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結果と考察

ドキュメント内 森下, 智貴 (ページ 49-53)

第 2 章 鉄鋼スラグの有効利用に関する研究

2.3. 製鋼スラグを舗装材として利用する場合の強度発現特性と化学性変化

2.3.3. 結果と考察

(1) 一軸圧縮試験結果

図2.3.3に材齢による一軸圧縮強度quの変

化を示す.本来,一軸圧縮試験は高さと横 幅の比が2以上でなければ端面拘束の影響 で強度が過大に評価されるが,本研究では 相対的な強度の比較として qu値で評価した.

7 日材齢ではどちらの試料も自立しなかっ たため,一軸圧縮強度はqu = 0 kN/m2とした.

14 日材齢ではS試料,SG試料でそれぞれ 6.5 kN/m2,25.0 kN/m2,28 日材齢では9.8 kN/m2,33.3 kN/m2,84日材齢では21.0 kN/m2

66.7 kN/m2あった.どちらの試料でも材齢の増加に伴い一軸圧縮強度は増加する傾向にあった.添加

した水の浸透により溶出するカルシウムなどの影響によりスラグ間の固化が進行したことによるも のと考えられる.S試料とSG試料を比較すると,高炉水砕スラグの影響により供試体の強度は3~4 倍増加した.

10.0

一軸圧縮試験を行う 10 cm×10 cmに成型して φ200 mmのボイド管を12.5 cmで切出す

20.0

12.5 10.0

12.5

スラグを詰めて養生する

下部2.5 cmを地面に埋めてボイド管に ボイド管を取り除く 補修テープを切断して

2.5

スラグ

テープで補修

10.0

半分に切断

(1) (2) (3)

(6) (5)

(4)

図2.3.3 材齢による一軸圧縮強度quの変化

0 20 40 60 80

0 10 20 30 40 50 60 70

Age (day) qu (kN/m2 )

S sample SG sample

45

(2) pH試験結果

供試体を作成した製鋼スラグと高炉水砕スラグのpHはそれぞれ11.1と9.3であった.図2.3.4に 材齢,採取部分ごとpHの変化を示す.S試料におけるスラグのpHは上層と下層で28日材齢におい てそれぞれ9.8と10.3であり,7日材齢の11.4と11.8から著しく低下した.84日材齢ではどちらも 10.0となり28日以降でpHはほぼ一定となった.中層では28,84日材齢において11.4,10.6を示し ており,材齢とともにpHは低下する傾向にあった.SG試料の上層のpHは,7日材齢で10.9を示し,

14日材齢で9.7まで低下した.その後は28,84日材齢でそれぞれ10.8,10.9を示し,pHは14日材 齢以降でほぼ一定となった.中層と下層では,それぞれ28日材齢で7日材齢とほぼ同様の10.9と11.1 を示していた.84日材齢ではそれぞれ10.8と10.4を示し,下層でやや低下する傾向がみられた.

スラグ舗装におけるpHの低下の原因は炭酸化によるものと考えられる.スラグ舗装において二酸 化炭素の供給源としては大気と土壌空気がある.土壌空気は大気と比較して移動しにくいため,炭酸 化により消費された場合,その濃度は低下しスラグへの供給量も低くなるが,土壌空気の二酸化炭素 濃度は大気と比較して高いため,炭酸化への影響は少なくない.供試体の上層では大気と接触してい るため炭酸化が進行しpHが低下した.中層では二酸化炭素の供給源から離れているので炭酸化は進 行せずpHは高アルカリを維持していた.下層ではS試料とSG試料でそれぞれ,10.3と11.1であり SG試料の方がpHが高かった.これは,SG試料に含まれる高炉水砕スラグに起因するC-S-Hの生成 が関与しているものと推測される.C-S-HのpHはChen et al.(2004)でカルシウムとケイ素のモル

比(Ca/Si)と相関があることが示されており,スラグではケイ酸2カルシウムが主体となるので,

Ca/Si = 2.0となり,pHは12.4程度となる.したがって,高アルカリのC-S-Hが存在することでpH

が維持されたものと考えられる.SG試料において表層でpHが低下したのはC-S-Hの生成よりも CaCO3の方が顕著であったためと解釈される.

※左図および右図はそれぞれS試料,SG試料のpH変化を示す

図2.3.4 材齢,採取部分ごとのスラグpH

0 20 40 60 80

7 8 9 10 11 12

S-top S-middle S-bottom

Age (day)

pH

0 20 40 60 80

7 8 9 10 11 12

SG-top SG-middle SG-bottom

46 (3) 熱重量分析(TG)

製鋼スラグ(converter slag)と高炉水砕ス ラグ(GBFS)の熱質量分析結果を図2.3.5 に示す.温度の上昇に伴い質量は減少した.

この質量の減少は昇温による炭酸化物の崩 壊や水和物中の水の蒸発によるものである.

Saikia et al.(2002)は100~150 ˚C,150~200

˚C,220~310 ˚CでそれぞれC-S-Hと C-A-S-H,加水ゲーレナイト,ハイドロガー ネット中の水の蒸発が起こると述べている.

本研究では,図2.3.4に示す製鋼スラグと高 炉水砕スラグの熱重量分析結果を参考に,2 つの温度段階(phase)での水の蒸発による 質量損失を次のように定義した.Phase1は

100~150 ˚Cで,C-S-H,C-A-S-H,Phase 2は600~710 ˚Cでカルサイトに起因した質量損失とした.

これらの水和物や炭酸化物は舗装を固化させるバインダ物質が含まれており(森下ら, 2013),質量減 少が多いほどバインダ物質の生成量が多いものと判断した.425~550 ˚Cでポルトランダイトの質量 減少も起こるが,質量減少量はどの試料でも少なく,値の読取りが困難であった.

製鋼スラグと高炉水砕スラグにおけるPhase 1の質量減少量はそれぞれ0.015 mg,0.012 mgであっ た.製鋼スラグの質量は室温~400˚Cまで一定の減少傾向を示したのに対し,高炉水砕スラグは200

˚C以上で減少せず,試料質量はほぼ一定となった(図2.3.5).また,Phase 2の質量減少量はそれぞ れ0.070 mgと0.041 mgであった.図2.3.1のX線回折結果と比較すると,Phase 1を含む室温~400˚ Cの質量減少に寄与した鉱物はC-A-S-H構造をとるギスモンド沸石(gismondine)やゲーレナイト

(gehlenite)である.カルサイトは製鋼スラグと高炉水砕スラグで検出されていることからPhase 2

における質量減少結果と一致する.バインダ物質として寄与するC-S-Hなどの水和物が材齢に伴い 生成することで,Phase 1の質量減少量は増加していくものと考えられる.製鋼スラグでは710˚C以 上で質量が増加した.これは,試料に含まれる金属鉄の酸化によるものであり,金属鉄が含まれない 高炉水砕スラグでは質量は増加しなかった.前節で述べたように,500˚Cあたりから含まれる金属鉄 は酸化により質量増加している.710˚Cまで質量増加がみられなかったのは,酸化による質量増加量 以上に減少量が多かったためである.

材齢および採取箇所ごとにTG分析を行い,それぞれの質量減少量を図2.3.6に示す.S試料では

Phase 1において7日材齢から14日材齢で値はやや増加したが,28日材齢以降ではほとんど変化し

ておらずS試料の強度発現にはPhase 1に含まれるC-S-HやC-A-S-Hなどの水和物の生成の寄与が少 ないといえる.Phase 2では材齢の経過とともに減少量は大きくなり特に下層で高い値を示す傾向に あった.この結果から,S試料の強度発現はカルサイトの生成が支配的であり,大気や土壌空気に接 触する上層,下層から中層に向かって徐々に生成していくものと考えられる.SG試料ではPhase 1 において材齢とともに上層で値が増加する傾向にあった.下層では28日材齢において大きな減少量 を示したが84日材齢では7,14日材齢と同程度の値であった.Phase 2では上層の値のみが増加して

図2.3.5 製鋼スラグ(converter slag)と高炉水砕ス ラグ(GBFS)の熱重量分析結果

0 200 400 600 800 1000

-0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0

GBFS

converter slag

Temperature (℃)

Mass (mg)

0.015 0.012

0.070

0.041

※unit : mg 100~150℃

600~710℃

Phase 1

Phase 2

47 おり,下層ではほとんど増加はみられなかった.この結果から,SG試料の強度発現は上層において 水和物の生成とカルサイトの生成が支配的であり,下層において水和物の生成が支配的であると考え られる.また,Phase 1およびPhase 2で比較的低い値を示していることから,強度発現の進行はS 試料の場合と同様に上層と下層から進行するものと考えられる.

(4) スラグ舗装における強度特性の評価とデータの活用

供試体の固化は,S試料では炭酸化が主体であり,SG試料ではカルシウム水和物の生成と炭酸化 の両方の影響していた.SG試料がS試料よりも3~4倍強度が高かったのはカルシウム水和物の生 成の影響が大きいと考えられる.これは,高炉水砕スラグが持つ潜在水硬性によるものであり,ここ では製鋼スラグがアルカリ刺激材として寄与している(近藤ら, 1979).強度の増加傾向は14日材齢 から84日材齢まで,S試料とSG試料ともに直線的に増加しており,84日以上の材齢においてはさ らに強度は増加するものと推定される.林道などの舗装として施工する場合は,強度増加が直線的に 増加することを踏まえて,交通解放を行う時期を予測することが可能である.また,交通量と必要強 度の関係を把握し,スラグ舗装を適用する場合の舗装構成計画に役立てることが望ましい.

図2.3.6 TG分析によるPhase 1およびPhase 2の質量減少量と材齢の関係

0 20 40 60 80

0 0.01 0.02 0.03

Decreased mass (mg)

Phase 1 (100~150 ℃)

S-top S-middle S-bottom

0 20 40 60 80

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20

Phase 2 (600~710 ℃)

S-top S-middle S-bottom

0 20 40 60 80

0 0.01 0.02 0.03

Phase 1 (100~150 ℃)

Age (day)

Decreased mass (mg)

SG-top SG-middle SG-bottom

0 20 40 60 80

0 0.05 0.10 0.15 0.20

SG-top SG-middle SG-bottom Phase 2 (600~710 ℃)

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