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認識的モダリティ

ドキュメント内 佐世保市宇久町平方言の記述的研究 (ページ 110-114)

5. 単文

5.3. モダリティ

5.3.2. 認識的モダリティ

5.3.2.1. 推量表現

推量表現は、用言に「仮想」の接辞/-oo/を接続する形式のほか、コピュラ動詞/=zjar-/に

「仮想」の/-oo/を接続した形式が用いられる。

(256) 動詞

a. 【語幹-oo】カコー(書くだろう)

b. 【コピュラ動詞/=zjar/+/-oo/】カッジャロー(書くだろう)

(257) 形容詞

a. 【/語幹-ka/+/-r-/+/-oo/】明日わ ぬっかロー(明日は暑いだろう)

b. 【コピュラ動詞/=zjar/+/-oo/】明日わ ぬっかジャロねー (明日は暑いだろうね)

他の屈折接尾辞が接続した形式は、以下の通りである。「用言+/-oo/」の形式と「コピュ ラ動詞/=zjar/+/-oo/」のどちらの形式も用いられるものは併記する。

(258) a. 【過去】ぬっかっタロー/ぬっかっタジャロー(暑かっただろう)

b. 【否定】書かンジャロー(書かないだろう)

c. 【過去否定】書かンジャッタロー(書かなかっただろう)

「疑問」の接語/=ka/と共起する例を示す。

(259) a. 半分な 意識不明に なっちょったっちゃなかローカね

(半分は意識不明になっていたのではないだろうかね)

b. 私わ こっち 座って なんの もの ゆオーカよ

(私はこっちに座って、どうして物が言えるだろうかよ)

(259a)は事態に対する話者の疑いを表し、(259b)は反語を表す。

推量表現は、上記の形式のほかに、/=ka=mo#sire-N/'かもしれない'も用いられる。類似し た形式に/=ka=mo#wakar-a-N/'かもわからない'がある。両形式に、意味の区別はないと考え

られる。また、/sire-N/を省略した/=ka=mo/だけの使用もみられる。

(260) a. 明日わ 雨ん ふーカモシレンばい(明日は雨がふるかもしれない)

b. ××さんも くーカモね(××さんも来るかもね)

c. しずかカモワカラン(静かかもわからない)

また/=haH/'はず'も用いられる。コピュラ動詞/=zjar-/に接続して、形容動詞と同様の活用 をする。コピュラ動詞に接続せず、終助詞が/=haH/に直接接続することもある。

(261) a. 私ば 見れば ね あんたー 声ん ずっけん なんか ゆーハヒジャばっ

てんなーち 思いながら(私を見るとね、あなたは声がでるから何か言うは ずだけれどなと思いながら)

b. ××ちゃんわ しっちょーハヒジャばってなー ちゅーたけど

(××ちゃんは知っているはずだけれどなって言ったけど)

c. 土曜日にわ ××ちゃんも きよーハヒよ

(土曜日には××ちゃんも来ているはずだよ)

5.3.2.2. 様態表現

様態表現には、/goto/が用いられる。/goto/は共通語の「如し」に由来する形式である。

/goto/は、それ自体では副詞節を作る形式である。その/goto/に存在動詞の/ar-/'ある'が接続し

て、/gotjar-u/という述語形式を作る。「様態」を表す/goto/は、名詞に属格の/=no/を接続さ

せた形式か、用言の終止連体類の屈折接尾辞につづく。/goto/は/gote/や/goQ/という異形態 をもつ。

(262) a. 【名詞+/=no/】自分の 子どんのゴテ みじょがー

(自分の子どものように可愛がる)

b. 【動詞】綿ん みんば 吸い込んゴテ どんどん 覚えた (綿が水を吸い込むように、どんどん覚えた)

c. 【動詞】味が 染むゴト 炊きつめた(味が染みるように煮込んだ)

d. 【動詞】話し出せば もー わからんゴッ ないもんな (話し出すともうわからないようになるものね)

e. 【形容詞】店に 売ってよかゴテ じょーし でけた

(店に売っていいくらい、上手にできた)

「様態」の意味について、森山(1995:493)で示されている論理関係をもとに整理する。

(263) a. 【推量的な意味:不明関係】らいおんのゴチャー もんの 見えちょーばい

(ライオンのようなものが(テレビで)見えているよ)

b. 【比喩的な意味:不一致関係】べべんこんゴチャー 犬ねー (牛のような犬だね)

c. 【例示的な意味:包含関係】わんのゴチャー 男わ おらん (あなたのような男はいない)

/gotjar-u/は、以上の「様態」のいずれの意味でも用いられている。これは主節の述語でも 同様である。

(264) a. 降ったゴチャンねー((雨が)降ったようだね)

b. やさしかったゴチャーもんねー(優しかったみたいだものね)

c. なんでん しっちょー 学者んゴチャー(何でも知っている学者のようだ)

d. 肌が まっしろして ゆっのゴチャーもんねー

(肌が真っ白くて雪のようだものね)

そのほか、共通語の「そうだ」や「ようだ」に相当する/=soo/や/=joo/を用いることがあ

る。/=soo/は、/=zjar-/に接続し、形容動詞と同じ活用をする。/=joo/も同様の活用をすると考

えらえるが、連用修飾用法の/=joo-ni/'ように'の形式で専ら使われている。インフォーマン トの内省によると、この2つの形式は、伝統的な平方言でなく、近年になって共通語の形 式を用いているとのことである。

/=soo=zjar-/'そうだ'には、以下の例がある。コピュラ動詞に接続せず、終助詞が/=soo/に直 接接続することもある。

(265) a. きっかソージャねー(体調が悪そうだね)

b. 太郎わ 体格の よかてん あひの はやかソージャねー

(太郎は体格が良いから足が速そうだね)

c. んまかソーナ パンば いぇらんだ(美味しそうなパンを選んだ)

d. きのどっかソーニ しちょー(気の毒そうにしている)

e. 雨ん ふーソーよ

/=joo-ni/'ように'の例を以下に挙げる。

(266) a. なかなか それが 思うヨーニ いかんわけよ

(なかなかそれが思うようにいかないわけだよ)

b. すもーとんのヨーニ たーそ きちょー(相撲取りのように大層着ている)

c. 自分の おもたごて なーヨーニ せれば わーかもんねー

(自分の思ったようになるようにすれば悪いもんね)

5.3.2.3. 伝聞表現

伝聞表現には、/rasi-/'らしい'が用いられる。/rasi-/は形容詞と同じ活用をする。以下に、

用例を挙げる。

(267) a. もー 色々 大変じゃったラシカばって(もう色々大変だったらしいけど)

b. そて あの 人が 別れっ きちょーラヒカね

(そして、あの人が離婚して来ているらしいね)

c. わたしに 食べさすち 魚ば 買いに いっちょラシカッタったい

(私に食べさせようと魚を買いに行っているらしかったんだよ)

「伝聞」は、「引用」の/=ti/'て'でも表される。/=ti/の前には準体助詞の/=to/が接続するこ とも多い。準体助詞/=to/は、/=Q/という異形態でも用いられる。

(268) a. あめチ いよったよ(雨って言っていたよ)

b. たろーの ゆーとん 明日わ 雨ん ふーチ ゆーおった

(太郎が言うのが明日は雨が降るって言っていた)

c. こん 空模様でわ 明日わ あめじゃろっチ たろーが ゆおった

(この空模様では明日は雨だろうって太郎が言っていた)

この/=ti/'て'が主節で用いられるときは、あとに/=tai/や/=bai/などの終助詞を接続させる。

(269) a. 雨ん ふーろーとチタイ(雨が降っているんだってよ)

b. 天気予報でわ 明日わ とても ぬっかっチバーイ

(天気予報では明日はとても暑いんだってよ)

c. きのーわ とても ぬっかったチタ(昨日はとても暑かったってよ)

ドキュメント内 佐世保市宇久町平方言の記述的研究 (ページ 110-114)