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条件節

ドキュメント内 佐世保市宇久町平方言の記述的研究 (ページ 130-135)

6. 複文

6.4. 副詞節

6.4.1. 条件節

6.4.1.1. 仮定節

仮定節は、動詞屈折接尾辞の「未完了条件」の/-(r)eba/、「完了条件」の/-tara/、「仮定」

の接語/=nara/が接続したものである。条件節の分類は、有田編(2017)を参考にする。

/-(r)eba/は、「認識的条件文」「予測的条件文」「反事実的条件文」「総称的条件文」を 表す。まず、「認識的条件文」の例を挙げる。

(308) a. 【認識的条件文】明日 雨ん 降レバ 運動会わ 中止に なーばいね

(明日雨が降れば運動会は中止になるよね)

b. 【認識的条件文】帰ろゴチャラ 帰れよ(帰りたければ帰れよ)

c. 【認識的条件文】なんでん すーゴチャラ すれば (何でもしたければすれば)

(308b,c)の「ゴチャラ」は、「様態」の/gotjar-/に、/-(r)eba/が接続し、/gotjareba/が/*gotjarja/

となり、/gotjara/という形式になったものである。

「予測的条件文」の例は、以下のものである。

(309) a. 【予測的条件文】明日 雨ん 降レバ いこごっなかなー おら いかんよ

(明日雨が降れば行きたくないな、私は行かないよ)

b. 【予測的条件文】自分が ぎばって しよレバ じょーしなーと (自分が頑張ってしていれば上手になるのだ)

c. 【予測的条件文】そがん くらすんで 本ば 読メバ 目が わるなーとぞ (そんな暗い隅で本を読めば目が悪くなるのだぞ)

「反事実条件文」の例は、以下のものである。

(310) a. 【反事実的条件文】あん 時 よーと しちょレバ 腐らんじゃったとに

(あの時しっかりしていれば(田が)腐らなかったのに)

b. 【反事実的条件文】きの かーちょケバ よかったばってね (昨日書いておけば良かったけれどね)

c. 【反事実的条件文】もちっと はよ ケーバ よかったっにねー (もう少し早く来れば良かったのにね)

「総称的条件文」の例は、以下のものである。

(311) a. 【総称的条件文】こん みっば まっすぐ 行ケバ 港に つっとよ

(この道をまっすぐ行けば港に着くのよ)

b. 【総称的条件文】じゅーごから きゅーば ひケバ ろくに なーとじゃん (15から9を引けば6になるのだよ)

c. 【総称的条件文】氷ん 溶けレバ みじ なってなー (氷が溶ければ水になってな)

次に、/-tara/は「事実的条件文」を表す。以下に用例を示す。

(312) a. 【事実的条件文】かえっタラ ××が 寝ちょったばい

(帰ったら××が寝ていたよ)

b. 【事実的条件文】だーかち 思っちょっタラ おまえじゃったっかよ (誰かと思っていたら、あなただったかよ)

c. 【事実的条件文】公民館に 行っタラ 会わ おわっちょったよ (公民館に行ったら会は終わっていたよ)

/=nara/は、「認識的条件文」「予測的条件文」を表す。/=nara/の前に準体助詞の/=to/が接

続するものもみられる。

(313) a. 【認識的条件文】本ば 見ろごちゃートナラ よむナラ かひよ

(本を読みたいなら、読むなら貸すよ)

b. 【認識的条件文】孫ん チーム 勝ったナラ 甲子園に いっちゃなか

((結果は知らずに)孫のチームが勝ったなら甲子園に行くのではないか)

c. 【認識的条件文】明後日 いっトナラ 今日かー 用意せな いかんねー (明後日行くなら今日から用意しないといけないね)

d. 【認識的条件文】あんたん 行くナラ 一緒 つれのもーかねー (あなたが行くなら一緒に行こうかね)

e. 【認識的条件文】てがんば かっトナラ 字も じょーし 書けよ (手紙を書くなら字も上手に書けよ)

f. 【認識的条件文】となり はいったナラ 用心せんなばいね

(となりに(泥棒が)入ったなら用心しないとだね)

「予測的条件文」の例は以下のものである。

(314) 【予測的条件文】返すナラ かひてでん よかよ

(返すなら貸してでもいいよ)

/=nara/は名詞にも接続する。

(315) a. 学生ナラ 頼まれん(学生なら頼むことができない)

b. 自分ひとりナラ かわまんったい(自分一人ならかまわないんだよ)

6.4.1.2. 逆接仮定節

逆接仮定節は、動詞の屈折接尾辞/-temo/、「逆接仮定」の接語/=demo/が接続したもので ある。どちらも音節末の/mo/が/N/になることが多い。まず、/-temo/の例を挙げる。

(316) a. そーかー 待っテン 待っテン こんちゃも

(それから待っても待っても来ないのだもの)

b. お茶ば 飲まんかなち 私が ゆーテモ もー おばさん 時間わ 時間の 決まっちょーけん(お茶を飲まないかなと私が言っても、「もうおばさん、

時間は、時間の決まっているから」(と断られた))

次に、/=demo/の例を挙げる。

(317) a. 今まで ぬっかったてん 入る 入るちゅーてデモ シャワーよ

(今まで暑かったから(風呂に)入る入ると言ってでもシャワーだよ)

b. おら だーも おらんデン ひとーで ぼつぼつぼつぼつなー

(私は誰もいないでも一人でこつこつこつこつなー)

c. もー よせ いちょってデン おなごなら よかば 男じゃろ

(もうよそに行っていてでも(世話係が)女性ならいいけれど男だろう)

6.4.1.3. 原因・理由節

原因・理由節は、接語/=teN/が接続するものである。九州方言では、同様の形式に/=keN/ が用いられる。平方言でも、この/= keN/が用いられ、/=teN/は/=keN/の異形態と考えられる。

この両形式において、使用頻度の高さから/=teN/を代表の形式と捉えている。

/=teN/(/=keN/)の従属節は、主節の原因を表している。

(318) a. あひの いたかテン 行かえんじゃったっよ

(足が痛いから行くことができなかったよ)

b. 私 月曜日じゃケン あんたと 会わん わけよ

(私が(行くのは)月曜日だからあなたと会わないわけだよ)

また、/=teN/(/=keN/)の従属節が、主節に対する判断や発言の根拠であることも表す。

(319) a. こけ 私わ おーテン いっちょけよ(ここに私はいるから行っておけよ)

b. 我が 家 もどってかー して もらっケン よか

(我が家に帰ってからしてもらうからいい)

上記の形式とは別に、/=kaNni/も原因・理由節を表す。

(320) a. その 人の 息子よちゅーカンニ きーた わけ

(その人の息子だというから聞いたわけ)

b. あんた ICUに おる おるっち 思っカンニ 思いこまれちょったわけよ

(あなたがICUにおるおるって思うから(私に)思い込まれていたわけよ)

/=kaNni/には、原因・理由節ではない用法もみられる。以下の例は、「継起」を表してい

る。

(321) ご飯ば 食べ しごっば して ともだちん とけ 行ってカンニ 帰った

(ご飯を食べ、仕事をして、友だちのところに行ってから帰った)

原因・理由節には、共通語と同様の形式である/=kara/、/=node/も稀にみられる。

(322) a. あの 人わ 料理ば するカラ(あの人は料理をするから)

b. 息子かー 連れてきて もらいますノデ ちゅー

((病院に対して)息子から連れて行ってもらいますのでと言う)

6.4.1.4. 逆接節

逆接節は、接語/=baQte(N)/が接続するものである。音節末の/N/は、脱落することが多い。

さらに、/=baQte(N)/の前に準体助詞/=to/が接続することもある。

(323) a. 私わ あんたば 見て にこにこ すっちゃバッテ あんたが 知らん顔

しちょーちゃねー(私はあなたを見てにこにこするのだけれど、あなたが知 らん顔しているのよね)

b. サービスち ゆーたバッテ 金わ あんけちょったっち ××わ ゆーたバ ッテ(サービスって言ったけれど金は預けていたって××は言ったけれど)

c. 裸ん なって すぐ あれ すーごと なっちょートバッテ また さむ なって けーばね(裸になってすぐあれするようになっているのだけれど、

また寒くなってくればね)

共通語と同様の形式である/=kedo/も逆接節を表す。

(324) a. ひとりで 入らるーごてわ しちょートケド 恐ろしー わけよ

((風呂は)独りで入れるようにはしているのだけど恐ろしいわけよ)

b. ここば 朝 とーったり 夕方 とーったり するケド あんたん 姿ば 見らんど(ここを朝通ったり夕方通ったりするけどあなたの姿を見ないよ)

ドキュメント内 佐世保市宇久町平方言の記述的研究 (ページ 130-135)