5. 単文
5.3. モダリティ
5.3.2. 認識的モダリティ
5.3.2.1. 推量表現
推量表現は、用言に「仮想」の接辞/-oo/を接続する形式のほか、コピュラ動詞/=zjar-/に
「仮想」の/-oo/を接続した形式が用いられる。
(256) 動詞
a. 【語幹-oo】カコー(書くだろう)
b. 【コピュラ動詞/=zjar/+/-oo/】カッジャロー(書くだろう)
(257) 形容詞
a. 【/語幹-ka/+/-r-/+/-oo/】明日わ ぬっかロー(明日は暑いだろう)
b. 【コピュラ動詞/=zjar/+/-oo/】明日わ ぬっかジャロねー (明日は暑いだろうね)
他の屈折接尾辞が接続した形式は、以下の通りである。「用言+/-oo/」の形式と「コピュ ラ動詞/=zjar/+/-oo/」のどちらの形式も用いられるものは併記する。
(258) a. 【過去】ぬっかっタロー/ぬっかっタジャロー(暑かっただろう)
b. 【否定】書かンジャロー(書かないだろう)
c. 【過去否定】書かンジャッタロー(書かなかっただろう)
「疑問」の接語/=ka/と共起する例を示す。
(259) a. 半分な 意識不明に なっちょったっちゃなかローカね
(半分は意識不明になっていたのではないだろうかね)
b. 私わ こっち 座って なんの もの ゆオーカよ
(私はこっちに座って、どうして物が言えるだろうかよ)
(259a)は事態に対する話者の疑いを表し、(259b)は反語を表す。
推量表現は、上記の形式のほかに、/=ka=mo#sire-N/'かもしれない'も用いられる。類似し た形式に/=ka=mo#wakar-a-N/'かもわからない'がある。両形式に、意味の区別はないと考え
られる。また、/sire-N/を省略した/=ka=mo/だけの使用もみられる。
(260) a. 明日わ 雨ん ふーカモシレンばい(明日は雨がふるかもしれない)
b. ××さんも くーカモね(××さんも来るかもね)
c. しずかカモワカラン(静かかもわからない)
また/=haH/'はず'も用いられる。コピュラ動詞/=zjar-/に接続して、形容動詞と同様の活用 をする。コピュラ動詞に接続せず、終助詞が/=haH/に直接接続することもある。
(261) a. 私ば 見れば ね あんたー 声ん ずっけん なんか ゆーハヒジャばっ
てんなーち 思いながら(私を見るとね、あなたは声がでるから何か言うは ずだけれどなと思いながら)
b. ××ちゃんわ しっちょーハヒジャばってなー ちゅーたけど
(××ちゃんは知っているはずだけれどなって言ったけど)
c. 土曜日にわ ××ちゃんも きよーハヒよ
(土曜日には××ちゃんも来ているはずだよ)
5.3.2.2. 様態表現
様態表現には、/goto/が用いられる。/goto/は共通語の「如し」に由来する形式である。
/goto/は、それ自体では副詞節を作る形式である。その/goto/に存在動詞の/ar-/'ある'が接続し
て、/gotjar-u/という述語形式を作る。「様態」を表す/goto/は、名詞に属格の/=no/を接続さ
せた形式か、用言の終止連体類の屈折接尾辞につづく。/goto/は/gote/や/goQ/という異形態 をもつ。
(262) a. 【名詞+/=no/】自分の 子どんのゴテ みじょがー
(自分の子どものように可愛がる)
b. 【動詞】綿ん みんば 吸い込んゴテ どんどん 覚えた (綿が水を吸い込むように、どんどん覚えた)
c. 【動詞】味が 染むゴト 炊きつめた(味が染みるように煮込んだ)
d. 【動詞】話し出せば もー わからんゴッ ないもんな (話し出すともうわからないようになるものね)
e. 【形容詞】店に 売ってよかゴテ じょーし でけた
(店に売っていいくらい、上手にできた)
「様態」の意味について、森山(1995:493)で示されている論理関係をもとに整理する。
(263) a. 【推量的な意味:不明関係】らいおんのゴチャー もんの 見えちょーばい
(ライオンのようなものが(テレビで)見えているよ)
b. 【比喩的な意味:不一致関係】べべんこんゴチャー 犬ねー (牛のような犬だね)
c. 【例示的な意味:包含関係】わんのゴチャー 男わ おらん (あなたのような男はいない)
/gotjar-u/は、以上の「様態」のいずれの意味でも用いられている。これは主節の述語でも 同様である。
(264) a. 降ったゴチャンねー((雨が)降ったようだね)
b. やさしかったゴチャーもんねー(優しかったみたいだものね)
c. なんでん しっちょー 学者んゴチャー(何でも知っている学者のようだ)
d. 肌が まっしろして ゆっのゴチャーもんねー
(肌が真っ白くて雪のようだものね)
そのほか、共通語の「そうだ」や「ようだ」に相当する/=soo/や/=joo/を用いることがあ
る。/=soo/は、/=zjar-/に接続し、形容動詞と同じ活用をする。/=joo/も同様の活用をすると考
えらえるが、連用修飾用法の/=joo-ni/'ように'の形式で専ら使われている。インフォーマン トの内省によると、この2つの形式は、伝統的な平方言でなく、近年になって共通語の形 式を用いているとのことである。
/=soo=zjar-/'そうだ'には、以下の例がある。コピュラ動詞に接続せず、終助詞が/=soo/に直 接接続することもある。
(265) a. きっかソージャねー(体調が悪そうだね)
b. 太郎わ 体格の よかてん あひの はやかソージャねー
(太郎は体格が良いから足が速そうだね)
c. んまかソーナ パンば いぇらんだ(美味しそうなパンを選んだ)
d. きのどっかソーニ しちょー(気の毒そうにしている)
e. 雨ん ふーソーよ
/=joo-ni/'ように'の例を以下に挙げる。
(266) a. なかなか それが 思うヨーニ いかんわけよ
(なかなかそれが思うようにいかないわけだよ)
b. すもーとんのヨーニ たーそ きちょー(相撲取りのように大層着ている)
c. 自分の おもたごて なーヨーニ せれば わーかもんねー
(自分の思ったようになるようにすれば悪いもんね)
5.3.2.3. 伝聞表現
伝聞表現には、/rasi-/'らしい'が用いられる。/rasi-/は形容詞と同じ活用をする。以下に、
用例を挙げる。
(267) a. もー 色々 大変じゃったラシカばって(もう色々大変だったらしいけど)
b. そて あの 人が 別れっ きちょーラヒカね
(そして、あの人が離婚して来ているらしいね)
c. わたしに 食べさすち 魚ば 買いに いっちょラシカッタったい
(私に食べさせようと魚を買いに行っているらしかったんだよ)
「伝聞」は、「引用」の/=ti/'て'でも表される。/=ti/の前には準体助詞の/=to/が接続するこ とも多い。準体助詞/=to/は、/=Q/という異形態でも用いられる。
(268) a. あめチ いよったよ(雨って言っていたよ)
b. たろーの ゆーとん 明日わ 雨ん ふーチ ゆーおった
(太郎が言うのが明日は雨が降るって言っていた)
c. こん 空模様でわ 明日わ あめじゃろっチ たろーが ゆおった
(この空模様では明日は雨だろうって太郎が言っていた)
この/=ti/'て'が主節で用いられるときは、あとに/=tai/や/=bai/などの終助詞を接続させる。
(269) a. 雨ん ふーろーとチタイ(雨が降っているんだってよ)
b. 天気予報でわ 明日わ とても ぬっかっチバーイ
(天気予報では明日はとても暑いんだってよ)
c. きのーわ とても ぬっかったチタ(昨日はとても暑かったってよ)