第 1 章から第 3 章では、新潟県村上市の旧町人町における特定の住民組織に着目し、組 織の状況や活動に参加している地域住民について調査分析を行った。本章では、第1章か ら第3章までの結果を踏まえ、商人会の活動について、成功の基盤と活動を継続させてき た要因について考察を行う。また、村上のまちづくりの方向性について考察を行い、第1 部のまとめとする。
第 1 節 村上の事例における組織運営の特徴と活動の実態
これまでの調査分析の結果から、商人会が取り組んでいるイベント、商人会の活動の状 況についてまとめる。商人会への参加は店舗(町家)単位としており、現在、総店舗数約 80 店舗のうち 28 店舗が参加している。その中にリーダーとこれを支える 10 名程度のコ アメンバーが存在している。
組織の維持管理については、各人の負担の軽減と自主性が重んじられている。商人会が 取り組むイベントでは、地域コミュニティや文化を活かしながら地元出身のリーダーを中 心として町家や人形などの有形の地域資産を活用した活動であることが特徴である。イベ ントごとに活動趣旨が設定されており、参加店は町家の空間を無料で公開すること、観光 客に対して営利目的の活動を行わずもてなすことに重きをおくこと、参加店の負担軽減や、
継続性を重視するためイベントの趣旨の大幅な変更や開催地域の拡大を行わないこと等が 定められている。
以上のように、活動に参加する地域住民の構成として、まず活動の中心に商人会が存在 している。さらにその中に 10 名程度のコアメンバーが存在し、参加店約 70 店舗の活動の 管理運営が行われている。
第 2 節 組織運営の成功の要因と活動による効果
これまでの調査分析の結果から、商人会が取り組んでいるイベント等の活動について、
成功の要因とその効果、また活動を継続させてきた要因についてまとめる。
成功の要因は、以下の 4 点が考えられる。
① もともとあった、まちの資産である町家を活用できた。
② 独自のコミュニティが形成されており、新たなイベントの発生から運営、またそれを継 続できる基盤をもっていた。
③ 商人会という組織の形成により、まちづくり活動に対する意識、考え方の共有ができた。
④ 商人会の組織がイベントを継続させるための運営方法を作り出すことができた。
イベントの効果を、以下の 4 点に集約する。
① 参加店が満足感を得られた。
② 地元に対する再評価ができた。
③ 各店舗が新たな取り組みを始めた。
④ コミュニケーションの活性化がみられた。
活動を継続させてきた要因については以下の 3 点が挙げられる。
① 参加店の過度の負担を避けるために、活動趣旨、活動規模を維持している。
② 受賞のための応募など、イベントによる効果を自覚させる活動を積極的に行っている。
③ イベントが参加店のモチベーションを向上させる要素を持っている。
以上のように、商人会による継続したまちづくりの取り組みが成功した要因と、取り組 みによる様々な効果を示すことができた。また商人会の活動がこれまで継続してきた要因 について明らかにすることができたが、第3節に今後の村上のまちづくりの方向性につい てまとめる。
第 3 節 まとめ
商人会の取り組みによるまちづくりイベントが成功し、イベント開催から 10 年以上経 過した。これまでの調査結果からこれらの取り組みについて、参加店や市民など、地域内 での評価が高く、また様々な機関からの受賞歴(第 1 章 表 1-1)をみると外部からの評 価も高いことがわかる。
一方、インタビュー調査では、今後もこれらの取り組みを継続させていくための課題が いくつか指摘された。
まずは、これらの活動が、旧町人町以外の地域や市民には、あまり実感できていない傾 向が認められる点が挙げられる。参加店が市民の協力を期待しているというアンケート結 果もあり、今後様々な連携の模索が期待される。
地域住民から、活動のマンネリ化などについての指摘が複数あったが、地域住民が商人 会の取り組みに少なからず関心を持っていると考えられる。商人会の取り組みも活動開始 から 10 数年経った現在では、個々の過重な負担を避けつつも、新たな取り組みを始める ことも必要となってくるであろう。
中心メンバーの高齢化とともに世代交代の必要性の指摘もあった。次の世代の担い手を 育成する必要性や、次の世代による新たな活動を期待する声もあった。
調査の際、商人会の活動の意図が正確に参加店に伝わっていないことや、一方で参加店 が多少の不満があるものの商人会の活動を評価していることが商人会に伝わっていないよ うに感じることがあった。商人会の組織内のコミュニケーションの在り方の更新なども必 要になってくるのではないかと考えられる。これらの課題に取り組んでいくことで、今後 も村上のまちづくりが継続して行われると期待する。
第1部では、村上のまちづくりの現状、またその成功要因や効果について把握すること
ができた。村上の旧町人町では、おおよそ 380 年の歴史をもつ祭りを維持する各町内の組 織構造注 1)が現在も継続して存在する。商人会の活動においては、特徴を持った 3 つのグルー プが共存していることが確認されたが、既存の地域にある様々なつながりがこれらの活動 の継続に影響を与えているのではないかと推測できる。地域のつながりと住民による活動 がどのように影響し合っているか、そして今後どのように変化、推移していくかについて、
さらに旧来の祭りの組織とどのような関連を持っているかについて、引き続き調査分析を 行うことが必要であると考える。
注
注 1) インタビュー調査では、祭りに参加している旧町人町の 19 町内では各町内の住民同 士の関係性について、昔から年齢を問わず縦横のつながりが強固であり、結束力が高 いとの回答が複数得られ、ヒエラルキーのない有機的な関係性を持った組織であると 考える。
第 2 部
地域住民によるまちづくり活動の事例調査
第 2 部では、各地域で様々なまちづくり推進事業が進められている状況と第1部の村上 の事例調査の結果から、地域住民主導で自発的な活動が、まちづくりにおいて重要である と捉え、複数の事例について、地域住民が主体となり取り組まれているまちづくりイベン トなどの活動と、これを運営する住民組織について調査を行った。これらの活動が置かれ ている現状と問題点、新たな方向性について分析し、活動がさらに継続し、展開していく ための可能性を探っていく。
既往の研究では、第1部で示した研究1)2)3)の他、すでに組織を形成し 10 年以上継続し た取り組みを行っている個々の事例に着目し、継続性の要因と評価を行ったもの4)などが 挙げられ、イベントの評価や問題点、その効果について既往の研究で明らかになりつつあ るといえる。一方で、長期間継続してきた活動の今後の取り組みに着目した研究や、複数 の事例について比較調査、分析したものは未だ殆どみられない。
第2部では、まちづくり活動に取り組む団体について複数の事例に着目し、現地調査、
インタビュー調査を実施し、運営の方法や構成員などの属性や役割、活動の状況等から各 事例の特徴を捉え、継続した取り組みを行ってきた要因と今後の課題について明らかにす る。
第1部では、村上のまちづくり活動に関する事例を見てきたが、継続的で自律的なまち づくり活動には他にも様々なケースが存在すると考えられる。第 2 部では第1部で得られ た知見を元に、調査対象を他の地域のまちづくり活動の事例に広げていき、より多様な可 能性、地域の特色、さらには何らかの傾向や共通性があるのか等について事例研究として 考察していきたい。