3. 形態論
3.2. 名詞
(87) a. やけん 私ドンが どーゆーふーな 現況で おるかちゅーとを{中略}書 きおるもんね(だから私がどういうような現況でいるかというのを{中略}
(ホームヘルパーさんが)書いているものね)
b. 大久保に行って聞けば おばさんドが ゆーたごて ハヨハヨハヨハヨて ゆーたい(大久保に行って(方言を)聞けば、おばさん(話者自身)が(真 似して)言ったようにハヨハヨハヨハヨって言うよ)
名詞に上接する接辞は、/o-/がみられる。これは日本語共通語と同様である。
(88) /o-/:/o-tera/'お寺'、/o-maturi/'お祭り'
固有名詞には、人名や地名がある。
(89) 人名:nakamura'中村(姓)'、taroo'太郎(名)'
地名:taira'平'、obama'小浜'、saseho'佐世保'
3.2.2. 代名詞
人称代名詞は、1人称と2人称にみられる。1人称では、/ore/や/watasi/が用いられる。
(90) a. /ore/:オレに あっごちゃー 服ば もけっくれれ
(私に合うような服を見つけてくれ)
b. /watasi/:今日わ 土曜日で ワタシも そこに 行く 日じゃもん
(今日は土曜日で私もそこに行く日だもの)
ほかにも 1 人称代名詞には、/waga/がみられる。この形式は、主格や属格の助詞/=ga/を 含んだ形式であり、この形式でしか用いられない。
(91) a. あの人 読まえんとに なんの ワガ 読まゆーかよ
(あの人が読むことができないのに、なんで私が読むことができるかよ)
b. ワガえんもんの おらんとき おきゃっさん けーば こまーじゃん
(私の家のものがいないとき、お客さんが来れば困るじゃない)
2人称では、/unu/、/omae/、/ware/、/aNta/が用いられる。
(92) a. /unu/:ンが よかごて せれ(あなたがいいようにしろ)
b. /omae/:おーば オマエよら 手前 させっくれれよ
(私をあなたよりは先にさせてくれよ)
c. /ware/:ワンの よかごて せんね(あなたがいいようにしないか)
d. /aNta/:わたし 月曜日じゃけん アンタと 会わんわけよ
(私は月曜日だからあなたと会わないわけだよ)
3人称の人称代名詞はなく、3人称を指すときは人名や役職名が用いられるか、/aN#hito/' あの人'のように連体詞をつけた名詞が用いられる。
指示代名詞、疑問代名詞については本項で扱わず、指示詞と疑問詞の項で述べる。
3.2.3. 形式名詞
名詞のなかで、それ単独で文に用いられず、連体修飾をする従属部のある名詞節でなけ れば文に用いられない名詞を、形式名詞と呼ぶ。形式名詞には/mono/'もの'、/koto/'こと'、
/toki/'とき'、/toko/'ところ'などが挙げられる。
(93) a. /mono/: よかモンばっかー 食わすっけん 太っちょ―と
(いいものばかり 食べさせるから 太っている)
b. /koto/:色々 考ゆーコッの あって 不安で 苦しんじょー (色々考えることがあって不安で苦しんでいる)
c. /toki/:とーちゃんたちんトキャ 行こごっなか 人わ 行かん (父ちゃんたちのときは行きたくない人は行かない)
d. /toko/:わからんトコ あーごちゃーですね (わからないところがあるみたいですね)
このうち、/mono/'もの'は、文末に用いられて、モダリティ形式になっている。
(94) a. 学校わ わがえん 目の前じゃモン(学校は私の家の目の前だもの)
b. おら 英語わ ゆわえんモン(私は英語を言うことができないもの)