第 4 章 入力同定実験
4.5 誤差最小パターンの除外点
4.4 節では,逆行列法,動質量法ともに計測した全応答点からある点を除外して入力 同定を行うことで同定誤差が低減することを明らかにした.特に逆行列法の場合は受動 系のフレーム主体のモードとなる固有振動数付近,および全体系の固有振動数付近にお いて,応答点を除外することで同定誤差が低減することを明らかにした.さらに,その 周波数範囲において逆行列法,動質量法がどの応答点数で誤差最小となるかを示した.
本節では,フレーム主体のモードとなる固有振動数付近,および全体系の固有振動数 付近において,誤差が最小となるときどの点を除外しているかを示す.また,受動系の モード形状を示し,除外される点との関係について考察する.
4.5.1 除外点
フレーム主体のモードとなる固有振動数付近,および全体系の固有振動数付近におい て,最も同定誤差の小さいときの除外点を図 4.27~図 4.31 に示す.図に示す周波数範 囲は,周波数平均誤差を求めるときの周波数範囲である.図では周波数ごとに除外され ている点をプロットしている.また図中の縦点線は固有振動数を示す.
第4章 入力同定実験
- 68 -
54 55 56
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Frequency[Hz]
Response points
54 55 56
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Frequency[Hz]
Response points
(a) 逆行列法(4点除外) (b) 動質量法(6点除外)
図4.27 誤差最小パターンの除外点(54.00~56.00[Hz],受動系1次)
112 113
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Frequency[Hz]
Response points
112 113
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Frequency[Hz]
Response points
(a) 逆行列法(6点除外) (b) 動質量法(3点除外)
図4.28 誤差最小パターンの除外点(111.6~113.6[Hz],受動系3次)
319 320
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Frequency[Hz]
Response points
319 320
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Frequency[Hz]
Response points
(a) 逆行列法(6点除外) (b) 動質量法(6点除外)
図4.29 誤差最小パターンの除外点(318.5~320.5[Hz],受動系9次)
第4章 入力同定実験
- 69 -
86 88 90 92 94 96 98 100 102 104
12 34 56 78 109
Frequency[Hz]
Response points
86 88 90 92 94 96 98 100 102 104
12 34 56 78 109
Frequency[Hz]
Response points
図4.30 誤差最小パターンの除外点(84.38~104.4[Hz],全体系3次)
334 336 338 340 342 344 346 348 350 352 12
34 56 78 109
Frequency[Hz]
Response points
334 336 338 340 342 344 346 348 350 352 12
34 56 78 109
Frequency[Hz]
Response points
図4.31 誤差最小パターンの除外点(333.1~353.1[Hz],全体系4次)
(a) 逆行列法(5点除外)
(b) 動質量法(3点除外)
(a) 逆行列法(6点除外)
(b) 動質量法(5点除外)
第4章 入力同定実験
- 70 -
表4.8 各周波数範囲における除外点
Order of natural frequency
1st (Passive)
3rd (Whole)
3rd (Passive)
9th (Passive)
4th (Whole) Frequency band[Hz] 54.00~
56.00
84.38~
104.4
111.6~
113.6
318.5~
320.5
333.1~
353.1 Excluded
responses points
Matrix
inversion 2,3,5,10 1,6,7,8,9 1,3,4,5, 6,7,8,9
3,5,6, 7,8,10
1,4,5, 7,8,10 Apparent
mass
2,3,4,
7,8,9 5,7,10 3 3,4,5,6,
7,8,10
4,5,6,7, 8,9
次に,各周波数範囲において除外されやすい傾向にある点を表4.8に示す.除外され やすい点とは,各周波数範囲において除外回数の多い順に除外点数分選択したものであ る.なお,除外回数が多くても固有振動数近傍で除外されていない場合は除外されやす い点とはしていない.また,除外点数と除外されやすい点の数は一致しない場合もある.
逆行列法と動質量法の除外点は318.5~320.5[Hz]のみ同じ傾向があるが,それ以外の周 波数範囲では傾向が一致していない
4.5.2 モード形状,実稼働応答のパワースペクトル
本項では,受動系のフレーム主体のモード形状を示し,除外点との関係について明ら かにする.シミュレーションでは,除外点は受動系のモードの振幅が大きい点と概ね一 致することが明らかとなったが,実験においても同様の結果となるかを検証する.また,
実験では全体系の固有振動数でも応答点の除外により同定誤差が低減することが示さ れたため,全体系の固有振動数においても除外点はモード振幅の大きい点と一致するか を検証する.なお全体系の固有振動数については各応答点の実稼働加速度のパワースペ クトルを示し,除外点の関係について検討する.
始めに,受動系フレーム部の変形前の形状を図 4.32 に示す.図中の番号は応答点の 番号を表す.次に受動系のフレーム主体のモードとなる1次,3次,9次固有振動数に おけるモード形状を図4.33に示す.
各固有振動数付近の除外点とモード形状を比較する.受動系 1 次固有振動数付近
(54.00~56.00[Hz])では表4.8より逆行列法,動質量法共に点2,3が除外されやすい 点であるが,モード振幅は小さい.受動系 3 次固有振動数付近(111.6~113.6[Hz])で は逆行列法で除外されやすい点のうち点1,4,5,6,9の振幅は大きく,除外点が振幅 の大きい点と一致した.しかし点3,7,8は振幅が小さい.受動系9次固有振動数付近
(318.5~320.5[Hz])では逆行列法で除外されやすい点のうち点 5,7,8,10 は振幅が 大きいが,点3は振幅が小さい.
第4章 入力同定実験
- 71 -
0 100 200 300 400
0-100 200 100
300 -250 -200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200 250
z
y x
9 8 7 6
1 10
2 3 4 5
図4.32 フレーム形状(変形前)
Mode Shape : Order = 1, f = 55 (Hz), =0.486 (%)
M o d e S h a p e : O r d e r = 3 , f = 1 1 2 . 7 ( H z ) , = 1 . 0 7 ( % )
(a) 受動系1次 (b)受動系3次
Mode Shape : Order = 9, f = 319.5 (Hz), =0.157 (%)
(c) 受動系9次
図4.33(a)~(c) モード形状
以上のように,受動系のフレーム主体のモードでは,除外点は必ずモード振幅の大き い点になるわけではない.実験では計測誤差の大きさは加速度の大きさだけではなく,
例えば加速度計の取り付け状態などにも関係していると考えられる.そのため,除外点 とモード振幅の大きい点は完全には一致しないと考えられる.
次に実稼働応答のパワースペクトルを示し,全体系の固有振動数付近で加速度振幅が 大きくなる点を明らかにする.各応答点の実稼働加速度のパワースペクトルを図 4.34 に示す.第3章3.5節でも述べた通り,加速度振幅が大きければモード振幅も大きい.
84.38~104.4[Hz]を示す図4.34(a)では点 6~9の加速度のパワースペクトルが大きい.
この周波数範囲では逆行列法の除外されやすい点は点1, 6~9であり点1以外は加速度 の大きい点と一致した.また333.1~353.1[Hz]を示す図4.34(b)では加速度の大きい6点
は点1, 4, 5, 7, 8, 10であり,この周波数範囲における逆行列法の除外されやすい点と一
致した.
全体系の固有振動数付近では,逆行列法については振幅(加速度振幅・モード振幅)
の大きい点を除外することで同定誤差が低減することが明らかとなった.
変形前 変形後
第4章 入力同定実験
- 72 -
85 90 95 100
101 102 103 104 105
Frequency[Hz]
Power Spectrum of Acceleration[(m/s2 )2 ]
y1 y2 y3 y4 y5 y6 y7 y8 y9 y10
(a) 84.38~104.4[Hz](全体系3次)
335 340 345 350
101 102 103 104 105
Frequency[Hz]
Power Spectrum of Acceleration[(m/s2 )2 ]
y1 y2 y3 y4 y5 y6 y7 y8 y9 y10
(b) 333.1~353.1[Hz](全体系4次)
図4.34 実稼働加速度のパワースペクトル