3. 形態論
3.5. その他の品詞
3.5.1. 助詞
3.5.1.1. 格助詞・とりたて助詞・準体助詞
助詞は、すべて接語である。句に接続する格助詞、とりたて助詞、準体助詞と、節に接 続する接続助詞、終助詞に分かれる。
格助詞には「主格」の/=ga/、/=no/や、「対格」の/=ba/などがある。格助詞は、その句の 述語との統語的な関係を明示する。
(182) a. 【主格】/oo=ga/'私が'、/tonaN=no#moN=no/'者が':
オーガ 飲もだいっち 思っちょったら となんの モンノ のーだ (私が飲もうと思っていたら、隣の者が飲んだ)
b. 【対格】/sake=ba/おら サケバ のーだよ(私は酒を飲んだよ)
とりたて助詞には「主題」の/=wa/や「累加」の/=mo/がある。とりたて助詞は、句に接続 し、「主題」や「累加」などを表す。特定の格を表しているわけではなく、また、格助詞
にも接続する。
(183) a. 【主題】/sake=wa/'酒は':
こん サケワ うまかてん いっだでん 飲まるいよ (この酒は旨いからいくらでも飲むことができる)
b. 【累加】/omae=mo/'あなたも':
太郎に たのじょーばって オマエモ してくれれよ (太郎に頼んでいるけれど、あなたもしてくれよ)
c. 【累加】/denwa=ni=mo/'電話にも':
デンワニモ 出られんごて 忙しかっばい
(電話にも出ることができないくらい忙しいんだよ)
準体助詞/=to/は、用言の終止連体形に接続し、名詞句をつくる。終助詞/=tai/などに接続 するときは、逆行同化をして/=Q/になる。
(184) a. /zjor-u=to=wa/'料理するのは':魚ば ジョートワ とても じょひ (魚を料理するのはとても上手だ)
b. /noo-da=Q=tai/'飲んだんだよ':
にごなかごちゃったてん おもわひ ノーダッタイ (苦くなさそうだったから思わず飲んだんだよ)
準体助詞/=to/は、そのあとに動詞/ar-/を接続させ、接辞を続けることができる。このとき、
この2つの形式に/j/が挿入され、/*=to+j+ar-/が/=tjar-/という形式になる。さらに、/=tjar-/の
前に/Q/がつくことが多く、/=Q
tjar-/という形式で用いられる。活用はコピュラ動詞の/=zjar-/と同様である。「仮想」の/-oo/と「否定」の/na-ka/が接続する。
(185) a. /aq-ta=Qtjar-oo/'あったのだろう':
やっぱ 命に いぇんの アッタッチャロち ゆーとたいね
(やはり命に縁があったのだろうというのだね)
b. /kik-a-N=tja#na-ka/'利かない':10日じゃ キカンチャナカ
((入院日数が)10日じゃ利かないのではないか)
3.5.1.2. 接続助詞
接続助詞には、順接で用いる/=teN/、/=kaNni/、/=nara/や逆接で用いる/=baQte(N)/など、が ある。接続助詞は節に接続し、さらに従属節をつくる。これらの接続助詞のつくる従属節 を、「条件節」と呼ぶ。
(186) a. /taQ-tjor-u=teN/'立っているから':茶柱ん タッチョーテン 見てみれよ
(茶柱が立っているから見てみろよ)
b. /matigo-Q=kaNni/'間違うから':
みんと ひだりと マチゴッカンニ みんば すー もんも ひだりば すーもんも 色々おろー(右と左と間違うから(踊りを)右をする者も左 をする者も色々いるだろう)
c. /ar-u=to=nara/'あるのなら':用事が アートナラ 戻って よかよ (用事があるのなら帰っていいよ)
b. /kanaH-ka=baQte/'悲しいけれど':カナヒカバッテー なんだん でん
(悲しいけれど涙が出ない)
3.5.1.3. 終助詞
終助詞には、/=jo/や/=ne(e)/、/=bai/、/=tai/などがある。終助詞は主節末に接続する。終助 詞/=ne(e)/は終助詞に接続することができる。
(187) a. /jo-ka=jo/'いいよ':ゆーめしゃ おーが つくーてん ヨカヨ (夕飯は私が作るから(作らなくて)いいよ)
b. /ame=bai=nee/:明日わ アメバイネー(明日は雨だね)
c. /na-ka=jo=na/:2時間も ナカヨナ(2時間もないよね)
c. /atumu-ru=tjar-o=ka=na/'集めるのだろうかね':
なんでん アツムーチャロカナ(何でも集めるのだろうか)
d. /ik-a-na=tai=na(a)/'行かないとだね':
動かえんごて なってから いずれと イカナタイナー (動くことができなくなってからいずれ行かないとだね)
f. /ki-ta=Qtjar-o=kai/'来たのだろうか':だーか キタッチャロカイ
(誰か来たのだろうか)
平方言の終助詞の相互承接を一覧にして、以下に示す。
(188) 表 13 終助詞の相互承接
後接する形式
=jo =ka =tai =bai =kai =ne(e) =na(a)
前 接 する 形式
=jo × × × × ○ 〇
=ka ○ × × × ○ 〇
=tai × × × × ○ 〇
=bai × × × × ○ 〇
=kai × × × × ○ 〇
=ne(e) ○ × × × × ×
=na(a) × × × × × ×
3.5.2. 連体詞
連体詞は、指示詞の「コソアド」を用いて、名詞を修飾する形式が、ほとんどだと考え られる。「コソアド」は、あとに/-no/を接続する形式か、/-gaN-na/を接続する形式にして、
名詞を修飾する。
(189) a. /a-no/'あの':アノ 人ん 来るんじゃろ(あの人が来るんだろう)
b. /ko-no/'この':だんだん コノごろわ 椅子にも 座らんじ (だんだんこの頃は椅子にも座らないで)
c. /ko-gaN-na/'こんな':コガンナ ことばが よかったいねー
(こんなことばが良いんだよね)
d. /so-gaN-na/'そんな':ソガンナ こちゃ 知らんとたい
(そんなことは知らないんだ)
3.5.3. 接続詞
接続詞は、節の初めに用いられる。平方言の接続詞は、屈折接尾辞や接続助詞などに由 来するものが多い。/zjakeN/'だから'、/baQteN/'しかし'、/sositara/'そしたら'、/sosite/'そして'な どが挙げられる。
3.5.4. 副詞
副詞は、6 つの品詞分類にあてはまらない品詞であり、連用修飾用法を主とする。しか し、それだけで語となることができるため、名詞と同様のふるまいもする。
(190) a. /hotoNdo#sir-a-N/'ほとんど知らない' b. /hotoNdo=no#hito/'ほとんどの人' c. /hotoNdo=zjaQ-ta/'ほとんどだった'
(190a)は動詞/sir-/'知る'に連用修飾する副詞であるのに対し、(190b,c)は「属格」の助詞/=no/
が接続していること、コピュラ動詞/=zjar-/で述語文を作っていることから、名詞と捉えら えられることができる。
連用修飾のみを行う副詞は、/goroQto/'みんな'や/miNna/'みんな'、/motiQto/'もう少し'、
/iQpjaa/'いっぱい'、/iQmo/'いつも'、/iQka/'いつか'、/tjokotjoko/'急いで'などがある。その他は、
共 通 語 と 共 通 す る 形 式 が 多 い 。 例 え ば 、/moo/'も う'や/taisoo/'大 層'な ど で あ る 。
/miNna#goroQto/'みんな'など、副詞が重複することもある。
副詞には、指示詞の「コソアド」を用いて、/koo/'こう'などのように長母音化する形式か、
指示詞に/-gaN/を接続した形式で、用言を修飾するものがある。/-gaN/に形容動詞連用形を つくる/-ni/を接続させる形式もみられる。
(191) a. /koo/'こう':コー 縛れよ((藁は)こう縛れよ)
b. /so-gaN/'そんなに':また ソガン あれば 困るじゃろ
(またそんなにあれば困るだろう)
c. /a-gaN/'あんなに':アガン うたっごったばってん
(あんなに歌っていたのに)
d. /a-gaN-ni/'あんなに':アガンニ ふとか 人んな 大変じゃ 介護も
(あんなに大きい人のは大変じゃ、介護も)
また、驚きや感情、応答を表す語も、本論文では副詞に含める。平方言では、驚いたと きに発される形式に、//aQpajo//というものがある。