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3.2 高効率石炭火力発電設備導入のメリット

3.2.2 石炭調達におけるメリット

(1)石炭削減量

前項で想定した亜臨界圧、超臨界圧、及び超々臨界圧石炭火力発電設備について石炭使 用量を比較し、超臨界圧及び超々臨界圧石炭火力発電設備を導入した場合の石炭調達にお ける効果について検討する。超臨界圧、超々臨界圧石炭火力を導入することにより、プラ ントの効率が向上し、使用する燃料の削減が以下のとおり見込まれる。

褐炭を燃料とする場合、亜臨界圧に比較して超臨界圧では発電設備容量の違いにより年 間17万~28万トンの石炭消費量の削減、超々臨界圧では同22万~36万トンの削減につ ながると試算される。一方、亜瀝青炭を燃料とする場合は、亜臨界圧に比較して超臨界圧 では同13万~21万トンの削減、超々臨界圧では同17万~28万トンの削減につながると 試算される。

参考までに、kWhあたりで削減量を比較すると次のとおりとなる。

褐炭を燃料とした場合、kWhあたりの消費量は、亜臨界圧で0.563kg、超臨界圧で0.523kg、 超々臨界圧で0.511kgとなり、亜臨界圧に対して超臨界圧で0.040kg、超々臨界圧で0.052kg 節約される。一方、亜瀝青炭を燃料とする場合、kWhあたりの消費量は、亜臨界圧で0.442kg、 超臨界圧で0.411kg、超々臨界圧で0.402kgとなり、亜臨界圧に対して、超臨界圧で0.031kg、 超々臨界圧で0.040kg節約されると試算される。

なお、本調査では 600MW、800MW、1,000MW の熱効率を同じと想定しているので、

設備容量に関係なくkWhあたりの石炭消費量、削減量は同じとなる。

45 設備容量の違いにより熱効率は若干異なることが考えられるが、本調査では600MW800MW1,000MW の熱効率を同じとしていること、またプラント価格もkWあたりの価格を一定にしていることに留意され たい。

表 3.2.3 超臨界圧、超々臨界圧発電設備を導入した場合の 石炭削減量(対亜臨界圧発電設備)

<褐炭を燃料とする場合>

(万トン/年)

亜臨界圧 超臨界圧 超々臨界圧 超臨界圧 超々臨界圧

600MW 236.7 220.0 214.7 16.7 21.9

800MW 315.5 293.3 286.3 22.3 29.2

1,000MW 394.4 366.6 357.9 27.8 36.5

<亜瀝青炭を燃料とする場合>

(万トン/年)

亜臨界圧 超臨界圧 超々臨界圧 超臨界圧 超々臨界圧

600MW 185.9 173.0 169.0 12.9 16.9

800MW 247.9 230.7 225.3 17.2 22.6

1,000MW 309.9 288.4 281.6 21.5 28.2

石炭消費量 削減量

石炭消費量 削減量

<褐炭を燃料とする場合>  <亜瀝青炭を燃料とする場合>

16.7

21.9 22.3

29.2 27.8 36.5

0 5 10 15 20 25 30 35 40

超臨界 々臨界 超臨界 々臨界 超臨界 々臨界

600MW 800MW 1,000MW

(万トン/年)

12.9

16.9 17.2

22.6 21.5 28.2

0 5 10 15 20 25 30 35 40

超臨界 々臨界 超臨界 々臨界 超臨界 々臨界

600MW 800MW 1,000MW

(万トン/年)

図 3.2.2 超臨界圧、超々臨界圧発電設備を導入した場合の 石炭削減量(対亜臨界圧発電設備)

(2)石炭削減によるコスト削減額

燃料となる褐炭、亜瀝青炭の石炭購入価格をそれぞれ60ドル/トン、87.5ドル/トンと想定

(価格の想定は次ページ【石炭価格の想定】を参照)すると、褐炭を燃料とする場合、亜 臨界圧と比較して超臨界圧では発電設備容量の違いにより年間 1,000万~1,670 万ドルの コスト削減、超々臨界圧では同1,320万~2,190万ドルのコスト削減につながる。同様に、

亜瀝青炭を燃料とする場合、超臨界圧では同 1,230 万~1,880万ドルのコスト削減、超々 臨界圧では同1,480万~2,470万ドルのコスト削減につながると試算される。kWhあたり では、超臨界圧で0.268セント/kWh、超々臨界圧で0.353セント/kWhのコスト削減とな

る。

表 3.2.4 超臨界圧、超々臨界圧発電設備を導入した場合の 石炭購入コスト削減効果(対亜臨界圧発電設備)

<褐炭を燃料とする場合>

(万ドル/年)

亜臨界圧 超臨界圧 超々臨界圧 超臨界圧 超々臨界圧

600MW 14,199 13,198 12,884 1,002 1,315 800MW 18,933 17,597 17,179 1,336 1,754 1,000MW 23,666 21,996 21,473 1,670 2,192

<亜瀝青炭を燃料とする場合>

(万ドル/年)

亜臨界圧 超臨界圧 超々臨界圧 超臨界圧 超々臨界圧

600MW 16,268 15,139 14,786 1,129 1,482 800MW 21,691 20,186 19,714 1,505 1,976 1,000MW 27,113 25,232 24,643 1,881 2,471

石炭購入費 削減分

石炭購入費 削減分

<褐炭を燃料とする場合> <亜瀝青炭を燃料とする場合>

1,002

1,315 1,336

1,754 1,670 2,192

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500

超臨界圧 超々臨界 超臨界圧 超々臨界 超臨界圧 超々臨界

600MW 800MW 1,000MW

(万ドル/年)

1,129

1,482 1,505

1,976 1,881 2,471

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

超臨界圧 超々臨界 超臨界圧 超々臨界 超臨界圧 超々臨界

600MW 800MW 1,000MW

(万ドル/年)

図 3.2.3 超臨界圧、超々臨界圧発電設備を導入した場合の

石炭購入コスト削減効果(対亜臨界圧発電設備)

【石炭価格の想定】

インドネシアでは、国際価格とリンクした国内炭の国内向け販売価格を明確に示すため に、エネルギー鉱物資源省が石炭価格指標値としてインドネシア炭のリファレンス価格と 銘柄毎の価格を毎月発表している。ここでは、このリファレンス価格(GAR 6,322kcal/kg

basis)と2011年3月発表の主要銘柄の価格を参考に石炭価格を想定する。

表 3.2.5 主要銘柄の価格(1月)

発熱量 全水分 全硫黄 灰分 価格

(kcal/kg, GAR) (%, ar) (%) (%) (ドル/トン)

Melawan Coal 5,400 22.5 0.4 5.0 92.29 Envirocoal 5,000 26.0 0.1 1.2 84.12 Jorong J-1 4,400 32.0 0.3 4.2 67.89

Ecocoal 4,200 35.0 0.2 3.9 61.23

出所:インドネシアエネルギー鉱物資源省ホームページ掲載情報

このリファレンス価格は、国際価格と同様の変化を示しており、2010年12月から国際 市場での石炭価格上昇にあわせて上昇し、現状120ドル/トンを上回って推移している。し かし、石炭価格は現状高止まりをしていると考えられ、今後はこのリファレンス価格が100

~120ドル/トンで推移すると想定する。

87.81 86.64 86.58 92.07 97.22 96.65 94.86 90.05 92.68 95.51 103.41 112.40 127.05 122.43

0.00 20.00 40.00 60.00 80.00 100.00 120.00 140.00

2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

2010年 2011年

(ドル/トン)

出所: TEXレポートより

図 3.2.4 インドネシア炭リファレンス価格(GAR 6,322kcal/kg basis)

実際に想定する発電所で使用される石炭は、ネットでそれぞれ4,000kcal/kg程度の褐炭

と5,000kcal/kg程度の亜瀝青炭を想定している。石炭価格は発熱量のほか全硫黄、灰分等

の品位によって決められるが、現在の 5,000kcak/kg、4,000kcal/kg 程度の石炭価格は表

3.2.4に示すとおりである。この石炭価格を参考に、上記のリファレンス価格に対して亜瀝

青炭が75~90ドル/トン、褐炭が55~65ドル/トンと想定し、亜瀝青炭についてはその平 均値である87.5ドル/トン、褐炭については60.0ドル/トンと想定した。

(3)プラント価格に対する石炭購入コスト削減の効果

想定した亜臨界圧、超臨界圧、及び超々臨界圧石炭火力発電設備のkWあたりのプラン

ト価格(表3.2.2)からそれぞれのEPC初期投資額を算出し、亜臨界圧に対する超臨界圧、

超々臨界圧の初期投資額の増加分を試算した。この増加金額と石炭の購入コスト(褐炭価 格を 60 ドル/トン、亜瀝青炭価格を 87.5ドル/トンと想定)の節約分と比較した。なお、

試算条件は以下のとおり。

 割引率: 12%

 建設期間: 4年

 導入する技術(亜臨界圧、超臨界圧、超々臨界圧)によるO&Mコスト: 一定

表 3.2.6 燃料費節約による初期投資額増加分の回収年数

<褐炭を燃料とする場合(褐炭価格60ドル/トンと想定)>

(万ドル)

増額分 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目

600MW

亜臨界圧 78,000 - - - - - - - - -

-超臨界圧 79,920 1,920 1,002 637 1,205 1,713 2,166 2,571 2,932 3,255 3,543 超々臨界圧 81,900 3,900 1,315 836 1,582 2,249 2,844 3,375 3,849 4,273 4,651 800MW

亜臨界圧 104,000 - - - - - - - - -

-超臨界圧 106,560 2,560 1,336 849 1,607 2,284 2,888 3,428 3,909 4,339 4,723 超々臨界圧 109,200 5,200 1,754 1,115 2,110 2,998 3,792 4,500 5,133 5,697 6,201 1,000MW

亜臨界圧 130,000 - - - - - - - - -

-超臨界圧 133,200 3,200 1,670 1,061 2,009 2,855 3,610 4,285 4,887 5,424 5,904 超々臨界圧 136,500 6,500 2,192 1,393 2,637 3,748 4,740 5,625 6,416 7,121 7,752

初期投資額 年間燃料

費節約額

燃料費節約分(累計)

注: 年数は運転開始後の年数を示す。

割引率12%、建設期間4年で試算。なお、減価償却費はキャッシュフローに考慮していない。

<亜瀝青炭を燃料とする場合(亜瀝青炭価格87.5ドル/トンと想定)>

(万ドル)

増額分 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目

600MW

亜臨界圧 78,000 - - - - - - - - -

-超臨界圧 79,920 1,920 1,129 717 1,358 1,929 2,440 2,896 3,303 3,666 3,991 超々臨界圧 81,900 3,900 1,482 942 1,783 2,534 3,205 3,803 4,338 4,815 5,241 800MW

亜臨界圧 104,000 - - - - - - - - -

-超臨界圧 106,560 2,560 1,505 956 1,810 2,573 3,253 3,861 4,404 4,888 5,321 超々臨界圧 109,200 5,200 1,976 1,256 2,378 3,379 4,273 5,071 5,784 6,420 6,989 1,000MW

亜臨界圧 130,000 - - - - - - - - -

-超臨界圧 133,200 3,200 1,881 1,195 2,263 3,216 4,067 4,826 5,505 6,110 6,651 超々臨界圧 136,500 6,500 2,471 1,570 2,972 4,224 5,341 6,339 7,230 8,025 8,736

初期投資額 年間燃料 燃料費節約分(累計)

費節約額

注: 年数は運転開始後の年数を示す。

割引率12%、建設期間4年で試算。なお、減価償却費はキャッシュフローに考慮していない。

その結果、表3.2.6に示すように600MW、800MW、1,000MWのどのケースにおいて も、褐炭を燃料とする場合では、超臨界圧が運転開始4年目で、超々臨界圧が運転開始7 年目で、それぞれ初期投資額の差額分を燃料費の節約分で賄うことが可能となる。一方、

亜瀝青炭を燃料とする場合では、超臨界圧が運転開始3年目で、超々臨界圧が運転開始6 年目で、それぞれ初期投資額の増額分を燃料費の節約分で賄うことが可能となる。褐炭を 燃料とする場合は、表 3.2.4 に示したように亜瀝青炭よりも燃料費の節約額が少ないこと から初期投資額の増加分の回収が1年遅れることになる。

また、石炭購入コスト節約金額は、石炭価格に比例して変動するため、石炭価格の動向 により回収年は変化する。参考までに、石炭価格と年間燃料費節約金額の関係を図 3.2.5 に示す。

600MW

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

35 45 55 65 75 85 95 105 115 125 石炭価格(ドル/トン)

費節約分(万ド/年)

800MW

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000

35 45 55 65 75 85 95 105 115 125 石炭価格(ドル/トン)

石炭購入(万/年

1,000MW

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 5,000

35 45 55 65 75 85 95 105 115 125 石炭価格(ドル/トン)

購入費節約分(万ド/年)

35455565758595105115125 褐炭、超臨界圧 褐炭、超々臨界圧 亜瀝青炭、超臨界圧 亜瀝青炭、超々臨界圧

図 3.2.5 石炭価格と石炭購入費節約金額の対比