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試料と実験方法

ドキュメント内 森下, 智貴 (ページ 68-73)

第 3 章 酸化マグネシウム(MgO)によるフッ素の不溶化機構の解明

3.1. 土壌中における酸化マグネシウムの水和反応

3.1.2. 試料と実験方法

(1) 試料

土壌試料 土壌試料は0.106 mm(150 mesh)フルイ通過させたカオリナイト,マサ土,スメクタイ ト,黒ボク土,鹿沼浮石を用いた.カオリナイトは有限会社入来カオリン社製,スメクタイトはクニ ミネ工業化学株式会社製のクニピアFであり,両者とも水簸・精製した試料である.マサ土,黒ボ ク土,鹿沼浮石はそれぞれ福岡県農業試験場,熊本県長陽村,栃木県鹿沼市で採取した試料である.

粘土鉱物分析結果を図3.1.1に示す.粘土鉱物分析法は,Harris and White(2008)に示される方法に 従った.カオリナイト,スメクタイトではそれらの鉱物に特徴的なピークが検出されており,それぞ れ純粋なカオリナイト,スメクタイト鉱物である.マサ土ではMg処理やK処理などでd=0.73 nmの ピークが確認され,K飽和-550˚C加熱試料でピークが消失していることからカオリナイトが含まれ,

d=1.00 nmのピークがK飽和試料とK飽和-550˚C加熱試料で確認され,d=1.45 nmのピークがマグネ シウム(Mg)飽和試料とMg-Glycerol飽和試料で確認されたことからバーミキュライトが含まれる.

また,d=1.00 nmのピークはMg-Glycerol飽和試料で比較的弱いが全試料で確認されることから雲母

64 も含まれるものと考えられる.ピーク強度の比較から,マサ土中に含まれる粘土鉱物は,含有量が多 い順にカオリナイト > バーミキュライト > 雲母となる.黒ボク土,鹿沼浮石は非晶質鉱物が主要 鉱物であり明瞭なピークは検出されなかった.黒ボク土はAomine and Yoshinaga(1955)やWada and

※図中のd値の単位はnm

図3.1.1 粘土鉱物分析結果

5 10 15 20 25 30 35

MgMg-Gly KK-300 K-550 2θ (°)

kaolinite d=0.72

5 10 15 20 25 30 35

Mg Mg-Gly

K K-300 K-550

2θ (°)

masa d=1.45

d=1.00d=0.73

5 10 15 20 25 30 35

Mg Mg-Gly

K K-300 K-550 2θ (°)

smectite d=1.58

d=1.79

d=1.23 d=0.99

5 10 15 20 25 30 35

Mg Mg-Gly

K K-300

K-550

2θ (°) allophane

5 10 15 20 25 30 35

Mg Mg-Gly

K K-300

K-550 2θ (°)

kanuma fuseki

65

Tokashiki(1971)で分析された試料を用いており,文献中では試料番号1041で記載されている.そ

の中で当該試料の主要な粘土鉱物はアロフェンであり,イモゴライトも若干含んでいることが示され ている.鹿沼浮石は火山灰由来の土壌であり,アロフェンやイモゴライトが含まれると報告されてい る(Yoshinaga, 1968; Miyauchi and Aomine, 1966).図3.1.2に黒ボク土と鹿沼浮石の熱重量分析-示差

熱分析(DTA-TG)結果を示す.イモゴライトに特徴的なDTA曲線のピークとして,170~190˚Cに

おける吸着水の脱水に伴う吸熱反応,430˚C付近の吸熱反応がある(Yoshinaga and Aomine, 1962). 両試料ともそれらの温度での吸熱反応はほとんど確認されなかったため,イモゴライトの含有濃度は 低いものと考えられる.各試料の性質を表3.1.1にまとめる.

図3.1.2 黒ボク土および鹿沼浮石のDTA-TG曲線

表3.1.1 試料の性質

試料 カオリナイト マサ土 スメクタイト 黒ボク土 鹿沼浮石

pH 4.0 6.0 10.3 5.8 5.8

液性限界 wL (%) 95 44 1085 66 109 塑性限界 wP (%) 34 28 56 52 73

粘土鉱物 カオリナイト

カオリナイト

>バーミキュ ライト>雲母

スメクタイト アロフェン>

イモゴライト

アロフェン>

イモゴライト

酸化マグネシウムと水酸化マグネシウム 実験に用いたMgOは宇部マテリアルズ(株)社製のUC95 である.Mg(OH)2はMgOと十分量の水を混合し,100˚Cで24時間反応させたものであり,MgOは 検出されなかった(図3.1.3).

0 200 400 600 800 1000

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

-4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0

TG Kanuma TG Kuroboku DTA Kanuma

DTA Kuroboku

Temparature (℃)

DTA (μV) TG (mg)

66 図3.1.3 MgOとMg(OH)2のX線回折パターン

(2) 実験方法

MgO水和反応速度試験 MgOに十分な量の水を添加して,25˚Cで放置し0.5,1,3,7,14,28日 経過後にX線回折を行い,Mg(OH)2の反応生成速度を調べた.

MgO添加反応試験(常温反応試験) 液性限界に調整した土壌にMgOを10 %添加し,25 ˚Cの室温

で0,1,3,7,14,28日経過時にX線回折を行い,MgO,Mg(OH)2,並びに新しい鉱物の生成状況

を調べた.0日経過時のX線回折はMgOと土壌を混合した後,直ちに実施した.

加熱反応試験 MgOを試料に対して1,2,3,5,10,20 %(全体割合で1.0,2.0,2.9,4.8,9.1,

16.7 %)混合し,含水比を50%に調整してからポリエチレン製の50mLビンに密封して100 ˚Cで24

時間反応させ,ビンのフタを取った状態で更に100 ˚ Cで乾燥させてから,乳鉢ですり潰して風乾さ せた.風乾後の試料についてX線回折を行い,MgOとMg(OH)2のピーク強度を測定し生成量を求め た.なお,試料ホルダに詰めた試料は検量線を作成した条件と同様とした.また,スメクタイト,黒 ボク土,鹿沼浮石については含水比の影響を調べるため,MgO添加量を10 %に固定し,含水比を変 化させて同様の試験を行った.MgOとMg(OH)2の定量には,各試料について作成した検量線を用た.

検量線は風乾状態にある土壌にMgOおよびMg(OH)2を混合重量の1,3,5,10,20 %添加してX線 回折を行いピーク強度と含有量の関係から作成した.それぞれの相関係数は0.993~1.000の範囲にあ った.X線回折に用いた試料ホルダーはガラス製,溝深さd=0.5 mmの株式会社リガク製であり,土 壌ごとに同じ量を秤取し密度条件を一定とした(カオリナイト,マサ土,スメクタイトは0.250 g,

黒ボク土は0.230 g,鹿沼浮石は0.200 g).ここで得られた検量線は,試料の質量を風乾状態でほぼ一 定にすることが可能である加熱反応試験にのみ適用した.

土壌pH測定 常温反応試験および加熱反応試験で得られた試料を85 mLナルゲン遠沈管に5.0 g秤 取し,純水を25 mL加えたのち手で強振させ,1時間放置後のpHを測定した.

交換性Mg測定および逐次連続抽出試験 85 mL容ナルゲン遠沈管に風乾した常温反応試験28日経 過後の試料を1.0 g秤取し,1 Mの酢酸アンモニウム溶液による土壌の交換性Mgの測定を行った(村 本ら, 1992).さらに,交換性陽イオン測定後の試料について,Tessir(1979)の方法によりMgの逐

0 10 20 30 40 50 60 70

0 2000 4000 6000 8000 10000

2

θ

(°)

Intensity (cps)

Mg(OH)2 MgO

67 次抽出試験を行った.抽出試験は炭酸塩態,金属酸化物態,有機物態について行い,それらの合計値 とMg添加量(10 %)の差を残差態とした(表3.1.2).また,抽出試験が及ぼす鉱物変化への影響を 確認するために,抽出試験後に水で洗浄したカオリナイト試料のX線回折を行った.なお,実験は2 連で行い,その平均値を結果として採用した.

表3.1.2 交換性Mg測定および逐次抽出法の手順

吸着形態 抽出方法

イオン交換態 酢酸でpHを7に調整した1 M酢酸アンモニウムを30 mL添加し,15分振と う後,遠心分離して100 mLメスフラスコにろ過した.この作業を3回繰り返 し,純粋を加え100 mLの抽出溶液を作成した.ただし,2回目以降の振とう は手動による30秒の強振とした.

炭酸塩態 酢酸でpH5に調整した1 M酢酸ナトリウムを8 mL加えて5時間振とう抽出.

金属酸化物態 25 %酢酸で0.04 M塩酸ヒドロキルアミン(NH2OH・HCl)とした溶液を20 mL加 えて96±3˚Cで6時間湯煎して抽出(湯煎中は時々攪拌した).

有機物態 3 mLの0.02 M硝酸と,硝酸でpH2に調整した5 mLの30 %過酸化水素水を加

え85±2˚Cで2時間湯煎し,その後,pH2の30 %過酸化水素水を3 mL加え,

更に3時間湯煎した.遠沈管を室温まで冷やした後,20 %酢酸で3.2 M酢酸ナ トリウムとした溶液を5 mL加え,全体で20 mLになるように純水を加えた.

30分振とう後に遠心分離し,上澄液の鉛濃度を測定した.

残差態 Mg添加量(10%)とイオン交換態,炭酸塩態,金属酸化物態,有機物態の合 計値の差.全Mg量は54.8 mg/1.0 g = 0.1 / 1.1×24.31 / (24.31+16.00)×1000.

※各工程終了毎に,間隙中のMgを取り除くため,15分8 mLの純水で洗浄した.

※抽出後は遠心分離し,上澄み溶液の濃度を測定した.

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