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結言

ドキュメント内 森下, 智貴 (ページ 104-122)

本研究は,アルカリ資材として製鋼スラグ,酸化マグネシウム(MgO)を用いた重金属類の溶出 抑制効果の検証,機構の解析,および地盤中における重金属の移動現象について考察したものである.

この成果は,製鋼スラグの有効利用,MgOによるフッ素の不溶化機構の解明,海成粘土中の鉛の吸 着および移動に及ぼす塩類の影響の3つの骨子から成る.

(1) 製鋼スラグの有効利用

鉄鋼スラグは鉄生産に伴う副産物であり,製造工程により高炉スラグと製鋼スラグに分類され,製 鋼スラグの一部は再利用されず埋立処分されている.製鋼スラグは強アルカリ性を示し,耐摩耗性に 富むという特徴がある.製鋼スラグの有効利用に関しては主に3つの課題の研究を行った.第1には,

製鋼スラグの施用によるコムギのカドミウム(Cd)吸収抑制効果の研究である.土壌pHを上昇させ ることで植物によるCdの吸収は抑制されることが知られており,高アルカリを示す製鋼スラグでも 吸収抑制資材として適用が可能であるかを検討した.この結果,製鋼スラグの施用により土壌pHは 上昇し,コムギのCd吸収量は有意に減少した.その他の微量必須元素については銅,鉄では影響が なく,亜鉛ではやや低下する傾向があった.Cd,亜鉛の吸収量は0.01,0.025 M塩酸抽出量と相関が あり,この関係からCdの吸収抑制に起因した亜鉛欠乏の管理が可能である.第2には,製鋼スラグ の舗装材としての利用法の研究である.スラグ舗装は施工が容易で経済性に優れており,主に林道に 利用されているが,固化機構や周辺環境への影響は明らかではない.ここでは既に施工された舗装を 採取し,それらの鉱物・化学特性について調べた.その結果,C-S-H,C-A-S-H,カルサイトの生成 がスラグ舗装の固化に寄与することが明らかとなった.また,舗装周辺の土壌表層のpHは8程度ま で上昇しているが,その程度であれば周辺の植生への影響は低いものと判断した.第3には,エージ ングの管理に必要となる製鋼スラグの炭酸カルシウム含量の簡易測定法の研究である.製鋼スラグは 含まれる遊離石灰を炭酸化させるため,エージングによるスラグの炭酸化処理が行われている.効果 的なエージングを行うためにはスラグの炭酸塩の生成量を計測する必要があるが,その計測法は煩雑 である.本研究では土壌の炭酸塩含量測定法を応用し,二酸化炭素検知管を用いて製鋼スラグの炭酸 塩含量を測定する方法を開発した.この方法により,スラグの炭酸塩含量の簡易な測定が可能となり,

また,酸溶液として塩化鉄(III)溶液を用いているので硫化水素の発生がなく,作業者の安全性も確 保される.

(2) MgOによるのフッ素不溶化機構の解明

フッ素汚染土壌にMgOを添加することでフッ素の溶出が抑制されることが知られており,フッ素 の不溶化工法の一つに挙げられる.このメカニズムはMgOの水和により水酸化マグネシウム

(Mg(OH)2)が生成する過程におけるフッ素の取り込みによるものと考えられていが,MgOの土壌

中での水和反応は明らかにされていない.そこで5種類の土壌にMgOを添加し,X線回折により

Mg(OH)2の生成状況を調べた.その結果,カオリナイト,マサ土ではMg(OH)2の生成が確認され,

スメクタイト,黒ボク土,鹿沼浮石では確認されなかった.前者はカオリナイト,後者のスメクタイ ト試料はスメクタイトで,黒ボク土,鹿沼浮石はアロフェン,イモゴライトを主体とし,鉱物の種類

によりMg(OH)2の生成状況は異なっていた.このカオリナイト,マサ土,黒ボク土についてフッ素

汚染土壌を作成し,添加量を変化させてMgOを加え溶出試験を行った.その結果,カオリナイト,

100 マサ土ではMgOを3 %添加すれば環境基準値を満足する結果となった.一方で,黒ボク土ではMgO を添加しない場合には環境基準値を満足していたものの,添加することにより溶出量が増加した.こ れは,フッ素の吸着は鉱物中のアルミニウムが持つ水酸基との交換反応によるが,Mg(OH)2が生成し ない黒ボク土では,MgOの添加により溶液中の水酸化物イオン濃度が上昇することで,アルミニウ ムと結合したフッ素の脱着を促したことによるものと考えられる.したがって,MgOの添加による フッ素の不溶化は土壌に含まれる粘土鉱物の種類により適用の可否があるため,施工に関しては事前 に十分な検討を行う必要がある.

(3) 海成粘土中の鉛吸着・移動に及ぼす塩類の影響

海面処分場の底部遮水層には海成粘土が利用される.粘土は透水性が低く,重金属の吸着量も大き いが,海水に含まれる塩類や焼却灰から溶出する塩類が存在する場合,その能力は低下する可能性が ある.本研究では鉛を含んだ純水,人工海水,焼却灰浸出液を用いて,カラム試験とバッチ試験によ り,塩類存在下における海成粘土の透水性および鉛吸着能力を把握した.試験から得られた遅延係数 を用いて,海面処分場の底部遮水層を想定した地盤における鉛の移動予測を行った.塩類の存在によ り透水係数は増大し,鉛の吸着能力は低下した.また,HYDRUS-1Dの解析結果から,5 mの海成粘 土地盤で溶液中に100 mg/Lの鉛と海水と同等の塩類が含まれている場合は,最短54年で下部まで到 達することが明らかとなった.

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第1章

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