政府、企業などの機関が設けたまちづくり関連の活動に対する賞への応募を行って おり、その受賞を外部からの評価として、地域住民のまちづくり活動に対するモチベーショ ンにつなげている。

 17 の事例においては、組織のメンバーや参加住民に対する負担の軽減、モチベーション の維持が図られており、継続のための組織的努力を行っているといえる。

 以上が活動団体の組織化の状況と組織の運営方法であるが、多くの事例に共通した傾向 であった。村上の事例について調査を行った際に複数の U ターン者が組織の中核としてリー ダー的な存在であったことが印象的であったが、他の事例においても U ターン者の事例は 少なくないことがわかった。また、多くの事例では組織の運営、活動の方針などについて 組織内で情報を収集し共有していることがわかった。運営の方法については、地域の状況 に合わせ特徴的な要素もあるが、共通性の要素の方が多く見られた。

3) これまでの活動状況

 組織が取り組む活動は、組織の所在地域内で行われているものが多く、年間のイベント 等の活動数は1〜 2 の少数タイプと多数タイプがほぼ半々である。イベントの多くは、歴 史的な町並みや景観を活用しまち歩きをしながら各家の居住空間や店舗内に展示されたひ な人形などを観て回るようなイベントである。

 活動は明確な趣旨のもと取り組まれており、イベントの規模や集客数の拡大を目指すの ではなく、継続させるためにむしろ現状を維持し、リピーターの増加やイベントの質の向 上を目指した取り組みが行われている。イベント規模等の現状維持は参加店の過度の負担 を軽減することも目的としている。

 団体の活動については当該地域内からの協力を得たり連携しながら取り組まれている が、当該地域における活動や自身の仕事などにより手一杯であるため、他の組織との連携 については殆ど実現されていない。他の組織と組織間での情報の共有や見学・視察等は行 われているが、活動自体の連携は多くはなかった。むしろ、村上の事例に見られたように、

地域の状況に合わせながら活動の必要以上の拡大をしていないため、他の団体との活発な 連携は行っていないのではないかと考える。

 行政との連携については、多くの組織が連携を行っているが、補助金など金銭的な支援 や、来訪者などへの対外的な窓口や行政がもつネットワークを活用した広報活動ななどが 主な内容である。

4) 地域住民の参加状況等

 当該地域の住民がイベント活動に参加や協力しているが、当該地域以外の地域住民の参 加についてほとんどみられない。

 イベント期間中は多くの来訪者が訪れるが、その際の参加住民と来訪者のコミュニケー ションについては、活発かつ積極的に行われており、参加住民の負担となっているのでは なく、イベントを継続させるためのモチベーションを維持する要因となっていると考えら れる。地域住民の活動へ参加に対しては、参加費用や準備等の労力など、過度な負担の軽 減が図られている。地域住民はイベント参加以外にも、住民組織との活動に関する意見交 換会や交流会に参加している。

5) 各地域の活動における特徴と共通性について

 以上のように今回の調査では、様々なまちづくり活動の状況においてそれぞれの地域の 特徴と同時に多くの共通性があることがわかった。各事例については、これらの共通した

取り組みをベースとしているが、各地域の地域資産などの地域性に影響を受けながら多様 な取り組みとなり、それが事例ごとの特徴となっている。17 事例においては地域資産や地 域のコミュニティによる地域性から個々の事例で特徴がみられ、各事例について特筆すべ き取り組みをみることができた。地域資産の活用については有形資産だけでなく、無形資 産ともいえる地域コミュニティを基盤とすることにより、地域住民を巻き込んだ活動とし て展開され、継続的な取り組みに繋がっているのではないかと考える。 

 一方、各組織へのインタビュー調査では、活動を継続していく中で紆余曲折があり、そ れに対応するための取り組みを行ってきたとの回答も複数あった。例えば団体の活動につ いて、地域住民の理解や協力を得ることができず、組織のメンバーが地域住民一人ひとり に活動の趣旨などの説明を行ってきたとのことであった。活動を開始するために労力や時 間はかかってしまったが、理解を得られた後は地域コミュニティによる協力体制が確固た るものとなり活動の成功と継続に繋がっているとのことであった。

2. 今後の展望

 継続的な組織運営や活動運営の実態について、幾つかの傾向を把握することができ、地 域住民だけでなく他地域からの移住者と共存しながらまちづくり活動を行っている事例な ど、次のステップに向けて様々な動きを捉えることができた。

 今後も活動を継続していくために、ひとつは継続してきた活動の更新と、もうひとつは 地域の特性に合わせた発展性が挙げられる。活動の更新については、コアメンバーの高齢 化に伴う次の担い手への継承もさることながら、10 年間の時代の変遷に対応した活動内容 の更新や情報発信の方法などの更新が必要であると考えられる。

 次の世代へ組織や活動を継承していくことが課題となっている中で、空き家活用などの 方策により、池田や八女福島のように、若者を中心とした他の地域からの移住者と地域住 民によって既存の文化を継承しながら組織が新たに更新されている事例もあり、I ターン や U ターン者による継続的なまちづくりの新たな可能性を見ることができた。今回の調査 においては、他の地域からの若い世代の流入等による活性化等の有効性が確認できたが、

今後もこのような動きについて、その効果と問題点を把握する必要性があると考える。

注 1) 村上の事例が調査時に活動の継続がほぼ 10 年であったが、そこでは活動を継続し てきたことによる様々な知見や問題点を観測することができた。そこで、活動がは じまってからある程度の継続が認められ、村上の事例と開始時期が共通であった方 が比較しやすいと考え、10 年程度のものと設定している。池田の事例については 活動年数が少ないが若い世代による取り組みについても調査したいと考え、対象に 加えている。