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第 2 章では、ベースラインの考え方として、4 つのケース(ACM0013 準拠ケース、

ACM0013条件緩和ケース、J-MRV適用ケース、その他)を取り上げ、8つのベースライ

ンを設定した。それぞれのベースラインに対して、超臨界圧、超々臨界圧石炭火力発電設 備が導入された場合のCO2クレジット量を試算した。ここでは、第2章の検討結果につい て整理する。

(1)各ベースラインシナリオを検討する上でのポイント

検討した4つのケースについて、今後それらの導入を考える上で、考慮すべき以下のメ リット、デメリットがあると考えられる。

ACM0013準拠ケース

メリット デメリット

 CDM 理事会で承認済みの方法論であり、国際

的合意が得られている。

ベースラインとなるプラントが12基しかなく、

後発プラントにインセンティブが働かない。

熱効率トップ15%のプラントを選出する必要が あり、各々のプラント熱効率を正確に評価する ための精度の高いデータが必要になる。そのた め、統一された基準や、高いモニタリング精度 が必要となる。

ACM0013条件緩和ケース

メリット デメリット

 ACM0013 準拠ケースに比べ、③、④では後発

プラントにもインセンティブが働く。

ケース⑤においては、後発プラントまで永続的 にクレジットが確保され、クレジット量が多く 算定される。

 CDM理事会で承認されたツールの考え方に基づ

くが、石炭火力のみをベースラインの対象とし ており、国際的合意が得られるか不明。

各々のプラント熱効率を正確に評価するための 精度の高いデータが必要になる。そのため、統 一された基準や、高いモニタリング精度が必要 となる。

J-MRV適用ケース

メリット デメリット

 JBIC認定済みの方法論。

同種燃料によるベースラインが適用可能な場合、

石炭火力発電所をベースとした排出係数とする ことができ、ACM0013 条件緩和ケースの⑤と 同様に永続的にクレジットが確保され、クレジ ット量が多く見込める。

 JBIC 認定済みではあるが、J-MRV そのものは

JBICの融資条件に過ぎず、クレジット発行を対 象としていない。このため、国際的合意が得ら れるか不明。

各々のプラント熱効率を正確に評価するために 精度の高いデータが必要になる。そのため、統 一された基準や、高いモニタリング精度が必要 となる。なお、IEA 公表データ等を基にベース ラインを作成し利用するとも記されている。

その他ケース(インドネシアに亜臨界を導入した場合の最高熱効率)

メリット デメリット

現状において最高効率の石炭火力をベースとす る。このため、データ収集が容易である。

超臨界圧、超々臨界圧が導入された場合、亜臨 界圧をいつまでベースラインとして認められる のかが不透明。後発プラントにインセンティブ が働かない可能性がある。

(2)ベースラインを検討するうえでの留意点

本章では、8つのパターンについてのベースラインを設定し、クレジット量を試算した。

上記に示したメリット、デメリット以外に、ベースラインを検討するうえで以下の点につ いて留意する必要がある。

 現行のACM0013に準拠する①、②の場合、最初の1基目が運転を開始した以降の

案件は、クレジット量が大きく減少する。例えば②では、3 基目以降の案件ではク レジット量が発生しない。また、①においては、現状の最高効率の亜臨界圧石炭火 力発電をベースとしているため、数基の超々臨界圧石炭火力発電設備が導入されれ ば、導入が最も予想される技術とみなされクレジット量が発生しなくなる。

 このため、ACM0013 の場合は、CDM もしくは特別な支援により導入された案件 については、ベースラインから除外することが求められる。

 また、ACM0013に準拠する場合には、サンプル数が10件になるまで過去にさかの ぼるなど、類似サンプルの条件を緩める必要がある。

 ACM0013 緩和ケースでは、ベースラインの試算においてサンプル対象を石炭火力

にすることが求められる。インドネシアでは電源開発計画において石炭火力が主要 電源とされていること、また高効率化推進の観点からも、サンプル対象を石炭火力 にすることは問題がないと思われる。

 同ケースの③、④では、上記 ACM0013ケースに比べ、2 基目、3 基目とクレジッ ト量が確保される。⑤では、全プラントの平均であることから永続的にクレジット 量が確保される。

 J-MRV適用ケースでは、同種燃料によるベースラインが適用可能な場合(⑦)は、

永続的にクレジット量が確保される。なお、⑥ではインドネシアが公表する全電源 をベースラインとするため、確保されるクレジット量が少ない。

 その他ケースでは、2 基目以降も亜臨界圧石炭火力発電の最高効率をベースライン として認められれば、永続的にクレジット量が確保される。

 ベースラインの算出時に考慮される発電所は、運転を開始してから1年間の運転デ ータがあるものが対象となる。したがって、高効率石炭火力発電所が運転開始後 1 年を経過するまでに、できるだけ多くの高効率石炭火力発電所プロジェクトを立ち 上げることが、クレジット量を多く獲得する観点からは効果的となる。なお、建設 中の超臨界圧石炭火力発電所が3基あり、これらは2011年10月、2012年、2014 年に運開予定である。

表 2.4.1 建設中の大型石炭火力

プロジェクト名 場 所 操業開始時期 蒸気条件 備  考

PLN

Paiton 東ジャワ 1 × 660 2011年4月 亜臨界圧 亜瀝青炭

Suralaya バンテン 1 × 625 2011年4月 亜臨界圧 亜瀝青炭

Cilacap Baru/Adipala 中部ジャワ 1 × 660 2014年 超臨界圧 仕様炭:5,500kcal/kg IPP(民間)

Cirebon 西ジャワ 1 × 660 2011年10月 超臨界圧 仕様炭:5,000kcal/kg Tanjung Jati B Exp 中部ジャワ 2 × 660 2012年 亜臨界圧

Paiton 3-4 Exp 東ジャワ 1 × 815 2012年 超臨界圧 設備容量

(MW)

出所:各種資料より作成

第 3 章 高効率石炭火力発電設備の普及に向けた課題と対策

3.高効率石炭火力発電設備の普及に向けた課題と対策

インドネシアでは、超臨界圧石炭火力発電設備3基を建設中であるが、第2章の2.1節 に示したとおり稼働中の石炭火力は全てが亜臨界圧発電設備である。本章では、高効率石 炭火力発電設備(超臨界圧、超々臨界圧)の普及に向けた課題と対策、及び高効率石炭火 力発電設備を導入した場合のメリットについて整理する。