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2.3 クレジット量の試算

2.3.1 試算対象とする石炭火力発電所の設定

(1)試算の前提

インドネシアでは、今後、4,000kcal/kg程度の褐炭を燃料とした高効率石炭火力発電所 を導入する方針であり、入札においてこの条件が示されているプロジェクトもある。この ため、本調査では、今後4,000kcal/kg程度の褐炭を燃料とした超臨界圧、超々臨界圧石炭 火力発電所が導入されるとして試算を行う。ただし、現状では褐炭焚き石炭火力発電所の 実績が殆んどないため、稼働中の石炭火力発電所をベースラインとし、褐炭焚き高効率石 炭火力発電所が導入された場合のCO2排出削減量の試算を行う。

なお、参考として、亜瀝青炭焚き高効率石炭火力発電所が導入された場合についての試 算も行う。

(2)対象とする石炭火力発電所

本調査では、特定のプロジェクトを対象にしていないため、以下の高効率石炭火力発電 所が新規に建設されると想定して、試算を行う。

導入を想定する技術 : 超臨界圧もしくは超々臨界圧

設備容量 : 600MW、800MW、1,000MW

また、新規に導入する高効率石炭火力発電所の運転条件は、以下のとおり。

41 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventory, Volume 2 Energy, Chapter 1, Table 1.4に示 される亜瀝青炭の95% confidence interval Lowerの数値。

表 2.3.1 導入する高効率石炭火力発電所の運転条件

超臨界圧 超々臨界圧

利用率 (%) 80 80

所内率 (%) 6 6

発電端熱効率 (%) 41.1 42.1

送電端熱効率 (%) 38.7 39.6

石炭発熱量(net) (kcal/kg) 4,000 4,000

(GJ/t) 16.74 16.74

(3)送電端熱効率の想定

インドネシアに超臨界圧及び超々臨界圧石炭火力発電所を建設する場合、インドネシア の諸条件に合った熱効率を設定する必要がある。そのため、本調査では、日本メーカーの プラントをベースに、4,000kcal/kg前後の褐炭及び5,000kcal/kg前後の亜瀝青炭を燃料と した高効率石炭火力発電所の熱効率を以下のとおり想定した。

表 2.3.2 設定効率(設計値 LHVベース)

亜臨界圧 超臨界圧 超々臨界圧 蒸気条件の例 16.6MPa

538/538℃

24.1MPa 538/566℃

24.1MPa 593/593℃

換算前 40.7% 43.8% 44.8%

発電端 補正後 38.2 41.1 42.1

褐炭

送電端 36.0% 38.7% 39.6%

換算前 40.7 43.8 44.8 発電端 補正後 38.9% 41.8% 42.8%

亜瀝青炭

送電端 36.9 39.3 40.2

表 2.3.3 参考:設定効率(設計値 HHVベース)

亜臨界圧 超臨界圧 超々臨界圧

換算前 38.8% 41.7% 42.7%

発電端 補正後 36.3 39.0 40.0

褐炭

送電端 34.1% 36.7% 37.6%

換算前 38.8 41.7 42.7 発電端 補正後 36.9% 39.7% 40.6%

亜瀝青炭

送電端 34.7 37.4 38.2 注: LHV=1.053×HHVで換算

1)熱効率低下の考え方

プラント効率は、「ボイラ効率 × タービン効率」で表される。日本メーカーのプラン トをインドネシアに建設する場合、設計条件の差を考慮するとそれぞれの効率低下は、次 のように考えることができる。

試算にあたっては、以下の考え方からインドネシアで建設した場合のタービン効率の相 対値低下を 3%、ボイラ効率の相対値低下を 3%と想定する。日本メーカーのプラントを 日本で建設した場合を100%とすると、インドネシアで建設した場合に、プラント効率は、

94.1%(=((1-0.03)×(1-0.03))×100)となる。

《タービン効率の低下》

以下に示すように、インドネシアにおいては復水器冷却に使用する海水温度が高いた め、タービン効率が相対値で約3%程度低下する。

日本での設計 : 21℃ インドネシアでの設計 : 30℃

《ボイラ効率の低下》

4,000kcal/kg程度のインドネシア褐炭を燃料とする場合、低発熱量、高水分等の石炭

性状により各種熱損失が生じ、ボイラ効率は相対値で約3~5%程度低下する。

ここでは、相対値で3%低下すると想定した。また、5,000 kcal/kg程度の亜瀝青炭の 場合は、相対値で1.5%低下すると想定した。

日本での設計: 5,800kcal/kg程度の豪州炭をベース

インドネシアでの設計: ボイラ効率は水分高、灰分高、硫黄分高になると 熱損失が大きくなる。

表 2.3.4 導入する発電所で燃料とする褐炭の仕様 ボイラ効率 最低 最高

発熱量(ar)[kcal/kg] 3,800 4,300 全水分(ar[] 42 23

灰分(ar)[%] 8 2

硫黄分(dar[] 0.35 0.1 効率低下(相対値) 5% 3%

注: 規模に関係なく同じ

2)所内率の考え方

発電端効率から送電端効率を算出する場合、所内率が必要となる。所内率の変動要因と しては高水分、低発熱量炭の場合、ガス容量増 → ファン動力増や石炭必要量増 → ミル 動力増や所内動力増などが考えられる。しかし、所内率に影響する要因は地点特性や設計・

仕様によって大きく異なり、それらを数値化するのは困難である。したがって、日本の実 績を用い、日本で建設した場合、インドネシアで建設した場合共に6%とする。